2012年のキーワードは「高画質」

シグマ・SD1+17ー50mmF2.8 EX HSM DC

 今年、2011年に発売されたカメラの中で、もっとも印象に残る一台をあげるとすれば、シグマのSD1を真っ先に取り上げたい。デジタルカメラのことの、いろんなことを考えさせられた一台だった(詳しい話は長くなるのでやめるけど)。

 じつは、このSD1は発売のだいぶ前からベータ版を使っていて、その後、ほぼ製品版に近い機種も使い始めたちょうどころに「実販価格は約70万円ぐらい」という発表を聞いた。正直に言うと、「いくらナンでも、そりゃあナイよ」というのが感想でありました。SD1をしばらく使っていて長所も短所もわかってのうえで、「まあこれくらいの価格ならイイせんいくんじゃないか」と考えていたところに約70万円だから、そりゃあびっくりでしたよ。いまでは60万円を下回るぐらいの価格になっているけど、いやそれでもまだ…。

 いやしかし、いっぽうでは、SD1は“予想外の高価格”であったほうが、結果的にはよかったんではないか、とも思わないでもない。
 もしこれが20万円そこそこの価格であったとしたら、SD1の使いこなしのとんでもない難しさをまったく知らずに、飛びつくように買った人から「大ブーイング」がおこって、きっと収拾がつかなくなったんではないか。そんな気もする。ちょっと使ってみればわかるけど、SD1はそのへんのことを重々覚悟をしたうえで手に入れ、我慢と忍耐をして使いこなすカメラなのだ。こういっちゃなんだけど、ちゃらちゃらした気持ちでSD1を使うと、すこーんっと足下をすくわれてしまいかねない。


 シグマもやっぱり「SD1が約70万円」というのは、いささかトビすぎてしまったと感じているところもなくもない(先日、山木社長にインタビューしたときに、ぼそぼそとそれに近いことを言ってましたから、あ、これは誌面にはでてませんけど)。
 だからというわけでもないだろうが、近々にSD1と同じAPS-Cサイズ判の、価格のもっと安い一眼レフカメラを出すようなことを匂わせていた(これまた、ヘンに誤解をまねくとイカンということで誌面ではカット)。

 つまりシグマは、いまSD15やDPシリーズなどに使っている“ふた回り”ほど小さな“APS-Cサイズ判”のフィビオンセンサーをやめて、SD1に使用しているAPS-Cサイズ判センサーに切り替えていくようで ―― 天気予報のようなハナシだけど ―― それを使ったカメラが来年、早いうちに発表されるのではないだろうか。


 ところで、これはシグマの話題とは直接関係ないことだけど、来年、2012年のデジタルカメラのキーワードは、すばり「高画質」です。
 デジタル一眼、ミラーレス、コンパクト、レンズ、スマートフォンを問わず、すべてにわたって「高画質」があらためて見直され優先されるでしょうね。新しい機能を備えたカメラやレンズがあれこれ出てくるでしょうが、どれもが「高画質」を目標にしているはずです。もし、「高画質」のコンセプトから外れたカメラやレンズが出てくれば、それは失敗作となるでしょうね、あははは…。ま、このへんの話はまたいずれ。

トキナーの広角ズーム2本の不思議

ニコン・D3S+トキナー・AT-X17ー35mm F4 PRO FX

 このズームレンズの描写は、決して「切れ味鋭い」というものではないけれど、広角ズームレンズ特有のヘンな歪みも、画面周辺部への引きつりもなく、とにかく写りがナチュラルなのがいい。F4の開放絞り値から使用できるのもいい(そりゃあコマかいこと言えばキリないけど)。手ブレ補正を内蔵していたら、このレンズ、どれだけおもしろかっただろうかと使っていて何度かそう思った(無理な注文であることは百も承知千も合点だ)。
 レンズのデザインはシンプルで(もともとトキナーのレンズはややストイックな印象を受けるデザインのレンズが多いのだけれど)操作感も良い。ぼくはこうした何げないスタイルのレンズにとっても魅力を感じる。


