マッチョなカメラで軟弱に猫を撮る

カシオ・EX-G1
 外観は、とてもスタイリッシュだが防水防塵と耐低温、中でもとくに耐ショックにこだわった大変に“マッチョ”なカメラだ。約2メートルの高さからの落下に耐えるという。一皮むけば筋肉隆々としたカラダが見えてくる、そんなカメラか。外装はステンレスということだが、ブラックのボディでは表面処理のためかマグネシウムのようにも見える。ボディのあちこちの部分にはショックを吸収するためのポリカーボネイトのカバーが施されている。
 ステンレスの外装の下には、カメラ内部をくるっと包み込むように同じくポリカーボネイトの「防水インナーウエア」を着込んでいる(そうだ)。このインナーウエアとステンレス外装の隙間に溜まった水を逃がすための小さな穴がボディにあけられている(さぁて、その穴はどこにあるでしょーか? 探してみましょう ―― デザイナーがとってもこだわってあけたデザイン穴だそうです)。

 こうしたハードな中身を持ったカメラで六本木の野良猫スナップをするというのも、オツなもんといいますか、いや少し抵抗もありましたけど、驚きもせず逃げもせずでありました。


 レンズは屈曲型3倍ズーム。レンズ前面には撥水性のあるマルチコーティングした強化ガラスでカバーしている。レンズそのものを衝撃から守るために、たとえば特殊なレンズマウント方式を採用したり、外部からの衝撃を少しでも和らげるためのプロテクターも用意されている(2種類あって自分で取り付ける)など、あれこれと対策が施されている。
 こうした耐衝撃性の高いカメラをいち早く発売したのはオリンパス。そのオリンパスから聞いた話では、レンズユニットに加わる衝撃をいかに和らげるかが大変に難しいものだったそうで、このG1もたぶんその衝撃吸収には相当に苦労したに違いない。

 ぼくはアウトドアで跳んだりはねたりするのは苦手だし、カメラやレンズを手荒く扱うことができない“体質”になっておりますから、だからこのテのマッチョなカメラを必要としないけれど、荒々しく元気いっぱいでカメラになんぞに頓着しない描写性能にチマチマしたことを言わない野性味溢れる人には、いやあ、G1はちょっと気にしておいてもいいかもしれませんぞ ―― と、なんだか宣伝めいてしまったけれど。

鬼のような返品制度

カシオ・EX-G1
 G1のパッケージを開けて出てきた、「STOP」の大文字と「お見せに返却しないで」の嘆願シールを見て絶句したよ、との昨日のハナシの続きで、繰り返しになるが、これがG1パーケージの中身だ。
 そのG1のパッケージはアメリカ市場向けのもので、日本国内や他の国々向けのパッケージにはそうしたメッセージのシールなどは入っていない。以下のハナシはぼくの実体験ではないので多少のミスもあるかもしれないが、アメリカではだいぶ前から「制限なしの返却制度」がまかり通っていて、領収書さえあれば、買った商品を使用した後であろうが壊れてしまっても、「気に入らない」のひと言で買ったお店に返品して返金してもらえるという。返却の理由は問わない。

 アメリカだけの商習慣で、これを始めたのがあのウオールマート。クルマや家などの大型商品は別らしいけど、ほとんどの商品はこうした返品が可能のようで、たとえば、これは極端な例のようだけど、パーティー用のドレスを一回使ってさっさと返却したりとか、夏のバカンス前に水着がたくさん売れてバカンスが終わる頃になると大量の返却商品であふれかえる、なんてウソのような話も聞く。
 えーっアメリカ人ってめちゃくちゃやなあ、と思われるかもしれないが、当たり前だけどそうする人たちはアメリカ人の中でもごく少数なのだろう。


 でも、その少数の人たちの鬼のような返品と返金が、いまカメラメーカーにとっても大きな悩み事になっているようですね。カシオのG1パッケージに入っていたメッセージは、カシオだけではなく他の日本のカメラメーカーのほとんども似たようなことをやっている。
 「そんなことやって、ナニか効果があるんですか?」と聞いたことがあるが、「いやぁ、ナニもしないより少しは効果があるでしょうね、困ったもんです」と。

