新しいLive MOSセンサーの実力-その2

オリンパス・OM-D E-M5+M.ZUIKO DIGITAL45mmF1.8

 OM-D E-M5は約1605万画素の新開発のLive MOSセンサー。ぼく宛のtwitterの書き込みを見ていると(返事をせず、すまん)、センサーのメーカーがどこなのかと皆さん興味があるようだけど(ぼくもだけど)、でもしかし、良いセンサーであるならどこのメーカーでもいいじゃないか、とも思う。

 さて、前回のつづき。
 比較撮影したフルサイズ判カメラは、約1210万画素の高感度に強いニコンD3S、約2110万画素の高画素のEOS 5D Mark IIである。3機種とも同じ画角となる単焦点レンズを用意し、解像力と高ISO感度の撮り比べを、いくつかのシーンでやってみた。同時にE-P3も仲間に入れて計4台での比較テスト。
 オリンパスは、「解像力と高ISO感度の画質には自信あり」と胸を張っていたが、正直に言ってぼくは半信半疑だった。なんだかんだと言ったところで、撮像センサーの「サイズ」がまるで違うじゃないか。

 しかしその結果は ―― 主観的情状酌量的な見方を一切排除して ―― OM-D E-M5は、解像描写力ではD3Sよりも「優れ」、5D Mark2と「ほぼ同等またはそれより優れ」ていた。解像描写の比較撮影は遠景の非常に細かな被写体を見比べた
 高ISO感度での画質は ―― 高ISO感度はISO12800で撮影をして、ノイズの様子と解像感だけについて比べた結果 ―― D3Sよりも「やや劣る」けれど、5D Mark2と「ほぼ同等」であった。ちなみに、E-P3との高ISO感度比較は、けっして大袈裟じゃなくて約2EVほどの違いがあった(むろんOM-D E-M5のほうが大幅に低ノイズ、そして色ノイズが極端に少なかった)。


 なお、高ISO感度のチェックというものはできるだけ厳しい条件でやるほうが「差」が明確にわかるし、実力も見えてくる。ノイズの様子だけでなく解像描写も同時にチェックすることだ。たっぷり光のある好条件で、大きなガラのものを写したって意味ない。また、解像描写性能も近距離被写体を写してもわかりにくい。

 こうして撮り比べてみて驚くのは、OM-D E-M5の高ISO感度のノイズの少なさもそうだけど、常用感度での解像描写力の優秀さだった(M.ZUIKO DIGITALのレンズが良かった、ということも考えられるけど、それも画質の実力のうち)。
 でも中には、コレを読んで「信じられん、ふんっ」とおっしゃる(ガンコな)かたもいるでしょうね。そりゃあ仕方ない。しかしながら、大幅譲歩し「話半分」としても、ですよ ―― そっくりそのまま事実なんだけどね ―― センサーサイズや画素数のことを考えれば、すごいじゃないか。

 むろん、言うまでもないことだが、カメラのデキの良し悪しは画質だけで決まるものではない。この比較は解像描写力と高ISO感度(の一部)を比べただけ。AFも手ブレ補正の性能や操作性もチェックした上で、「ああ、これなら自分にとって充分に満足といえるカメラだ」と結論をだしたほうがいいのは言うまでもない。
 いずれにしてもだけど、ぼくが使った限りでの印象は、画質だけでなくすべてにおいて相当の「実力」を備えバランスのとれたカメラに仕上がっていた。購入しても裏切られることはまずない、とそう思う。手ブレ補正やAFも含め、いいカメラでした。

新しいLive MOSセンサーの実力-その1

オリンパス・OM-D E-M5+M.ZUIKO DIGITAL9ー18mmF4~5.6

 OM-D E-M5の特長を3つ挙げろ、と言われれば ―― あれこれたくさんあってチョイスに悩むけれど ―― ぼくは思い切って、(1) 約1605万画素の新Live MOSセンサー、(2) 5軸手ブレ補正、(3) 最高4.3コマ/秒の連続動体予測+3DトラッキングのAF、この3つを選びたい。このほかに、内蔵EVFとか最高9コマ連写とか防塵防滴とかあれやこれやあるけれど。

