失敗しないレンズ選び

オリンパス・E-PL3+M.ZUIKO DIGITAL 45mmF1.8

 レンズの描写性能を語るときに、独特の言い方(表現)をする人が多い。線が太い描写とか細い描写とか、空気が写るレンズとか、立体感のある描写性だとか。わかったようで、わからない。人のことをあれこれ言えたギリではないが、ぼくは、「わかりやすい描写」、「わかりにくい描写」という表現を使うことがある。これは描写の良し悪しのことを言っているのではない。
 わかりやすい描写とは、初心者でもベテランでも誰が見てもすぐに「あ、いい写りをするレンズだっ」とわかる描写性能のこと。とても先鋭感があって、少しコントラストも高めで透明感のある描写、とでも言えばいいか。

 いっぽうで、わかりにくい描写とは、目の肥えた人(高い眼力を持った人)でないと、写りの良さが見極めにくい描写性能のことだ。シャープネスもコントラストもやや控えめでおとなしく、“パンチ”のある画像ではないが階調描写力も充分にあって高い解像描写力が備わっているレンズ、かな。


 この意味で言うと、45mmF1.8レンズは「わかりやすい描写」のレンズということになる。たぶん、誰が見ても「おっ」と声をあげる描写だ。同じくオリンパスのレンズの中で「わかりにくい描写」のレンズは、M.ZUIKO DIGITAL 12mmF2がその代表ではないだろうか。12mmはとても良い素性を持った描写の優れたレンズなんだけど、プロ好みというか、その良さがすぐにはわかりにくい。

 とは言ったものの、レンズ選びは、購入時に実際に試してみたり比較してみたりするわけにはいかない。たとえ事前に試せたとしても、ベテランでないとなかなかその良さが判断しにくい。
 しかし、レンズを実際に使ってみないで、その良し悪しを判断するひとつ基準がある ―― あくまでぼくの基準。それは「価格の高いレンズ、大きくて重いレンズが良いレンズ」というのだ。一般論ではあるが、もし同じ焦点距離のレンズであれば、価格の高い方が断然、優れている。同じように、レンズは大きくて重いほど優れている(その詳しい理由は後日にでも)。

 じゃあ逆に、小さく軽く安いレンズは悪いレンズなのか、というと決してそうとは言い切れない。ここがレンズ選びの難しいところ。中にはその基準からはみ出した異端児のような、安いのに写りが良い、軽くて小さいのに素晴らしい描写をする、といったレンズ、そう、このオリンパスの45mmのようなレンズもあるのだ。

買ってソンしない後悔もしないレンズ

オリンパス・E-PL3+M.ZUIKO DIGITAL 45mmF1.8

 新型E-PL3の話は横に置いておいて、レンズの話。M.ZUIKO DIGITAL 45mmF1.8レンズの話だ。めちゃくちゃ良く写るレンズの話である。

 見た目はどーってことない小さな単焦点レンズだ。しかし、その写りは大変に素晴らしい。撮った画像を始めて見たとき、「どうしたんだ、これは冗談か…」と呆れて、笑ってしまったほど良く写っていた。ぼくが、昨年今年と、最近に使ったレンズの中でトップクラスではないか、と。
 そのうえ、このレンズの価格だ。実販で(おそらく)3万円そこそこになるだろう、というのに驚く。こりゃべらぼうに安い。レンズの価格と描写実力を考えると、PENユーザーは、このレンズは買っておいても決して損はしない後悔はしない(と、思う)。もしいまPENユーザーでないのであれば、この45mmレンズを使うためだけにPENボディを買っておいてもイイくらいでしょう。

