E-620とマイクロフォーサーズ

オリンパス・E-620 + ZUIKO DIGITAL 14?54mmF2.8?3.5
 カメラ全体の印象がやや地味なこと、おっ、と注目するような“華”となる機能や機構がないこと、E-30の発売から近すぎたこと、マイクロフォーサーズのカメラの発表が間近であることなどがE-620を少し「不幸」にしているようだ。しかし、デジタル一眼レフカメラとしてのトータルバランスはEシリーズの中ではトップだと思う。ボディは小型で、撮影機能は満載。AFも手ブレ補正も優秀だし ―― ただし手ブレ補正については「動くもの」に対して少し苦手なところもあってこれは要改善 ―― 通常の使い方をしていれば、ほとんど不満を感じない。じつに気持ちよく写真が撮れる。

 E-30ユーザーの中には、なーんだ、それだったらもう少し辛抱してE-620のほうを買っていたのに、と悔しい思いをしている人も多いのではないだろうか。Eシリーズの新製品が出るのをじっと待っていて、そのタイミングにE-30が発売された。よしっ、待ってました、とE-30を購入した人は、まさかその数ヶ月後に、より小型で軽量で手ブレ補正もアートフィルター撮影の機能もある、撮影機能もE-30とあまり違わない、それになんといっても安いE-620が発売されるなんて、考えてもいなかったんじゃないか。


 オリンパスにはユーザーのそのへんの気持ちの“機微”をもうちょっと読んでほしかったと思う。E-30もE-620も価格は3万円以上は違うけれど、備わっている撮影機能を見比べればクラス的には、ほぼ同等だもん。

 夏に発売予定といわれているマイクロフォーサーズの新型機種も、E-620の前に大きく立ち塞がっているようにも感じる。マイクロフォーサーズとは言っても、E-620に使っているフォーサーズの撮像センサーとサイズはまったく同じだし、新マイクロフォーサーズのほうに画期的な撮像センサーが搭載されるとは考えにくいし、画素数も同じようなものだろうし画質については良くなることはあってもE-620よりも悪くなることはないだろう ―― こんなことは、あらためて言うまでもないことで皆さん知っていることですよね。そして、新マイクロフォーサーズのカメラ用に開発されている新型レンズは、ひょっとして素晴らしく魅力的なものかもしれず、撮影機能もE-620よりもアップして出てくる可能性だって高い。そうなると、われらがフォーサーズカメラのほうは、だんだんとシュリンクしてしまうのだろうか…。
 などあれこれ想像していると、どうしても視線は“直近のカメラ”のほうに進んでしまい、ますますE-620の影が薄くなってくる。実力のあるカメラなのに、惜しい。

良いカメラなんだけどなあ…

オリンパス・E-620 + ZUIKO DIGITAL 12?60mmF2.8?4.0
 このE-620、オリンパスの「Eシリーズ」の中では名機E-330に並ぶほどのデキの良いカメラだと思う。とてもよくまとまっていてバランスの良いカメラに仕上がっている。ひょっとすると、Eシリーズのカメラとしては、今後、これを超える機種は出てこないかもしれない。ほんと、良いカメラだと思うんだけど、ただ、機能的にちょっとジミなのと、出てくるのが遅すぎたのではないか。そのため、もうひとつ注目を集めていない。オリンパスを(こっそり)応援しているぼくとしては、それが残念。
 E-620がイマイチ盛り上がらないのは、オリンパスユーザーが次に出てくる新製品をじっと見守っていて、“待ち”の状態にあるからではないだろうか ―― これはぼくの推測なのだけど。つまり、新マイクロフォーサーズの機種は、撮像素子がE-620とほぼ同じで、手ブレ補正のシステムもほぼ同じ(たぶん)。でも、カメラボディはぐんっと小さい(おそらく)。もうすぐ発売する、とオリンパスが言ってるんだから、そりゃあ、ぼくでもじっと待ちますよ。


