「屈曲+沈胴」ハイブリッドズームレンズ

キヤノン・IXY 50S
 「屈曲沈胴プリズム退避鏡筒」式ズームレンズのメリットは、コンパクトな高倍率ズーム化とボディの薄型化である。メインスイッチをOFFにしてズームレンズを収納させたときに、いかに小さく薄く“畳み込めるか”、その答えが「屈曲沈胴プリズム退避鏡筒」だったわけだ。
 コンパクトカメラは薄型小型であるほど人気も高い。売れる。だから小型化のためには各社とも苦労を重ね、さらに、より小型化するために撮像センサーをどんどんと小型化してきた。センサーサイズが小さいほどレンズを小さくできる。レンズが小さければボディを小型薄型化できる。レンズが小さければカメラは安くできる、センサーも小さければ安い…と、これは余談。

 カメラの「小型化」についてはちょっと横に置くとして、収納時のボディを薄型にするために、たとえば屈曲型レンズをボディ内に組み込んだり、沈胴式にしたり、さらには収納時に一部レンズ群を待避させる構造を採用した沈胴式や、さらには一群のレンズを待避させるだけでなく二群を同時に待避させるという構造の高倍率ズームレンズを作った。
 そうした中でIXY 50Sは屈曲型ズームと沈胴型ズームを組み合わせて(待避型ではない)、36?360mm相当の10倍ズームながら収納時のボディ厚を約2センチちょっとという薄型に仕上げた。他の同クラスの高倍率ズーム内蔵のカメラに比べて約1センチほど薄い。


 屈曲型ズームと沈胴型ズームの“ハイブリッドズームレンズ”は、4?5年前にパナソニックがTZ-1だったかで始めておこなって内蔵させている。35?350mm相当の10倍ズームであるがボディの厚みは約4センチもあった。このパナソニックのTZ-1とIXY 50Sとは同じ屈曲型+沈胴型ではあるが、ひとつ決定的に違う点がある。
 50Sのそれはボディ内に横置きされた屈曲型ズームが「動く」ことだ。それも極めて高精度な位置合わせが要求されるプリズム部が、メインスイッチのON/OFFのたびに出たり引っ込んだりする。TZ-1は固定させたまま。

 キヤノンはコンパクトカメラに屈曲型と沈胴型のハイブリッドズームの採用をだいぶ前から狙っていて、レンズの光学設計そのものはすでにできあがっていた(ようだ)。ところがレンズを作る側が、つまり製造側がその難易度の高さのためになかなかクビを縦にふらなかった。製造側は相当に苦労をしたようで、「作れるっ」となってようやく50Sが製品化された。
 いちばん苦労したところが、そう、プリズムが出てきて沈胴ズームの光軸上に“ピタリッ”と正確に停止することだった。屈曲型ズームは固定式であってもプリズム部の精度がレンズ精度の“肝”を握っている。沈胴型ズームレンズよりも、屈曲型ズームのほうがイマイチ描写性能のよろしくないものが多々あるのは、このプリズム部の組み付けが難しく、安定性が保ちにくいからだ。

屈曲沈胴プリズム退避鏡筒

キヤノン・IXY 50S
 IXY 50Sの最大の特長は内蔵ズームレンズに「屈曲沈胴プリズム退避鏡筒」方式を採用していることだ。この長ったらしく即物的ネーミングは最近のキヤノンの“特長”で ―― ちょっと話が横道にそれるが、特殊レンズコーティングの「SWC」にしたってその意味するところは「SubWavelength Structure Coating (サブ波長構造コーティング)」なのだ。ニコンのナノクリ(ナノクリスタルコート)やペンタックスのABC(エアロ・ブライト・コーティング)のように、もうちょっとシャレたネーミングができなかったのだろうかと感じたもんだけど、そのSWCの上をいくようなしゃれっ気のない論文の題名のような「屈曲沈胴プリズム退避鏡筒」という名前を聞いたとき思わず「ぷっ」と吹き出してしまった。