 返品されたカメラは、中にはキズがあったり壊れたりしているものもあるらしいが、中身を厳重に確認したり修理修繕をした上で、「それ専門のルート」で市場に戻っていくこともあるらしいが、このへんの話は相当にデリケートなので、以下省略。いずれにしても、メーカーにとっての「損害」は ―― もちろんアメリカ市場に対してはそれは織り込み済みなんだろうけど ―― 決して少なくはないはず。その「ツケ」は誰が負っておるんだという話もしばし横に置いておいておくが、それでもなお日本の多くのカメラメーカーがアメリカ市場を大切にしているというのは、十分な「見返り」があるからなんでしょうね。
 しかし、私たちにはちょっと想像のつかない「返品制度」なんだよねえ、と、あらためて驚いた次第であります。…G1そのものの話のつもりが、また脱線、すまん。

Gショックっ

カシオ・EX-G1
 約2メートルの高さから落としてもダイジョウブという耐ショック性を備えながら、約2センチの薄型カメラ。“意欲的”なボディデザインで注目度は高そう。でも実物は写真で見るよりも印象は薄い。写真映えするデザイン、とでも言おうか。防塵・防水、耐低温性も備わっている。水深約3メートルまでの防水性、マイナス10度までの耐低温性があり、ボディはステンレス製。ボディ色は黒と赤があるが、赤ボディのほうがいいと思う、たぶん(ぼくが借りたのは黒ボディで赤ボディの実物を見てないので…)。レンズは屈曲型の3倍ズームであります。うーむ、ちょいとクセのあるレンズですなあ。メモリーカードはマイクロSDカード。マイクロSDだけしか使えないカメラというのはこのG1がたぶん初ではないか。めちゃくちゃ小さなカードでその取り扱いが非常に厄介(ぼくはキライだなあこれ、なくしてしまいそうで)。


 さて、このG1をカシオから借りたのだけど、カメラの外箱つまりパッケージのデザインが凝っておりまして、カシオのこのカメラに傾ける意気込みはそのパッケージデザインを見ただけで充分に伝わってくる。
 で、その箱を開けたのだけど、「おっ」と声を出してしばし呆然となりました。うーむ、話には聞いてはおったけれど、そうか、ここまでせにゃならんか…と強いショックを受けて眺めておりました。
 いやナニ、まずはこの写真を見てみれば、カンのいい人はだいたいのことはわかるでありましょう。どでかい「STOP」の文字と、パッケージに貼り付けられたメッセージ。

 ぼくが借りたカメラは、日本市場に出回るパッケージではなく、たまたまアメリカ市場向けのパッケージだった。アメリカ市場を体験された人は「常識」のことでしょうけれど ―― つまり、アメリカではナニかモノを買っても、一定期間内で、領収書さえあれば、「理由のイカンを問わず返却できる」という鬼のような返品制度がまかり通っている。パッケージに記載されているメッセージは、「ちょっと待てはやまるな、気に入らないからと言ってカメラを返却しないでちょうだいよ」といったような意味か。
 このことについては、もう少し話を続けたい…。

超高速連写 ― その2

ニコン・D3S + Nikkor 85mmF1.8 D
 超高速連続撮影のつづき。
 ミラーが下がった状態では、レンズを通った光がそのミラーに反射してカメラ上部のファインダーに導かれる。超高速連写のとき、ミラーは上がっているとき(短時間であるほどブラックアウトが少ない)とは逆に、下がっている時間が長ければ長いほどファインダーの視認性は良いということになる。
 高速でミラーが下がったとたん、メインミラーにもサブミラーにも相当な“ショック”が加わっている。超高速でばたばたとミラーを上下させれば、なおさらそのショックは強くなる。強いショックを与えたミラーは、そうカンタンには止まらない。“ばたつき現象”が起こる。でも、素早く完全停止させねばならない。
 受けたショックを素早く確実に吸収して、メインミラーもサブミラーも“ばたつき”を最小限にとどめて、一刻も速く完全静止させないことには、メインミラーを通過しサブミラーで受けた光をボディ底部にあるAFセンサーに届けて、正しい測距をおこなうことができない。
 超高速連写になるほど、この完全静止させるための技術が難しくなる。


 さらに、今度は、メインミラーもサブミラーもビタリと静止させた状態を、可能な限り“長時間”そのまま続けてくれるほうが、AFの測距だけでなく、測光も正確にできる。でも、1秒間に9?10回も上下しなければならないわけだから、一回の上下作動中のそのごく短い時間内で、いかに“やりくり”をして少しでも長く静止させておけるか、これもまた技術的な難易度は相当に高い。D3/D3Sも、EOS-1D Mark4も、それを“軽々と”やっているというわけです。でないと、9?10コマ/秒のハイスピード連写で、かつ高速でこちらに向かってくる動体にすべてAFでピントを合わせながら撮影するなんてことはできない。

