XF14mmF2.8と撮り比べてみた

富士フイルム・X-Pro1+カール・ツアイス・Touit 2.8/12

 「Touit 2.8/12」は「T*(ティースター)」のレンズコーティングが採用されている。Carl Zeissブランドのレンズには、これはなくてはならないものの1つ。
 このT*コーティングについては、ずっと昔、ヤシカがCONTAXブランドのカメラやツアイスレンズを「作って」いたときに、そのヤシカの人から興味のある話を聞いたことがある ―― 真意のほどはどうか、だけど。

 ツアイスはT*コーティングをひじょうに大切にしていて、それだけはレンズ組み立て側にけっして任せなかった。T*コーティングの材料は技術者と一緒にドイツ本国から「手で持って」日本にやってきて、そのツアイスの技術者の手でみずからレンズコーティングしていた、という。「謎のT*でしたよ」とヤシカのその人は笑ってこの話をしてくれた。いまは、もうそんなことはないだろうけど…。

 「Touit 2.8/12」はフジのXマウント用とソニーのEマウント用の2種類が用意されているが、今回ぼくが使ったのはXマウント用でカメラはX-Pro1だった。フジ用とソニー用の違いは、フジ用には絞りリングがあるが、ソニー用にはそれがないことだけだ。


 フジのXシリーズ用交換レンズにはXF14mmF2.8という"名レンズ"がある。ぼくはこのレンズ、素晴らしい広角レンズだと高く評価している。絞りリングが柔らかすぎてスルスルに動いて、それだけは「許せないっ」と不満なだけで、とにかく写りのいいレンズだ ―― そういえば「Touit 2.8/12」の絞りリングもまた、XF14mmとそっくりにスルスルに柔らかかった。

 そのXF14mmとTouit12mmを、可能な限り条件が同じになるようにして(画角が21mm相当と18mm相当と違うが)、できるだけ「描写の差」がわかるようなシーンを探して撮ってみた。
 その結果は、あらゆる撮影シーンでTouit12mmのほうが良かった。「ええーっ」と声が出るほどの違いが出たシーンもあった。ただしここでひと言、付け加えておくが、だからといってXF14mmがだめなレンズだというのではない。素晴らしい描写のXF14mmよりも、Touit12mmが「上」だったというだけの話なのだ。

 ただし、画角のことを考慮に入れたとしても、Touit12mmのほうが価格が高い(実販価格はXF14mmが約8万円、Touit12mmが約12万円)、レンズサイズが大きい重い、というのが少し気にはなったけど。