 「屈曲沈胴プリズム退避鏡筒」とは、並んだ単語をそまま分割していけばどういうものかだいたいわかるはずだ。「屈曲」は屈曲型とか折り曲げ式と呼ばれているプリズムを使って光路を直角に折り曲げる方式。「沈胴」は、そうあの沈胴式のレンズである。「プリズム待避」は屈曲式レンズに使用するプリズムを逃がしてスペースをかせぐことの意味。「鏡筒」はレンズを包み込む装置のこと。…いまいち、よくわからんか。


 ぼくの説明がツタナイから、もうひとつレンズの構造が伝わらないでしょうから、この動画をどうぞ。YoutTubeにアップロードした約20秒ほどのアニメーション。音無し。キヤノン提供。これを見れば「屈曲沈胴プリズム退避鏡筒」がどんなものか一目瞭然のはず。

 まず、メインスイッチをONにすると「沈胴式」のズームレンズが前にせり出す。と同時にボディ内に組み込まれた「屈曲型」ズームが伸びるとともに「プリズム」が、沈胴式ズームの光軸上に移動する。これで撮影スタンバイ。撮影が終わってメインスイッチをOFFにすると、プリズムがするするっと横に「待避」してその空いたスペースに沈胴ズームの光学系が収まる。
 このような複雑な光学系を採用したのには理由は2つ。1つは薄型ボディが作れること。もう1つは高倍率ズームが内蔵できること。
 このへんの話は次回でおいおいと。

デジタルカメラの進歩は、これからですぞ

リコー・CX4
 28?300mm相当の内蔵ズームレンズは、CX2、CX3そしてこのCX4と三世代に渡って使い続けている。さらにGXR用のカメラユニット・P10にも“同じ”ズームレンズが使われている。ただし、CXシリーズのほうは沈胴するときにレンズが待避する構造になっているが、GXRのP10は待避するスペースがないのでオーソドックスな沈胴式。
 それにしてもこれだけ長期にわたり、あの機種でもこの機種でも使ってもらえば、このズームも「レンズ冥利につきる」というもの。

 CX3では手ブレ補正の補正段数が約2段であった。それがCX4になって、いっきょに「約3.7段」になった。ジャイロセンサーを高性能なものに変更したらしい。いうまでもなく補正段数約3.7倍はリコーの「公式発表」の数値だから ―― こう言っちゃなんだけど、少し控えめに受け取っておいたほうがよろしいでありましょう。
 とはいえ、そもそも手ブレ補正の効果というものは相当に個人差がある。ブラさないようにカメラを保持して丁寧にシャッターが切れる人なら、3.7段ぶんが4.5段ぶんぐらいの効果を引き出して撮影することも不可能ではない。ぞんざいにシャッターを切って撮れば、2段の効果もおぼつかないだろう。手ブレ補正の機能とはそーゆーもんです。


 CX4で新しく搭載された撮影機能がいくつかある。
 注目したいのは(とりあえず)2つ。1つは「夜景マルチショット」撮影機能。4コマを高速連写して得られた画像を合成することで、手ブレとノイズの少ない画像に仕上げるというもの。手持ちでシャッターを切って画像が多少ズレても画像調整で自動位置合わせをしてくれる。画像処理にちょっぴり時間がかかるのが難点か。
 ただ、この夜景マルチショットでは手持ち撮影が可能なのに、同じように多重(2コマ)撮影をして画像合成してHDR画像に仕上げる「ダイナミックダブルショット」では、旧型と同じように手持ち撮影をすると画像がズレてしまう仕様のまま。手持ち撮影はできない。(それができない理由はともかくとして、次機種ではダイナミックダブルショットも手持ち撮影できるようにしてね)

 もう1つは「自動追尾AF」の機能。AF測距してからシャッターボタンの半押しを続けていれば、フレーミングを変えても始めに測距したポイントにピントを合わせ続けてくれる、いわゆるトラッキングAF機能。
 キヤノンのコンパクトカメラにも同じ機能があるが、今後は、こうしたAF撮影機能に限らずあらゆることがもっともっと性能向上されていくでしょうね。そのことをしっかりと認識した上でカメラのことを見ていかないと、ね。