 ところでトキナーにはもう一本、同じくフルサイズ判対応の広角ズームレンズがある。「AT-X16ー28mmF2.8 PRO FX」がそれで、カバーする焦点距離がだいぶ“かぶって”いる。16ー28mmのほうがはF2.8のコンスタントF値、17ー35mmはF4のコンスタントF値で、大型量販店での価格は16ー28mmが約7万9千円、いっぽう17ー35mmは7万7千円でほとんど同じ。(この2本のズームを並べたのがこれ)

 かたや(16ー28mm)はF2.8の明るい絞り値、広角よりのズーム域であるが、デカい重い前玉が飛び出している。こなた(17ー35mm)はF4とやや暗めの開放F値であるが、それほどコンパクト軽量なレンズとは言えないし(比べれば格段に小型軽量だけど)、実販価格もそれほどの「差」はない。描写は17ー35mmもワルくはないんだけど比べると16ー28mmのほうがいい。

 という条件を比べながら2本の広角ズームを見ていると、トキナーはなぜ、こんなにも焦点域も価格も“重なった”レンズをラインナップしたのか、そのへんが不思議ですねえ。

良いレンズだ、けど…

ニコン・D700+トキナー・AT-X17ー35mm F4 PRO FX

 このトキナー17-35mmF4ズームは、あまり目立たず注目もされていないようだけど、使い勝手も良く描写性能も良いレンズだ。いや、描写性能が良いというよりも、とても自然な写りをすると言ったほうがいいかもしれぬ。コンパクトで、クセのないとても素直な描写特性を備えた広角ズームレンズだ。
 しいて欠点をいえば、ごくごくありふれたスペックで「華」がないことと、レンズ専門メーカーとしては価格がやや強気であること、か。17ー35mmの価格は、あくまで「比較」でのハナシで、ぼくとしては、実力と価格はそこそこ見合っていると思う。


 いま、ニコンとキヤノンのレンズカタログを広げてF4クラスの広角ズームを見ているのだけど、ニコンには実販で10万円ちょっとで手に入る手ブレ補正内蔵の「AF-S NIKKOR 16ー35mmF4 ED VR」があり、キヤノンにも実販10万円以下のワリにはとても良く写るLレンズの「EF 17ー40mmF4L USM」がある。
 これらニコン、キヤノンの2本のレンズにはそれぞれ「華」がある。

 いっぽうのトキナー17ー35mmF4はといえば、実販価格は現在のところ7万円後半から8万円。ちょっと細かいことを言うようでありますが、この約2万円の「差」がはたして、純正レンズというブランドと、VR(手ブレ補正)や高性能Lレンズという魅力を凌駕するだろうか、と考えてしまう。

PENTAX Qのガイドブックを出版(宣伝)

ペンタックス・PENTAX Q+01 STANDARD PRIME

 超小型のレンズ交換式ミラーレスカメラであるPENTAX Qのガイドブックを出版した。『PENTAX Q クイックハンドブック』(インプレスジャパン)で、本の大きさは新書本サイズよりも一回りほど大きな約17×12センチの“ポケットブック”のサイズで、オールカラーページの約220ページ。
 デジタルカメラマガジン編集長の川上さん、編集プロダクション・ウオーターミル新社の山村さん、そしてぼくの3人で「ウンウン」と言いながら作った本。はっきり言って、めちゃくちゃ苦労しましたよ。

 というのも、PENTAX Qはその“見かけ”のカワイらしさと違って、中身は、つまり撮影機能は相当にマッチョだ。高級一眼レフカメラにも負けないような撮影機能がちっちゃなカメラボディに凝縮されてつまっている、そんな感じ。大変に多機能で ―― カメラ任せのオートで撮ってるぶんにはラクチンなんだけど ―― その多機能をこってりと使いこなそうとすると並大抵の写真知識があったって追っつかない。

