ファインダー倍率0.75倍(後編)

ニコン・D850 +シグマ・35mmF1.4 DG HSM Art

 一眼レフカメラの光学ファインダーの「性能」を判断するスペック的な要素は3つある。D850のファインダースペックは以下の通り(前回ブログの繰り返しになるが)。

 (1) アイレリーフ(アイポイント) ━━ 17mm
 (2) ファインダー倍率 ━━ 0.75倍
 (3) ファインダー視野率 ━━ 約100%

 ではD850の前モデルのD810 ━━ D810のモデルチェンジ機種がD850であるとは思えない、そう感じるほどカメラ全体の充実度に「違い」があるのだが ━━ その旧型D810の光学ファインダーのスペックは。

 (1) アイレリーフ(アイポイント) ━━ 17mm
 (2) ファインダー倍率 ━━ 0.70倍
 (3) ファインダー視野率 ━━ 約100%




 ファインダー数値にかんしてD850とD810との違い、といえばファインダー倍率だけ。ではファインダーを覗き比べたときどんな違いがあるかといえば、こんなふうである。左がD850、右がD810。

 つぎにニコン一眼レフシリーズのフラッグシップ機種であるD5のほうはどうか。

 (1) アイレリーフ(アイポイント) ━━ 18mm
 (2) ファインダー倍率 ━━ 0.72倍
 (3) ファインダー視野率 ━━ 約100%

 これらのスペックの数値を比べるとD850の「ファインダー倍率、0.75倍」が目立つ。ここがD850のファインダー開発でもっともがんばったところではないだろうか。D5の0.72倍のファインダーよりも「大きく」見える。
 しかしここで注目したいのはアイレリーフ。
 最近のニコン一眼レフカメラでアイレリーフが20mmを越える機種がほとんど見あたらない。

 では、ニコン一眼レフカメラの"永遠ライバル"であるキヤノン一眼レフの光学ファインダーと見比べてみたい。まずはEOS-1D X Mk2。

 (1) アイレリーフ(アイポイント) ━━ 20mm
 (2) ファインダー倍率 ━━ 0.76倍
 (3) ファインダー視野率 ━━ 約100%

 つぎにEOS 5D Mk4。

 (1) アイレリーフ(アイポイント) ━━ 21mm
 (2) ファインダー倍率 ━━ 0.71倍
 (3) ファインダー視野率 ━━ 約100%

 キヤノン一眼レフは1D X Mk2も5D Mk4も、20mm以上のロングアイレリーフを確保して、さらに視野率は約100%で、ファインダー倍率も0.7倍以上を確保している。対してニコン一眼レフのアイレリーフは、それらと数値を比べると17~18mmとややプアーな感じがしないでもない。

 少しぐらいのファインダー倍率の違いよりも、(ぼくとしては)アイレリーフが長いほうがファインダーは見やすい、気持ちよく見えるのではないかと思っている。
 ニコン一眼レフがなぜ、20mm以下のアイレリーフで「満足」しているのだろうか? こうした基本的な光学技術はキヤノンもニコンもそう差はないはずだ。キヤノンにできてニコンにできない、なんてちょっと考えにくい。

 ところが、だ。
 アイレリーフ21mm、倍率0.71倍の5D Mk4と、アイレリーフ17mm、倍率0.75倍のD850とを、同じ焦点距離のレンズをセットして(メガネをかけて)覗き比べてみると、D850のほうがファインダー内画面が見やすいし、画面外の情報表示文字の視認性も良い(5D Mk4のファインダー視認性が良くないとは言っていないですよ、念のため)。
 D850と5D Mk4とでは、ファインダー倍率はともかくとしてアイレリーフ4mmの差をまったく感じない、D850のそんな見え具合なのだ。

 これはいったいどうしてだろうか。ソコの理屈がどうもよくわからない。アイレリーフの長さを測る基準はCIPAで決められているから条件は同じのはず。ニコンの光学ファインダーの仕組みになにか秘密が隠されているのだろうか。
 いままでのぼくの経験では、ニコンにはこうした「不思議」なことがよくあって、そのたびにいつも悩ましい思いをする。

(ここで追伸)

 ぼくはアイレリーフはファインダー光学系最終面からアイポイントまでの(保護ガラスは含まない)距離、とすっかりそう思い込んでいました。
 ところが読者の方から先ほど、「CIPAのガイドラインでは保護ガラスを含むファインダー光学系からの距離であって、ニコン一眼レフの丸型接眼部には保護ガラスがあり、だからアイレリーフ数値が短いのだ」、とのご指摘がありました。

