645D、無料貸し出し

ペンタックス・645D+FA645 80?160mmF4.5
 ペンタックスの645Dを2時間、借り出して自由に撮影(試写)ができる体験イベントが始まる。ペンタックスの太っ腹。本日、7月21日から日曜日の25日までで、場所は新宿にある「ペンタックス・フォーラム」。詳細はこちらにどうぞ。

 645Dは皆さんはよくご存じでしょうけれど約80万円もする「中判デジタルカメラ」である。興味はあるんだけど自分で試してみてからでないと手も足も出せない、と思っておられる人にはこれはいい機会ではないかと思う。2時間借り出して自由に使って、無料。大型カメラ量販店などでは店頭で“手にする”ことはできるが、「試し撮りしてみるからちょっと貸して」というわけにはいかない。かりに店頭で試してみることが可能で、メディアを自分で持っていって試写することができたとしても、むろん外に持ち出すことなんかできない。
 同じ悩みは交換レンズを購入するときもそうだ。いや交換レンズのほうがもっと悩みは深刻ではなかろうか。AのレンズとBのレンズを撮り比べてみて納得の上で購入するということは、現状では、よほどカメラ店と懇意でもないかぎり(それでも不可能に近いけど)それはできっこない。


 いま645Dの購入を考えている、という人でなくても ―― カメラボディだけで80万円もするんだもんね、ハナから諦めるよねフツーは ―― 中判デジタルカメラの“写り”に興味のある人には、たった2時間だけど、これは愉しめると思う。フィルム645のユーザーなら自分の使っている交換レンズを持っていってチェックしてみることもできる。フィルム67用の交換レンズでも(たぶん変換アダプターは用意してくれていると思うので)それを645Dにセットして試し撮りすることもできなくもない。

 ここで、余計ないことかもしれないが、645Dを借り出して試写してみるときの注意点をいくつか。
 645Dの「実力」をしっかりと確かめたいのであれば三脚を持参されるのがよろしいでしょう。三脚を使って低速シャッタースピードで撮影するときは、ぜひミラーアップ撮影したい。ミラーショックによるカメラブレを極力、避けるためだ。ケーブルレリーズまたはワイヤレスレリーズがあれば文句ないけど、なければ「2秒セルフタイマー」を使うこと。「2秒セルフ」ならミラーアップする必要はない。
 JEPGはむろん、ラージでファイン。JPEG+RAWで撮っておくことをすすめる。RAWはペンタックス独自の「PEF」と汎用RAWファイル形式の「DNG」があるが、ここは文句なしに「DNG」を選んで撮っておくこと。PEFは専用のRAW現像ソフト(製品に同梱)がないと処理ができないうえに、現像ソフトがあまりよろしくないのでおすすめできない。DNGファイルなら Photoshop などで現像処理することができるし、その仕上がり結果は専用ソフトよりもずっと良い。
 同時に借りるおすすめレンズや試写のための設定モードのハナシなど、もっともっとあるんだけど長くなるので、ま、本日はこのへんで。どうぞ愉しんできてください。

追伸
 ベルボンの三脚と専用のリモコンレリーズは貸し出し用として、数は限りがあるそうだけど用意してあるんだって。だから“手ぶら”で行けばいいってことですね。なお、撮影した画像を持って帰るには自分でSDカードは持っていく必要ありですよ。いくらなんでもペンタックスはソコまではやってくれんです。

ユニット交換式カメラを製品化したことの勇気

リコー・GXR+P10 28?300mmF3.5?5.6 VC
 GXRは、レンズと撮像センサーなどが一体化された「ユニット」と、液晶モニターや操作部などを備えた「ボディ」を組み合わせて使用する“システムカメラ”である。いまのところボディは1つ。ユニットは ―― これをリコーは「カメラユニット」と言っているのだけど ―― 3つある。システムカメラだ。デジタルカメラでは世界初、そして世界唯一のカメラシステムである。こうした形式のカメラを「ユニット交換式カメラ」とよんでいる。いや正確にいうならば、GXRが出てくるまではこうした形式のカメラは世の中になかったのだから、GXRが出てきて急遽、ユニット交換式カメラとなづけるようになったと言ってもよい。