 言っちゃあナンですが、デジタルカメラが一般化してまだ10年そこそこですぞ。これから、もっともっとデジタルカメラは変化、進化しますよ。
 画素数ひとつとっても、200万画素、300万画素時代に「高画素反対っ」と叫んでいた人がたくさんいました。高画素はだめだ、と否定的なことしか言ってない。ぼくは、そのころに「必ず近い将来、1000万画素当たり前の時代、すぐだよ」と考えてましたから、もっと前向きにカメラの未来を見据えてきた。その当時、ああしたトンチンカンで盲目的な意見を聞くたびに「あほかいな」と思っておりましたよ。

じっくり熟成型カメラ

リコー・CX4
 CX3の「マイナーチェンジ」機種。文字通りのマイナー(小規模)な改良“だけ”をしたカメラである。小さなチェンジだけどカメラ性能としては新しい機能も追加されたりして(ますます多機能カメラになったけれど)だいぶ良くなっている。
 もともとCXシリーズは基本性能を継続しながらマイナーチェンジを重ねてだんだんと良くなっていくカメラでもある ―― 当初からリコーがそれを狙っていたかどうか不明だけど ―― 。「じっくり熟成型カメラ」とでも言えばいいか。

 新型CX4が旧型CX3からそのまま引き継いでいる機能や機構はいっぱい、いっぱいある。1/2.3型約1000万画素裏面照射型CMOSも、28?300mm相当の約10倍ズームも、最高ISO感度3200も、画像処理エンジンも、3型92万ドットの液晶モニターも、操作系のスタイルもデザインも、みーんなそのまま。機能や機構をそのまま引きずらざるを得ない理由があるのだ。
 ただし、ボディの外観デザインは、CXシリーズにしては「大幅」に変わった。


 CX2、CX3のボディ外観のデザインがことさら好きだったぼくとしては、このCX4を見たとき「…うっ」としばらく黙ってしまいましたよ。大慌てで家を出てきて靴下もはかずに革靴姿のまま、のようなボディ外装、という感じもしないでもない。
 そうです、CX4のグリップ部があまりにものっぺらぼう過ぎるというか、あっさりしすぎてるんですよね。その点CX2もCX3も、いま見てもボディデザインの完成度はとっても高かったのに。聞くところによると、ボディを少しでも薄く見せたかったようですね。

 そうした小手先のデザイン変更(やや失敗だったと思う)ではなくて、新型カメラなんだからもう少し「ほんものの変化」が欲しい、という意見もありましょう。しかしですぞ、毎度毎度、モデルチェンジのたびに「大幅」な変更を加えていたのでは、どこのカメラメーカーも“身”が持たない。
 いまカメラは、深刻な低価格化の負のスパイラルに入り込んでいて、そうした現状では「マイナーチェンジ」するか、ペンタックスのコンパクトカメラのようにコストをかけずにアイディア勝負が精一杯なんです。そりゃあ安くて性能が良ければいいだろうけど、でもカメラはね、皆さんが考えているほどそうそう安く安くは作れないもんですよ。安くしようとすればどうしても性能を落とさざるを得ない。しかし重箱の隅をつつくようにして性能が少しでも悪いと文句ばかり言う。
 もういいかげん、そんなむちゃくちゃな要求をカメラメーカーにするのはやめましょうよ。

補足説明

キヤノン・EOS 60D(β版)+EF-S 18?135mmF3.5?5.6 IS
 カメラ内RAW現像で可能な処理はWB、ピクチャースタイル、明るさ調整、周辺光量補正、歪曲補正など10種類ほど。ただしM-RAWやS-RAWのファイルはカメラ内で現像処理することができない。「アートフィルター」というカメラ内で画像処理する機能も、EOS 60Dで新しく入ったもの。撮影後の画像に、トイカメラやジオラマ、ラフモノクロ、ソフトフォーカスの4種類のフィルター処理をかける。どれか選んでから撮影するものではない。

