1月19日(日)


これが smc PENTAX-FA43mmF1.9 Limited の描写の一例





リコー・PENTAX K-1 Mk2 + smc PENTAX-FA43mmF1.9 Limited


 3本のFA Limitedレンズのうち、まず「smc PENTAX-FA43mmF1.9 Limited」から設計と開発が始まりました。当初は、そのスペックをどうするか侃々諤々があったようです(PENTAXのいつものことですけど)。プラスチック鏡筒にする、なんて案も出たそうです。
 結局、贅沢な(当時としては)アルミ削り出し加工のレンズ鏡筒と、高品位でクラシカルなデザインにした43mmが発売されました。PENTAXは、売れてくれるかどうかそれがイチバン心配だった。

 しかしPENTAXの弱気な予想と違って、たくさん売れました。そこで気をよくして俄然、やる気満々になりました(これまたPENTAXのいつものことですが)。次の77mmでは43mmの外観デザインをさらにいっそう豪華にしたり、"遊び心"も加えました(後述します)。

 絞り数値や距離目盛り、被写界深度目盛りなどはひとつひとつ彫り込み加工され、そこに丁寧に色差しされています(この加工じたいはそれほど珍しくもないですがキレイでした)。そのせいで、とくに77mmと31mmレンズでは高級な雰囲気を醸し出しています。




 レンズキャップは3本ともアルミ金属製のかぶせ式。ごく初期の43mmだけはアルミ無垢材から削り出し加工をして仕上げたらしいのですが(コストがかかりすぎるせいか)途中から77mm/31mmのレンズキャップと同じくアルミ板材をプレスで"型押し"して仕上げて、加工するようにしたそうです。
 レンズフードもアルミ金属製。43mmはねじ込み着脱式で、77mmは内蔵引き出し式、31mmは内蔵固定式と、それぞれ異なります。その内側はコストはかかるけれど反射防止効果に優れた静電植毛で仕上げられています。



 3本のFA Limitedの製造は、31mmが発売されてから数年後に工場が埼玉県・小川町からヴェトナム・ハノイ市に移り、それに伴って「MADE IN JAPAN」から「MADE IN VIETNAM」になりました(一部のレンズは「ASSEMBLED IN VIETNAM」になっているものがあるかもしれません)。

 ぼくがいま使っている3本のシルバータイプのFA Limitedレンズはすべて「MADE IN JAPAN」です。とくに43mmはごくごく初期タイプで、レンズキャップの表面のPENTAXロゴは黒文字のプリント仕上げでちょっと安っぽい。キャップ裏側は黒いラシャ布が貼り付けてあります。
 ちなみに、77mmが発売されたときに、43mmのレンズキャップは77mmと同じようにキャップ表面のPENTAXロゴはプレス刻印(凹文字)になり、裏側はグリーンのラシャ布に変更されました。たったそれだけのことでレンズキャップはとても豪華な感じになりました。

 ちょうどその頃からですね、シルバータイプに加えてブラックタイプの発売も始まりました(PENTAXの自信満々、イケイケどんどんが眼に見えるようです)。




 現在のFA Limitedのシルバータイプとブラックタイプの販売比率は、3本とも「シルバー1:ブラック2」だそうです。なお、DA Limitedレンズのほうは「シルバー1:ブラック3」とブラックタイプのほうが人気があるようです。


 ここで少し話が戻ります。レンズキャップのラシャ布の裏張りのことです。
 これ、ナンの効果も、はたらきもありません。レンズ第一面とは完全非接触ですから無駄といえばめちゃくちゃ無駄なものです。しかし、この"無駄"こそがFA Limited(一部のDA Limitedもそうですが)の真骨頂じゃないでしょうか。

 この"無駄な裏張り"を見るたびに、ぼくは「いいなぁ、いいなぁ」と独り言をいってしまいます。とくにグリーンの裏張りがいい。江戸時代の洒落男が、見えない着物の裏地に贅沢な生地を使っていたという話に似たところもなくもない。