 高速連写、とカンタンに言いますけど一眼レフカメラにとってはめちゃくちゃムツかしいことなんですよ、じつは。こればかりはデジタル処理でどうにもならないことで、とことんアナログ的なメカニズム制御がまだまだ一眼レフカメラの中には残っておるんです。この精密さ緻密さに比べれば、こう言っちゃあナンでありますが、ミラーレスのカメラなんて“へ”みたいなもんか……いや、それは言い過ぎ、じょーだん。

 D3Sにまつわるハナシは、せよ、と言われればまだまだいっぱいあるが、皆さんもそろそろアキてきたでしょうから…。

超高速連写 ― その1

ニコン・D3S + シグマ・50mmF1.4 DG HSM
 D3SやEOS-1D Mark4の超高速連続撮影の話。2回につづく(予定)。
 D3SはD3と同じく、FXフォーマットで最高約9コマ/秒、DXフォーマットでは最高約11コマ/秒であります。1D Mark4もほぼ同じく、最高約10コマ/秒である。ちなみに、このコマ速度もそうだが測定方法がCIPAからガイドラインが出されていてそれにのっとっている。

 この9コマ/秒とか10コマ/秒の高速連写ということは ―― 言うまでもないことだけど ―― 1秒間に9?10コマのスピードで一回ずつ、AFの測距をおこない測光し、絞りを動かして、メインミラーとサブミラーを上下させ、シャッターを駆動させて、露光し画像処理…などなどをおこなっていることにある。


 超高速連写が技術的にタイヘンに難しいことの理由はいくつもあるのだが、その1つがミラーのアップダウンのシーケンス。メインミラーとその裏側のサブミラーが9?10回/秒で上がったり下がったりするのだけど、ただ、高速で上下させればいいというものではない。

 ミラーがアップすれば(つまり露光状態)ファインダーは真っ暗になる。ブラックアウト、像消失だ。ファインダーのブラックアウトの時間は短ければ短いほど、連写に限らず単写のときにも被写体の一瞬の変化を見逃さないですむ。スローシャッターの時は仕方ないが、しかしブラックアウト時間が長ければ、ファインダーを覗いていても、その間、目をつむっているのと同じことになる。像の消失をどれだけ少なくするか、つまりブラックアウトの時間をどれだけ短くするかが、これくらいのクラスのカメラになると大変に重要になってくる。

 ミラーがアップするときは、まだいいとしても、問題なのは高速でダウンしたときだ。

D3Sのバッファメモリー・つづき

ニコン・D3S + AF-S NIKKOR VR 70?200mmF2.8G II
 そういえば、D3は発売後しばらくしてからバッファメモリー増設サービスというのをおこなった(いまもやっている)。そのサービス内容を調べてみたら、5万円ちょっとの費用でカメラ預かりで増設をしてくれる。
 増設するバッファメモリーの容量は不明だが(非公表)、増設することでJPEG/FINE/LARGEの条件で記録コマ数は119コマになる。昨日、ここにも書いたけど、スのままのD3は52コマだから増設すると“約2倍以上”になる(D3のもともとの搭載バッファメモリー容量も非公表)。

 D3Sのほうはといえば、JEPGの上記と同じ条件で“82コマしか”撮れない。なぜ、新しいD3Sにも「D3+増設バッファメモリー」と同じくらいの「容量」のメモリーを始めから搭載しておいてくれなかったんだ…、と、まあ、このへんにシツコくこだわっていけばキリないので、やめますけれど ―― じつは、バッファメモリーの価格ってのはカメラのコスト計算するときに、いつもめちゃくちゃ足を引っ張るらしくて、バッファメモリーの容量を増やしたいのはやまやまなんだけどダイレクトに価格に響いて来るもんだからメーカーとしてはぎりぎりのコストダウンをしてるんでしょうね。


 ここでD3Sから話が少しそれる。
 先日、見に行った3D映画の「AVATAR」のことだけど、予想以上におもしろかったですよ、機会があればご覧になるといいです。とても良くできた3D映画でした(3Dの技術的にね、ぼくが感心したのは、いや、もちろんストーリーもおもしろかったですよ、荒唐無稽で)。
 昨年、富士フイルムの3Dカメラ(W1)が出たときに、必ずや映画もTVも近い将来には3Dばかりになるぞ、と言ってたんだけど、1月始めのCESでの3Dフィーバーの様子を聞いて、ここまで早く急激に3D映像や、それにかかわるインフラが広まるとは、さすが思ってもいなかった。もう少し時間がかかるだろう、と。

