電磁波の不要輻射

オリンパス・E-P2+M.ZUIKO DIGITAL 14〜42mmF3.5〜5.6
 E-P2が発表されたとたんE-P1ユーザーから大ブーイングが出て、それが今も続いているぞ、と聞いた。数ヶ月前に買ったばかりなのに「もう新製品を出すのか」というものや、液晶電子ビューファインダー(EVF)が欲しかったのに「E-P1ではそれが使えないじゃないか」というもの、E-P1のブラックボディが欲しかったのに「今ごろ黒ボディなんて出して」というものであるらしい。で、オリンパスに対して非難囂々のようだけど、でもオリンパスにもいろいろと「都合」があってのことだろう。ただ、もう少しウマく立ち回ればいいのに、やることがいささか“ぶきっちょ”ですよね。

 ブラックボディが次機種のために用意されていることや、外付けEVFが使えるカメラがすぐに出てくることは、多くの人が「なんとなく知っていた」ことだ。
 もちろんぼくも、E-P2が(そのカメラ名さえ容易に予想できるじゃないか)発売されることはだいぶ前からうすうす知っていた。言うまでもないことだが、オリンパスがそんなことをほのめかすワケはない。エプソンが高精細なEVFをオリンパスの新型カメラのために作っているらしい、という、うわさ話をぼくが聞いていたからだ(EVFがエプソン製であることはオリンパスはいっさい黙して語らず)。
 というと、「おまえ、知ってたんならここに書けよっ」と筋違いないちゃもんをつける人がキッといるだろうけど、バカなこと言っちゃイカンよ、そんなシリアスなこと、ここに書けるわけない。そもそも、ここに書いてあることなんて、あんた、ウソありハッタリありチャランポランあり、なんですぞ。そのデタラメを続けることがモットーであるこのブログの精神に反するじゃないか。


 といった冗談(か、な)はともかくとして、E-P2用の外付けEVF ―― オリンパスでは「ライブファインダー」と命名している ―― は素晴らしい見え具合であります。144万ドットという高精細もすごいけど、ファインダー倍率が1.15倍でファインダー光学系がこれまた良くできていて、画面周辺部までクリアーで歪みもボケもほとんどない。ボディ背面の23万ドットの液晶モニターなんぞまったく見る気がなくなるほど。EVFは今後、もっともっと良くなっていくだろうけど、現行のカメラ用EVFとしてはいちばんイイのではないか。少し前にパナソニックからGF1用に20万ドットの、同じような着脱式のEVFを出しているが、その見え具合はオリンパスのそれに比べれば、グリコのおまけ、みたいなもんだね。

 数ヶ月前の「デジタルカメラマガジン」のGF1の開発者インタビュー記事だっだけど、20万ドットの低解像のEVFをあえて採用したのは、コネクター部から出る電磁波の不要輻射を防ぎきれなかったからだ。ドット数が増えれば大変な不要輻射が出る。今の技術ではその対策をとるには大変に困難。だから20万ドットのEVFにした。20万ドットでも機能的には十分だ、と。インタビュー文面では、なんだかとても自慢そうに語っていた。その記事を読みながら、ああ、もうすぐ144万ドットや92万ドット(リコーのGXR)の外付けタイプのEVFが出てくるというのに、そんなこと堂々と公言しなくてもいいのに、自分たちの技術の低さをさらけ出すことになるのに…と老婆心ながら感じておりました。
 その、たった1、2ヶ月のあとにオリンパスもリコーも、パナソニックの数倍のドット数があるEVFの、そのコネクター部からの不要輻射の問題をなんなくクリアーして ―― なんなく、ではなく相当に苦労したようだけど ―― 製品化してきている。

画像処理で収差補正することは善か悪か

オリンパス・E-P2+M.ZUIKO DIGITAL 17mmF2.8
 キヤノン・PowerShot S90の内蔵ズームレンズが画像処理で歪曲収差の補正をおこなっていることについて、その「事実」を知ってしまったとたん、謹厳実直、理想追求型の真面目な人は(たぶん)大きな不満と怒りを感じておられることだろう。画像処理で収差補正をやっていることをまったく知らなければ、S90に幸せいっぱいを感じて使っておられるに違いない。