 もう一度CIPAガイドラインを読み直してみると、まったくその通りでした。
 ご指摘してもらってニコン光学ファインダーの「不思議」が解決しました。

 つまり、そういうわけでニコンのアイレリーフは接眼部保護ガラスのせいで数値上、ソンをしているわけです。
 ニコンは、他のメーカーのアイレリーフの測りかたと同じように、保護ガラスなしでのアイレリーフの付記しておけばいいのに。いや、ま、そこがニコンらしいところではありますが。


ファインダー倍率0.75倍(前編)

ニコン・D850 +タムロン・SP 70~200mmF2.8 Di VC USD G2

 いきなり役にも立たない話からはじめるが、D850のようなカメラを通常、わたしたちは一眼レフカメラとよんでいるが、それをニコンの正式型式名では「レンズ交換式一眼レフレックスタイプデジタルカメラ」と長ったらしい言い方をしている。
 ちなみにキヤノンでは、「デジタル一眼レフレックスAF・AEカメラ」、リコー/ペンタックスでは、「TTL AE・AF一眼レフデジタルカメラ」と言っている。

 それぞれの正式型式名に共通している「一眼レフ」カメラの最大の魅力こそが、光学ファインダー。
 光学ファインダーにはむろん欠点があれこれあるのは承知の上だが、文字通り眼の延長として撮影シーンを観察できる、撮影構図のフレーミングに集中できる、高速で微妙に変化するシーンをリアルタイムで見続けられる、撮影結果に至るまでの想像力と創造力が広がる、といった利点がある。
 いわゆるミラーレスカメラや電子式ファインダー(EVF)カメラでは到底味わえない視覚的快感がある(個人的見解)。




 一眼レフカメラ光学ファインダーの「視覚的な良さ」を決めるスペック的な要素の中でおもなものとして3つある。
  ━━ この3つはEVFでも同じように大切な要素だが、電子的に調整できる(ごまかせる)部分がなくもない。しかし光学ファインダーでは優れた光学系、部品や組み立て精度をもってして理想値に近づけなくてはならない。その昔ながらの真っ向勝負のカメラ制作姿勢が一眼レフカメラのもうひとつの魅力でもある(超個人的見解) ━━ 。

光学ファインダー3大要素(順不同)。
 (1) アイレリーフ(アイポイント)
 (2) ファインダー倍率
 (3) ファインダー視野率

 「アイレリーフ」とはファインダーを覗いて画面の隅々までけられることなく見える、そのときの眼の位置(アイポイント)からファインダー光学系最終面までの距離をいう。

 アイレリーフが長いほどファインダーから眼を離しても画面全体を見ることができる。アイレリーフが短いと、ファインダー接眼部に眼を近づけて覗いても画面全体が気持ちよく見渡せない。メガネをかけたままだとアイポイント位置が遠くなり見えはさらに悪くなる。
 アイレリーフはそこそこの長さがあるほうがよい。スペック表に17mmとか21mmとか書いてある。

 「倍率」とはアイポイントからファインダー内の画面を見たとき、肉眼で見たシーンと比べてどれくらいのサイズ比率になるかの目安数値。

 倍率が「1」なら等倍、すなわちファインダーを覗いて見える画面と、実際に肉眼で見たものが「同じ大きさ」で見える(50mmレンズセットで無限遠ピントのとき)。倍率が「1」より小さくなるとファインダー画面はそれだけ小さく見える。
 ファインダー倍率は「1」より大きすぎても小さすぎてもよろしくない。理想は肉眼と同じ大きさに見える倍率1が、または限りなく1に近い倍率がよい。スペック表には倍率0.75倍とか0.71倍などと記載されている ━━ フルサイズ判での話で、APS-C判では表記が異なるので注意。

 「視野率」とはファインダーで見える画面範囲がそっくりそのまま写せるかどうかの目安のパーセント数値。視野率100%であればファインダーで見たままが正確に写る。

 100%以上なら見ているファインダー画面よりも狭い範囲しか写らない。100%以下ならファインダー画面よりも広い範囲が写る。視野率100%なら見た範囲がそっくりそのまま写るからいちばんよいのだが、光学ファインダーで100%を達成するには難易度は大変に高くなるしコストもかかる。
 もし見ているファインダー画面よりも広く写るか狭く写るかどちらのほうがいいかと言えば、そりゃ文句なしに広く写るほうがいい。つまり100%以上よりも100%以下のほうが(消去法で言えば)よい。スペック表には視野率約100%とか97%とか記載されている。