 描写は、ちょいとシャープすぎるかなと感じなくもないが、とにかく素晴らしい解像描写性である。カリッとしてやや堅めだが切れ味のよい描写。画面中心から周辺部まで均一で破綻のない描写。F1.8の開放絞りでも文句なしの写りである。色収差もほとんど目立たない ―― カメラ内で少しやってるかもしれないが、オリンパスは色収差はカメラ内補正をしてないといっている。
 フレアーがほとんどなく、ヌケがきわめて良い。だから画像がクリアーなのだ、色がピュアーだ。ボケ味が自然なせいだろうか、とても立体的な、奥行きを感じさせる写りでもある。


 安くて(約3万円)、小さくて(全長約5cm)、軽い(約100g)、なのに、めちゃくちゃ良く写る代表的レンズが、そう、このM.ZUIKO DIGITAL 45mmF1.8レンズではないかと思う。
 ただし、45mmF1.8レンズの実力を発揮させるためには「正確にピントを合わせることブラさないこと」は絶対条件だ、言わずもがなのことだけど。

 と、45mmF1.8レンズの良さをどれだけ説明したところで、「画像を見てみないことには判断できないぞ」とおっしゃるむきもあろうかと思い、「ピクセル等倍」と「ピクセル1/2倍」のサイズで表示した画像から、部分を切り出してみた(オリジナル画像は出せないので)。
 部分だけを見たってわかりにくいというのは承知のうえで、興味のある人はどうぞ。これが「ピクセル1/2倍」、これが「ピクセル等倍」の部分切り出し画像だ。
 さあ、重箱の隅をつついてみてください。

 …今日はオリンパスからの“回し者”だな、おれは。

色シェーディング補正

リコー・GXR MOUNT A12+フォクトレンダー・ULTRA WIDE-HELIAR 12mmF5.6

 GXRマウントユニットの「魅力」はいったいどんなところだろうか?、というぼくの(勝手な)質問にたいしてtwitterやメールでたくさんのご意見をいただいた。ありがとうございました。ぼくが気づかなかったことをいろいろと教えてもらったりして「魅力」が少し見えてきました。

 GXRマウントユニットは、GXRシステムをすでに使っている人にとっては ―― すぐにライカMマウントのレンズを使わないにしても ―― システムの充実化、将来性への強いメッセージとなる。
 レンズ交換式カメラのような、システムカメラの大切な価値はメーカーの信用性とシステムの継続性であると思う。とつぜん、そのシステムカメラの生産をやめてしまったり、次の新製品との互換性がなくしてしまうような“はしご外し”や“裏切り”がいちばん困る。マウントユニットはそうした心配を払拭するのに大きな意味があるようにも感じる。このようなマウントユニットは、デジタルカメラが進化し変貌していく課程で、自社システムの「新旧の互換性」を継続させていくうえで、今後、もっと注目されていくことでしょう。

 で、考えてみれば(考えるまでもないけど)、ライカMマウントを採用したデジタルカメラは、本家のライカM9やM8以外では、このGXRマウントユニットとエプソンのR-D1シリーズだけだ。たとえば、このことだけを見てもGXRマウントユニットには充分に価値も魅力もあるではないか。Mマウントやスクリューマウントのライカレンズを使うことを前提にして設計されているユニットであることも魅力のひとつ。
 PENやNEXで使おうとすればマウントアダプターが必須となりそのぶんハードルは高くなる、ライカレンズを使うことなどハナから考えていない、と、皆さんのご意見や感想を読みながら(ごくごく基本的なことに)気づいた次第でした。


 話を替えます。
 GXRマウントユニットの周辺光量低下を防ぐためのマイクロレンズのレイアウト変更の効果について。
 周辺光量不足の描写が“定評”のリコー・GR LENZ 21mmF3.5を使って、GXRマウントユニットの補正効果をチェックしてみた。比較した機種は、ちょっと古いカメラで気が引けるのだけど違いがわかりやすいので“犠牲”になってもらった。エプソンの初代・R-D1だ。2004年7月発売。GXRマウントユニットに採用のAPS-Cサイズセンサーとほぼ同じサイズのセンサーを使っている。21mmはどちらの機種も35mm判換算で約31.5mm相当の画角になる。