 でも、そもそも写真もカメラも、「結果」さえ良ければそれはそれでいいのじゃなかろうか、というのがぼくの考え。むろんこの考え方に正反対の考え方、感じ方をした人もいる。それはそれでいい。「途中経過」にこだわるというのは、たとえば、AEやAFで気軽に撮った写真よりも、苦労してMFやMEで撮った写真のほうが「上級だ」と見なすようなもの、料理の味をストレートにうんぬんするのではなく、どれだけ手間ヒマかけて料理を作ったかのほうを重要に考えるようなものですね。それはそれでいいと思うし、事実、そうした考えの人も多い。
 つまりですぞ、だからこそ、そういった人たちのためにも、キヤノンはできるだけ「手の内」を見せないように、ユーザーが「いらぬ」心配をしないようにすべきだと思うわけだがやってない ―― やってない理由は、ま、いろいろあるんですけどね ―― 。そのキヤノンに対して、オリンパスはといえば、逆に徹底して「手の内」を見せないように「努力」をして、それを「実践」している。


 このオリンパスのマイクロフォーサーズのE-P2は、画像処理で収差補正をしっかりとしているのだが(E-P1もそうだけど)、しかし、そうしていることをユーザーにわからないような「配慮」をしている ―― その具体的な方法についての詳細は内緒なのでここでは説明しない。
 E-P1の初期の機種では「ある操作」をすると、画像処理をする前の、補正前の状態を「見る」ことができたのだが、最近の機種では、それを見ることができないようにしてしているのだ。

 繰り返しになるが、オリンパスはE-P2でもE-P1でも、画像処理でレンズの歪曲収差や色収差などを補正している。色収差の補正はともかくとして、歪曲収差の補正をしていることは、以前、雑誌のインタビューをしたときに、オリンパスの開発者がはっきりと答えている。「さらなるコンパクトさを追求するためデジタル処理を行っています。画質を落とさずに、レンズを小さくするための方法論があるのだから、そこは躊躇せずにやっていこうと考えました」と、レンズ設計者は明快に言ってのけた(「デジタルフォト」9月号)。
 その答えを聞くまでもなく、あれだけの小型でそこそこの性能を持ったレンズを作るのが難しいことぐらい、ちょっとのデジタル写真の仕組みのことや初歩のレンズ設計の知識があれば自明なことだ。キヤノンのS90のように、RAWで撮って、それをオリンパスの専用RAW現像ソフト以外で現像したとしても、補正していることが(ほとんどの人たちには)わからないようにしている。
 こうしたオリンパスの姿勢、つまり、わからないよにデジタル画像処理を上手にやって、それを徹底的に隠すことこそ正しいことだと思う。そう思いませんか、みなさん。

誤解しないでほしいのだけど…

キヤノン・PowerShot S90
 S90のレンズはIS内蔵の28〜105mm相当のF2.0〜4.9の3.8倍ズームである。とても小型で、28mm広角側だけとはいえF2.0の明るさにしているのは大変に立派 ―― 105mm望遠側ではF4.9と、2EV半ほども暗くなるのだけど、小型を優先させたレンズ設計なんだろうからそりゃあ仕方ないだろう。描写性能は良い。少し硬めの描写だが、画面中心部から周辺まで均一で、ズーム全域にわたってディストーション(歪曲収差)がとても少なく素直な印象を受ける。
 こんなにも小型で大口径のズームレンズで、よくもここまで歪みを少なくしたよなあ…、と感心することしきりでありましたが、いや実は、そこには大きな「隠し技」が仕込まれておりました。

 いまここで、その「隠し技」の種明かしをするけれど、くれぐれも「誤解」しないでほしいのだ。その隠し技(画像処理技術をやっていること)を知って、S90のズームレンズそのものの評価を下げないでほしいのだ。いまやデジタルカメラでは、当たり前のこととして多くのメーカーがやっていることであって、じつにまっとうなことで、ナンの文句もつける必要のない技術なのである。
 おせっかいな話はともかくとして、この比較画像を見てみましょうか。2枚ともS90の28mm相当側で撮影をした「まったく同じ画像」である。
 1枚の画像のほうはディストーションがほとんどない素直な描写である。しかしもう1枚のほうは、まるで魚眼レンズで撮影したかのように樽型に大きく歪曲して写っている。その写っている画像の範囲(画角)もだいぶ広い ―― これについては本題からズレるので省略する。