 さて、ここでようやくD850の光学ファインダーの話になるのだけど、しかし、前置きの話が長すぎて読んでもらっている皆さんも退屈になっただろうから、この続きは次回にしたい。D850のというよりも、ニコンの光学ファインダーで、なんとも合点のいかない不思議なことがあって、それについて次回で述べたいのだ(ただし、ソレを読んでも写真がウマくなるわけじゃないですけど)。

 というわけで、とりあえずD850の光学ファインダースのペックは以下の通り。

 (1) アイレリーフ(アイポイント)は、「17mm」
 (2) ファインダー倍率は、「0.75倍」
 (3) ファインダー視野率は、「約100%」


手軽なフィルムスキャナとしても使える画期的カメラ

ニコン・D850 +AF-S Micro NIKKOR 60mmF2.8G ED

 D850は4545万画素の高画素で記録できて、最高ISO感度は最高ISO102400相当で撮影可能だし、この高画素で7コマ秒から最高9コマ秒の高速連写ができる、電子シャッターによるサイレント撮影モードも備え、フォーカスシフト機能があり、AF性能も良くなりAF測距ポイントも大幅増だし、カメラ内でRAW現像の一括処理ができるし、フルフレーム4K動画やその動画から静止画の切り出しも可能で、ファインダー倍率は0.75倍になったし・・・。

 などなど、と新しい機能や機構がいっぱいあって詳しく説明していけばキリがないからこのへんでやめる。
 ま、そんなカメラですよ、D850って。

 そのD850の撮影機能の中で、「おおっ、ようやく対応してくれたかっ」と"感動"したのが「ネガフィルムデジタイズ」のモードだ。
 ネガフィルムデジタイズ機能とはモノクロネガやカラーネガのフィルムをD850で撮影複写するとポジのデジタル画像に自動的に「反転変換」してくれるもの。モノクロネガはPCソフトのネガ反転機能などを使えばそこそこのポジ変換はできるがカラーネガとなるとちょっと厄介で専用スキャナを使わざるを得ない。

 それが、D850を使ってネガフィルムデジタイズのモードに切り替えてフィルムを「複写デュープ撮影」するだけで容易に約4500万画素相当のデジタル画像が得られるというわけだ。




 いま多くの人が活用しているデジタルカメラは、そもそもはフィルムカメラのシステムや機構をそっくり借用してできあがっているモノだ。フィルムカメラがあってこそのいまのデジタルカメラだ。
 そのデジタルカメラはいまじゃ大きな顔をして偉そうにしいるが、しかしフィルムカメラの「恩」を決して忘れちゃいけない。

 その「恩」に報いることのひとつがフィルムカメラで撮影したアナログ画像を手軽にデジタル画像化することだ(と、ぼくは強く思い続けてきた)。
 ところがデジタルカメラがどんどん進化し機能も増やしているのにフィルム画像のデジタル化にはいっこうに見向きもしなかった。

 カラーネガフィルムを反転ポジ画像にするにはフィルムのオレンジベースの色を判別して最適な色変換処理をする必要がある。それには少なからずのノウハウが必要である。
 ニコンはフィルムスキャナなどを手がけたメーカーだから、そのへんは比較的容易にできたのだろう。D850がようやくそれに本格的に対応した。いささか遅きに失した感もなくもないが、でもニコン以外のデジタルカメラメーカーはその気配さえ見せない。その点、ニコンは偉いぞ。

 マクロレンズと、乳白色のディフィーザーを備えてフィルムとレンズを固定する装置を使えば、あとはネガフィルムデジタイズモードを選ぶだけでシャッタースピードにかかわらず手持ちで鼻歌で撮影ができる ━━ D850の発売にあわせてニコンはフィルムデジタイズアダプター・ES-2(35mm判フィルム専用)を開発したが、別にそんな"大袈裟な装置"を使わずとも既存のアクセサリー類を組み合わせれば充分に可能。

 ただ、D850のネガフィルムデジタイズ撮影機能にはいろいろと不可解な機能制限があったり、使用説明書の解説がそっけない、というか不親切でわかりづらい。せっかくイイことしたのに手を抜くなよ、ニコン。

