撮って愉しいレンズですよ、大きくて重いけど

シグマ・14mmF1.8 DG HSM / Art + キヤノン・EOS 6D Mk2

 この14mmF1.8レンズをシグマは「天体星座撮影用に最適だ」と強く押ししている。
 広い夜空をワンショットで写せる、大口径レンズなのでそれほどISO感度をあげなくても高速シャッタースピードで撮れる、F1.8開放F値を選んで撮影しても画面周辺の点光源(星)がそれほど流れて写らない、さらに、一段ちょっと絞り込めば(それでもF2.8)描写性能格段にアップする、などの理由(特長)でイチ押ししているのだろう。
 まるで星空撮影"専用レンズ"であるかのようだ(個人的な感想)。

 こんなふうに積極的に星空専用レンズを強調しているので、星空撮影以外の一般のスナップや風景写真、インテリア写真の撮影はおすすめじゃないのだろうか(そう考えてしまう人も多いのではないか)。




 いいや、そんなことは決してないです。
 被写体もシーンも選ばない。こういっちゃナンだが、星空だけを写すための専用レンズにするにはモッタイナイ(個人的な感想)。
超広角レンズ特有の描写の「クセ」も使いこなしの「難点」も、それを逆利用してみれば新しい表現につながるかもしれない ━━ 実際に使ってみれば、予想外に超広角レンズ特有の「クセ」が小さい、たぶんディストーション(歪曲収差)がほとんどないからだろう ━━ 。

 肉眼の視角を超えるという意味でも、使っててこんなに愉しいレンズはないです(個人的な感想)。

 ところで、つい先日、シグマがこの14mmレンズのための「リアフィルターホルダー換装サービス」を始めた。ユーザーからの強い要望があってそれに応えたという。

 14mmレンズは大きな前玉が飛び出していてレンズ全面にフィルターを取り付けることができない。そうしたレンズではマウント側のレンズ後端部に、薄いシートフィルターを差し込めるようなホルダーが設けられているものもある。
 フィルムカメラの時代では色変換や色補正のためにフィルターがどうしても必要な場合もあったのだけど、しかしデジタルカメラになって専用フィルターがなくても色変換も色補正もそこそこ自由にできるようになった。

 デジタルカメラの時代なのに、どんなシーンでフィルターを使用する必要があるのか、というと星空を撮影する人たちにとっては ━━ ぼくは星空撮影についてはまったく不如意なのだけど ━━ とくに超広角レンズではソフトフィルターが必須らしい。
 小さく弱く写ってしまいがちな星が、ソフトフィルターを使うことで光を滲ませ大きく写せるという。
 市販のシートフィルムをホルダーサイズにあわせてカットし、それをホルダーに差し込んで使う。

 星空撮影でのソフトフィルター使用以外にも、たとえばNDフィルターを使って超低速シャッタースピードで撮影するという要望にも応えることができる。

 フィルターホルダーの取付けは(基本的には)シグマが有料でおこなう。部品代を含め税込みで7560円。ただしキヤノンマウント用レンズのみで、ニコン用、シグマ用での対応は予定なし、とのこと(たぶんマウント部のスペースの関係で物理的にホルダーを付けることができないのだろう)。
 それにしても、ユーザーの要望に(それほど数が多いとは思えないけど)、きめ細かく対応していくシグマの姿勢にちょっと感心しました。

自分らしい写真を撮るのに役立つレンズ、かな

シグマ・14mmF1.8 DG HSM / Art + キヤノン・EOS 6D Mk2

 14mmの超広角の画角で、なおかつ開放F値がF1.8の大口径は、(たぶん)このシグマ14mmレンズ以外にはないと思う。F2.8開放F値なら14mmレンズとしてはそれほど珍しいものではない。F2.8とF1.8だと約1.3EVほどの違いがある。いきなりそこまで明るいレンズを作ったのがシグマ。
 加えて、描写性能がすこぶる良い、というのもこのシグマ14mmレンズの大きな特徴でもある。つまり「14mm+F1.8+優れた描写性能」の"合わせ技"が珍しくて貴重なレンズだ、というわけだ。

 「14mm+F1.8+優れた描写性能」の3条件を満足させるには、大きくて重いレンズになってしまうのは仕方ないこと(最近のシグマレンズは大きい重いが定番ではあるが)。
 価格も、とうぜんながら安くはない(これはしょうがない、が、使って撮ってみれば少しは納得するでしょう)。