 種明かしをすると、この画像はRAW+JPEGで撮影して、歪みのない画像はJPEGファイル、強い歪みのある画像はRAWファイルを Photoshop の Camera Raw を使ってストレートに現像処理して仕上げている。
 つまり、S90ズームレンズのもともとの描写は、RAWファイル現像の画像のように強い歪曲収差があって、それをS90のカメラ内で自動的に画像処理をおこない歪みの目立たないJPEG画像に仕上げているということだ。RAWファイルには補正情報だけがインプットされ補正処理そのものはおこなっていない。液晶モニターでスルー画像を見ているときも、S90は、リアルタイムで歪み補正をしているからまったく気づかない。
 そして、このRAWファイルを、S90に標準添付されているキヤノンのRAW現像処理ソフトDPP(Digital Photo Professional)を使ってストレートに現像すれば、JPEG画像と同じように自動的にキレイに歪みを補正してくれる。でも、DPP以外の、たとえば Camera Raw のような汎用RAW現像処理ソフトを使うと、とたんに「すっぽんぽんの裸」が丸見えになってしまう。歪み補正情報がウマく伝達されていないからだ(多少、色や階調が異なるのもそのせいだろう)。

 ここでぼくが言いたいことは ―― 画像処理なんぞで歪曲収差を補正するな、というのではなくて(ぜーんぜん構わない、むしろもっと積極的にやるべきだと思う) ―― こうした画像処理をするんならですぞ、それをやっていることをユーザーの誰にも知られないように徹底的に隠すべきだと。
 そりゃあそうでしょう、あんな魚眼レンズで撮ったような歪んだ画像を見せられると、きちんと補正をしているとはいえ「オレの使っているズームレンズはいったいどうなってるんだ」、と余計な心配をするだけではないか。世の中、よくありますよね、ああ、見なければ良かった知らなければ良かった、と思うことが多々。ユーザーが心配しないような心くばり、配慮がキヤノンには少し欠けているようですね(と、言いながらぼくがバラしているようで、それはそれで心苦しいのだけど)。

「リコーGXR」と「オリンパスE-P2」をS90で撮る

キヤノン・PowerShot S90
 とても良く写るカメラだ。レンズもなかなか良い(レンズについては後ほどゆっくり語りたい)。リコーのGR DIGITAL III、G11でも使っているソニーの撮像センサー、このセンサーがやはり相当に良いんですね。備わっている撮影機能も文句ない。このクラスのカメラとしては充分。
 良く写る、中身の良いカメラなんだけど、2つ、残念だなあ、と感じたことがあった。
 1つはメインスイッチの形状と配置場所。このS90ボディ上部の写真を見てもらえばわかると思うけど、シャッターボタンの横の、ズームレンズ“根もと”に新設されたコントローラーリング、それに機能を割り当てるためのボタン(リングファンクションボタン)がある。で、そのすぐ隣に、同じようなカタチをしたメインスイッチが配置されている。

 ほんのわずかボタンサイズは違うけれど、形状デザインはほとんど同じだから、さあ、撮影しようとメインスイッチを押し込んでONにしたつもりが、リングファンクションボタンのほうをせっせと押しているではないか。道理でカメラが無反応なのか、なんてことがたびたびあった。じつにまぎらわしいし、イラつく。
 メインスイッチボタンこそ、シャッターボタンに近い場所にあるべきだと思うし、そのうえ、それほど頻繁に使用するわけでもないリングファンクションボタンをこのような「一等地」に配置デザインすることの意味も、意図もよくわからん。


 もう1つはボディ前面のカメラをグリップする部分、このS90の写真 Canon のロゴの下ですね、そこが真っ平らでつるんつるんして大変に滑りやすい。指先が実に危なっかしい。そりゃあ確かに、すっきりとしてスマートな感じで「見栄え」はいいかもしれないが、機能的なことにはなんの工夫も配慮もされていない。大変にキツイ物言いになってしまうけど、まるで高校生がカメラをデザインしたような(高校生に悪いけど)、そんな気もしないでもない。プロの仕事とは思えない。

 この際、ついでだからちょっと言わせてもらうけど、最近のキヤノンの、とくにコンパクトカメラのデザインは自己満足的なヘンな小細工をしたり(IXY DIGITAL 930 ISがそうだ)、デザイン的な破綻をしていたり、このS90のように使い勝手のことなどは、アウトオブ眼中、というものがある(すべてがそうだと言うわけではないけど)。
 いまのキヤノンのコンパクトカメラのデザイナーが、いかに写真を撮っていないか、カメラのことを知らないか、それがよくわかって残念至極。