 この写真を見れば一目瞭然。
 上の写真がR-D1、下がGXRマウントユニットだ。ともに絞り開放。同じレンズを使ってもオンチップマイクロレンズのレイアウトを工夫するだけで(それだけ、ではないとも思うが)こんなに違うんだということを知っておいてほしい、と。

 では、GXRマウントユニットの周辺光量不足補正に“欠点”がないのかといえばそうとは言い切れない。画面中心部と周辺部で「色」が違ってくる“欠点”がある。とくに広角系レンズでは(レンズによってだけど)周辺部になるほどブルーシアン系に“変色”してしまう傾向がある。似たような「現象」はライカMデジタルシリーズやNEXでも多かれ少なからずある。
 しかし、GXRマウントユニットにはこの“欠点”を補正するために「色シェーディング補正」の機能が備わっている。ライカMデジタルにもNEXにもPENにもない機能。これこそがGXRマウントユニットの真骨頂と言えるかも。
 色シェーディング補正は画面周辺部の色調を微調整するもので、これを活用すれば周辺部の“変色”をある程度補正できる。ただし、そのパラメーターの調整がそうカンタンにはできない。おもなレンズ(とくに超広角レンズだが)のパラメーターの調整値をリコーが公表してくれると、ぼくのようにめんどうくさがり屋にとっては大変にありがたい。

ぜひ皆さんのご意見を聞かせてください

リコー・GXR MOUNT A12+リコー・GR LENS 21mmF3.5

 マウントアダプターを使って古いレンズや他社の交換レンズを最新型のカメラ(おもにデジタルカメラ)で使って撮影を愉しむことを「マウント遊び」なんていう人もいる(あまりイイ言葉でないと思うけど)。
 こうしたマウント遊びは ―― 好きではないがとりあえずこう言っておく ―― デジタルカメラになって大いに流行はじめた。そのことは前回のこのブログで述べた。いま、もっとも手軽にマウント遊びができるカメラとしては、オリンパスのPENシリーズ、パナソニックのシリーズ、そしてソニーのNEXシリーズなどがある。ライカM8やM9、エプソン・R-D1シリーズもなくもないが、こちらは少し敷居が高い(いろんな意味で)。

 そして今回、マウント遊びの“カメラ”として新しく加わったのがリコーのGXRマウントアダプターだ。言うまでもないが、GXRマウントアダプターだけでは撮影することはできない。GXRボディ本体が必要。ということは、新しくGXRでマウント遊びをしようとすると ―― レンズは持っているとの前提で ―― マウントアダプターとGXR本体とマウントアダプターの“3つ”がなくてはなならい。

 ところが、たとえばソニーのNEX(APS-Cサイズセンサー)やオリンパスのPEN(フォーサーズセンサー)のカメラの場合なら、あとはマウントアダプターさえ用意すれば、もうそれだけで立派にマウント遊びができる。


 では、リコーのGXRマウントアダプター(と、GXR本体)を敢えて使うメリットは、いったいナンなのだろうか、PENやNEXに対してどんな利点や優位性があるのだろうか。

 先日からそんなことをつらつら考えているのだけど、ぼくにはなかなかいい答えが見つからない。PENでもいいじゃないか、とか、NEXでなにか不満でもあるのか、と、そんな声も聞こえてくる。
 もし仮に、の話だけど、GXRマウントアダプターにフルサイズ撮像センサーが組み込まれていたとすれば、そりゃあ迷うことなく文句なしに俄然GXRマウントアダプターが優位になるだろう。でも、実際はNEXと同じAPS-Cサイズセンサーで、なおかつ画素数も少ない。

 素早く確実にピント合わせができる機能や、周辺光量不足を目立たせないような機構を採用していること。シャッターの機構にフォーカルプレーン方式のほかに撮像面シャッター(電子シャッター)の機能も備えている。などの注目すべき機能や機構はあるものの、それが“決定打”にはなりきれない。同じレンズを使って、GXRマウントアダプター+GXR本体の「写り」と、NEXやPENで撮った「写り」とが違うかといえば、はっきり言って大差はない(PENの場合は当然ながら画角が違うけれど)。

 というわけで、ここで皆さんにお聞きしたいのです。GXRマウントアダプターの魅力ってどんなところだと考えますか?

