1月11日(土)
二宮金次郎ふうの桂太郎
リコー・PENTAX K-1 Mk2 + smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
以下、PENTAXのカメラやレンズに詳しい人 ━━ いやほんと、めちゃくちゃ詳しい人が多くいるもんですね、古い社員も知らないことも ━━ そんなPENTAX通には「常識だ!」と言われるのを覚悟して、フルサイズ判対応の「FA Limitedレンズ」について。
異色のレンズです。他のメーカーでは類を見ないレンズです。
現在も新品として手に入る"生き延びたヴィンテージレンズ"と言えなくもない。眺めて美しい走って愉しい1960年代の欧州車のような感じもします。現在のクルマに比べれば、運転しづらい、速くない、乗り心地も良くはない、環境に優しくない。でもドライブすることを愉しくさせてくれます。
特段、懐古趣味に偏っているわけではないですが、Limitedレンズは、どこかそんなクルマと似たところがあります。いまのレンズのように描写性能に優れているというわけではないですが撮影していて愉しい。
FA Limitedレンズには現在、3本がシリーズ化されています。
「smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited」、「smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited」、「smc PENTAX-FA 31mmF1.8 AL Limited」です。
コンセプトもスペックも外観の仕上げもデザインも、そして写りも、とても個性的なレンズで他のメーカーでは類を見ません。PENTAXではもっともロングセラーを誇っているレンズシリーズでもあります。
それぞれのレンズの発売年は、
43mmF1.9は、1997年10月の発売(約22年前)
77mmF1.8は、1999年11月の発売(約20年前)
31mmF1.8は、2001年 5月の発売(約19年前)
ぼくの愛用のFA Limited3本。ごく初期モデルのMADE IN JAPANです。
写真は右上から左下に「43mmF1.9」「77mmF1.8」「31mmF1.8」です。2000年から2001年ごろにかけて順次ブラックタイプが追加され、シルバー/ブラック2モデル併売がいまも続いています。
1997年から2001年ごろといえばフィルムコンパクトカメラが衰退し始めた頃です。しかしフィルム一眼レフはまだ元気だった時代で、デジタル一眼レフはまだまだ一般的ではなかった。
3本のFA Limitedレンズはどれもデジタルカメラに使用されることをほとんど想定もせず、企画され設計、製造されたレンズだったということです。
ちなみに、MZ-3の発売が1997年9月。そして実質的にはPENTAX最後のフィルム一眼レフカメラとなるMZ-Sは、2001年5月の発売でした。(追記):「PENTAX *ist 」ってのが2003年に発売され、それが最後のPENTAXフィルム一眼だぞ、と教えてもらいました。ぼくはまったく記憶の彼方ですが、それ"どこか"に作ってもらったOEMかも・・・初のデジタル一眼「*ist D」が同じ年の発売ですね。
ニコンD1が1999年9月発売でしたから、PENTAXもそろそろデジタル化を睨みつつあったころで、2001年のPMAショーだったかなあ、PENTAX初のフルサイズ判デジタル一眼レフ「Kー1」が参考出品されましたが、なにやかや紆余曲折があって(少しそのへんに関わっていたのですが言えないことたくさんあります)結局、製品化されず終わりました。
このことは、もうしゃべってもいいと思いますが、試作「Kー1」はもちろん撮影はできましたし(ぼくも使ってみました)、がんばってファームを手直しすればすぐにでも発売は不可能ではないかな、そんな状態でした。
そりゃそうです。カメラ内部はもちろん、外装金型まで作っていましたから発売中止となって、あの時代で数億円の製作コストが無駄になったというわけです。
でも、正直なことを言えば、発売しなくて良かったですね。
発売予定価格も高すぎたし、その当時から数年後のデジタルカメラのトレンドを眺めてみれば"時代遅れ"も甚だしいところもありました。PHILIPSのセンサーもぜんぜん良くなかった。
ただ、もし「あの人」がK-1の開発責任者だったら、K-1はあんな悲しいカメラにはならなかったのに、と、いま思い返しても残念です。
いや、つまりですね、FA Limitedが発売された頃は、そんなフィルムカメラからデジタルカメラに大転換する混沌とした時代であり、PENTAX(旭光学工業)もてんやわんやの時代だったのですが、PENTAX FA Limitedのレンズ開発のほうは「おれたち、そんなこと関係ないや」ってなスタンスだったようでした ━━ レンズ設計はカメラ設計とはぜんぜん別の組織、半独立の光学開発センターでやってました。
FA Limitedが企画され設計開発をスタートさせたのは発売が始まる数年以上前になりますから、まだ "PENTAX平和な時代" でフィルム一眼の将来に希望もあった頃です。
FA Limitedはそんな時代背景の中で生まれ、発売されたレンズだったということなんです。
というわけで、いつもの定番、横道逸れ放題になってしまいました。次はもう少しFA Limitedに集中して話を続けます(の予定)。
2020.01.11 | | Comments(1) | Trackback(0) | -