 ぼくは「AVATAR」を六本木ヒルズの映画館で見たんだけど、そういえばちょうどいま、東京ミッドタウンの1階にあるフジフィルム・スクエアーで、フジの3Dカメラや3Dモニター、そして大型の3DのTVモニターなどで立体画像が鑑賞できたり、W1の撮影体験ができるイベントをやっている。でありますから、まず東京ミッドタウンで3D画像を体験してステレオ画像に“眼とアタマを慣らして”から、「AVATAR」を観に行く、というのもよろしいかもしれませんぞ。
 なお、「AVATAR」鑑賞で疲れた眼とカラダを癒すには、再び東京ミッドタウンに行きますと、都内最大の臨時屋外スケートリンク場ができてるので、そこですいすいとアイススケートを愉しむというのもちょっとオツかもしれません。アイススケートなんか興味ないって人は、近くの国立新美術館でちょうど「ルノワール展」が始まったばかりだからそれに行く、というのもシャレてていいかもね。

D3Sのバッファメモリー

ニコン・D3S + AF-S NIKKOR VR 70?200mmF2.8G II
 VR II搭載で、ナノクリ採用の大口径ズームレンズ。レンズ名の「II」には2つの意味があるようで、1つはVRをII型にしたこと。最大4段ぶんのブレ補正効果がある、というものだ。もう1つは、旧型の Zoom-Nikkor70?200mmF2.8を大幅に改良し、光学系を新しくたNIKKORレンズとしての「Mark II」であるとの意味。鏡筒まわりのデザインも、とってもスマートになっり、描写性能も含め素晴らしいズームレンズに変身した。重いけど、これならガマンして持って歩こう、という気持ちになる。

 そういえばちょうど、キヤノンからも最近、このレンズと同じクラスのズームの改良版が発表されましたね。発売は3月予定で価格もニコンのものとほぼ同じ。「EF70?200mmF2.8L IS II USM」だ。ISも“4段ぶん”で、こちらは蛍石を採用していることが特長。しかし、ナノクリスタルコーティングに対抗するSWC(SubWave-length Structure Coating=サブ波長構造コーティング)は使用していない。このズームについては使ってみてから、また、あらためて。


 さて、D3もD3Sも、連写コマ速度は同じだが連続撮影の最大記録コマ数が、D3Sになってだいぶ増えた。理由は、カタログによると、D3の「2倍」の容量のバッファメモリーがD3Sに搭載された、ということらしい。ちなみに ―― 撮影時のもろもろ設定の条件付きではあるが ―― JPEG/FINE/LARGEで、D3が52コマであったのに対してD3Sでは82コマに増えている。ここで少し気になるのだけど、メモリー容量が「2倍」になっているのに、どうしてコマ数も2倍の104コマにならないのか、そう、ぼくもそのへんが疑問ですが、小学生の算数計算のようにはイカンのでしょうね。

 ぼくは連続してイッキにたくさんのカットを撮る、ということがほとんど(いや、まったく)ないから、ま、そうですねえ、RAW+JPEGで ―― 最近、JPEGだけで撮影するってことが、ほんと少なくなった、常時、RAW+JPEGですね ―― 連続10カットも撮れれば満足、満足。万が一、10カット以上連続して撮らなくちゃいけない、ってときがあったとしても、しょうがないよなあ、と、あっさり笑ってあきらめる。

twitter ってなに?

ニコン・D3S + シグマ・50mmF1.4 DG HSM
 D3にはなくて、新しくD3Sに搭載されたおもな機能や機構としては、高ISO感度のほかに、動画撮影の機能とゴミ取り機構(イメージセンサークリーニング)でしょう。
 とくに注目したのはイメージセンサークリーニングの機能で、D3では視野率約100%その他、もろもろの機能を優先させるためにはその機構を組み込むことは“不可能”だった、といった話を聞いていた。それが、どんなワザを使ったのか ―― その詳細はまだ聞いていない、いずれじっくりと聞いてみたいと思っている ―― もろもろの機能を省略することなくD3Sにイメージセンサークリーニングを組み込んでいる。D3ユーザーのぼくは、D3Sを使ってみて、おおっ確かにゴミはほとんど(というか、まったく、だったけど)目立たなくなったのに大いに感心した。