 新しい約1605万画素のLive MOSは、E-P3などに使用している約1230万画素Live MOSに比べると画素数アップはわずかだ。画像処理エンジンTruePic 6もまたE-P3などとほぼ同じ(多少の改良はされているだろうけれど)。
 しかし、解像力、ダイナミックレンジ、高感度の画質などが“大幅に”向上している。ということは、新Live MOSが以前のものに比べ、相当に素性の良いものになったと考えてよい。このセンサー、以前まで使っていたセンサーのメーカーとは違う。新しいセンサーは、良いセンサーを作ることでつとに定評のある国内のあのメーカー製である。


 いままでお金がなくてギリギリの苦しい生活をしていたのだけど、とつぜん、お金がふんだんに使える生活になった。とことが、いままでのつつましい生活に慣れてしまっているため、有り余るお金をどのように使って生活を楽しめばよいかわからない、うふふふふ……。オリンパスの画像処理担当者と話をしていたとき、そんな嬉しい悲鳴のようなうめき声が聞こえた、ような気もする(ぼくの空耳かもしれないけど)。
 あ、この話はたとえ話ですからね、そのまま「ほんき」にしないように。

 2月に横浜で開催されたCP+のオリンパスブースの片隅に、ひっそりとOM-D E-M5と「35mmフルサイズ判カメラ」と、解像描写力を比較した写真プリントが展示されていた。
 薄暗くて目立たない場所にあったうえに大混雑だったので気づいた人は少ないだろうけど、その写真プリントをじっと見比べると、フルサイズ判カメラで撮ったものとほぼ同等あるいはOM-D E-M5のほうが良いように見えるのだ。比較撮影したフルサイズ判カメラがいったいなんだったのか、とても興味があったのでオリンパスに“問い糾して”みた。どうもニコンD3 D3S(*)とキヤノンEOS 5D Mark IIのようなのだ。(*)訂正:D3ではなくD3S。

 そこで、OM-D E-M5を使う機会があったとき、さっそく、ぼくも同じ手持ちのカメラを使って比較をやってみた(やはり自分で写し、自分の眼で確かめないと、ね)。…つづく。

デザインに不満もあるけれど良くできたカメラだぞ

オリンパス・OM-D E-M5+M.ZUIKO DIGITAL12ー50mmF3.5~6.3 EZ

 OM-D E-M5を使って“感心”したことは、EVFファインダーの視認性の良さもそうだけど、画質、AF、そして連写性の良さだった。階調描写性は良い、素晴らしい解像描写力がある、高感度の画質も良い。
 AFは、ほんとに高速で確実にピントが合うようになったし、連写性能も飛躍的に良くなった。AF-Cと連写を組み合わせることで、コントラストAFのカメラとしては初めて(と、言ってよいだろう)、位相差AF“並み”の連続動体予測AF撮影ができるようになった。これで、同じマイクロフォーサーズのパナソニックのカメラとの「差」が、さらに広がってしまった感じ。

 しかし逆に、うーんここはもうちょっとナンとかして欲しかったぞ、と感じたこともあった。おもに外観デザインと一部の操作類の仕上げ。
 具体的に言えば、シャッターボタン回りの2つのダイヤルのデザインをもっとカッコ良く仕上げてほしかった(ペンタックス・K-01のそれと見比べてほしい)。ボディ外装に、せっかくマグネシウム合金を使用しているのにその質感がほとんど感じられない。まるでプラスチックのような材質感の仕上げになっているというのも、かえすがえすも残念だったこと。デザイナーは(あれこれ言いたいことはあるだろうけど)、おおいに反省してほしいなあ、ほんと。


 ボディ左のモードダイヤルはロック機構がないから、カバンから出し入れするときに不用意に動いてしまっていることがあった。そうした“失敗の原因”を避けるためにも、せめてダイヤルを固く(重く)するとか、賛否両論は承知の上だがロック機構は必要だったのではなかったか、PENシリーズのカメラじゃないんだから。
 カメラをホールドしたときに、ちょうど親指の位置にある、いささかみっともない格好をしたゴムの“指あて”は、それを見るたびにがっかりする。確かに機能的な役目をはたしているだろうけど、これはどうみてもスマートとは言い難い、デザインされていない。

 以上、イバったようなモノ言いで、すまん。外観のデザインや一部の操作部については、ひとそれぞれ好みもあるだろうし、そんなものだ、と諦めればすむことで、あまり重箱の隅をつつくようなことはしたくない。小さなことはさておき、E-M5は総合的に見れば、コンパクトにじょうずにまとめてデザインしていると思う ―― 画質的にも機能的にもとても優れたカメラなので、余計にそんなことを感じるのかもしれない。

