これが smc PENTAX-FA43mmF1.9 Limited の描写の一例

リコー・PENTAX K-1 Mk2 + smc PENTAX-FA43mmF1.9 Limited
3本のFA Limitedレンズのうち、まず「smc PENTAX-FA43mmF1.9 Limited」から設計と開発が始まりました。当初は、そのスペックをどうするか侃々諤々があったようです(PENTAXのいつものことですけど)。プラスチック鏡筒にする、なんて案も出たそうです。
結局、贅沢な(当時としては)アルミ削り出し加工のレンズ鏡筒と、高品位でクラシカルなデザインにした43mmが発売されました。PENTAXは、売れてくれるかどうかそれがイチバン心配だった。
しかしPENTAXの弱気な予想と違って、たくさん売れました。そこで気をよくして俄然、やる気満々になりました(これまたPENTAXのいつものことですが)。次の77mmでは43mmの外観デザインをさらにいっそう豪華にしたり、"遊び心"も加えました(後述します)。
絞り数値や距離目盛り、被写界深度目盛りなどはひとつひとつ彫り込み加工され、そこに丁寧に色差しされています(この加工じたいはそれほど珍しくもないですがキレイでした)。そのせいで、とくに77mmと31mmレンズでは高級な雰囲気を醸し出しています。

レンズキャップは3本ともアルミ金属製のかぶせ式。ごく初期の43mmだけはアルミ無垢材から削り出し加工をして仕上げたらしいのですが(コストがかかりすぎるせいか)途中から77mm/31mmのレンズキャップと同じくアルミ板材をプレスで"型押し"して仕上げて、加工するようにしたそうです。
レンズフードもアルミ金属製。43mmはねじ込み着脱式で、77mmは内蔵引き出し式、31mmは内蔵固定式と、それぞれ異なります。その内側はコストはかかるけれど反射防止効果に優れた静電植毛で仕上げられています。
3本のFA Limitedの製造は、31mmが発売されてから数年後に工場が埼玉県・小川町からヴェトナム・ハノイ市に移り、それに伴って「MADE IN JAPAN」から「MADE IN VIETNAM」になりました(一部のレンズは「ASSEMBLED IN VIETNAM」になっているものがあるかもしれません)。
ぼくがいま使っている3本のシルバータイプのFA Limitedレンズはすべて「MADE IN JAPAN」です。とくに43mmはごくごく初期タイプで、レンズキャップの表面のPENTAXロゴは黒文字のプリント仕上げでちょっと安っぽい。キャップ裏側は黒いラシャ布が貼り付けてあります。
ちなみに、77mmが発売されたときに、43mmのレンズキャップは77mmと同じようにキャップ表面のPENTAXロゴはプレス刻印(凹文字)になり、裏側はグリーンのラシャ布に変更されました。たったそれだけのことでレンズキャップはとても豪華な感じになりました。
ちょうどその頃からですね、シルバータイプに加えてブラックタイプの発売も始まりました(PENTAXの自信満々、イケイケどんどんが眼に見えるようです)。

現在のFA Limitedのシルバータイプとブラックタイプの販売比率は、3本とも「シルバー1:ブラック2」だそうです。なお、DA Limitedレンズのほうは「シルバー1:ブラック3」とブラックタイプのほうが人気があるようです。
ここで少し話が戻ります。レンズキャップのラシャ布の裏張りのことです。
これ、ナンの効果も、はたらきもありません。レンズ第一面とは完全非接触ですから無駄といえばめちゃくちゃ無駄なものです。しかし、この"無駄"こそがFA Limited(一部のDA Limitedもそうですが)の真骨頂じゃないでしょうか。
この"無駄な裏張り"を見るたびに、ぼくは「いいなぁ、いいなぁ」と独り言をいってしまいます。とくにグリーンの裏張りがいい。江戸時代の洒落男が、見えない着物の裏地に贅沢な生地を使っていたという話に似たところもなくもない。