 ユニット交換式カメラはデジタルカメラであるからこそ可能なわけで、だから、リコー以外のカメラメーカーは多かれ少なかれこうした形式のカメラの研究や試作はやっていたはずだ。事実、ぼくはだいぶ前からぼつりぽつりとそうしたうわさ話は聞いていた。でも、リコーのおもしろいところは、あれこれの試作だけにとどまらずに、とうとう製品化して売り始めたというところにある。そこがスゴイと思う。

 なにせ“初めて”のことだから参考やお手本にするようなカメラがない。すべてが手探り状態でことをすすめなければならない。ハイリスキー。たぶんリコーは、リスクに躊躇し引き返すよりも「カメラの夢」を選択し前に突き進んだのではないかとぼくには思える。サントリー創業者の「やってみなはれ」の精神に近いものがあるようにも感じる。だからこそ、チカラを込めて応援したくもなるというものだ。


 リコー以外のカメラメーカーもこうしたユニット交換式カメラを“やっていた”と言ったけれど、じつは、あるメーカーが製品化の直前まで進んでいたことがあったのだ。
 GXRと大変に似た仕様で、ボディのほかにユニット部は3つ用意されていたという。試作機まではほぼ完成。そこで役員を集めて製品化するかどうかの会議がおこなわれた。ゴーの決定が出れば、あとは金型をおこしたり部品を発注したりしてイッキに製品化に突き進む。
 ところが、「いったい何台売れるんだ?」とか「そんな価格で売れると思ってるのか?」といった否定的、悲観的、夢のない意見が大勢を占めて ―― 企業だからしょうがないけど ―― 結局、製品化が見送られてしまった。つまり、ボツだ。それが、GXR発表のン年前のこと。ゆえあって、メーカー名も、ン年のことも言えない。

 「リコーのGXRが発表になった日には、当時の関係者のあいだでメールが飛び交いましたよ…」と、あるメーカーの、ある人が悔しそうに言っていた。似たような話は、きっと、そのメーカーに限らずあちこちのカメラメーカーでも起こっていたに違いない。でもリコーは製品化した。ウチはもっといいものを企画してたんだぞ、なんて言ったって繰り言にしか聞こえない。

 ところで、以下はぼくのあてにならない予想だが、ユニット交換式カメラを製品化直前まで完成させたそのメーカーが、パナソニック、オリンパス、サムスン、ソニーに次いで、そうとうに魅力的なレンズ交換式ミラーレス一眼カメラを出してくるような、そんな気もする。その、あるメーカーにとっては、ユニット交換式カメラの技術的困難さ、営業的販売的不透明さに比べれば、ミラーレス一眼カメラを作って売ることなんぞお茶の子さいさいじゃないか、と考えるのだけど、さてどうでしょうねえ。

月と離れてしまった宵の明星

リコー・GXR+P10 28?300mmF3.5?5.6 VC
 GXR用カメラユニットの名称についての解説、昨日のつづき。

 A12の「50mm」、S10の「24?72mm」、P10の「28?300mm」は ―― 少し話が込み入るのだけど ―― それぞれのレンズの実焦点距離数を表しているのではなく、35mm判換算での「換算画角」を示している。つまり、P10は35mm判カメラ換算で28?300mmレンズの画角相当をカバーするズームレンズを内蔵している、という意味だ。
 各カメラユニットのレンズの“正しい焦点距離”は、A12が「33mm」、S10は「5.1?15.3mm」、P10は「4.9?52.5mm」である。
 GXR用カメラユニットがこうした表記スタイルを採用したのは、各ユニットの撮像センサーのサイズが異なり焦点距離と画角の換算で混乱するのを避けるため。撮影画角を直感的に理解してもらうための表記と考えればよい。リコーの、ユーザー目線にたったユーザーにやさしい表記であると思う。