 お礼はなにもできませんが、魅力はこれだぞっ、という“答”をお持ちの方は、twitterでもいいですので教えてください。発売前なので実際に使った人は少ないと思います。ですので、観念論でもいいです空論でも感想でもいいです。もちろんリコーの人たちからの意見も説明も大歓迎です。
 “マウント遊び”をするにはNEXやPENよりも、ぼくとしてはGXRマウントアダプターになんとなく惹かれるところはあるんですが、正直言いまして、よくわからんのです。

長ったらしい解説になりましたが

リコー・GXR MOUNT A12+ペンタックス・PENTAX-L 43mmF1.9

 いわゆるレンズ交換式のミラーレスカメラが出てくるようになって、引き出しの奥にしまいっぱなしにされていた古いレンズが、各種のマウントアダプターを利用することで最新型のデジタルカメラで使えるようになった。フィルムカメラ時代ではライカなどを使って似たようなことができなくもなかったのだが、デジタル時代になってその“敷居”がいっきに低くなった感じだ。ミラーレスカメラ、とくにオリンパスのPENがその小さな“火”に油を注いだような気もする。

 しかし、そうしたミラーレスデジタルカメラで古いレンズを使いこなすうえで、1つネックがあった。正確なピント合わせだ。
 一般的に、ミラーレスカメラではボディ背面の液晶モニターやEVF画面を見てピント合わせをするのだが、これがじつに難しい。画面拡大表示の機能を活用すればいいのだけど、素早く気軽にスナップ撮影するにはその操作によほど熟達しないと思うようにはいかない。
 でも、メリットもあった。視野率がほぼ100%でライブビューで見たままが写せることだ。
 ライカM8やM9、あるいはエプソンのR-D1などのライカMマウントのデジタルカメラは、レンジファインダーを使って比較的、容易にピント合わせができた。ところが視野率となるとかなり低く(ライブビュー撮影もできない)、正確なフレーミングで撮ろうとするとこれまた熟達した撮影技術が要求された。


 GXRマウントユニットには、フォーカスアシスト機能とよばれるピント合わせの補助機能が搭載されている。これを利用すると、F値の暗いレンズでも明るいレンズでもスピーディーにストレスフリーでピントが合わせられる。
 簡単に言えばピントの合ってシャープに見える部分を輪郭強調して表示するもの。ミラーレスカメラでこの機能の先鞭を付けたのがソニーのNEX-C3で、ソニーではそれを「ピーキング機能」とよんでいる。C3を初めてみたとき、他の撮影機能はさておきなによりもこのピーキング機能に感心しまくった。リコーの開発者にたまたまあったときに「C3のピント合わせに素晴らしい機能が入ってるぞ」と言ったところ、「えへへへっ、うちでも考えてますよ」と笑われてしまった。それがGXRマウントユニットのフォーカスアシスト機能。

 GXRマウントユニットのフォーカスアシスト機能には2種類あって、1つはNEX-C3と同じように通常画面に輪郭強調部を重ねて表示するもの。これは ―― C3のそれよりも強調度合いが弱いので ―― 慣れないとピントの判断がなかなか難しい。もう1つは画面をイラスト図のように線で画像表示し、ピントの合った部分の線を太く強調表示するものだ。部分拡大表示機能と組み合わせることもできる。画面からディテールや色がいっさいなくなるがピント合わせはとてもやりやすくなる。
 であるからぼくは、もっぱらこちらのフォーカスアシスト機能で撮影をして使っております。いままでのミラーレスデジタルカメラでのピント合わせの苦労を考えるとまるで天国。
 この機能は十字キーに登録しておくことができるので、カメラを構えたまま十字キーボタンをひと押しするだけで画面を切り替えられる。そのイラスト表示を見てピントを合わせ、シャッターボタンを半押しすると瞬時に通常画面に戻る。構図を再確認してそのままシャッターを押せばいい。