上の写真は43mm(左)と77mm(右)のレンズキャップの裏表を比べたものです。
左の43mmはごく初期タイプなのでアルミ無垢材からの削り出しですが、右の77mmはプレス加工です。初期タイプ43mmのPENTAXロゴ文字はプリントでしたが、いまは77mmと同じく凹文字型押し印字です。キャップ裏張りのラシャ布も31mmも含めすべて緑で統一されています。
もうひとつ、FA Limitedには"無駄"なものがあります。
77mm/31mmの鏡筒にあるフィンガーポイントです。レンズ鏡筒にある小さな半球状の「緑色のボタン」です。指標と言えばいいのかな。
発売された時期は"無駄"ではなく、いちおう"役割"がありました。
レンズをカメラボディに取り付けるとき、レンズ着脱ボタンの位置を示す指標となることが目的でした。暗い場所でも指先の感触だけでレンズ取り付けが容易にできる利点がありました。
ところがフィルムカメラからデジタルカメラになると、カメラ側の着脱ボタン「位置」が変更になり、いまでは着脱ボタンとフィンガーポイントがズレまくっています。
「どうしてフィンガーポイントの位置を修正しないの?」と聞いたところ、「いつまた着脱ボタンの位置が変更になるカメラが出てくるかわかりませんから現状維持です」という返事。それを聞いて、そりゃあPENTAXなら十分にあり得るなあ、といたく納得しました。

上の写真、左がフィルムカメラ・Z1ですが、レンズ脱着ボタンに対してフィンガーポイントが正しい位置にあります。右のデジタルカメラ・K-1だと、こようにレンズ脱着ボタンの位置とズレまくっています。
そのフィンガーポイントは、あまり知られてないことですが、銀の無垢材の上に七宝焼きを被せています。銀のカタマリの上に七宝焼きですよ、しゃれた遊び心というか。ただし残念なことに43mmレンズにはフィンガーポイントは付いていません。77mmと31mmだけです。
すでに述べたように43mmの企画の時は、売れてくれるかどうかハラハラどきどきの発売だったので、そんな贅沢なアイディアは、即却下!、でした。
ところが43mmが予想外の人気で売れてくれたので、次の77mmでは「それ、イケいけっ」と銀に七宝焼きのフィンガーポイントを付けました。その77mmもまたユーザーから褒めてもらえたので、31mmにも、となったわけです。

無垢の銀を使ったのは、シルバーの地の上に七宝焼きを施したほうが「緑」がいっそう鮮やかさと色の深みが出てくるからというのが理由でした。ただの指標に ━━ いまとなっては役に立ってませんが ━━ そんな贅沢をしていたのです。
その緑色のフィンガーポイントですが、31mmレンズが発売になってから数年後に、とつぜん緑色が淡く浅い色になってしまい、それが現在も続いています。
理由は有害物質の使用制限「RoHS(ローズ)指令」です。
じつは初期の緑色フィンガーポイントの七宝焼きの釉薬には「鉛」が入っていたのです。
深みと鮮やかさのある美しい緑色は鉛のおかげだったのですが、それが環境問題により使えなくなった。そのせいで淡く浅い(やや安っぽい)緑色になってしまったというわけです。
同じことはクルマの塗装にもありました。RoHS指令の前のクルマはじつに良い色をしてました。ルノー・ゴルディーニのブルーや、いすゞ・ジェミニの黄色なんて得も言われぬ美しい色でした。鉛入り塗料のおかげだったのですが、いまは無害のアクリル系塗料になり色に深みがなくなりました。
というわけで、初期タイプのFA Limited 77mm/31mmを所有している人は、フィンガーポイントには注意してレンズを取り扱ってくださいね。
2020.01.19 |
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目黒茶屋坂方面を睨み続ける猪