 レンズの焦点距離と画角の関係は、撮像センサーの大きさ、つまり実画面サイズによって変わる。同じ焦点距離のレンズでも実画面サイズが小さくなれば画角は狭くなる。サイズが大きくなれば画角は広くなる。
 写真の世界では撮影画角を表すときには実際の角度の数値は使わずにレンズの焦点距離数値でいうことがムカシから一般的である。35mm判カメラでの話に限定するが ―― 中判カメラの話は少し横に置く ―― たとえば焦点距離50mmの対角線画角は約46度だが、「このレンズの画角は46度」なんてことは通常、言わない。「50mm画角」で通じる。


 というわけで、撮像センサーのサイズがまちまちのデジタルカメラでは、「画角」をわかりやすくするために、一般的な35mm判カメラに“置き換え”てそのときの換算焦点距離をいうようになった。GXR用カメラユニットのレンズ焦点距離が35mm判換算での焦点距離が表記されているのはそうした理由からだ。レンズだけが交換できるシステムなら話は少し違ってくるけど、GXR用カメラユニットは撮像センサーとレンズは固定されている。
 リコーのこの表記はヘンでもナンでもない。じつにまっとうで正しい。デジタルカメラにとっては、理想的な表記方法、と言ってもいいくらいだ。

 ところが、上記のような換算焦点距離をユニット名称とするのは ―― 各ユニットのレンズには実焦点距離が明記してあるにもかかわらず ―― “サギ”じゃないか、なんてトンチンカンなイチャモンを付けているヤツがいるようだ。ユニットの名称には実焦点距離を書け、とも言っているらしい。あほじゃなかろうかと思う。度し難いほどのバカに違いない。
 かりに「RICOH LENS P10 4.9?52.5mmF3.5?5.6 VC」なんてのがカメラユニットの名称だとしたら、ぼくなんか、それを見ただけでうろたえてしまいユニットを地面に落としてしまうだろう。(まだ、つづく)

追記
 P10の「P」の意味。
 Pクイズの正解はPetit(プチ)。twitterやメールで応募していただいた中で2名の方がドンピシャ。粗品を送りますから住所と名前を知らせてください。“準正解”はPico(ピコ)。こちらは多かったですね。ピコはねえ…1/2.3型CMOSはいくらなんでもピコサイズではないでしょうよ。で、Picoはハズレにしました、ごめん。なお、リコーは公式にプチのPとは言っておりません。「Pには特別の意味はありません」がリコーの公式回答です。でも、その回答のあとに「Smallよりも小さいからPetitのPとでもしておこうか、という話もありました」と裏話を加えてくれました。
 皆さん、ぼくと遊んでくれてありがとうございました。愉しかったです。

カメラユニット名称あれこれ・その1

リコー・GXR+P10 28?300mmF3.5?5.6 VC
 GXR用のそれぞれのカメラユニットの正式名称は、「GR LENS A12 50mmF2.5 MACRO」、「RICOH LENS S10 24?72mmF2.5?4.4 VC」、そして「RICOH LENS P10 28?300mmF3.5?5.6 VC」である。これについて(余計なお世話だろうが)少し解説しておく。2回、続く。

 S10とP10の「VC」はリコー独自の手ブレ補正方式で「Vibration Correction」の略である。S10もP10もセンサーシフト方式。タムロンも独自の手ブレ補正のことを「VC」とよんでいるが、こちらは「Vibration Compensation」の略で、レンズシフト方式。名称こそ似ているが技術的な共通点はまったくない。
 GR LENS と RICOH LENSの違いは、ま、言ってみれば“格の違い”みたいなものかな。「GR」とネーミングするぐらいだからリコーとしてはそれなりの思い入れもある。実際、「GR LENS」と名付けられるための事細かなキマリがあるようだ。以前、それを聞いていたのだがめんどうになって「もうイイですわ…」と説明を中断してしまった。