 このようにアートフィルターはオリンパスと同じ名前で似た機能だが、オリンパスのほうは「指定してから」撮影する。ここが60Dとの違い。だからオリンパスのほうはアートフィルター動画が可能だが、60Dではこれができない(もちろんピクチャースタイルでは可能)。
 4種類のフィルターもすでに他のメーカーがやっていることばかりでキヤノン独自のものはないが、アートフィルター処理は「重ねがけ」することもできる。やろうと思えば異なるアートフィルターを重ねがけすることもできる。といってもこれもペンタックスでも同じことができるんだから特段、新しさはない。


 60Dには撮影後に処理をするアートフィルターとは違って、あらかじめ指定しておいてから撮影する「フィルター」機能もある「表現セレクト機能」とキヤノンは言っている。こちらは絵文字モードを選んで撮影する「かんたん撮影ゾーン」でのみ設定ができる。ふんわりやわらく、とか、しっとり深みのある、とか、暖かくやさしく、といった仕上がりを具体的にイメージさせるようなコトバでわかりやすくしている。セレクトできる仕上がりは9種類。この機能は初心者を対象としたものであるが、これはグッドアイディアの機能だ。ベテランでもおもしろく使えるんではないか。ぼくは気に入った。

 60Dの撮像センサーはEOS 7D、EOS Kiss4と(ほぼ)同じ。画質は、ほんのわずかだけど60Dがイイかな、という程度。“まったく同じ”と考えてもよい。そんなことよりも気になるのは60Dと7Dの販売価格だ。7Dの予想外の低価格化で ―― カメラがどうのキヤノンがこうの、ではなくて、いま魔物のような市場の「力学」が働いている ―― 現在の実販の価格は似たようなもので、キヤノンとしては7D、60D、X4と順にラインナップを揃えるつもりだったのが、7Dと60Dの実販価格でわけわかんなくなってしまった。

 7Dと60D、撮像センサーは同じだけど、視野率や連写速度などを比べるまでもなく、「カメラ性能的」は文句なしに7Dが上だと思う。しかし、60Dにはバリアングル液晶モニターがあったりカメラ内RAW現像やアートフィルターの機能があったりして「撮影の愉しさ便利さ」では7Dより上。さて、悩んでおられる方々、どうされますか。

カメラ内RAW現像処理

キヤノン・EOS 60D(β版)+EF-S 18?135mmF3.5?5.6 IS
 技術的な難易度のほどはわからないが、撮影したばかりのRAWファイルをカメラ内で現像処理をすることはそれほど難しいことではないはず。DIGICで撮った画像をあれだけスピーディに処理しているのに、そのDIGICをRAW現像のほうに「逆利用」すればパソコンで処理するよりずっと高速にRAWが展開現像できるはず。

 キヤノンがなかなかカメラ内RAW現像に対応しなかったのは、万が一、それが原因でクレーム ―― ぼくには想像がつかないが ―― が起こったときの対応のことまで考えていたのではないか。触らぬ神にたたりなし、君子危うきに近寄らず、か。
 ぼくが知っている“いままでの”キヤノンであれば、そうなんでよすね、そんなふうに物事を「後ろ向きに難しく考え過ぎる(取り越し苦労する)」ことは不思議でもなくもない。

 おそらく、このカメラ内RAW現像もモードダイヤルのロック機構も、その「一歩」を踏み出すためにキヤノンは社内で相当に議論をしたと思う。そうカンタンなことではなかったはずだ。


 カメラ内RAW現像ができることのメリットは、まずキヤノンにとっては堂々と胸を張って、PIXUSのプリンターでRAWダイレクトプリントができるぞ、と言い切れるではないか。
 いままでのEOSシリーズの一部の機種では、RAWダイレクトプリントができるものもあったのだけど ―― RAWファイルの中に埋め込まれている「隠しJPEGファイル」を引きずり出してそれでプリントする ―― むろん、WBやピクチャスタイルを変更したり選んだりするなんてことは当然ながらできなかった。

 撮ったRAWをそのままプリントするだけだったのが、60Dでは、WBを選んだりピクチャースタイルを変更したりなどなどの処理をおこなったうえで、プリンターとカメラをダイレクトに繋いでプリントすることができる。街の写真屋さんにメディアを持っていって「このファイル、急いでプリントしてちょうだい」といったことも簡単にできる。そのほかにも便利なことや愉しいことがいっぱいある。
 RAWファイルの現像はカメラで“小手先”でやるもんではない。カラー調整したパソコンのディスプレイで「姿勢を正して」おこなうべきだと、いや、まじめにそう言われたこともあって困ったことがあった。でも、撮ったばかりの写真をその場ですぐにWBを変えたりしてみるだけで面白いんだよね、これが。