 3月末に開催されたPIE(フォトイメージングエキスポ)のオリンパスのブースには、そのマイクロフォーサーズの「新型機種」がブルーの布に覆われて参考出品されていた。堂々とした「出品」ではなく、なんだかひっそりこっそりと展示されていた。見た人もいると思うけれど、そのブルーの布の覆われてカタチはもちろん、大きさもさっぱりわからない。だから、ぼくなんぞ、ハナっから無視しててよく見もしなかった。どうせ、ブルーの布の下にはテキトーな紙箱か何か置いてあるんだろう、ふんっ、思わせぶりな、と考えていた。
 ところが、なんと、あのブルーの布の下には完成間近な試作機種が、つまりホンモノが置いてあったんですって。「ウソだよ、そんなこと信じられますか」と、ぼく。でもその話をしてくれた人は「いや、私も信じられなかったですが、ほんとです」ということでありました。オリンパスって、ムカシからそうした“クソまじめ”なところがあるんですよねえ。

レンズを変えれば自分も変わる

ニコン・D300 + AF-S DX NIKKOR 35mmF1.8G
 ニコンのAPS-Cサイズ(DX)カメラ用レンズとしては、FISH-EYE 10.5mmF2.8レンズに次ぐ、2本目となる単焦点レンズである。35mm判換算で約50mm相当の画角となる。ようやく、とうとう、やっと…といった感じ。わざわざDX用レンズを出さなくてもフルサイズ(FX)用の単焦点レンズがたくさんあるんだからそれを使えばいいじゃないか、とでもニコンは考えていたんだろうか(そんなことはないだろうけど)、それにしてもちょっと遅すぎだよね。だから、待っていた人も多かったのだろう、発売以来、世界中で大変な品薄状態になっていると聞いた。

 軽くてコンパクト。ピント目盛表示も省略しているなど、ちょっと“安っぽい”ツクリという気もしないでもないが、その写りは意外としっかりしている。ややハイコントラストな描写で、たぶん一般受けするだろう。ただ、この描写については、大いに好みが分かれることだろうが、とくにデジタル用のレンズについてはコントラストが高めだったり、シャープ感の強い描写のレンズは、ぼくはあまり好きではない。
 ちなみに、35mmF2DというFX対応のレンズがあって、50mm画角のためにはこちらのレンズで「十分じゃないか」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょうけれど、この 2本のレンズのMTF曲線図 を見比べてみれば、35mmF1.8Gのほうがどれだけよろしいかわかるでしょう。ただし、MTF図はあくまで参考程度、ですよ。そして、そのMTF曲線図の“読み方”は自分で考えてくださいね。 ―― 2009年PIEのニコンブースでのぼくのセミナーから一部抜粋 ――


 最短撮影距離が30cmというのに注目したい。50mm標準レンズの最短は45?50cmが一般的。同時に発売したフルサイズ判の50mmF1.4Gだって最短は45cmだ。ところがこの35mmF1.8レンズは、焦点距離こそ35mmであるがその画角は50mm相当あるので、実際に撮影してみると「おっ、寄れるぞ」と、そのことに少し驚く。長年使い慣れてカラダに染みこんでいる50mm画角の使い勝手の常識がひっくり返って、それがおもしろかった。
 50mm画角で、最短30cmで、F1.8の開放絞りで撮影したりすると、ピントはとんでもなく浅くなり、ぼけは大きい。これもおもしろい。ただし、このレンズの唯一の気になった点があって、それはわずかだがディストーションがあること。それが至近距離になるほど増幅され、被写体によってはちょいと目立ってくること。いや、ま、それもよほど神経質に見ないとわからない程度の歪みだけどね。