 それはそうと、今年中に正式発表されるとは思うが、28mm相当のレンズを内蔵させたカメラユニットのものも「GR LENS」と名づけられるようだ。3月のCP+で参考出品されていたものがそれで、カメラユニットの名称は「GR LENS A12 28mmF2.5」となるということ(これがなかなか良さそうだし、その後に出てくるかもしれない“画期的なユニット”もあるし…)。

 さて「A12」、「S10」、「P10」のAやSやPについては、「記号みたいなものでそれほど深い意味はないです」とリコーの担当者は言っていたけれど、「A」はAPS-Cサイズ撮像センサーのこと、「12」は約1240万画素であることを意味しているようだ。S10のほうは1/1.7型の約1000万画素CCDを使用していて、では「S」はというと「小さい=Small」ということらしい。10は約1000万画素のこと。

 じゃあ、もっと小さな1/2.3型の約1000万画素CMOSを搭載しているP10の「P」は、これはなんの略なのでしょうか? なにを意味しているでしょうか?
 さあて、わかる人、手を挙げて答えを言ってください。正解すれば ―― いやじつは“正解”はないので、いちばん近い答えを言った人に ―― 1名限定で粗品を進呈しましょう、か。正解は後日、twitter 上で発表しますね。(もう少し、つづく)

P10とCX3の違い

リコー・GXR+P10 28?300mmF3.5?5.6 VC
 P10カメラユニットの28?300mm相当のズームレンズはCX3内蔵のズームと“基本的に同じ”なのだけど ―― 7群10枚構成でそのうち4枚5面が非球面レンズであることも、開放F値も最短撮影距離も同じ ―― ただし、1つ2つ、大きく異なる点がある。
 どちらもいわゆる沈胴式のズームレンズである。収納時にはレンズ群がぎゅっと圧縮されるようになって薄くコンパクトになる。しかしその方式が多少、異なる。CX3のズームレンズのほうは収納時に一部のレンズ群がレンズ光軸から横にズレる方式。ズラして畳み込むことでより薄型にできる。レンズ群待避方式である。これに対して、P10カメラユニットのズームのほうは待避方式ではなく、収納時にすべてのレンズ群が順々に縮む通常のオーソドックスな沈胴方式を採用している。そのため収納時にはCX3のように薄くない。

 P10カメラユニットとCX3を収納時の状態(メインスイッチOFFにしたとき)で2台を並べて見ると、“同じズームレンズ”とは思えないほどCX3のほうが薄型である。リコーとしてはP10カメラユニットでもCX3と同じく待避構造の沈胴方式を採用したかったのだろうけれど、しかしカメラユニットの大きさの制限もありレンズ群を待避させるスペースがなかったため、たぶん、仕方なく通常の沈胴式にしたのではないか ―― いうまでもなく、CX3のズームの光学系をそっくり流用したほうがコスト的にも有利なのだが、そこを敢えてコストアップを覚悟のうえでレンズの構造を変えている。


 レンズの構造を変更したことで ―― くどいようだがレンズ構成はまったく同じだ ―― そのために描写性能に違いが出てきたかと言えば、レンズの描写そのものについては(ぼくが見た限りでは)まったく同じようであった。撮像センサーも同じ裏面照射型の約1000万画素CMOSである。じゃあ、画質(写した画像)もP10カメラユニットもCX3も同じだよね、と思うだろうけれど、いやいや、これが違う。