 「できるんだったら、始めっから、D3からやってくれればイイじゃないの」と、先日、開発担当の親しい人にだいぶイヤミを言ってたら、「そんな、うちの上司が言うような言い方、やめてくださいよ、タイヘンだったんですよ」と。


 もう気づいておられる人もいるでしょうけれど、このページの右端に twitter のロゴのあるボタンをこっそりと置いている。そう、ぼくも昨年からだけど人並みに twitter を始めております。わけがわからないまま始めて ―― twitter ってどんなもんだろうか、と調べていたら、そんなつもりはまったくなかったのに「操作ミス」して登録してしまった、えいっ、とそのまま続けてしまっている、というのが twitter を始めた理由 ―― でもしかし、いまだに twitter の「意味」や「魅力」、そして「仕組み」がイマイチよくわからない。

 いちばん戸惑っているのが、発信すべき情報ですね。なにを「つぶや」けばいいのか、ソコがわからない。自分の身の回りのことや感じたことを気軽に書けばいいのよ、と言われるけれど、他人の身の回りのこと、つまり、その人の「身体髪膚」に絡むようなことに、そもそもぼくはまったく興味がない。「…なう」とか書かれても、勝手にしなさいよ、と。同じように、ぼくの「身体髪膚」に近いことについて発信したところで、だーれも興味なんぞ持つわけない、と確信しているから、さあ、なにをツブヤけばいいのやら、ねえ?

いままで写らなかったものが写せる時代

ニコン・D3S + AF-S VR 70?300mmF4.5?5.6G
 2日ほどの前、D3やF6を“正しく”読まなかったら、ニコンの後藤さんが「バッキンだ」と言ったと書た。それを読んだ人が、「後藤さんがほんとに罰金を取るの?」なんてトボけた質問をしてきて、ぼく大いに驚く。そんなワケないじゃないですか。大企業の、その役員といえどもですよ、社員に対して罰金処分なんてことができるはずがない。

 後藤さんらしい、冗談、ユーモアですよ。ニコンでは珍しい「外向き」の人だからのぼくらに対するサービスもあったでしょう。その時も、後藤さんは大笑いしながら「バッキンですよ」と言っていただけ。でもカメラ名の読み方などについては、ニコン社内でハッキリとした「決まり」はあるようです。他のメーカーのことは知らないけどニコンの場合は、ドキュメントとして用意されているみたい(噂レベルのハナシだけどね)。
 後藤さんって誰? と思ってる人は「ニコン 後藤」で検索でもしてみてください。

 さて、D3Sは超高感度で撮影ができる、というたったそれだけのことで、たくさんのメリットが出てくるのだが、『いままで撮れなかったものが撮れる』、これがなによりも素晴らしいこと。つまり、写らなかったものが写せる。それによって新しい写真表現の可能性がふくらむ。
 新しい写真表現を可能にするための道具(カメラ=D3S)が提供されたわけで、あとはその道具を使って撮る側の、すなわち私たちの「想像力と創造力」が試される時代になった、ということじゃないのかなあ。


 超高感度と手ブレ補正や大口径のレンズと組み合わせれば、さらに、撮れる(写せる)範囲は広がる。
 ISO102400なんて超高感度での撮影など、フィルム時代には“夢にも”思わなかったことだ。それが、いま現実になった。フィルムではISO1600とかISO3200ぐらいの感度がほぼ限界で、特殊な増感現像処理をしてISO6400からISO12800相当ぐらいまでにすることはできたけれど、そこまでした画像はへろへろもいいところ。

 ISO1600のフィルムを1?2EV増感したものなんてのはね、デジタルカメラから写真を始めた人にはピンとこないだろうけど、シャドー部のデンシティなんぞあってないがごとしで、現像かぶりはある、粒状性は荒れ放題で、いま高感度画像にあれこれ文句を言っているような、そんなノイズや画質のレベルなんぞ比べるまでもないほどひどかった。それが、いまやISO12800なんて感度が「常用感度」になってしまった。