 いずれにしても、ニコンDXカメラユーザーにとっては待望の大口径単焦点標準レンズであるわけで、その価格も(ニコンにしては)ほどほどだし、いまズームレンズを使っていて少し不満を感じておられるなら、この35mmF1.8Gは次期候補としてチェックしておかれるといいでしょう。きっと、撮れる写真も違ってくるでしょうし、ひょっとすると、いままでの自分と違ってものの見方も少し変わってくるかもしれませんぞ。

徹夜の朝の六本木

ニコン・D700 + AF-S NIKKOR 50mmF1.4G
 この50mmF1.4Gは32年ぶりに光学設計をやり直した新製品である。旧型(といってもまだ販売中)がAF-S Nikkor 50mmF1.4Dで、その改良版。そう言えば「ニッコール」の表記が「Nikkor」から「NIKKOR」に、少し前から変更になっているのをご存じだろうか。今後、すべて大文字の NIKKOR とするそうだ(理由はよくわからん)。で、この新型50mmもNIKKORとなっている。…どうでもイイか、こんなこと。
 ニコンが公開している新旧の50mmレンズのMTF曲線を見比べてみると、「ええっ」と驚くほどに新型50mmが良い。しかし、実際に新旧50mmレンズでいろんなシーンを撮り比べてみると、そのMTF曲線の違いほどの“違い”がない。旧型50mmもそこそこ良く写っている。そうなんですよ、レンズとはそういうもんですよ。新型50mmレンズを使ってみて、おもしろいなあと感じたのは、無限遠でのコマ収差がとってもよく補正されているのだけど、近距離の少しアウトフォーカス(手前ぼけ)になると、うわっ、と声を上げたくなるほどの凄いコマ収差が出てきたことだ。


 そもそもMTF曲線なんて、そっくり鵜呑みにするようなもんじゃないですよ。レンズの総合的実力を判断する材料としては“屁の突っ張りにもならぬ”、とは言い過ぎだけど、参考程度にとどめておくのがよろしい。あんなもん穴の開くほど見たって、せいぜい解像性能やコントラストがわかる程度。それに、MTF曲線なんて理論値(理想値)に過ぎないわけですよ。実際にレンズをくみ上げてそれを使って実測してMTF曲線図を作ってるワケじゃあない。部品精度も組み立て精度も無視した机上の図。レンズはやはり撮ってみないとわからない、使ってみないとわからない。
 ニコンが公開しているMTF曲線は開放絞り値だけで、絞り込んだときのそれは非公開なのだ(新型50mmのF5.6に絞ったときのMTF曲線を見せて、とニコンに頼んだのだけど「ダメ」のひと言)。ちなみに、キヤノンは開放絞り値とF5.6を公開しているし、ペンタックスはいっさい非公開。ニコンもキヤノンも10本と30本のS線/M線を見せているが、オリンパスは20本と60本、というように各社それぞれ。いずれにしてもですよそのサジタルとメリジオナルの2種類の曲線から情報を読み解くには相当のレンズ知識がないと不可能だし、もしわかったところで、ぼくたちはあらゆる光の条件で森羅万象を写しているわけだから、あまり役にはたたんですね。

単焦点レンズのすすめ

ニコン・D700 + AF-S NIKKOR 50mmF1.4G
 最近、単焦点レンズを使う機会が多い。雑誌などからの依頼も増えたこともあるが、個人的にも、積極的に単焦点レンズを使うことが多くなっている。ズームレンズに比べれば、そりゃあもう、めんどうだし荷物も増える。でも、それさえちょっと我慢すれば、撮影することが俄然、愉しくなる。単焦点レンズばかり使い続けると、ふんっ、ズームレンズなんて使ってられるか、てな気持ちになることも、なくもない。これ、ほんとです。
 描写性能もズームレンズに比べれば文句なしに良い ―― ズームレンズのそれが「悪い」というわけではないぞ、ムカシのことを思えば別世界の描写性能だ ―― 。単焦点レンズには開放F値の明るいレンズが多い。ぼけ味も、個性的で美しい。言うまでもないことだが、単焦点レンズは1本のレンズにたった1つの焦点距離。ズームレンズは1本のレンズに無限数の焦点距離を備えている。単焦点レンズが「一点豪華主義」だとすれば、ズームレンズは「ちゃらちゃら八方美人主義」と、いえなくもない、か。