リコー・PENTAX K-1 Mk2 + smc PENTAX-FA31mmF1.8 AL Limited
約20年前に設計されたFA Limitedレンズ、43mmF1.9、77mmF1.8、そして31mmF1.9の3本は、モデルチェンジはもちろんマイナーチェンジもされることなく発売時の姿そのままで、現行製品としていまも発売継続されています(じつは、ごくごく小さな"変更"はされているようですが詳細は不明です)。
いうまでもなく3本のFA Limitedはフルサイズ判対応の交換レンズ。PENTAXのデジタル一眼レフカメラはずっと長期間、APS-C判だけを作り続けていましたがそんな状況でも、FA Limitedレンズが売れ続けてきたというもの不思議です。
3本のFA Limitedレンズとはどのようなレンズなのか、そんな話を続けています。
レンズ焦点距離が、43mmだとか77mm、31mmなどという中途半端な数値になったのも、感応性能に重点を置くために敢えて収差を残しながらも同時に結像性能を確保する"わがまま"な光学設計を優先した結果のようです。
焦点距離や開放F値など既存の制約にとらわれないで、ぼけ味 ━━ その当時はいまほどウルさく言われなかった ━━ や、立体感(奥行き感)、透明感(空気感)など、写真表現のための描写性能を引き出す手法をとったためだったといいます。
その思想はAPS-C判デジタルカメラ用として開発された「DA Limitedレンズ」にも受け継がれて"中途半端"な焦点距離になっています。
さて43mm、77mmに続いて3本めとなる「smc PENTAX-FA31mmF1.8 AL Limited」も発売されることになったのですが、この31mmは平川 純さんの設計ではなく、光学設計の担当はMさん変わりました。
そのせいか、同じFA Limitedではあるのですが31mmは、43mmや77mmとは"かなり"趣向の異なるレンズに仕上がっています。
当初は平川さんが続けて31mmも担当する予定だったようですが「とある事情」で光学設計者が変わりました。このへんのことについてはデリケートなこともあるので詳細は避けます(経緯などについてはぼくはいまでも憤慨していますけれど)。
31mmはともかくとして、43mm/77mmの2本とも平川さん設計なのですが、こちらは、はたして同じ光学設計者が手がけたものだろうか、と疑わしくなるほど個性(クセ)の異なるレンズに仕上がっています。
というわけで以下、3本それぞれのFA Limitedレンズの、まったくぼく個人の感想を。
なので、それなりにカルく聞き流しておいてほしい。

43mmレンズは「いたずら小僧」といった印象を受ける。使いこなしは3本の中でもっとも難しい(と思う)。撮影シーン、撮影距離(ピント位置)、絞り値などによって描写具合が"豹変"する我が儘なレンズです。
そこがイイんだよ、という"へそ曲がり"な人も多い(ぼくもその一人ですが)。見かけのレンズスタイル(パンケーキタイプ)はごく平凡なのですが不思議な魅力を秘めたレンズでもあります。

6群7枚のレンズ構成で、絞り羽根はこの43mmだけが8枚です(他のレンズは9枚羽根)。6群7枚構成の7枚はすべて通常一般のガラス硝材で、いわゆる特殊光学レンズは使っていません(一部に屈折率の高い硝材を使っているかもしれませんが不明)。
ピント合わせのに時は、6群7枚が「ひと塊」となって前後します。シンプルな全群繰り出し方式です。この方式の利点は、遠距離、近距離とピント位置が変化しても収差変動が少なく安定した描写をすることです。とくに至近距離での描写が良い。逆に欠点は、重く大きなレンズ群を前後しなければならないためAFスピードは遅くなるし駆動音も大きくなります。
AFスピードの遅さ、AF時の駆動音のウルささ、は77mmレンズにも言えます。
77mmレンズも6群7枚構成で、特殊ガラス硝材を使わず見かけはシンプルな光学設計ですが、使って撮ってみればわかりますが、とてもきめ細やかな感じのする光学設計です。
77mmの描写は「線の細い柔らかな」女性的印象のするレンズです。3本のFA Limitedのなかではイチバン好きなレンズです。

この77mmもピント合わせ時のレンズ移動方式は43mmと似ています。6群7枚構成の最後端レンズ一枚だけが固定で、その他の5群6枚のレンズ群が「ひと塊」となって前後します。
PENTAXはこれをナンチャラ方式と難しい名称を言ってましたが(ぼくの馬の耳には念仏)、つまり全群繰り出しに近い前群繰り出し方式ですね。
さて、31mmレンズです。
31mmの描写は「ソツのない都会の青年」という印象です。写りは線が細くシャープで、現代的な感じのする描写のレンズに仕上がっています。43mm/77mmに比べて「クセ」は少ないです。そのぶん、ちょっとおもしろみに欠けるきらいもあります。