 独善的断定的に言えば、文句なしにCX3よりも「GXR+P10カメラユニット」の画質のほうが良かった。たぶんユーザーターゲットのことを考えて微妙に絵づくりの“味付け”を変えているだけだろうけれど、しかし、たったそれだけのことでこんなにも違ってくるのか、と少しびっくりだった。
 両機種で撮った画像のエッジ部を見比べてみれば(目の肥えた人なら)一目瞭然だ。P10のほうが滑らかでナチュラル。ちっぽけな撮像センサーを使った最近のコンパクトカメラでよく見られるようなシャープネスだけ強くした「シロートだまし」のエセ絵ではなく、まあこれなら許せるぞ、と言ってもいいような画像になっている。彩度も、けばけばぎらぎらではなく大人っぽく落ち着いている。
 皆さん不満たらたらの超小型高画素の撮像センサーでも、(良いレンズを使って)シャープネスと彩度を少し控えめにして絵づくりをしてやるだけで ―― と、そんなカンタンなことではないことは百も承知だけど ―― だいぶ“まとも”な画像になるという見本を見た思いだった。うーん、こんなオタクっぽい話なんてどーでもいいか。(でも、つづく…)。

GXRはあれこれ“夢”が広がるカメラですねえ

リコー・GXR+P10 28?300mmF3.5?5.6 VC
 撮像センサーとレンズと画像処理エンジンがセットになった「カメラユニット」をまるでレンズ交換するように交換するタイプのカメラである。じつにユニークなカメラシステム。大変におもしろいカメラシステム。とっても“夢”のあるカメラシステム。素晴らしい拡張性を秘めたカメラシステム、なのだ。このGXRの「広がる夢」にどこまで期待するかどうかで評価が分かれてしまう。
 リコーが今後、GXRでどのような展開を狙っているかがぼくにはうすうす見えているから(それは内緒)、おもしろいカメラシステムと評価しているのだが、そこが見えない人たちにとっては(想像力のチカラの問題もあるだろうけど)、なかなか理解しづらいカメラなんだろうなあと思う。

 新しい話題やモノを見たとき、まず(上から目線で)否定し非難してからでないとハナシがすすめられない人がいたり、逆に、おおっエエじゃないですかおもしろいですねえと(楽天的に)肯定してハナシを盛り上げていこうとする人がおりますけれど、ぼくはどちらかといえば後者のほうで、だからといっちゃナンだけど、GXRのことは現在、大評価大期待しているわけです。
 もともとぼくはリコーのカメラが好きなんだが、そのうえGXRについてはやや贔屓の引き倒しの感なくもない(と、少し自己反省…)。


 「カメラユニット」は、液晶モニターやメモリーカードスロット、バッテリー、シャッターボタンやカメラ設定操作部などを備えた「ボディ」に取り付けて使う。
 「ボディ」には「カメラユニット」だけでなく超小型プリンターやスキャナー、通信装置などなどのユニットをセットして使用することもできる(こうしたユニットは現在は企画段階でまだ具体的な製品化には至っていないが、遠からずそれらの中のいくつかが製品として出てくると思う)。

 GXRのカメラユニットには、マクロ50mm相当レンズ+APS-Cサイズの約1240万画素CMOSセンサー(A10カメラユニット)、24?72mm相当ズームレンズ+1/1.7型の約1000万画素CCDセンサー(S10カメラユニット)の2つが用意されている。
 そこに今回、新しく28?300mm相当ズームレンズ+1/2.3型の約1000万画素CMOSセンサー(P10カメラユニット)が加わったというわけだ。28?300mm相当の高倍率ズームレンズも1/2.3型CMOSセンサーも、リコーのコンパクトデジタルカメラのCX3に採用されているズームレンズと撮像センサーと“基本的には”同じもの。CMOSセンサーは毎度おなじみの裏面照射型。(つづく…)。

あかき血しほはたんぽぽの

オリンパス・E-PL1+M.ZUIKO DIGITAL ED 14?150mmF4?5.6
 北原白秋の詩集「思ひ出」。白秋の詩を読んでいると目の前に色彩が広がる。