 新開発の5軸式の手ブレ補正は、課題も残る中で思い切ってよく採用した。難しい開発をがんばったよなあと感心、感心であります。そのブレ補正は、これまたよく効く。4段半ぐらいの効果が得られたときもあった(タナカ比)。とくに回転ブレ補正の効きは、動画撮影をしたときに、おおっ、と声が出るほどに感動した。まるでNHKの「世界ふれあい街歩き」のシーンのように、歩きながらもブレのほとんどない動画が、OM-D E-M5を片手で持ちながら鼻歌交じり歩いても同じように撮れる(少し大袈裟か)。

新しいブランド「OM-D」

オリンパス・OM-D E-M5+M.ZUIKO DIGITAL12ー50mmF3.5~6.3 EZ

 オリンパスが大変にチカラを込めて作ったカメラだ。あまりにもチカラが入りすぎて少し空回りしている部分もなきにしもあらずだが、いやそれはともかくとして、とても良いカメラに仕上がっている。写りも良い。オリンパスファンならずとも、大いに注目し、機会があればぜひ手にして操作し、ぜひともファインダーを覗いてみることをおすすめしたい。
 とくにファインダー、EVFの見えの良さは秀逸だ。こう言っちゃナンだけどソニーのNEX-7やα77、フジのX-Pro1のEVFなどは、出直してきなさい、といいたくなるような、それほどに良い。

 E-M5は ―― オリンパスはこのE-M5を「OM-D」とよんでくれと言ってるが、どのようによぼうと、ここではぼくの自由にさせてくれ ―― PENシリーズとは別にOM-Dシリーズを立ち上げて、その第一弾となる機種である。
 このE-M5の、というよりも、たぶんOM-Dシリーズのいちばんの特徴(狙い)は「ファインダーを覗いて写すカメラ」を作ろうとしたことではないだろうか、と、ぼくはそう思うのだ。PENシリーズが、背面の液晶モニターを「見て」写すスタイルのカメラだとすれば、OM-Dシリーズは、かって一眼レフカメラがそうであったように顔の前にカメラを密着させファインダーを「覗いて」写すというスタイルのカメラを、ミラーレスデジタルカメラで作ろうとしたと言えなくもない。


 ところで、オリンパスは今回、このOM-Dという新しいブランドを周知徹底アピールさせるために涙ぐましいまでの努力をしている。
 PENシリーズを大切にしつつ、新しく生まれたOM-Dもまた、PENシリーズと平行してシリーズ化していかなければないわけだが、しかしながら今のところE-M5の1機種しかない。だからこそ、機種名を言うのではなく“将来性、未来性、拡張性”のあるシリーズ名を連呼しているのだろう。

 ぼくたちに配られたプレスレリーズにも機種名(製品名)である「E-M5」の名称はほとんど出てこない。「OM-D E-M5」でもなければ「OLYMPUS E-M5」でもなくとことん「OLYMPUS OM-D」なのである。
 うーんっと唸ったのは、先日、できあがったばかりだというE-M5のカタログを見たときだった。

 表紙には当然ながら大きな文字で「OM-D」だ。その下に小さく「OLYMPUS OM-D」。そして、その表紙をめくって、びっくり。表2(表紙の裏側ページ)が真っ白だ。まるでチラシの裏。その対向ページは、真っ白な地にぽつんっと「OM-D」の文字があるだけ。ほらこんな具合だ。
 ざっと30数ページのカタログにE-M5の文字の記載があるのは、表4(裏表紙)の仕様表の「製品名/型式」のところだけ。いや、だからといってどうのこうのではなく ―― オリンパスの気持ちはよくよくわかるし、その気持ちをくんでぼくもこれからはできるだけ「OM-D」とよぶようにしたい、と ―― でもしかし、OM-Dシリーズとして二機種目が出てきたとき、それぞれをどのように言っていくのだろうかなあと、それを老婆心ながら心配しいるだけですよ。

IXY 3の総画素数と有効画素数の「差」

キヤノン・IXY 3

 今日、3月11日は東日本大震災がおこってちょうど一年になります。被災されたかたがたに、あらためて心からお見舞い申し上げます。


 昨日のブログでIXY 3が(IXY 1もそうだけど)、総画素数約1680万画素の撮像センサーを使いながら有効画素数が約1010万画素になっていて、その差、約670万画素はどうなったのか、とクイズのようなものを出した。本日は、その解答。いや、正解かどうかは、キヤノンに問い合わせたわけではないのでナンとも言えないので、以下はぼくの「見解」であります。