 露出モードは絞り優先オート固定になり、ISO感度もISO100固定となるのは、ま、いいとしても、不可解な機能制限はざっと試してみただけで以下の通り。

 (1) 電子シャッターが使えず(使用説明書にひと言の記載もない)
 (2) ストロボ同調撮影できず(ストロボをセットすると機能がキャンセルになる)
 (3) AUTOブラケットができず(こうしたデュープ撮影には適正露出が必須)
 (4) JPEGのみでRAW記録ができず(撮影後の微妙な画質調整ができないぞ)
 (5) 撮影時に色調整などができず(褪色補正の機能なんかもほしかった)

 などなど。きっと、ほかにもまだあるに違いない。


 ニコンのスライドコピーアダプター ES-1(旧型、これお買い得です)とマクロレンズを使って手持ちデュープ撮影。
 ネガフィルムデジタイズ機能を使って古いカラーネガを複写反転デジタル化。ネガフィルムが褪色しているせいか期待したような色調に仕上がらない。

 ネガフィルムデジタイズはD850で初めて搭載された"おまけ"の機能だから、まぁ仕方がないか、と思わないでもないが、将来はせめて既存の「フィルムスキャナ+α」ぐらいの気の効いたことができるようにして欲しいぞ。

 でも、よくやったぞ、ニコン。
 他のカメラメーカーもぜひ、これを見習ってやってください。とくに富士フイルムとキヤノン、ね。


出し惜しみのない全力投球型カメラ

ニコン・D850 +AF-S NIKKOR105mmF1.4E ED

 D850の発売は昨年の9月のことだ。その発売前から大人気で、約5ヶ月にもなるのにその人気は衰えることなくいまだに「品不足」が続いているという。40万円近くもするカメラなのにこりゃあ凄いことだなあと感服している。
 昨年、一昨年とニコンにはあまり「イイことなし」で、やや暗くて重い雲が漂っていたのだがD850のたった1機種でいっきに空を覆っていた雲を蹴散らし快晴、皆さん、元気もりもりという感じになった。よかった、よかった。




 D850人気沸騰の昨年秋のことだったが、ニコンの、とある関係者に「D850、大人気でヨカッタですね・・・」と言ったところ、「あのねえ、打者がジャストミートして打った球が左中間深くてんてんと転がってるのに、かんじんのバッターが一塁ベース手前でばたっと転倒、てなことが往々にしてニコンにはあるんです、そうならなければいいんですけど、ね」と苦笑いしていた。

 その話を聞いてぼくは大笑いしたけど、ところが実際は、左中間のヒットどころか文句なしのホームランだった。
 こう言っちゃナンだけどニコンにとってはひさびさのホームラン。打った本人は、確実にヒットにはなるだろうけどまさかホームランになる、とは思ってなかったのではないか。発売後の長期間の品不足状態を見ていると、なんとなくソレがわかる。

 D850はスペック的にはコレといった特徴のある一眼レフカメラではない。しかし備わっている一つ一つの機能(や機構)が大変に優れている。こつこつとひたむきな態度で性能をアップさせている。
 優れた機能がバランス良く詰め込まれているのもD850の良いところ。その結果、高い総合力を発揮している。カメラ全体の完成度は、既存の一眼レフカメラに比べてアタマ1つ、いや2つほと飛び出ている印象も受けた。

 「わぁっ」と驚くような機能や機構が備わっているわけでもない。
 ニコンフェローの後藤哲朗さん言うところの「飛び道具」を持たない真っ向勝負のカメラである。なんとなく地味な感じがするカメラで、「冗談も言わず笑顔も見せずのマジメ秀才型一眼レフカメラ」というのがD850を使ってみてのぼくの感想。

 新しい機能を次の機種に置いておくといった「出し惜しみ」がない。全力投球で、それも好感が持てた。
 いま可能なことはどしどし搭載してしまえ、といった思い切りの良さがある反面、ちょっぴりもの足りない"未熟な"部分もなくもないが・・・。しかし(繰り返すが)総合的に見れば完成度はとても高い。ほんと、良いデキのカメラだと思う。

PENTAXの新型★50mmF1.4レンズ ━━ その4(終)

リコー・HD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AW + PENTAX K-1 Limited Silve