 14mmもの超広角レンズともなれば、「マジメ」に使いこなして「それらしく」写そうとすれば一筋縄ではいかない。F1.8という大口径超広角だから、なおさらだ。

 強烈なパースペクティブ(遠近感)のせいで、手前のものが大きく写り、逆に少し後方にあるだけで小さく写り、水平線や垂直線が容易に傾いて写る。肉眼で見ているのと、写した写真とのギャップがタイヘンに大きい。
 さらに、注意散漫ノー天気のままフレーミングして撮影すると、画面周辺部に余計なものが遠慮会釈なく写り込んで、結果、間の抜けた写真になってしまう。

 強いパースペクティブに加えて、ディフォルメーションによる歪みも目立つ。いわゆるディフォルメ歪みというもので、画面周辺部に向かって引っ張られるように歪む現象で真ん丸なサッカーボールがラグビーボールのようにへしゃげて写る。
 というような厄介な現象があるのが超広角レンズの描写特性で、それをできるだけ目立たないようにカメラアングルやポジションを選び、フレーミングを工夫する必要がある。

 「マジメ」に写す、というのは、そう、強烈なパースペクティブやディストーション、ディフォルメーションを目立たせないように「ウマくフレーミングして写す」という意味です。

 だけど、好きな写真を撮影して愉しもうとしている人たちは、水平線垂直線が傾こうが、パースペクティブだとかディフォルメーションなんぞ、そんなこと気にして撮影しなくてもいいですよ。
 写した写真が歪んでようが傾いていようがいっこうに構いません。自由自在に思う存分、大胆に超広角写真を愉しめばイイ。
 そうした「自由」な気持ちになって大口径・高画質・超広角の写真にチャレンジすれば、いままでの自分の写真とはまったく別ものの、斬新な写真が撮れてるかもしれないですぞ。


 

 

入ると脱出するのが困難だぞ「TG沼」

オリンパス・TG-5

 内蔵ズームレンズは広角側25mm相当ではF2.0と明るいが、望遠側100mm相当になるとF4.9と約2.5段ぶんも暗くなる。TG-5は手ぶれ補正を内蔵してるけれど、ちょっと油断するとぶれてしまうから注意ですぞ。




 TG-5にはWi-FiとGPSの機能が内蔵されていている。スマートフォンのアプリ「OI.Track」を使ってモニターにGPS情報や気圧、温度、方位、標高、水深などをグラフ表示や地図表示することができる。一部の情報はTG-5本体の画面にリアルタイムで表示することも可能だ。これをオリンパスはフィールドセンサーシステムとよんでいる。

 撮影した画像はWi-Fiを使ってスマートフォンにトラッキングデータとともに転送、保存もできる。ただし、Bluetooth LEを内蔵していないため画像を自動転送することはできない(ニコンのW300はBluetooth LEが備わっていてそれができるがスマートフォンでGPS地図情報を表示することができない、一長一短ですね)。

 GPS内蔵カメラやGPS機能を使っている人には常識でしょうけど、GPS機能をONにして撮影すると撮影画像のExifにGPS情報が付加される。これが便利。なのだけど、バッテリーがすぐになくなってしまう、とGPS機能を嫌う人がいる。
 そうじゃないですよ、ただ位置情報を画像ExifにくっつけるだけならGPSをONにして撮影してもそれほどバッテリーに影響はないはず。バッテリーがなくなってしまう心配があるのは、撮影場所や移動ルートなどを別ファイルとして保存するログ情報記録をONにしっぱなしにしているからだ。ログ情報取得をしないのなら(ぼくはいつもそうしてるが)それほどバッテリーを喰うことはない。

 TG-5の操作系デザインで大きく改良されたのが3つある。1つは、ズームレバーがシャッターボタン回りのリング式レバーになったこと。たったこれだけでズーミングの操作性が飛躍的に良くなった。もう1つは新しくコントロールダイヤルが採用されたこと。露出補正や絞りの変更などがとてもやりやすくなった。

 さらにもう1つは、GPSログ情報のON/OFFが、いままではメニューの奥底に行って設定変更しなければいけなかったのが、ボディ上部に専用スイッチが設けられて、それでワンタッチON/OFFできるようになった。これで、GPSログ情報をONにしたまま一晩置きっ放し、翌日にバッテリー空っぽというイタイめに会わなくてすみそうだ。
 TG-5のこの「3つ」の改良をぼくは最大に評価をしている。