 上の写真は43mm(左)と77mm(右)のレンズキャップの裏表を比べたものです。
 左の43mmはごく初期タイプなのでアルミ無垢材からの削り出しですが、右の77mmはプレス加工です。初期タイプ43mmのPENTAXロゴ文字はプリントでしたが、いまは77mmと同じく凹文字型押し印字です。キャップ裏張りのラシャ布も31mmも含めすべて緑で統一されています。


 もうひとつ、FA Limitedには"無駄"なものがあります。
 77mm/31mmの鏡筒にあるフィンガーポイントです。レンズ鏡筒にある小さな半球状の「緑色のボタン」です。指標と言えばいいのかな。
 発売された時期は"無駄"ではなく、いちおう"役割"がありました。
 レンズをカメラボディに取り付けるとき、レンズ着脱ボタンの位置を示す指標となることが目的でした。暗い場所でも指先の感触だけでレンズ取り付けが容易にできる利点がありました。

 ところがフィルムカメラからデジタルカメラになると、カメラ側の着脱ボタン「位置」が変更になり、いまでは着脱ボタンとフィンガーポイントがズレまくっています。
 「どうしてフィンガーポイントの位置を修正しないの?」と聞いたところ、「いつまた着脱ボタンの位置が変更になるカメラが出てくるかわかりませんから現状維持です」という返事。それを聞いて、そりゃあPENTAXなら十分にあり得るなあ、といたく納得しました。




 上の写真、左がフィルムカメラ・Z1ですが、レンズ脱着ボタンに対してフィンガーポイントが正しい位置にあります。右のデジタルカメラ・K-1だと、こようにレンズ脱着ボタンの位置とズレまくっています。


 そのフィンガーポイントは、あまり知られてないことですが、銀の無垢材の上に七宝焼きを被せています。銀のカタマリの上に七宝焼きですよ、しゃれた遊び心というか。ただし残念なことに43mmレンズにはフィンガーポイントは付いていません。77mmと31mmだけです。
 すでに述べたように43mmの企画の時は、売れてくれるかどうかハラハラどきどきの発売だったので、そんな贅沢なアイディアは、即却下!、でした。

 ところが43mmが予想外の人気で売れてくれたので、次の77mmでは「それ、イケいけっ」と銀に七宝焼きのフィンガーポイントを付けました。その77mmもまたユーザーから褒めてもらえたので、31mmにも、となったわけです。




 無垢の銀を使ったのは、シルバーの地の上に七宝焼きを施したほうが「緑」がいっそう鮮やかさと色の深みが出てくるからというのが理由でした。ただの指標に ━━ いまとなっては役に立ってませんが ━━ そんな贅沢をしていたのです。

 その緑色のフィンガーポイントですが、31mmレンズが発売になってから数年後に、とつぜん緑色が淡く浅い色になってしまい、それが現在も続いています。
 理由は有害物質の使用制限「RoHS(ローズ)指令」です。

 じつは初期の緑色フィンガーポイントの七宝焼きの釉薬には「鉛」が入っていたのです。
 深みと鮮やかさのある美しい緑色は鉛のおかげだったのですが、それが環境問題により使えなくなった。そのせいで淡く浅い(やや安っぽい)緑色になってしまったというわけです。

 同じことはクルマの塗装にもありました。RoHS指令の前のクルマはじつに良い色をしてました。ルノー・ゴルディーニのブルーや、いすゞ・ジェミニの黄色なんて得も言われぬ美しい色でした。鉛入り塗料のおかげだったのですが、いまは無害のアクリル系塗料になり色に深みがなくなりました。 
 というわけで、初期タイプのFA Limited 77mm/31mmを所有している人は、フィンガーポイントには注意してレンズを取り扱ってくださいね。




2020.01.19 | | Comments(1) | Trackback(0) | -

コメント

一連のLimitedシリーズのお話し、とても楽しかったです。
毎年、CP+のRICOHブースの田中先生のお話を楽しみにしていたのですが、今年は先生のステージプログラムがRICOHブースでは予定されていないんですね。何だかとても残念です...。

2020-02-06 木 01:39:39 | URL | Riki #- [ 編集]

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