 逆光に強いレンズだ。ゴーストを出してみようとイジの悪いシーンをいくつも撮ってみたが「期待するほど」のゴーストが出てこない。まったく出ないというわけではないが、出てもほんの小さく薄いもの。
 この★50mmF1.4に限らず最近のPENTAXのレンズはズームであっても、ほんとゴーストが出にくくなった。ゴーストやフレアを防止するためにレンズフードの必要もないのではないかとさえ思うほどだ。

 ぼけ味はナチュラルで上品。図々しくなく、柔らかなぼけでぼくは好き。
 ピントが合ってシャープなところから大きくぼける部分まで、なだらかに自然にぼけていく。いわゆる、つながりの良いぼけである。このような良好な(個人的な好み)ぼけと、高解像力を両立するのは球面収差の残し具合が難しく、ペンタックスよくがんばりました、と思う。

 ところで、ぼけ味というのは ━━ オリンパスのF1.2レンズの紹介のときにも述べたことだけど ━━ 好き嫌いで評価が大きく分かれるところがある。くっきり、はっきりして自己主張の強いぼけ味のほうが好き、という人もいる。それはそれでアリです。
 レンズ描写がどうのこうのと理屈を言ったところで、煎じ詰めれば「好き嫌い=良し悪し」になってしまうところもなくもない・・・。




 それはソレとして、いま多くのメーカーはナチュラルで上品なぼけ、つながりの良い自然なぼけが得られるようにレンズ設計をする傾向が強くなってきている。
 いままで作られてきた数多くの「名レンズ」の描写性能(解像力やコントラストやぼけ味などなど)をデーター化し、定量化して、それを新しいレンズ設計に生かすという手法を採用しているメーカーもいくつか出てきている。
 たとえばニコンは「OPTIA」、オリンパスは「収差測定器」などの最新鋭検査器を使って、いままで曖昧で掴み所のなかった"レンズの味"を定量化してそれを設計や生産に結びつけるようにしている(キヤノンは公開していないが同じようなモノを使っていると思う)。

 ところがPENTAXはというと、こう言っちゃナンだけれど、昔ながらのオーソドックスなレンズ設計と生産を続けていて(続けざるを得ない諸般の事情もあるのだが)、ナンだかとっても人間的な、情緒的な"味"のあるレンズを作っているような気もする。
 誤解を恐れずにたとえるなら、ニコンやオリンパス、キヤノンのレンズが『 最新型の優れた検査機器を活用した安定量産型の高性能レンズ 』だとすれば、PENTAXのレンズは『 頑固な職人気質の少人数技術者たちが家内生産的に作っている優れたレンズ 』のような気がしないでもない。

 そんな、やや気まぐれだけど人肌のぬくもりが感じられる(これ個人的感想)レンズやカメラを作っているのがPENTAXのもひとつの魅力 ━━ 蓼食う虫も好き好きだ、と言われそうだが。
 とはいうもののPENTAXは、もちろん従来のレベルのレンズを作り続けてればイイなんて考えておらず、時代(カメラの性能向上化)に合わせて安定して高性能なレンズ生産に向かおうとしているようだ。

 その証拠に、リコーは「新世代のスター(★)レンズをめざして」あらためて★レンズの規格基準値を見直して、基準値を従来からぐんと厳しくしたそうだ。
 新しい★規格のレベルに沿ってレンズの設計や製造をおこない、その第一弾が★50mmF1.4レンズだというわけだ(それ以前に、じつは★70~200mmF2.8レンズでも少しづつ始めていたようだが)。

 新★レンズの基準値がより厳格になったからといって、PENTAXレンズの「味」が失われることはないと思う ━━ PENTAXレンズは、見かけ上の解像感を狙ってコントラストやシャープネスを強くするレンズ設計をするのではなく、素材重視と言えばいいか、階調再現性や抑えめなコントラストに重点を置いて愚直なレンズ設計スタイルを守り続けているようだ ━━ だから新★レンズ規格が採用され高性能化しても、以前からのPENTAXのレンズらしい描写の味がなくなることはないだろうと、ベーター版レンズではあるが新型★50mmF1.4を使ってそんな感じを受けた。




 ★レンズの規格値の見直しは、つい先日、開発発表された「HD PENTAX DA★11~18mmF2.8(仮称)」ズームレンズにも適用されているそうです。
 こちらのズーム、DAレンズにしては(ぼくの印象だけど)大きい。PENTAXは小型軽量とは"縁を切り"、描写性能のためには大きくても重くてもいいじゃないか、と方向転換したかのようです(ぼくの勝手な思い込みかもしれないけど)。