 このほかに(TG-5のカタログやホームページをご覧になればいいのだけど)、プロキャプチャー機能、4K動画撮影機能、ハイスピード動画撮影機能、タイムラプス動画機能、深度合成撮影機能、フォーカスブラケット撮影機能などなどの便利な撮影機能もある。
 こうして見ると、他メーカーの同様の防水防塵耐衝撃カメラに比べてTG-5に備わっている撮影機能は、一歩(どころか数歩)抜きんでている。良くできたアクセサリー類も揃っている。
 だからだろう、TGシリーズはリピート購入(つまり買い替え)の比率が約65%もあるそうだ。「TG沼」に入り込むと、ちょっとやそっとでは抜け出せないみたいですね。

 もしTG-5の購入を考えているなら ━━ TG沼に入る勇気があるなら ━━ 別売オプションとして、近接撮影時に大変に役立つフラッシュディフィーザー(FD-1)やLEDライトガイド(LG-1)があるので、どちらかはぜひ一緒に買っておくことです。とくにおすすめはLEDライトガイドのほうです。メモリーカードを買い足すのをやめてこちらを選ぶほうがいいかも。

制約の多い中、チカラを込めて作ったコンパクトカメラ

オリンパス・TG-5

 TG-5は(言うまでもないが)TG-4の後継機種。2年ぶりのモデルチェンジ。コンパクトカメラの開発にコストがかけられない現状で、がんばってよく仕上げたなあという印象。
 TGはToughの略で、このグループのカメラを「Tシリーズ」とオリンパスはよんでいる。防水、防塵、耐衝撃の機能を備えたコンパクトカメラのシリーズ。




 現在、オリンパスのホームページには、「TG-5」、「TG-4」、「TG-Tracker」のTG3機種がラインナップされている。しかし、TG-4もTG-Trackerも市場在庫のみで(おそらく)、いずれ近いうちにホームページからは消えてしまうだろう。

 となると、オリンパスのコンパクトカメラはこのTシリーズのみで、つまりはTG-5のただ1機種になってしまう可能性もなくもない。
 一時はマイクロフォーサーズのセンサーを使った高級コンパクトカメラ、という話もあったようだけど、ソニーとキヤノンに高級コンパクト市場をがっしりと抑えられている今となっては、その可能性はほどんど消えてしまったと考えていい(期待していたんだけどなあ)。

 というわけで、オリンパスとしては、防水防塵耐衝撃カメラとしてトップブランドとなったTシリーズをこれからも大切にしていくのだろう。
 新型TG-5を使ってみると、Tシリーズにかけるオリンパスの「やめるもんか」という意気込みがひしひしと伝わってくる。
 コスト制限が大前提のコンパクトカメラ作りであるが、その制限の中でオリンパスは工夫と努力を惜しまずやって、旧型TG-4とは「似て非なる」カメラに仕上げている。

 外観デザインや内蔵レンズ、操作系などはほとんど旧型そのままだが、あちこちできめ細かく改良や変更をしている。TG-1からTG-5までの中でもっとも改良の度合いが大きいのがこのTG-5だ。
 センサーサイズはほぼ同じだが画素数が1600万画素から1200万画素になった。と同時に画像処理エンジンがTruePic 7 から、E-M1 Mark2と同じTruePic 8 になった(贅沢っ!)。
 これにより、とくに高感度での画質が向上して、最高ISO感度もISO6400からISO12800と1EVアップした。

 新TG-5の画質は旧TG-4に比べて「かなり」良くなっている。とくに高ISO感度の画質向上が際立っている。
 1600万画素から1200万画素になって画素ピッチが大きくなったのだから当然・・・なんてトボけたことをいっちゃいけません。ソンなのほとんど関係ありません。
 センサーそのものが改良され進化していること、さらに加えて、優れた画像処理エンジンを使っていることや、画像処理技術が向上していること ━━ オリンパスはココを地道にがんばっていますよね ━━ それこそが画質が良くなったキーポイントだろう。