 長ったらしい説明になってしまってすまんかったけど ―― お盆中で皆さんもゆっくりしてるでしょうからイイとしましょう ―― つまり、GXRマウントユニットにはそーゆー便利なピント合わせの機能が入っておるんだということです。

GXR用マウントユニットカメラ

リコー・GXR MOUNT A12+ライカ・SUMMILUX 35mmF1.4

 このユニットは、今年2月のCP+2011、リコーブースに参考出品されていたGXR用のカメラユニットである。いままでのGXR用カメラユニットはレンズとシャッター、撮像センサーが一体になっていたが、このユニットはレンズがない“異端児”で、だからこれをカメラユニットと呼んでいいのかどうか。
 このマウントユニットには、あらかじめ撮像センサーとシャッター機構が組み込まれている。マウントはライカMマウント。だから「マウントユニット」というわけだ。

 撮像センサーはAPS-Cサイズの約1230万画素CMOS。既存の28mm(相当)レンズや50mm(相当)レンズのカメラユニットと同じ撮像センサーを使っていることになる。ただひとつ大きく違う点は、集光効率を高めるためのオンチップマイクロレンズのレイアウトを変更している。これにより、古い交換レンズにありがちな周辺光量不足を補正するようにしている。
 実際、このマイクロレンズのレイアウト変更の威力はタイヘンなもので ―― デメリットもあるにはあるけれどそれはのちほど説明予定 ―― 周辺光量落ちが著しいレンズ、とくに広角レンズだけど、このマウントユニットで使うと、ウソのように周辺部がすっきりとして写る。


 いや、それよりもなによりも、このマウントユニットでいちばん感心したのはシャッターの機構だ。
 GXRが発表になったときに、誰もがこうしたマウントユニットの出現を期待した。しかし大きなネックがあってそれがシャッターだったわけだ。あの着脱式のユニットの中にフォーカルプレーンシャッターのメカニズム(と、駆動モータ)を組み込むことは、魔法か手品を使わない限り不可能だと(ぼくも)そう考えられていた。

 GXRが発売されてから1年ぐらいたった頃だろうか、ある人から「あのユニットの中にフォーカルプレーンシャッターが入れられそうなんだけど、どう思う」、と聞かれたことがあった。ぼくはその話を聞くまでは「できっこないよ」と信じていたし、もしやるならレンズシャッター方式しかないだろうと考えていたから、そりゃあビックリでした。
 で、その後、リコーの技術者がシャッターをイチから設計し、苦労惨憺のすえ(苦労のし甲斐があったよね)完成させたのが、この金属製縦走りタイプのフォーカルプレーンシャッターとそのユニットだ。と、見たように話をしているけど、ぼく、その苦労を見ているわけではないですけど。
 シャッターの連動範囲は180秒~1/4000秒までで、さらにバルブ(B)もタイム(T)シャッターの機能も備えている。このシャッターのおかげで、ライカMマウントを「経由」して数多くの交換レンズ群が使えるようになったわけだ。

新宿ペンタックスフォーラムへ行ってみよう、か

ペンタックス・645D+D FA645 25mmF4

 D FA64525mmF4レンズは、ペンタックスが相当にチカラを込めて設計したレンズで(チカラが入りすぎてめちゃくちゃ製造しづらいレンズになったようだけど)、特殊レンズコーティングのABCの採用や超音波モーター(SDM)による高速AF駆動、非球面レンズ2枚(うち1枚は両面非球面)、円形絞り、差し込み式のフィルターシステム(円偏光フィルターが付属)、レンズ第一面に揮発効果と防キズ効果の高いSPコーティングを施したり防滴防塵仕様にして、さらにクイックシフトフォーカススシステムを取り入れるなどしつつ、645Dだけでなくフィルム645カメラにも使えるようにイメージサークルを大きくして設計された贅沢レンズ、というわけだ。