レンズ構成は7群9枚。その硝材9枚のうち高屈折低分散ガラスを1枚、異常低分散ガラスが1枚、非球面レンズを1枚使っています。43mm/77mmの"質素で平凡"なレンズ構成に比べるとかなり豪華な感じがします。
AF時のレンズ駆動方式には前群(4枚レンズ)と後群(5枚レンズ)の2つの群間隔を微妙に変えながら前後移動させるフローティング方式を採用していることにもモダンな印象を受けますね。
43mmと77mmがごく一部の人に「シャープさが足りない、コントラストが低い」などと子どもっぽい文句を言われて、PENTAXはそれを気にして31mmではイッキに贅沢な光学設計をやったようです。31mmが「万人受け」するレンズに仕上がっているのは、そうした理由なのかもしれません。
31mmだけはフィルムカメラにもデジタルカメラにも向いたレンズ、かな。
2020.01.17 |
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永遠の命を受けた尾長鶏

リコー・PENTAX K-1 Mk2 + smc PENTAX-FA77mmF1.8 Limited
レンズの描写性能の評価軸には、大別すると「結像性能」と「感応性能」のふたつがあります。
結像性能は数値で表示(定量化)することで客観的に評価できます。感応性能は文字通りどのように感じるかで、評価する人によって軸がぶれることもあり定量化することが大変に難しい。
たとえば、結像性能は解像力だとかMTF、階調再現性、色の偏り、逆光特性などのパラメータを数値に置き換えて表すことができます。感応性能は写った画像を見て「ぼけ味」の具合とか「透明感」の程度とか、「奥行き感」、「コントラスト」など"見たときの気分"の良否を総合的に判断して評価します。好き嫌いや経験則などの影響を受けることもある。
科学記録写真や星座写真などでは、なによりも結像性能が重要で、感応性能はレンズ性能の評価の対象となりません。しかし、私たちが撮影する対象は森羅万象であるだけでなく、写真表現するとなると、極論ですが結像性能はそれほど重要視されないこともあります。
一般撮影用レンズは、結像性能も感応性能も同じように大切なものなのですが、困ったことにどちらかを優先して設計すると片方の性能がおろそかになります。このことはいまも昔もレンズ設計での難問です。
PENTAXはそこで少し思い切ったレンズを企画することにしました。
結像性能重視型のレンズばかりを追い求めるのではなく、感応性能に比重を置いた個性的な写りのするレンズがあってもよいのではないか、と企画され開発したのがFA Limitedレンズだったというわけです。
つまり、FA Limitedでは、数値的に優れた解像力重視型の描写性能よりも、感応的に優れた気持ちの良い写りを優先したレンズを作ろうとしたわけです。そのためには、敢えて少し収差を残してもいい。
現代のレンズのように徹底的に収差を補正する光学設計ではなく、感応的な描写特性を最優先するために、微妙に、必要最小限に、収差を残して設計することにしたわけです。
当時としては(いまでもそうですが)イレギュラーで大胆な設計手法を採用したレンズだった。
通常レンズの企画や設計は、焦点距離、開放F値、大きさ重さ、価格などスペックをあらかじめきっちりと決めます。それをベースにして光学設計や鏡枠設計、電気系設計の担当者が議論しながら、光学設計が始まり、必要に応じて鏡枠設計やエレキ担当と話し合いながら進めていきます。
FA Limitedレンズの開発が始まったのは20年以上も前のことでした。いまのように合理的でシステマチックなレンズ開発に比べれば、とくに光学設計は、まだまだ個人の技術力に頼る部分も残っていました。
FA Limitedレンズは、焦点距離や開放F値などの"制約"は曖昧でアバウト。どんな描写のレンズに仕上げるかは、光学設計者の裁量にまかせることにしました。重要視したのは感応性能に優れたレンズを作ることでした。
レンズ価格も少しぐらいなら高くなってもいいぞ、なんて今から考えればレンズ設計者にとっては「夢の企画」でした。
そのFA Limitedレンズを担当したのが、当時PENTAX光学設計のホープでもあった平川 純さんでした。
FA Limitedは少し特殊な例でしたが、担当を任された平川さんが、がぜんやる気をだしてどしどし自分がやりたいように設計したのが43mmと77mmのLimitedレンズだったのです。
平川さんは「写真レンズとはどうあるべきか」のフィロソフィーをしっかりと持った人でした(少し変わりモンで頑固な人ですけど)。平川さんに光学設計の担当を任せたのが、そのときの光学設計部の責任者が小川良太さん。FA Limitedを語るとき、その人のことも忘れることができません。
繰り返しになりますが、当初のFA Limitedのコンセプトは、既存の定番の焦点距離でなくてもいい、レンズ価格が少し高くなってもいい、ともかくPENTAXの写真レンズらしい描写性能を最優先しようというものだったわけです。
2020.01.14 |
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二宮金次郎ふうの桂太郎