 むろん単焦点レンズの不利な点もある。フレーミングをちょいと変えるにしても、動いて、覗いて、修正して、動いて、覗いて、を繰り返さなければならなこともある。大きくフレーミングを変えようとすると、焦点距離の異なるレンズと交換せねばならない。レンズ交換のめんどうさはともかくとして、シャッターを切るべきチャンスを逃したくない場合など大いに困る。
 でも、そのような不便を毎回続けていくうちに、ズームレンズを使っているときとは被写体の「見方」やフレーミングの「囲み方」がだいぶ違ってくることに気づくはずだ(たぶん)。被写体の様子をしっかりと観察するようになる。フレーミングに工夫と努力をするようになる。これでいいっ、との思いっきりもよくなる。とうぜんながら、撮った写真も違ってくる ―― だいぶ個人差によるところも多いですけどね。
 というわけで、機会があればズームレンズはしばしの間、引き出しの中にしまっておいて、単焦点レンズを使ってめんどうさを実感してみてはいかがでしょうか。

ファームウエアのアップデート

ペンタックス・K20D+ DA15mmF4 Limited
 たくさんのカメラやレンズを使ってたくさんの写真を撮りまくっていたので、このブログもすっかりごぶさたでありました。二日ほど前に、とりあえず1つは一段落したんだけど、まだヤマが3つ4つ残っている。やりたいことも、撮りたい写真もいっぱいあって、しかし時間がない。不義理をしている人がたくさんいて、ほんと申し訳ない限りです。

 というわけで、ペンタックスのK20Dでありますが、先日、ファームウエアのアップデートのお知らせがあった。手ブレ補正のアルゴリズムを「修正」したというもの。この手ブレ補正のアルゴリズムというものは大変に複雑で微妙。たとえば高周波側のブレにきちんと対応させようとすると、こんどは低周波側のブレをうまく補正しきれなくなるものらしい。とうぜん逆も言える。つまり高速シャッタースピードでの細かなブレも、低速シャッタースピードでの大きなブレも効率よく補正するのはとても難しく、各メーカーともノウハウと苦労を積み重ねて試行錯誤していると聞いたことがある。そもそも手ブレそのものが個人差によるところが大きくあって、それを万能に対応してきちんと補正の効果を出すというのも想像するに難しいものでしょう。


 で、ぼくも指示に従ってファームウエアのアップデートをやったけど、正直なところ、よしっ、と言えるような効果はさっぱり感じられない。でも、こうしたファームウエアのアップデートは、公式に発表している修正項目以外に、こっそり内緒であれこれの小さなバグも一緒に修正しているから、アップデートは必ずやっておいたほうがいいでしょうね。(ぼく自身も少しだけアップデートしました…)

 ところでペンタックスと言えば、先月末にPIE(フォトイメージングエキスポ)のペンタックスのブースで、発売することを決めた 645Digital カメラについての「サプライズ対談」を会期中の四日間やっていた。開発の企画担当者や技術者に、「こんどこそ、ほんとに 645Digital を発売するんでしょうね」とか、「価格はいくらぐらいにするの、画素数はどれくらいなの、いつの発売予定なの」といった質問をぼくがぶつけて、それに答えてもらったわけだ。
 その対談の様子をまとめたものが、今月20日に発売される「デジタルフォト」に掲載されている。もし、ペンタックスの645Digitalがいったいどうなるのか、に興味があって、しかしPIEに来られなかった人はデジタルフォトの記事をお読みになるとよろしいでしょう。4ページにわたる詳細。四日間、ぼくが支離滅裂な質問をしていた内容を、担当編集者がじつにウマくまとめてくれております。