低分散ガラスレンズ14枚ぶんの効果、てか

ニコン・D300S+シグマ・8?16mmF4.5?5.6 DC HSM
 この超広角ズームはあらためて言うけどじつはスゴいレンズなのだ。画期的なズームレンズと言ってもいいくらいだ。もちろん世界初の超広角をカバーするズーム。約12mm相当もの超広角が写せて(ニコンやペンタックス、ソニーのAPS-C判カメラ場合で、キヤノンのAPS-C判カメラでは約12.8mm相当になるが)、描写性能もすこぶる良い。最短撮影距離が24cm。レンズ全長が約10.6cmだからワーキングディスタンスは10cmちょっと。超広角のウルトラパーンフォーカスでぐんぐん、ぐんっ、と近づける。広角レンズが大好きなぼくなんぞは、もう、たまらんですねえ。

 いろんなご意見もありましょうが、このズームレンズに手ブレ補正の機構が内蔵されていればどれほど良かったのになあ、と思わないでもない。ニコン用、キヤノン用の発売から少し遅れてペンタックス用とソニー用が発売される予定になっていて、そちらはボディ内手ブレ補正だから約12?24mm相当の超広角ズームで手ブレ補正機能を生かして撮影ができる。ニコン用とキヤノン用のユーザーはちょっと悔しい思いをする(だろう)。ペンタックスとソニーの広角好きのユーザーは迷わずに買うべきレンズだろうね。後悔しない、と思う。
 超広角レンズに手ブレ補正なんぞ必要ない、なんておっしゃるムキもありましょうが、いえいえ、そうじゃあありませんぞ。断固必要です。
 広角レンズを使って撮影するときの注意点は(いろいろあるんだけど)、意外と皆さん気にとめないようだけど、広角画像のごくわずかなブレは写真の見栄えを極端に悪くするモノなのです。広角レンズを使ったときは、正確なピント合わせ(絞って被写界深度に頼っちゃだめ)、そして、ブラさないように注意しながらかりかりシャープに写すように心がけることです。


 11群15枚のレンズ構成。その15枚のうち、非球面レンズが3枚(大型のガラスモールド型非球面が2枚)、SLD(超低分散ガラス)レンズが1枚、そして新種のレンズ硝材である「FLDガラス」レンズを4枚も使用している。FLDとは「“F”Low Dispersion」の略で、その特長は ―― 以下、シグマのプレスレリーズの受け売り ―― 屈折率と分散性が極めて小さく、さらに異常分散特性が高く透過性にも優れる。これはちょうど蛍石レンズに極めて近い特性を持つ超低分散ガラスレンズである、らしい。
 蛍石レンズは1枚で通常の低分散ガラスレンズ3枚ぶんの効果を発揮すると言われているから、FLDレンズが4枚だと、な、なんと、低分散ガラスレンズ12枚ぶんっ、と言うことになるが、さあて、ここはちょっと疑問。ウソではないだろうけど、ちょうど「レモン50個分のビタミンCが入っております」というのと似てなくもない…。

 でも、そのおかげかどうか、描写性能はすこぶるよろしいのだ。同じシグマからだいぶ前に発売した(いまでも売ってるけど)フルサイズ用の「12?24mmF4.5?5.6 EX DG」って超広角ズームレンズとは、その写りはハッキリ言ってぜんぜん違う。格段にいい。
 ところで「“F”Low Dispersion」の“F”は、たぶん、Fluorite(蛍石)のことを表してるのだろうが、“F”などと思わせぶりな書き方をせずに「Fluorite」とはっきりと書けなかったのには、なにか裏の事情があったのかもしれませんねえ。