 というわけで、初心の人でもPENTAX Qの機能をすぐに使いこなし、愉しい写真がいっぱい撮れるように、ということをテーマにして編集し出版した本だ。PENTAX Qのユーザーだけでなく、PENTAX Qの購入予定の人も、ぜひ一読をおすすめします。PENTAX Qのどの撮影機能を選んで、どのように操作すれば、どんな写真が撮れるかがすぐにわかる(たぶん)。


 ところで ―― これまた宣伝じみていてちょっとヤなんだけど ―― 先日もこのブログで紹介した12月19日発売の「デジタルカメラマガジン」で在京8社のカメラメーカーにインタビューしたが、その中のペンタックスの話もおもしろい。インタビュー相手はカメラ開発の最高責任者である北沢さん。その北沢さんが相当に大胆な発言をしているのだ。
 そのへんのことは記事をじっくりと読んでもらえばいいんだけど、35mm判フルサイズのミラーレスカメラをやろうとしていることや、なんと、645Dのミラーレスカメラ化も考えているといった話まで出てきた。ぼくのほうが、こりゃあどこまで突っ込んで話を聞けばよいのやらと戸惑うぐらいだった。

 もともとペンタックスはムカシから画面フォーマット(サイズ)やマウントの種類が増えることに鷹揚だった。他のカメラメーカーのように慎重ではない。つい先日まで6×7判、645判、35mmフルサイズ判、APS判のフィルム判レンズ交換式カメラがあったし、デジタルになってもPENTAX Qのサイズから、APS-Cサイズ、645サイズのレンズ交換式カメラがある。そこに、さらに35mm判フルサイズや、645サイズのレンズ交換式のミラーレスカメラもやろうとしているというんだから、その、いけいけどんどん、ぶりには驚く。
 とにかく、HOYAから離れて(これはホントによかった)リコーの翼下に入ったとたんに、えらく元気溌剌としてるんですよね、ペンタックスは。

タムロン18-200mmの謎

ソニー・NEX-5N+タムロン・18-200mmF3.5-6.3 Di III VC

 ソニーにはすでに、このタムロンの18-200mmとほぼ同じスペックの“純正レンズ”がある。E 18-200mmF3.5ー6.3 OSSがそれで、ズーム域はもちろん、開放F値、手ブレ補正内蔵なども同じ。しいて相違点をさがせば、大きさ重さ、価格、ぐらい、か。レンズの大きさ重さはタムロンのほうがわずかに小さく軽いものの、だいぶスリムな感じがする。実際にタムロン18-200mmとソニー18-200mmを手にとってみたり、NEXにセットして比べてみると、ソニー18-200mmのほうが数値以上に、相当に大きく太く重く感じる。レンズデザインは、タムロンにしては(あ、ごめん)かなり良い。

 価格は、カメラ量販店の売価を調べてみると7000-8000円ぐらいタムロン18-200mmのほうが安く、約7万円。写り具合はどうかといえば、ざっと撮り比べてみたのだけど、もともとソニー18-200mmが良い性能を持っているのだが、それと、ほぼ同等か、わずかにタムロン18-200mmが良好、といった印象。操作感についてはタムロン19-200mmのほうがだいぶ良い。
 でも、なぜソニーとまったく同じ18-200mmF3.5~6.3のスペックにしたのだろうか。


 タムロン18-200mmはブラックとシルバーの2つのカラーモデルを用意している。しかし、ソニー18-200mmのほうはシルバーのみ。
 タムロンが2カラーの交換レンズを発売するのは、古い昔のことは別として、最近では大変に珍しいことだ。たぶん、現行のレンズラインナップの中ではシルバーモデルは1本もないはず。そして、このタムロン18-200mmはソニーのNEXシリーズの専用のみで、他のメーカーのカメラに“使い回せる”というものではない。NEXのマウントに対応させるための開発コストや手間と時間は、ぼくたちの想像を超えるものがあったと思う。