 良く写る超広角レンズであります。画面周辺部までピリッと写る。使っていてじつに気持ちいい写りをする。ただし、ぼくにとってだけど、不満点が3つある。性能のことを考えればしょうがないのだけど価格が高い、比較的小型レンズのワリにずっしりと重い、フロントヘビーすぎてホールディングしたときのバランスがよろしくない。でも、この3つの不満点さえ我慢(克服)すれば ―― 財力と体力が必要だけど ―― うん、使っていて愉しいレンズだ。

 で、財力はともかく、このレンズの重さ(もちろんボディもそうだが)を克服するために、ぼくはいま日々、数キロの鉄アレイを振ったり回したりしてウデを鍛えております。写真家の必要条件は、1に財力、2に体力、3、4がなくて5にセンス……とかなんとか言いますからして、そのうちの1つぐらいはなんとかせにゃならん。


 話が変わりまして、先日、改装してスペースが広くなった「ペンタックスフォーラム(新宿)」に行って中をふらりふらりと見ていたら、おっ、と興味を引くモノが2つあった。

 1つは645Dの漆塗りバージョン「645D Japan」の実物が展示してあったこと。カメラグランプリ受賞を記念した限定モデルで桐箱入りの120万円。ムカシ、フィルム645にも漆塗りバージョンがあった。今回の645Dの塗りも同じ会津にある漆工房の「坂本乙造商店」だそうだが、以前もそこに実際に行ってその行程を見たことがある。その当時のペンタックスの人たちの顔が思い出されてなんだかとっても懐かしかった。
 実物は、写真で見ていたときよりずっと高級感がありシックに感じた。漆を塗る前の下地に銀箔を施しているのだが、それがまだら模様に少し透けて見える。漆塗りというと工芸品、飾り物、と考えてしまうけど、これが意外と頑丈だそうで、充分に“実用”できるんだぞ、と当時、聞いたことがある。

 もう1つはレンズ展示の棚の端っこに、ひっそりと置いてある「参考展示」の645D用のモックアップレンズ。今年のCP+で展示してあったそのものだそうだが、ぼくはこれをじっくりと見るのは始めて。あちこちにブラックテープで“目隠し”しているのだが、ペンタックスのやることだからいつものように、アタマ隠してシリ隠さず、の様子が見てとれて、笑ってしまう。
 「中望遠レンズ」と銘板に書いてあるが、これはたぶんマクロレンズだろう。が、それにしては鏡筒がヤケに太いのが気にもなる。ということは、このレンズの中に、そう、アレが組み込まれているんではないのか。うん、きっとそうだ。アレと言えば、ほらアレ、ですよ。

特殊レンズコーティングのつづき

ペンタックス・645D+D FA645 25mmF4

 昨日の特殊レンズコーティングの話の続き。以前にもレンズコーティングの話をココでしたような気もするが、ま、いいか…。

 レンズ描写でコントラストや写りの切れ味を損なう大きな要因はフレアーだ。ゴーストもフレアーの一種と考えれば画質低下の要因となりうる。フレアーが起こる原因のもっとも大きなものはレンズ表面の反射。レンズの表面反射を少なくすればそれだけ透過率もよくなる。ヌケも良くなる、適度のコントラストのある優れた画像が得られる。そのはたらきをするのがレンズコーティング。
 で、そのコーティングの中で際立って表面反射を防いで光の透過率を高めてくれるのが特殊レンズコーティングというわけだ。