モードダイヤルにロック装置付けてくれたのはいいんだけど…

キヤノン・EOS 60D(β版)+EF-S 18?135mmF3.5?5.6 IS
 EOSシリーズの新型カメラが発売されるたびに私たちが要求や改善を願ってきたのに、キヤノンがずっと聞く耳を持たなかった状態から、一転、EOS 60Dで“とつぜん”願いを受け入れて「実現」してくれたことは大きく3つあるように思う。
 (1)モードダイヤルのロック機構、(2)カメラ内でRAW現像の機能、(3)カメラ内で撮影画像の簡単なレタッチ機能。
 こうして見てみると、どれも他のメーカーのカメラではだいぶ以前から取り入れているものばかりだ ―― そういえばソニーもカメラ内でRAW現像したり写真をレタッチしたりするのを拒み続けているメーカーだ。

 さて、モードダイヤルのロック装置。Kissなど初心者向けの機種はともかくとして、中級、上級クラスのカメラではモードダイヤルにロック装置を設けるのは必須のこと、当たり前のことだ。
 中にはモードダイヤルにロック装置を設けることに猛反対する人もいることも承知している。「素早くセットできない」というのがその反対理由だそうだが、はたして撮影中に露出モードを頻繁に変更するなんてことがどれほどあるのだろうか。ぼくはそのへんのカメラの操作のやり方がよくわからない。


 でも「モードダイヤルの素早い操作性」よりも、ちょっとしたはずみで ―― カメラを肩から下げて歩いているとか、カバンに出し入れするだけで ―― ダイヤルが動いてしまわないことのほうがずっと大切。せっかく自分が決めた設定が知らない間に変わってしまう、そのことのほうが数倍いや数百倍、困る。撮影することを仕事にしている人(プロカメラとは限らない)にとっては失敗は致命的。失敗しても笑って済まる、ってワケにはいかない。失敗する確率は最小限にして撮影の仕事をしなければならない。ロックの装置さえ設けておけば、その失敗のリスクは、ひとつ、まず回避できる。

 そんなカンタンなことさえ、キヤノンはいままでワカッテなかったのだ。だから、ワカッテなかった時期に作ったEOSシリーズにはモードダイヤルにはロックがなく、クルンクルンとおもしろいように(冗談だぞ)回る。でも60Dでロック対応したことについては文句なしに「良くやってくれたっ」です。
 ところで、60Dのモードダイヤルはロックが付いたからといって万々歳というわけではないのだ。詳細は雑誌のコラム(カメラマン誌「開発者出てこい」)で取り上げるつもりだけど、その60Dのモードダイヤルの回転は「終点まで行っては帰ってくる」方式なのだ。くるくるとフリー回転してくれない。これ、使ってみると困るんだよね。

キヤノンのカメラづくりの姿勢の変化

キヤノン・EOS 60D(β版)+EF-S 15?85mmF3.5?5.6 IS USM
 「あっ」と人を振り向かせるような派手な機能や、華やかで注目するような機構はないけれど、スペック表を見てるだけじゃなく60Dを使ってみたら、なかなかマジメに作られたカメラであるぞ、との印象を受けた。いままでは、ユーザーに対してやや見下ろすような視点でのカメラづくりの姿勢だったのが、60Dではようやくユーザーと同じ視点に立ったかな、といった感じもしないでもない。

 キヤノンにしてはやや「地味」なカメラだ。他社の価格的に同クラスの機種との争いながら、自社では既存のEOS 7DやEOS KissX4との価格やらスペックやらでのせめぎ合い。その地味さと競争相手の多さの中で、ユーザーに対してどのようにアピールし60Dの購入にいらしめるのだろうか、ぼくとしては、いま観客のような気分で眺めているところであります。