PENTAXの新型★50mmF1.4レンズ ━━ その3

リコー・HD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AW + PENTAX K-1

 いきなりだけど、余計な話から。
 デジタルカメラが成熟期に入って(いまがそうだろう)、カメラやレンズの性能はフィルムカメラ時代とは比較にならないほど「進化」した ━━ 断っておくが進化したのは解像描写力などの数値で判別できる要素であって、アナログ的な描写性能については「進化した」とは言い切れないように思う ━━ 。

 そんなデジタルカメラと交換レンズを使って解像力や収差などをチェックするときは確実なピント合わせが必須。ぶらさないで撮ることも絶対条件。

 ところが正確で確実なピント合わせが求められるとき、全幅の信頼をおいてAFでの撮影はできない。AF性能は、だいぶ性能向上したと言えども、まだフィルム時代の基準を引きずっているところもあり、ごくごくわずかな偽合焦(ピンぼけ)してしまうこともある。
 とくに高解像力を誇るデジタルカメラと交換レンズとの組み合わせではわずかなピンぼけ(または微ぶれ)をしてしまってはその実力を評価することは決してできない。これは位相差AFの一眼レフカメラだけでなく像面AFのミラーレスカメラでも同じこと。

 というわけで、PENTAX★50mmF1.4レンズとK-1を使っての解像力などのチェック撮影では、めんどうだけど「ライブビュー+MF+拡大表示+ピーキング表示(+三脚使用)」でおこなった。




 室内でコントラストチャート(の、ようなもの)を撮ったり、実際に可能な限り条件を変えてフィールドであれこれ撮影してみた。そうして得た個人的な印象が以下の通り。
 評価にやや偏りがあるかもしれないことは納得しておいて欲しい・・・というほど大袈裟なもんじゃないですけど。

 解像描写力は大変に優れている。
 ハイコントラストに頼った"ウソっぽい"見かけ上の高解像力ではなく、少し柔らかめな描写だがしっかりとした「芯」のある"ホンモノの"高解像力である。
 近接撮影でも描写性能が損なわれることなく中距離、遠距離と同様に秀逸。近距離で目立ちやすい収差をよく抑え込んでいる。遠距離から近距離まで平均して優れた描写性能を保っているというのはこの★50mmF1.4の注目すべきポイントといえるだろう。

 F1.4開放絞り値でも、球面収差が少ないことはもちろん、コマ収差も通常シーンではほとんど目立たない(遠景の点光源などを見れば画面周辺部でわずかに目立つが少し絞り込めば気にならなくなる)。
 周辺部の解像力もコントラストも、開放F1.4絞り値でも画面中央部の写りと比べてもほとんど遜色はない。画面全域で高い解像描写力がある。

 強いて"欠点らしきもの"を述べるとすれば、撮影シーンによっては開放絞り値付近で軸上色収差(フリンジ)が目立つことがあることぐらいか。高い解像描写力を誇る大口径レンズではそうした軸上色収差は宿命みたいなもの。
 なお、PENTAXの一部カメラではカメラ内RAW現像のメニューに「フリンジ補正」という優れた機能があるのでそれを利用すれば、輪郭状に発生するピンクやグリーンの軸上色収差はきれいに消すことができる。ぜひ憶えておかれるといいだろう。

 平坦な被写体を撮っても中心部から周辺部まで均一でシャープなピントが得られる。このことからも像面湾曲収差も大変に少ないことがわかる。
 歪曲収差の少なさにも驚いた。こちらはK-1内蔵のディストーション補正機能など必要ないほどである。

 少しの期間、試し撮りしてみただけで「これは素晴らしいデキのレンズではないか」と大いに感心させられた。開放絞り値からなんの気兼ねもせずにどしどし撮影ができそうな、わくわくするようなレンズだった。
 ベータ版のレンズで、ここまで高い描写力があった。これから本格的に調整が進めば製品版レンズではもっと優れた写りになるだろうと期待が持てる。

 


 レンズ後端部を見てみるとレンズ本体にマウント金属を固定しているネジ止めが、なんと7カ所もある。通常、PENTAXレンズのマウント固定は5本ネジ。それが2カ所も多い。
 「ほんのわずかなガタツキが出てもピントに影響します。それだけピントには大変にシビアなレンズです。それと、手荒く扱っても少しのガタもこないように、このレンズのマウント固定には徹底しました」と、レンズの開発メンバー。
 この話を聞いて、ふーんっ、といたく感心してしまった。