 この黄ばんだ本の奥付を見ると、出版社は「アルス」で、発行は昭和21年8月。むろんぼくの生まれる前に出た本。本棚の奥から出てきた。誰が買ったんだろうか、父が買うわけないし。京都の古本屋さんでぼくが買ったものかもしれない、遠い昔のこと。

 発行者は北原鐵雄。北原白秋の弟。出版社のアルス(ARS)の代表は、その北原鐵雄でアルスの創設者でもある。
 アルスといえば、そう、あの有名な、大正時代から戦後にかけて写真専門誌の「カメラ(CAMERA)」を発行しつづけてきた出版社である。カメラ関係の出版物が多い。鈴木八郎さんや北野邦雄さんの古い本などは、日本カメラ博物館の図書館で見たこともある。ぼく自身もアルスから出版されたカメラ関係の雑誌はいくつか持っている。


 ところで、「コマーシャルフォト」や「フォトテクニック」、「イラストレーション」などの写真関係の雑誌や写真集をたくさん出版しているのが玄光社である。ぼくも、だいぶ前のことだけどMOOKを出版したことがある。この玄光社 ―― 創業は古い、昭和初期か ―― その創設者が北原正雄。北原白秋の従弟(らしい)。アルスと玄光社との関係は知らない。

 なぜか北原白秋と写真やカメラがどこかで深く繋がっていて、ひょんなことから古い詩集を見つけて、ほほーっ、と感心した次第であります。ということで本日はこれだけ。

ソウル近郊、水原駅で

オリンパス・E-PL1+M.ZUIKO DIGITAL ED 14?150mmF4?5.6
 同じM.ZUIKO DIGITALの広角ズームレンズである9?18mmF4?5.6もそうだが、AF駆動時の音が大変に静かになった。レンズに耳をくっつけるようにしてAF駆動させても音がまったく聞こえないぐらい(ちょいと大袈裟だけど)。
 いっぽう、標準ズームの14?42mmF3.5?5.6のほうはといえば、とくにコンティニアスAFにしてピントを合わせをしたりすると頻繁に「ジッジジッ」と小さな音がする。通常の撮影ではぜんぜん気にはならないのだけど、静かな場所で動画の撮影をするとしっかりとその音が録音されてしまう。

 14?42mmと比べれば9?18mmも、この14?150mmもAFは静かで速い。AFでレンズを動かす機構を一新したからだ。この開発が難しかったそうで、9?18mmと14?150mmの発売が遅れに遅れたのはこれが原因だったらしい。でも、ま、速い、って言ったって位相差AFに比べれば“いまのコントラストAF”は、たかがしれてる ―― でも将来はわからんよ、コントラストAFも位相差AFに近いハイスピードになるかもわからんぞ。
 それはそうと、いまのミラーレス一眼はどれもこれも動体予測AFで撮れるカメラはない(はず、すべて試したワケじゃないので)。最新型のソニーのNEXシリーズだって、AFは速いよ、連写スピードも速いぞ、とは言ってるけど向こうからカメラ側に向かってくるものをピントを先送りして撮ることはできない。ピントが行ったり来たりのハンチングも頻繁にする(中にはハンチングが収まらずいつまでたってもチッチッチッやってるものもある)。この点をみてもコントラストAFはまだまだで、もっとガンバッテもらわなくちゃならない。

〓タイトルに「KTX」と書いてましたがそれ間違い。『写っている列車はKTXではなく新型在来線特急「ヌリロ」号』だとのことです。「鉄」知らずでごめん。ご指摘ありがとうございました〓