 このコーティングは材料にどんなものを使うかも難しいのだが、それ以上に難しい、とも言われているのがレンズ表面にコーティングする方法だ。
 通常のレンズコーティングは真空状態にしてコーティング材を蒸着させているのだが、ニコンのナノクリスタルコートもキヤノンのSWCも、そしてペンタックスのABCも「蒸着」ではなく「塗布」している。この塗布は特殊技術で手間がかかり金もかかる。
 このへんの塗布技術についてはどこのメーカーも内緒の内緒にしていて、詳しいことはさっぱり教えてもらえない(ぼくが聞いたって、しょせん、猫に小判なんだけどね)。


 こうした特殊レンズコーティングには、もう1つ大きな難題がある。それは「柔らかく壊れやすい」ことだ。ハードコーティングではなくウルトラソフトコーティング。指先で軽くそっとなでるだけでコーティングが破壊されてしまう。めくれてしまうのだ。

 ゴースト/フレアーをもっとも効率よく防止するにはレンズの第一面にコーティングするのが理想的なのだが、触れただけで壊れてしまうようなヤワなものなので、それができない。であるからして、ニコンもキヤノンもペンタックスも、外部からゼッタイに触れられないような構成レンズ群の中のレンズ面に塗布している。なおかつ、レンズ組み立て工程でもよほど慎重にレンズを扱わないと、せっかく塗布したコーティングが壊れてしまう。

 将来的にはハードコーティング化できるように、そして複数枚のレンズ面に塗布できるように各メーカーともガンバッテ研究しているようだが、そのゴールにもっとも近いのがペンタックスのABCだ、とも言われている。(これは聞いた話だけど、学会でペンタックスの担当者がABCの技術発表をしたとき、あちこちの出席者から驚きの声が出たらしい)

特殊レンズコーティングの技術

ペンタックス・645D+D FA645 25mmF4

 デジタルカメラの645Dだけでなくフィルム645カメラにも使用できるこのD FA645 25mmF4レンズの正式な名称は、「smc PENTAX-D FA645 25mmF4 AL[IF] SDM AW」である。この長い名称から、非球面レンズ(AL)内蔵のインナーフォーカス(IF)により超音波モーター(SDM)でAF駆動し防塵防滴仕様(AW)であることがわかる。ところが、この長いレンズ名称にも“記載しきれない”注目すべき「機能」をいくつか備えている。
 その1つが、ペンタックスが独自開発した特殊レンズコーティング・ABC(エアロ・ブライト・コーティング=Aero Bright Coating)を採用していることだ。簡単に言えばゴースト/フレアーの発生を抑え込む(出にくくする、目立ちにくくする)働きをもつレンズコーティング。


 こうした特殊レンズコーティングの技術は、ニコンのナノクリスタルコート(超低屈折率膜)やキヤノンのSWC(SubWavelength Structure Coating-サブ波長構造コーティング)があってすでに製品版レンズに活用されている。ペンタックスのABCもそれらと基本的には同じレンズコーティングである(厳密に言えば構造や製法が微妙に異なるのだが、その説明がややこしいうえに各社とも機密事項になっていて詳細は不明)。
 ゴースト/フレアーの大幅低減のためのこうしたコーティング技術は、非球面レンズの大型化と大曲率化、特殊レンズ硝材の発見と発明、とともにレンズ性能を飛躍的に向上させるための「三種の神器」ともいわれている。

 とくに25mmのような超広角レンズでは ―― 645Dでは35mm判換算で約19.5mm相当の、フィルム645では約15.5mm相当の画角となる ―― 画角が非常に広いためもあってレンズフードがほとんど役に立たないし、写る範囲も広いからあちこちから有害光線が入り込む。そのためゴーストやフレアーが目立ちやすくなり画質の低下を招く。
 それを防止(目立たなく)するのがABCのような特殊レンズコーティングであるのだが、この技術がめちゃくちゃ難しい。レンズを作っているメーカーはどこも、いま優先順位ナンバーワンで開発を進めている注目の技術でもあるわけです。