 この60Dでは、いままで多くのユーザーがキヤノンに我慢強く「改良」や「採用」を願っていたのに、いっこうにかなえてくれなかったことの多くが「実現」されているということにぼくは注目をしている。
 これはキヤノンの大きな変化。そういう意味ではちょいと「画期的」なカメラではないかと思う。

 そうした“キヤノンの変化”の兆しは、EOS-1D Mark 4やEOS 7Dで少しづつ見え隠れはしていたが ―― この2機種の開発にあたって、いままでとは違う新しいプロジェクトが立ち上がってその成果でもあったのだけど ―― たとえば、1D Mark 4ではISOオート機能の詳細な設定の採用や7Dでのメインスイッチの位置変更などがそのひとつだ。
 では、60Dでは、いままでキヤノンがユーザーの声を無視し続けてきたことのうち、どんなところが「実現」されたのか。そのへんは、ま、おいおいに。

3つの注目機能

キヤノン・PowerShot S95
 改良型の撮像センサー(ソニー製だろう)を使用することで、S95では24fps、720pのHD動画が撮れるようになった。アスペクト比が「4:3」のほか「3:2」、「1:1」や「16:9」そして「4:5」(強制的にタテ位置構図になる)などが選べるようにもなった。そのほかにも改良点や新機能などがあれこれあるのだけど、ぼくがとくに注目したいのは、以下の「3つ」。

 1つは、オートISO機能と上限設定と感度の上がり方の設定の機能を取り入れたこと。2つめは、平行ブレと角度ブレを同時に補正するハイブリットISの機構を搭載したこと。3つめは、特定の被写体を認識記憶させてそれにピントを追尾させるキャッチAF機能の採用である。

 オートISOと上限設定、感度の上がり方設定については昨日、ここで簡単に述べた。感度の「上がり方設定」は3パターンある。(1) ISO感度上限を決めたとき高速シャッタースピードを優先させてISO感度をアップしていく方式。(2) ISO感度の低感度側(高画質)を優先させてぎりぎりまでシャッタースピードをアップしない方式。(3) 標準的に感度とシャッタースピードがアップしていく方式。この3つ。
 これこそ、同じキヤノンのEOSシリーズにもっとも搭載して欲しかった機能だったのに、
EOS 60Dにもいまだ未搭載(ナニやってんのかねキヤノン)。すでに、ペンタックスのK-7に採用されている「感度アップポイント」の設定機能とまったく同じだ。S95もK-7も、設定方法がシンプルでわかりやすい。ぜひ、他のメーカーも意固地にならず取り入れて欲しい。


 ハイブリッドISは、そうです、MACRO EF100mmF2.8L IS ―― いいレンズだよね ―― それに始めて採用された最新の画期的手ブレ機構。従来の角度ブレに加えて平行ブレも同時に補正するというもの。平行ブレはタテブレともいうが近接時なるほど影響を受けやすい。これがS95の内蔵レンズに搭載された。角度ブレ補正のための角速度センサーと、平行ブレ補正のために加速度センサーを使用しなければならないわけで、コンパクトカメラながらえらく贅沢なことをしているわけだ。

 キャッチAFは、他社でいうところのトラッキングAFや追尾AFと基本的には同じ。AFでピントを合わせた被写体が、画面内であちこち移動してもフレーミングを変えても、その被写体にピント補足し続けているAF機能だ。S95ではキャッチAFという。
 ただしS95が他社のカメラと多少異なる点は、ピントを合わせた被写体を「記憶」するということ。擬似的にだけど「被写体認証」の機能を持つ。その操作方法は少し未成熟だが、機能それ自体の完成度は高い。キャッチAFでいったんピントを合わせると画面から一瞬とり逃しても、シャッターを切って撮影しても、その被写体に再びピントを合わせつづけてくれる。ピント補足スピードもなかなか。

 というわけでPowerShot S95についてはひとまず終了して ―― このカメラ、ハナシはいっぱいあって困るが ―― 明日は(時間があれば、だけど)EOS 60Dのハナシに移りましょうか。