 しかし、良く写るカメラではある。シャープで切れ味の良い描写。ややシャープネスが強く、エッジ部の処理が下品に感じることもなくもないが、撮影シーンによってはG11よりも優れた描写性能 ―― 総合的にはG11のほうが良い、というよりぼくは好き ―― であることも多々あった。上の写真のような条件でも、ブラさずに最適な露出でしっかり撮れば“一眼レフ並”に写すことも不可能ではない、と思う、こんな小さなカメラだけど。
 なお、上に写っている2機種の新型カメラについてはあらためて紹介しますね。牛がげっぷをするくらいたくさん撮りましたから。

いま国立新美術館では「THE ハプスブルグ展」

ニコン・D300S + タムロン・SP AF 17〜50mmF2.8Di II VC
 このタムロンの、手ブレ補正内蔵の大口径標準ズーム17〜50mmF2.8は、キヤノン用とニコン用が発売されている。実販価格はキヤノン用ニコン用ともに、だいたい5万5千円ぐらいで、安いところでは5万円を下回る価格で売られているようだ。ちなみに、タムロンの希望価格は約7万円。
 すでに述べたけど、キヤノンにも同じく手ブレ補正IS内蔵の大口径標準ズームとして「EF-S 17〜55mmF2.8 IS USM」がある。キヤノンの希望価格は約14万円だが、実販価格の平均は10万円を少し越えるぐらい。総合的な描写性能だけについて言えば、タムロンキヤノン甲乙付けがたい、というのが、ぼくが使った印象であった。でも、AF駆動のアクチュエーターは、キヤノンのほうは静かでスピーディーな超音波モーターであるが、タムロンにはまだ超音波モーターを搭載したレンズはない(今後の課題だね)。ニコンにはそのクラスの標準ズームレンズとしては「AF-S DX 17〜55mmF2.8G」があるのだけど、残念ながらVRレンズではない。

 手ブレ補正が良く効くレンズは、シャッタースピードにかかわらずきわめてブレの少ない写真が撮れる。つまりブレが少なければ少ないほど、本来の光学的なレンズ性能の実力を最大限に引き出せるということ。ところで、手ブレ補正は低速のシャッタースピードでしか効果を発揮しない、と思っている人がいるようだけどそれは間違い。高速、中速のシャッタースピードでも同じようにブレ効果を発揮する。


 たとえばの話だが、大変に優秀な手ブレ補正機構を備えているレンズであったとして、しかし、もともとのレンズ性能がイマイチだったとすると、そのイマイチのレンズ性能の“実力”が顕著にあらわれてしまい、文字通り「馬脚を現す」ということにもなりかねない。良い光学性能を備えていることと、優秀な手ブレ補正機構とは切っても切れない。ばかりか、総合的なレンズ描写性能を数倍にも引き上げてくれるものなのだ。

 タムロン17〜50mmに内蔵している手ブレ補正機構VCの補正能力は、とくに低速シャッタースピードでずば抜けた実力を発揮した。同じような焦点距離で手ブレ補正機構を内蔵したレンズ数本と撮り比べてみた結果である。同じ条件で手持ち撮り比べをして、ブレ補正確率 ―― 撮影画像をディスプレイにピクセル等倍に拡大表示、それを目視してブレを認めない確率 ―― をチェックしてみた。もちろん何カットも撮ってデーターを平均化している。
 その結果は、手ブレ補正効果が高いと言われている某レンズでも、1/8秒あたりまではブレ補正確率85%ぐらいだったのに1/8秒以下になると、とたんにブレ補正確率は25%までがっくりと低下してしまう。ところがタムロンのそれは、1/4秒でも80%のブレ補正確率があった。さらに1/3秒でもブレ補正確率45%あり、すなわち10回シャッターを切れば4〜5回はブレのない(正確には「ブレの目立たない」)写真が撮れるという結果であった。これは撮影焦点距離が50mm側にしてテストだ。実質的には75mm相当の画角で1/3秒の超スローシャッターでブレのない写真が得られるということで、これには少し驚かされましたよ。

 ただし ―― 自慢するわけではまったくないが ―― タムロン17〜50mmを使えば誰もが1/3秒でブラさないで撮れるというわけではないですぞ。手ブレ補正の効果というのは、はっきり言えば、人それぞれ、です。