ISO102400の超高感度

ニコン・D3S + タムロン・28?70mmF2.8 XR Di
 D3SのISO感度は「常用感度」としてISO200からISO12800までを設定している。さらに、感度拡張をすれば低感度側はISO100、高感度側はHi03?Hi1、Hi2、Hi3と選ぶことができて、Hi3では「ISO102400相当」の超高感度で撮影することができる。
 ニコンは「肉眼で見えないものまで写すことができる!」と豪語しているが、それはいくらナンでも言い過ぎだけど ―― 人間の眼で見えないものが写るわけない、眼をばかにするなよと言いたい ―― 。でも、ま、そのニコンのウレシい気持ちもわからないでもないし、とにもかくにも、こんな途方もないISO感度なんてフィルム/デジタルを問わずカメラ歴史上初の快挙であるから(すぐにその数ヶ月後にキヤノンEOS-1D Mark4が追いついてしまうけれど)、ご祝儀、としておきましょう。

 D3が同じように感度拡張してもISO25400相当までだったわけで、数値だけを比べれば約2EVぶん感度アップしていることになる。D3のISO25400相当の超高感度にも、相当に驚いたけど、D3Sはそれを“数倍アップ”したISO102400相当。


 ぼくは、ISO感度をチェックするときには、コンパクトカメラ、一眼カメラを問わず、いつも同じ場所で、同じ条件で比較テストをしている。何年も「同条件」でやっている。だから、撮影した画像を見比べれば、文字通り「イッパツ」で画質の善し悪し、特性がわかる。
 そりゃあそうでしょう、同じ被写体を同じ条件で何年も撮っていてその画像を見ているんだから、あほでも些細な部分の「違い」はすぐにわかる。むろん、そのカメラがどれくらいの「実力」を発揮しているかもわかるし、レンズも画像処理技術の程度もわかる。だから、ときどきそのカメラの決定的な「欠陥」も見つけてしまうこともあり、それを何度か「発見」し「指摘」もしている(指摘はメーカーに対してだけね、一般には公表したことはない、とんでもないあほうな反応をする輩が多いからね)。

 というわけで、D3とD3Sで同じ高ISO感度で撮影した画像を比べてみたんだけど、明らかにD3SのほうがD3に比べて、1EVから1.5EVほど感度特性が良くなっている。つまり、D3のISO25400が、D3SのISO50800からISO102400の「中間」ぐらいの感じ。そして、さらに、最高ISO感度のISO102400の画像は決して「おまけ」でもなくて ―― ノイズなどに対する許容度合いの個人差はあるけれど ―― 充分に実用許容範囲に入る画質に仕上がっていることにびっくりしたわけだ。

ハナシはさらに脇道にそれる

ニコン・D3S + AF-S 24?70mmF2.8G
 F6やD3の、当時のカメラ開発の責任者であった後藤さんが、「今後、ニコン社員はF6のことをエフロクと呼ぶことはまかりならんっ、エフロクといったらバッキンだ」と、ほんと、ぼくの前でそう断言してました。F5のときも後藤さんは、「エフゴではありません、エフファイブですっ」と同じこと言っていた。そういえば、話はまた脇にそれるが、D3のことを「デエースリー」と言う人もいますね、ニコンの人だけど。この場合は“ナマリ”として許されてるみたい。

 さらに枝道にそれてしまうが、D700やD90は、ディーナナヒャクだしディーキュウジュウと読むのがフツー。ニコンの人も皆んなそう言っている。「ディーセブンハンドレッド」とか「ディーセブンオウオウ」なんて言う人は誰もいない。ディーナナヒャクもディーキュウジュウもノープロブレム。と、こうなると、もう、よくわからんですねえ。


 というわけで、ことほどさようにニコンは、ヘンなことに(後藤さんのことじゃないですよ)こだわるところがあるんですよムカシから。似たような話はキヤノンにもあるんだけどこれはまた別の機会に。
 そうそう(ごめんね、またハナシがまた飛んでしまうけど)、ニコンのレンズ名称で「Nikkor」と「NIKKOR」が混在しているのをご存じですか。最近、そうですねえここ2年ぐらい前からかなあ、新しく発売されるニッコールレンズはすべて大文字の「NIKKOR」とすることに決めたようです。それ以前に発売されているニッコールを変更するわけにもいかないのでそのまま「Nikkor」にしている。
 理由? 知りませんよ、そんなこと。

 で、ようやく本題にもどるけど、D3Sの高ISO感度。
 撮影していてもっとも驚いたのはですね、ISO102400(十万二千四百)にして夜のスナップをしているときだった。絞りをF8に絞り込んだのに ―― ぼくはもっぱら、高速連写で2コマブラケットにしている ―― シャッターの音が、クシュンクシュンとやけに高速に聞こえる。おやっ、と思ってチェックしてみると、なんと1/250秒とか1/320秒で切れている。F8ですぞ。暗い夜景ですぞ。これを見たとき、ぼくはかなりのカルチャーショックを受けてしまいました。