キヤノンコンパクトカメラの「ぼく的ナンバーワン」

キヤノン・PowerShot S95
 最近のキヤノンは、コンパクトカメラ、一眼レフカメラを問わずユーザーからの「声」を真摯に受け止めて次の製品では積極的に改良するようになってきた ―― ムカシはそうじゃなく頑固なほどに保守的。まるで、下丸子のキヤノン本社の周囲には高い鉄のカーテンで塞がれているようだった。それが少しづつ取り除かれてきているように感じる。キヤノン自身がなにかを変えようとしているようだ。

 そのことはEOS 60Dを使ってみればわかることだし(EOS-1D Mark4 あたりからかな)、そしてこのS95もそうだ。ボディ外装の塗装を変えてグリップ性を良くしたことやメインスイッチの位置を変更したり、ストラップの両吊り対応にしたり、コントローラーリングにクリックを設けたこともそうだ。ISOオートの機能を採用しているし、さらにそのときのISO感度の上がり方まで設定できる ―― この便利な機能なんかEOSシリーズにこそ搭載しなければならないのに。


 そのほかに、ぼくが気づいた変更点や追加機能としては、たった1mm弱ほどだけどボディ厚が薄くなったこと ―― ほんのちょっとしたことだけど持ったときのバランスなどだいぶ印象は良い。撮像センサーは基本的には新旧同じものだが新型S95のほうには少し改良したものを使っている ―― 改良点のもっとも大きな点はHD動画が撮れるようになったこと、旧型S95ではVGA動画しか撮れなかった。くどいようだけど画質に(ほとんど)変化はない。

 とっても細かなことだけどボディ背面の操作ボタンが「真っ平ら」ではなく内側に少し角度が付けられた(こんな具合、「DISP」と「MENU」のボタンが内側に傾いているんだけど…この写真じゃわかりにくよね) ―― でも、たったこれだけのことなんだけど操作感がだいぶ良くなった、これを見たとき「やったね、気配りキヤノン」と大きな声で言いたかったほど。

 キヤノンのコンパクトカメラの中でどれか「一台」を持っていけ、と言われれば、いまなら、なにも躊躇せずにこのPowerShot S95を取りますね。

細かな「大改良」をしたS95

キヤノン・PowerShot S95
 昨年の秋に発売されて“大人気”だったS90をモデルチェンジしたのがこのS95。まだまだ売れているんだからS90をそのまま継続していけばいいじゃないか、と考えるだろうけど、そうはいかない複雑な理由があるのだろう(たとえば実販価格のキヤノン予想外の低下とか)。

 新型S95は旧型S90から、あちらこちらと細かな部分で「大幅に」変わっているが、しかし外観のデザインなどはほとんど同じ。もちろん内蔵ズームレンズも同じ。液晶モニターも同じく約46万ドットの3.0型(表面がアクリルから強化ガラスに変更したぐらい)。
 高ISO感度でのノイズも含めて画質面も ―― コンパクトカメラで画質がどうのこうのと大上段に構えて言いたくないのでカンタンに述べるけど ―― ほとんど同じで、たいした違いはない(旧S90とたくさん比較撮影をしてみた、ということはS90ユーザーが画質に期待してS95を買い換えても期待はずれでしょうね)。


 でもしかし、使ってみると旧型S90と新型S95とでは「似て非なる」印象を受ける。大袈裟でなく格段に良くなっている。たとえば外装。旧S90はその表面がツルツルしていてグリップ性がきわめて悪かった。ぼくはそのホールディング性のあまりの悪さにボディ前面に滑り止めのラバーを貼り付けて使っていたほどだ ―― これについてはぼくだけじゃなくて多くのユーザーが不満に感じていたことのようだ。それが新型S95では表面の塗装を少しざらざらしたものに変更した。たったそれだけのことでホールディング性は格段に向上した。

 メインスイッチの位置が変わった ―― 旧型S90のメインスイッチはコメントするのもばかばかしいほど位置は悪いカタチは悪い、新型S95で変更もなにも始めっからS95のようにしておけよ、と思う ―― 。ボディ表面のツルツルもメインスイッチも、ユーザーだけでなくキヤノンの社内からもブーイングが相当にあったらしい。
 変更点、改良点、新機能はまだまだある。