リコー・PENTAX K-1 Mk2 + smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
以下、PENTAXのカメラやレンズに詳しい人 ━━ いやほんと、めちゃくちゃ詳しい人が多くいるもんですね、古い社員も知らないことも ━━ そんなPENTAX通には「常識だ!」と言われるのを覚悟して、フルサイズ判対応の「FA Limitedレンズ」について。
異色のレンズです。他のメーカーでは類を見ないレンズです。
現在も新品として手に入る"生き延びたヴィンテージレンズ"と言えなくもない。眺めて美しい走って愉しい1960年代の欧州車のような感じもします。現在のクルマに比べれば、運転しづらい、速くない、乗り心地も良くはない、環境に優しくない。でもドライブすることを愉しくさせてくれます。
特段、懐古趣味に偏っているわけではないですが、Limitedレンズは、どこかそんなクルマと似たところがあります。いまのレンズのように描写性能に優れているというわけではないですが撮影していて愉しい。
FA Limitedレンズには現在、3本がシリーズ化されています。
「smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」、「smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited」、「smc PENTAX-FA 31mmF1.8 AL Limited」です。
コンセプトもスペックも外観の仕上げもデザインも、そして写りも、とても個性的なレンズで他のメーカーでは類を見ません。PENTAXではもっともロングセラーを誇っているレンズシリーズでもあります。
それぞれのレンズの発売年は、
43mmF1.9は、1997年10月の発売(約22年前)
77mmF1.8は、1999年11月の発売(約20年前)
31mmF1.8は、2001年 5月の発売(約19年前)

ぼくの愛用のFA Limited3本。ごく初期モデルのMADE IN JAPANです。
写真は右上から左下に「43mmF1.9」「77mmF1.8」「31mmF1.8」です。2000年から2001年ごろにかけて順次ブラックタイプが追加され、シルバー/ブラック2モデル併売がいまも続いています。
1997年から2001年ごろといえばフィルムコンパクトカメラが衰退し始めた頃です。しかしフィルム一眼レフはまだ元気だった時代で、デジタル一眼レフはまだまだ一般的ではなかった。
3本のFA Limitedレンズはどれもデジタルカメラに使用されることをほとんど想定もせず、企画され設計、製造されたレンズだったということです。
ちなみに、MZ-3の発売が1997年9月。そして実質的にはPENTAX最後のフィルム一眼レフカメラとなるMZ-Sは、2001年5月の発売でした。(追記):「PENTAX *ist 」ってのが2003年に発売され、それが最後のPENTAXフィルム一眼だぞ、と教えてもらいました。ぼくはまったく記憶の彼方ですが、それ"どこか"に作ってもらったOEMかも・・・初のデジタル一眼「*ist D」が同じ年の発売ですね。
ニコンD1が1999年9月発売でしたから、PENTAXもそろそろデジタル化を睨みつつあったころで、2001年のPMAショーだったかなあ、PENTAX初のフルサイズ判デジタル一眼レフ「Kー1」が参考出品されましたが、なにやかや紆余曲折があって(少しそのへんに関わっていたのですが言えないことたくさんあります)結局、製品化されず終わりました。
このことは、もうしゃべってもいいと思いますが、試作「Kー1」はもちろん撮影はできましたし(ぼくも使ってみました)、がんばってファームを手直しすればすぐにでも発売は不可能ではないかな、そんな状態でした。
そりゃそうです。カメラ内部はもちろん、外装金型まで作っていましたから発売中止となって、あの時代で数億円の製作コストが無駄になったというわけです。
でも、正直なことを言えば、発売しなくて良かったですね。
発売予定価格も高すぎたし、その当時から数年後のデジタルカメラのトレンドを眺めてみれば"時代遅れ"も甚だしいところもありました。PHILIPSのセンサーもぜんぜん良くなかった。
ただ、もし「あの人」がK-1の開発責任者だったら、K-1はあんな悲しいカメラにはならなかったのに、と、いま思い返しても残念です。
いや、つまりですね、FA Limitedが発売された頃は、そんなフィルムカメラからデジタルカメラに大転換する混沌とした時代であり、PENTAX(旭光学工業)もてんやわんやの時代だったのですが、PENTAX FA Limitedのレンズ開発のほうは「おれたち、そんなこと関係ないや」ってなスタンスだったようでした ━━ レンズ設計はカメラ設計とはぜんぜん別の組織、半独立の光学開発センターでやってました。
FA Limitedが企画され設計開発をスタートさせたのは発売が始まる数年以上前になりますから、まだ "PENTAX平和な時代" でフィルム一眼の将来に希望もあった頃です。
FA Limitedはそんな時代背景の中で生まれ、発売されたレンズだったということなんです。
というわけで、いつもの定番、横道逸れ放題になってしまいました。次はもう少しFA Limitedに集中して話を続けます(の予定)。
2020.01.11 |
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下半身だけの体のツボ公開