ちょっと横道にそれるけれど

ニコン・D3S + タムロン・AF28?300mmF3.5?6.3 Di VC
 D3Sの「衝撃」の第一は、高ISO感度でありました。これがスゴい。使いものになる。
 あ、ところで、皆さんにはまったくもってどーでもイイ話なんだけど、D3Sの「S」は小文字sではなくて大文字のSなんですって。先日、ぼくが原稿で「D3s」と書いていたら、ニコンのある人から指摘があった。「すんませんが、小文字じゃなくて大文字のSに訂正していただけますか…」。

 でも、ボディのロゴやカタログのタイトル表記はどう見ても小文字のsじゃないか。いやしかし、カタログの本文のほうをを見ると、おや、大文字Sになっている。なんだかよくわからんなあ。この写真だけど、ボディのD3「s」も下に写っているD3SのカタログのロゴのD3「s」も、どう見ても小文字sじゃないですか、そう見えませんか(写真が見づらいだろうがガマンせよ)。ムカシからだけど、こーゆーところに、ニコンは“ヘン”にこだわるんですよねえ。
 話が横道にそれたついでに、もう1つ。


 D3は「ディーサン」ではなく「ディースリー」と読む。これはニコンのキマリ。
 フィルム一眼のF6は「エフシックス」。ディーサンだとか、エフロクと読むのは“正し”くないのです。「F6」が出たときは、ニコン社内でもエフロクとエフシックスと読む人が混在していて少しややこしかった。

 そこで「F6はエフシックスと呼ぶことに決める」と“統一呼称命令”が出たそうだ。ニコン社員はエフロクと言うことはまかりならぬ、と ―― でもぼくはニコン社員じゃないから、今でも誰がなんと言おうと、「F5」はエフゴ、「F6」はエフロクと呼んでいるけど ―― 。F6のこの読み方に強くこだわったのが、そう、あの後藤さん。あっ、こんな話しちゃってイイのかなあ。
 D3Sの高ISO感度の話をするつもりだったけど、まったくもって愚にもつかぬ話に終始。でも懲りずに、明日もまだ少しつづく、ぞ。

素晴らしいカメラだね、D3Sは

ニコン・D3S + AF-S VR 70?300mmF4.5?5.6G
 D3を使っているがD3Xを使ったときよりも、このD3Sのほうが「衝撃」が大きかった。D3Xは、正直に言えば、ふーんこんなもんか、といった感じだったけど、D3Sは、うわあなんじゃこれは、でした。強いカルチャーショックを受けた。

 外観はD3とぜんぜん変わらないけどその中身はまったく別もの。「D4」と名乗ってもいいじゃないかと思うぐらいの大進化だ。目立つところでは、超高ISO感度、動画対応、ゴミ取り機能搭載だけど、いやそれだけじゃない進化を感じる。デジタルカメラはもうここまで来たのか…。


 ま、こんなふうに抽象的感覚的なハナシをしたって、ぼくの受けた「衝撃」の数パーセントぐらいしか伝わらないだろうね(ぼくのせいだ)。でも、実機を手にして、少し撮ってみるだけで ―― とくにD3のユーザーは ―― D3Sの素晴らしさが、すぐにわかるだろう、わからなければよほどの鈍感、いや、鷹揚な人。

 同じことは、キヤノンのEOS-1D Mark3とEOS-1D Mark4の「違い」にも言えることだ。旧型1D Mark3と(このカメラも長く愛用している)、新型1D Mark4とでは、これまたぜーんぜん別もの(と、いった印象)。どちらの機種も、約2年から2年半ほどでのモデルチェンジだけど、その短い期間のデジタルカメラの進化の度合いが、すごいよなあ、と感心することしきりでありました。

視野率約100%(その2)

キヤノン・EOS 7D + タムロン・17?50mmF2.8 Di II VC
  ―― EOS 7Dのファインダー視野率「約100%」の話。前日のつづき。
 ファインダー光学系やペンタプリズムのサイズをコンパクトにしたまま、ファインダー倍率とアイポイント長を充分に確保したファインダーを作ることは大変に難しい。でも、それをEOS 7Dではやっている。そのことが「視野率約100%」になにか影響を及ぼしているのではないか、ということを昨日、述べた。
 さらに、ファインダーの見やすさのもう1つのポイントとなるのが視野角度だ。これが広いか狭いかによっても、ファインダー内の見え方はだいぶ違ってくる。視野角度の狭いファインダーは、ファインダー接眼部を覗くときに眼の真ん中が接眼部中心からで少しズレてしまうと ―― つまり、やや斜め方向から覗くと ―― 視野枠内全体がいちどに見渡せなくなる。視野角度が広いと多少、斜めから覗いてもファインダー画面がケラれることはない。7Dのファインダーは、倍率、アイポイントの「無理」がこの視野角度に影響しているのではないだろうか。