 NEXのマウントはマイクロフォーサーズと違って、マウント情報を「公開」している。が、それはあくまで「タテマエ」だ。そんなことは知ってる人は、みんな知っていること。「公開」しているといったって、かんじんかなめの「情報」は決して外には出さないものだ。ミラーレスカメラの「電子マウント」は、従来の一眼レフカメラとは桁違いに複雑怪奇になっていて、隠し事もいっぱいある。

 かくかくしかじか、タムロンがそこまでして苦労して作ったNEX専用レンズに、さらに在庫管理のリスクもあるブラックとシルバーの2モデルを発売するというのを見ると、タムロンのこのNEX用18-200mmにかけるなみなみならぬ意気込みを感じてしまう。タムロンは、さきざきのどんな“秘策”を考えているのだろうか。

次号の「デジタルカメラマガジン」

ソニー・NEX-7+タムロン・18~200mmF3.5~6.3 Di III VC

 次号、12月19日発売の「デジタルカメラマガジン」誌で、レンズ交換式のデジタルカメラメーカーの“キーマン”に直撃インタビュー、その記事が掲載される。オリンパス、キヤノン、富士フイルム、ニコン、ペンタックス、ソニー、シグマ、リコーの8社で、インタビュー相手は社長や本部長や企画部長など各メーカーの、コンパクトカメラやレンズを含めてカメラづくりの将来を見通してコントロールしている人たち。インタビュー内容は大変に濃いものだった。スクープ、と言えるような話もたくさん聞けた。
 ただし、このインタビューのメンバーの中で、パナソニックだけがどうしてもスケジュールの都合がつかず参加してもらえなかったのが、唯一の残念ごとだった。

 昨年も、デジタルカメラマン誌で同様のインタビュー企画をやったのだが、その時は、将来デジタルカメラはどのようになっていくのだろうか、といった“だいぶ先”の話をテーマにしていた。今年も、当初は、同じように数年先の“夢”のようなことを語ってもらおうとインタビューに挑んだのだけど、どうも勝手が違う。反応、というかノリがいまいちだった。
 よくよく考えてみれば、各メーカーとも3月の大震災や原発事故の影響を強く受け、さらに、それからようやく立ち直りかけたとたんにタイの洪水被害だった。とくにタイの洪水の影響は各メーカーとも甚大で、今日明日をどうするか、と差し迫った課題や難題に直面している真っ最中だった。のほほんと将来の夢などを語っている状況ではなかった。


 そこで急遽、インタビュー内容を方向転換。来年または再来年にどんな新製品を発表しようとしているのか、どんな新製品の開発を企てているのか、とごくごく近々の製品の話題を中心にすえることにした。
 むろんこうした「新製品」の話題はアンタッチャブルで、とても話に乗ってもらえないと覚悟してはいたのだが、その“予想”を大きく裏切って各メーカーとも大胆かつ踏み込んだ話をどしどししてくれた。同席していた広報の担当者の顔色が変わっているのがちらちらと見え隠れしていたメーカーもあった。

 来年に発表予定の「新製品」のコンセプトや狙い、そして具体的な内容まで話してくれたメーカーもあり(残念だけど、あまりにも生々しかったのと、広報ストップで掲載不可)、ええっ、そこまで話してもいいの、とこちらが心配するほどだった。
 かなり抽象的、婉曲な言い回しをしている人もいたが、もろもろの少し知識があれば「新製品」の様子がはっきりと見えてくる ―― 少なくともぼくには「ピン」と来たけれど ―― そんなインタビューだった。たぶん、苦しい2011年を振り返って、来年こそは元気になろう、とハッパをかけて大サービスしてくれたのだと思う。
 デジタルカメラの将来の姿、各カメラメーカーの写真に対する考え方、近いうちに出てくるかもしれない「新製品」のことなどについて興味のある人は、じっくりと読んでみると(きっと)おもしろいでしょう。

いましばしお待ちを

オリンパス・E-PM1+M.ZUIKO DIGITAL 12mmF2

 更新停滞中。多忙につき、いましばし足止める。



 京都・同志社大学。アーモスト館。