シグマ・SIGMA fp + 24~70mmF2.8 DG DN Art
シグマのフルサイズ判ミラーレスカメラ用交換レンズのLマウントとソニーEマウントには2種類のタイプがあります。
1つは、もともと一眼レフ用として開発し作られたレンズをショートバックフォーカス(ショートフランジバック)のミラーレスカメラにも使えるようにレンズ後部を継ぎ足しただけのレンズで、光学系は一眼レフ用と同じ。AFなどの制御ソフトのアルゴリズムは最適化しているでしょうけれど、なんちゃってミラーレス用レンズ、と言えなくもない。
もう1つは、ミラーレスカメラ用に光学系をイチから"本腰を入れて"設計開発したレンズ。レンズ性能は格段にミラーレス専用設計のレンズのほうが良い。
それが昨年末に発売された24~70mmF2.8レンズで、それまでにすでに45mmF2.8、14~24mmF2.8、35mmF1.2が発売されています。
見分け方としては「DG(=フルサイズ判対応)」と「DN(=ミラーレス対応)」がレンズ名に記載されています。"なんちゃって"のほうには「DN」の記号がありません。ちなみに「DC」はAPS-C判用またはマイクロフォーサーズ用です。
45mmF2.8レンズは小型軽量で、SIGMA fpのようなコンパクトなカメラボディと相性はいいのですが、しかしその他の3本のレンズはfpには大きすぎて重すぎてアンバランス。子ども(fp)が大きな牛(24~70mmF2.8)の尻にしがみついているような、そんな感じです。
来年中に発売されると思いますが、Foveonフルサイズ判センサーを使ったカメラと組み合わせて使うのを待つか、ソニーαシリーズやパナソニックSシリーズで使うのが、いまはいちばんのおすすめでしょうか。
24~70mmF2.8レンズの、しいて不満を言えばピントリングの操作感でしょうか。
バイワイヤー方式なのですが、リングの回転をとても滑らかなのですがスカスカでじつに頼りない。指先がちょっと触れただけでピントがずれる気配もします(フォーカス拡大表示モードにしていると頻繁に拡大画面が出てくる)。
同じバイワイヤー方式の45mmF2.8とは月とすっぽんほど違う。文句なしに小型軽量の45mmF2.8レンズの操作感のほうがいい。
重い大きい24~70mmF2.8レンズのほうにこそ、しっかりした操作感にすべきじゃなかったのかなあ(ね、大曽根さん)。

シグマには、fpと相性の良い小型軽量レンズを早急に出してほしいですね。45mmF2.8のたった1本じゃfpの魅力は半減したままです。
それにしても皆さん、文句も言わず満足して使ってるのかなあ。レンズ交換できない(しない)フルサイズ判コンパクトカメラと思えばそれでいいのかも。そう、PENTAXのLimitedシリーズのような個性的な小型軽量タイプがいいなあ。
ないものねだりですが、ミラーレスカメラ用の「DG」+「DN」にキヤノンRFマウントやニコンZマウントに準拠したレンズ、それをシグマが出してくれれば、こりゃあ、おもしろくて愉しいことになるでしょうに。
2020.01.02 |
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