 7月の中旬に発売予定だが、オリンパスからPEN用のカメラストラップが発売される。とても珍しい「2ウエイ(2-Way)」タイプのストラップで、通常のショルダーストラップとしてもハンドストラップとしても使える。発売前に試作品を少し使わせてもらったのだけど、これがなかなか良くできておりました。欲しい…。
 ストラップの「感触」がすごぶるに良い。初めて手にしたとき「うわぁ、ストラップの素材に高級なレザーを使ってるんだなあ、贅沢ッ」と、すぐに鼻に近づけて臭いをかいだのだけどレザーの臭いがまったくしない。でも、手触りは丁寧になめしたレザーの感触。おやっ? と不思議に思って聞いてみると、なーんだ、レザーではなくポリウレタン素材。

 いやでも、レザーでなくてもポリウレタンだったとしても、まるで高級レザーのような柔らかな手触り感で、不満はまったくない。色は鮮やかなレッド。ちょうど、印刷用語でいうところの「金赤」のような明るい赤色で、この赤色がレーザーでは出しにくいらしくてそれでポリウレタンの素材を選んだらしい。ホワイトボディのPENに、ほらこんなふうによく似合う。
 この2ウエイストラップはPEN用、とは言ったけれど、むろん他のメーカーの一眼レフカメラに使うことはできる。最大耐荷重は「約2.5?(25?じゃないぞ)」ということなので、よほどデカい重いレンズをセットしない限り使える。そこでペンタックスのK-xのカラーモデルと組み合わせてみたら、これが素晴らしい。というわけで、カラーK-x(とくにホワイト系ボディの)ユーザーは、このストラップは要注目ですぞ。詳しくはオリンパスホームページのここでどうぞ

「レンズの味」と「レンズの個性」

オリンパス・E-PL1+M.ZUIKO DIGITAL ED 14?150mmF4?5.6
 このオリンパスの14?150mmズームレンズに限らず、最近、どこのメーカーの交換レンズも性能はとても良くなっている。解像力も階調描写力も、操作性もいい。秀才レンズばかりだ。逆光での描写性能もすこぶる良くなっている(ただし逆光でたまに、おやおや、と呆れるような写りをするレンズもなくもないけれど、しかしそれも昔に比べれば数は極めて少ない)。
 14?150mmズームを使ってみて、つくづくそう感じた。広角から望遠までをカバーする高倍率ズームの中では秀逸と言っていいほどの優れた描写性能を持つレンズだ。広角側でも望遠側でも、ここまで安定して破綻の少ない描写力を備える高倍率ズームレンズは珍しい。

 最近のレンズの性能が良くなった理由はいくつかあるのだが、その中でもっとも大きな要因はデジタルカメラの出現によるものだろう。フィルム時代ではフィルムそのものがレンズを通って写る画像に対して「優しさ」を持っていた。レンズのダメな部分はオブラートに包み込むようにして隠し、レンズのいい部分だけを引き出して強調してくれるような、そんな優しさがあった。レンズもまた、そうしたフィルムの優しさに甘えるところがなくもなかった。フィルムとレンズの性能向上のストーリーは、まさに二人三脚でもあった。


 ところが、デジタル時代になると、一転、レンズの悪いところも良いところも平等に、ストレートに表に出てくるようになった。フィルムに比べればデジタルセンサーは優しさなんてみじんもない。冷酷無比、血も涙もないといってもいいくらいだ。
 さらにデジタルカメラが高画素化していくにしたがって、レンズにとってはたまったもんじゃなくなる。まるでレンズの高精度テストチャートを手を変え品を変えて毎日、試し撮りされているような状況だ。それがリアルタイムでインターネット上にさらされる。だから、必然的にフィルム時代とは比較にならないほどレンズの“科学的光学的”な描写性能を向上させ、安定させなくてはならない。その結果、さまざまなレンズ設計技術や製造技術がデジタル時代になって飛躍的に進歩、発展したようにも思える。

 いままで到底、製造が不可能だったような曲率の高い大型の非球面レンズの出現や、新種のガラス硝材の採用、特殊なレンズコーティング技術の開発、高精度なレンズを安定的に生産できる組み立て技術と検査技術などなど。たぶん、レンズ性能は今後、もっともっと向上していくに違いないと思われる。

