もう1本の“当たり”レンズ

ペンタックス・K20D+DA 18?55mmF3.5?5.6 II
 ペンタックスのDA標準ズームレンズ2本をたまたま比較する機会があって、旧型に比べて新型が“相当に”良くなっているのに少しびっくりした。
 比較したのはDA 18?55mmF3.5?5.6の新旧レンズで、新型レンズのほうはK200Dの発売にあわせて旧型をモデルチェンジして発売されたもので「II」がレンズ名の後にくっつく。外観を見ただけではその違いはほとんどわからない。開放F値はまったく同じ。大きさも同じ。重さがごくわずかに異なる。その理由はレンズ構成枚数が違っているからだ。旧型が9群12枚構成だったのに対して、新型は構成レンズが一枚少なくなって8群11枚構成となったからである。
 ところで、レンズ構成枚数が多いほど良いレンズだと思い込んでいる人がいるようだけどそれはちょいと違いますね。理想的には、レンズ構成枚数は少ないほど良い。レンズ構成枚数が増えればそのぶんレンズ表面の反射によるフレアーやゴースト、そして光量の低下の原因ともなるからだ。むろん価格にも大きく影響してくる。さまざまな収差を抑え込むためにやむを得ず1枚、2枚、3枚…と構成レンズ枚数を増やしているわけだ。少ないレンズ構成で収差が補正できればそれに越したことはない。そういう意味で言えば、この新型18?55mmは理想的レンズに一歩でも近づいた(と言えなくもない)。


 旧型の18?55mmレンズがもともとナンだったのかもしれないが、新型「II」の描写は旧型と違って、開放絞り値から画面周辺部までじつにしゃきっと写る。広角18mmから望遠55mmまで均一で安定している。解像描写性能が旧型に比べて大幅アップしているし、ヌケも良くなっていて画像のコントラストもだいぶ違う印象だ ―― ただし正確にピントを合わせること、わずかもブラさないことは絶対条件だ。
 こうしたハナシは旧型18?55mmズームレンズのユーザーにはムカつく話だろうけれど事実なんだからこればかりはしょうがない。いやそうではなくて、もし新旧レンズが並んでいて旧型が「安い」からという理由だけでそちらを選んでしまうと結局ソンですよということが言いたかっただけ。
 そもそも標準ズームレンズというものは性能よりも価格が重視される傾向がある(ちょっと誤解を招きかねない言い方だけど…)。ボディとレンズとをセットにしてどれだけ低価格に設定できるかがポイントで、そのためどうしてもレンズ側に“しわ寄せ”がくるようだ。より安価で小型で軽量であることが大事な条件で、そこそこの写りでズーム比もそれなりであればそれでよし、といったところがなくもない。低価格の機種とセットになった標準ズームレンズだとなおさらそうした傾向がある。でも、この新型「II」ズームレンズは標準ズームレンズながら相当に“良い写り”をしているのを、しばらく使ってみてあらためて「発見」したというわけです。