 ただし(と言って足もとをすくうようだけど)、画像処理の良さに比べて内蔵レンズの性能がイマイチ見劣りしてしまう。新TG-5になっても、なんとTG-1からのレンズをそっくりそのまま流用している(TGシリーズはすべて同じレンズ)。ここが唯一の残念。
 耐衝撃性や防水のためにズーミングしても全長が変化しなレンズであること、レンズがボディの中に収まっていること、そのために屈曲型ズームレンズを採用しているのだが、この屈曲型レンズがそもそも高画質描写には不向き。
 そのことはオリンパスは百も承知千も合点のことだなのだが防水耐衝撃のためには屈曲型採用はやむを得ぬ選択なのだろう。

 もしあなたがTG-5を使う機会があるとしたら、レンズの描写性のについてはあらかじめ心の準備をして"覚悟"しておいたほうがいいでしょう。レンズ描写はさておき、TG-5には他に多くの優れた点があるから、そちらに眼を向けて使いこなして愉しめばいいでしょう。


ちょいとわがままなDX対応のAF-Pレンズ

ニコン・AF-P DX NIKKOR10~20mmF4.5~5.6G VR+ D3400




 ニコンのDXレンズには、この10~20mmのほかに、18~55mmと70~300mmの「AF-P」レンズがある。
 AF-PレンズとはAF駆動用のアクチュエーターにステッピングモーター(STM)を使ったレンズのこと。きめ細かく、高速で、静かに駆動できるというメリットがあって、動画撮影に適している。
 ただしニコンのAF-Pレンズが使えるカメラボディが限られていたり、AF時に注意しなければならないカメラボディがあったり、ファームウエアをアップデートしなければならないカメラボディがあったりと、いささか、わがままで厄介なレンズ。
 購入時にはよくよく注意することです。

 AF-P DX NIKKOR 18~55mmF3.5~5.6G VR (2016年9月16日発売)
 AF-P DX NIKKOR 10~20mmF4.5~5.6G VR (2017年6月30日発売)
 AF-P DX NIKKOR 70~300mmF4.5~6.3G ED VR (2016年9月16日発売)

 この3本が現行のDX対応AF-Pレンズである。このほかFX対応AF-Pレンズが1本ある。

 DX対応のAF-Pレンズには、使用制限のほかにもう1つ「特徴」がある。手ぶれ補正(VR)レンズなのにレンズ鏡筒にはVRのON/OFFスイッチがないこと。手ぶれ補正のON/OFFはメニューの奥底のほうに下りていって、そこで切り替える(FXのAF-Pレンズには切り替えスイッチがレンズ鏡筒にある)。
 ここでぼくが戸惑ったのは(あわて者のぼくのせいだけど)、AF-Pレンズをカメラボディにセットしておかないとメニューのドコを探してもVRをON/OFFできないという仕組みを知らずにいて、長い時間をかけてメニューの中を行き来した。

 つまり、AF-P以外のレンズをセットした状態ではVRのON/OFF項目がメニューから消えているのだ。AF-PレンズをセットするとON/OFF項目が"突然"現れてくる。
 他のレンズをセットしたときはグレイアウトしている、なんてまぎらわしいメニュー表示ではなく、ハナから消してしまう。AF-Pレンズをセットせずにメニュー内を探し回ったというわけ。
 でも、考えてみるまでもなく、必要ないんだから消す、見せない、惑わせない、というニコンの、この姿勢はいいことだ。

 そもそも、レンズ内もボディ内も手ぶれ補正の機能については ━━ ぼくの超個人的な使い方だけど ━━ OFFにして撮影することは、ほとんどない。
 三脚を使った撮影でも、よほどの長時間露光の撮影時以外はONにしたまま。だからといって別段、悪影響があったという経験もないし、いやそれよりも好結果が得られたほうが多い(皆さんには積極的におすすめしませんけど)。

 レンズ鏡筒に手ぶれ補正のON/OFFスイッチがあると、バッグから出し入れするときにナニかが引っかかって知らぬ間にOFFになっていたというニガイ経験もしている。だから手ぶれ補正内蔵のレンズではON/OFFスイッチのところにセロテープを貼り付けて不用意に動かないようにして使っている。
 DX対応AF-Pレンズのように、スイッチなしというのはぼくにはうれしい(スポーツモードやアクティブモードの切り替えなんぞ、将来、完全自動化されるに決まっている)。

 ところで、なぜニコンは、まだ数は少ないとはいえVRのON/OFFをメニュー内で切り替える方式のレンズを出してきたのだろうか。きっと今後も増えていくに違いないと思うけど、なにか新しい手ぶれ補正の機能を搭載するための、その準備のための仕様ではないかと気になる。