 7Dは、つまり、ファインダー倍率、アイポイント長、視野角度のこうしたもろもろが絡み合って、実際には「約100%」の視野率があるにもかかわらず、そうは見えない、という現象が起こっているんじゃないかと。


 実際に、7Dのファインダーの「覗き方」を少し変えてみるだけで、「見えないところまで見えてくる」ということがある。
 たとえば、7Dを三脚にしっかりと固定してファインダーを覗く。このとき、ゴム製のアイキャップをセットしたまま、いつものように覗いて画面周辺部のどこまで見えるをチェックする。つぎに、アイキャップを外して眼をファインダー接眼部にぴったりとくっつくぐらいに近づけて覗き、さらに、眼の中心を上下左右にズラして画面周辺部を見て、どこまで見えるかをチェックしてみる。すると、アイキャップを付けた状態のとき ―― アイポイントが長くなる ―― よりも、アイキャップを外して、さらに上下左右に眼の中心をズラして覗いたほうが画面全体が「広く」見える。これが7Dの「視野率約100%のウソ」の原因ではないだろうか。

 むろん、そんな覗き方をしないと「視野率約100%」に見えないようなファインダー光学系であることが根本的に問題なのだが、それはさておき、数値上の視野率そのものはキヤノンが言うように「約100%」は確保されているではないかと思うわけだ ―― どうだろうか、ぼくの見方が甘いかな。

視野率約100%(その1)

キヤノン・EOS 7D + タムロン・18?270mmF3.5?6.3 Di II VC
 キヤノンはEOS 7Dのファインダー視野率を「約100%」と言っているが、実際は「97%」ぐらいしかないのではないか。そんなことが話題になっていると、最近、数人から聞いた。キヤノンがウソのスペックを公表しているではないか、と怒っているユーザーも多数いるという。
 でも、いくらなんでも「視野率約100%」とはっきりと公表しているのに「97%ぐらいしかない」ということは考えられない。ぼくにはキヤノンが、そんな、すぐにばれるような「ウソ」を言うとは到底思えない。CIPAで決められた測定方法を誤魔化してキヤノンがスペックを公表するなんてことはあり得ない。キヤノンが「約100%」と言えるだけの根拠があることは間違いないだろう。

 とはいえ、7Dのファインダーを覗いて見てみると他の視野率約100%のカメラとは少し異なった見え方をすることは確かだ。ファインダー画面周囲のぎりぎりが少し見づらい感じがする。
 この原因は ―― たぶん ―― 視野角度やアイポイント長や視野倍率の影響で「約100%」に見えないのではないだろうか。


 7Dのファインダー倍率は、かなりがんばって1.0倍にまで向上させている(APS-Cサイズセンサーのカメラ相当で)。倍率が高くなるほどファインダー内の像が大きく見え、ピントの確認もピント合わせもやりやすくなる。しかし、ペンタプリズムのサイズも含めてファインダーまわりをコンパクトにしたまま、そしてアイポイント長をそこそこ確保してファインダー倍率をアップするためには、ファインダー光学系の設計は相当に無理をしなければならず、そのしわ寄せがどこかにきているはずだ。

 7Dのアイポイント長は約22mm。ちなみにEOS 50Dは、視野率約95%でファインダー倍率は0.95倍だが、アイポイント長は7Dと同じ約22mmだ。この数値を見比べるだけでも、EOS 7Dが相当に「無理」をしていることがわかる。撮影倍率をアップするには(もっとも簡単な方法は)アイポイント長を短くすればよい。しかしアイポイント長が短くなればファインダー接眼部に眼をぴったりと密着させるぐらいにして覗かないと、ファインダー画面全体をいちどに見渡すことが難しくなり、結果的に見かけ上の視野率も下がる。倍率とアイポイントをそこそこの数値を維持して、さらに高い視野率を確保しようとするのは相当に難しいはずだ。
 さらに、もう1つ、視野角度の問題もある。 ―― 以降、話が長くなるので、このつづきは明日に。