 ただ、フィルム時代からデジタル時代になって、1つ、大切なことが忘れられてきているようにも思う。それは「レンズの味」であり「レンズの個性」ではないか。あまりにも無味乾燥な光学性能だけを追究するようなレンズが多すぎではないかと思わないでもない。14?150mmズームも、しいて言えばこうした最近の「秀才レンズ」の1本に加えられるかもしれぬ。それはそれでいいと言えばいい。しかし、いまオリンパスのレンズに求められるのは ―― 光学的性能は充分に優れたものがあるのだから ―― 次はレンズの「味」と「個性」を発揮するように冒険(チャレンジ)することだと思うものでありますよ。

交換レンズの愉しみ

オリンパス・E-PL1+M.ZUIKO DIGITAL ED 14?150mmF4?5.6
 14?150mmF4?5.6。マイクロフォーサーズ用の小型軽量の高倍率ズームレンズである。ズーム倍率は約10倍。28?300mm相当の画角をカバーする。パナソニックからも同じくマクロフォーサーズ用として14?140mmF4?5.8が発売されているが、こちらのほうはレンズ内に手ブレ補正の機構が組み込まれている。そのためレンズは少し“太め”で、オリンパスのそれに比べると重い ―― 手ブレ補正のためだけではないだろうがパナソニックが約460gなのに対してオリンパスのほうは約280gとだいぶ軽い。価格も、実際のストリートプライスを比べてみたらオリンパスのほうが約1万円ほど安いようだ。描写は ―― 詳しくはあらためてするつもりだけど ―― これがなかなかよろしい。

 どちらも同じマイクロフォーサーズ用のレンズで互換性があるとはいえ、片方はレンズ内手ブレ補正方式、もう一方はボディ内手ブレ補正方式であることも考えれば ―― ぜんぜん違う焦点距離のレンズならいざしらず ―― やはり、ここはパナソニックのカメラにはパナソニックのレンズ、オリンパスのボディにはオリンパスのレンズと組み合わせるのがいちばんのおすすめではないか。


 M.ZUIKO DIGITALにはすでに14?42mmF3.5?5.6の“標準ズーム”が存在する。PENユーザーなら、ほとんどの人がそのズームを持っているはずだろう(おれは17mmF2.8オンリーだ、というへそ曲がりもおいでにはなるだろうけど)。そのうえ、あらたに14?150mmズームを購入するとなると、いま使っている14?42mmが「ムダ」になってしまう。14?150mmの焦点距離域に14?42mmがそっくり入り込んでしまうから、ムダになってしまう…、と考えるのはとうぜんだろう。じつに悩ましい問題なのだが、しかしながら、レンズ選びのたびに焦点距離がオーバーラップする悩みは、レンズ交換式カメラの宿命ともいえるものなのだ。

 さてそこで、以上のことは百も承知千も合点で、あえてぼくは、焦点距離が重複してもいいから14?42mmズームのユーザーに14?150mmズームをおすすめしたいですね。
 たしかに、14?150mmズームを使い始めると14?42mmズームの出番はほとんどなくなってしまう。でも、万能型の14?150mmズームをPENから外して久しぶりにちっぽけな14?42mmズームを使ってみると、いままで気づかなかった14?42mmズームの「良さ ―― コンパクトさと軽快な操作感」が再発見される。カメラを構えたときの気分も、撮れる写真も大きく違ってくる。
 そうです、それこそがレンズ交換式のカメラのもう1つのおもしろさ、愉しさなんですよ。

 たとえば、同じマウントの50mmレンズでも開放F値が異なるだけ、レンズ設計の新旧だけで50mmレンズを何本も揃えている人もいるくらいで(ぼくがそうです)、そこまでオタクになれとは言いませんけど、ぜひ皆さんにも、レンズの沼にずぶりずぶりと入り込んで欲しいなあ、と、まあ、そう思うわけですよ。