 約670万画素はなんにも役には立っておらず捨て去られている、といってもよい。では、なぜそんなムダでモッタイナいことをしているのか。カメラを、より小型化するためである。
 小型のコンパクトカメラを作るには、まず内蔵レンズを小さくする必要がある(ほかにもあれこれあるけれど)。いまのコンパクトカメラに内蔵のズームレンズに要求されるのは、1つは高倍率化、もう1つは小型化である。そこで高倍率で小型のズームにするためにIXY 3/1では「屈曲沈胴プリズム退避鏡筒」という方式を採用している。その、なんとかかんとか鏡筒とはどんなものかはここを見てもらえばわかると思う。YoutTubeの動画(以前、IXY50sの解説のときにアップロードしたものである)。

 この方式を採用することで光学12倍ズームという高倍率にもかかわらず、収納時にボディからレンズ部が飛び出さずにフラットにできた。


 もう1つ、レンズをより小型化するには「実画面=撮像面積」のサイズを小さくするという方法がある。
 つまりIXY 3/1では、1/2.3型サイズのセンサーを使ってはいるが、その中心部の限定された小さな範囲を実画面にすることで、レンズがカバーするイメージサークルが小さくでき、結果的にレンズを小型化しているのである。

 じゃあ始めから1/2.3型よりももっと小さなセンサーを使えばいいではないか、とおっしゃられるでしょう。しかし、キヤノンがヨシとするような適当なセンサーが存在しなかったのだ。IXY 3/1に使用するセンサーの選択肢として総画素数約1680万画素の1/2.3型裏面照射CMOSしかなかったのだろう。

 むろん、1/2.3型裏面照射CMOSには総画素数約1280万画素などもあるけれど(IXY600Fに採用)、それを使うと有効画素数は1000万画素を下回ってしまう。約1680万画素が約1010万画素に減ってしまう理屈で言えば、約700万画素程度になってしまう。実質的な有効画素数が1000万画素以下なんて、いまこの時代にカメラを売ることを考えれば論外。
 カメラの小型化、レンズの高倍率化、そして撮像センサーの高画素化の3つ(コンパクトデジタルカメラの三種の神器)をバランスよく合わせようとした結果が、ムダを承知で約670万画素を捨ててしまうことになったわけだ。

 ところで、IXY 3とIXY 1の「違い」について簡単に説明。「3」になくて「1」にあるものとしては、Wi-Fi対応、液晶モニターサイズが3.2型ワイド、タッチパネル式の3つで、他の機能や機構は「3」も「1」も同じ(たぶん)。これら「3」や「1」には、ぼくが注目している撮影機能がひとつあって、それについては、話が長くなりそうなのでまた機会があれば、ということで。

美術工芸品のようなカメラ

キヤノン・IXY 3

 このIXY 3は、最近のコンパクトデジタルカメラの中で、いま、もっとも注目している機種のひとつである。とにかくデザインがいい、外装の仕上げがよい。大袈裟じゃなく、まるで美術工芸品のようなコンパクトカメラである。いや、ほんとにキヤノンはこうしたカメラを作らせると、じつにウマい。センスがいい。
 新型IXYには「1」と「3」があって ―― 「1」と「3」との機能的機構的な違いはのちほど説明するとして ―― いま手にして、褒めまくっているのはIXY 3のレッドカラーの機種である。カラーバージョンには、「1」にはホワイトとブラックがある。「3」にはシルバー、ブルー、そしてレッドのカラーモデルがラインナップされている。

 中でもIXY 3のブルーとレッドのカラー塗装が大変に凝っていて、それが素晴らしい仕上げなのだ。均一に美しく塗装されていて、光にかざしてカメラを傾けるとグラディエーションが微妙に変化する。アルミボディに塗装する前にスピンドル加工を施している。それが塗装の「中から」浮かび上がってくる。
 レンズリング部とその他ボディ部の金属加工方法や、塗装方法を変えていて、とくにレンズリング部の塗装に感心する。聞くところによると、このレンズリング部の塗装は熟練した職人が手作業で手噴き加工をして仕上げているという。大変な手間をかけているだけあって、独特の艶があって質感もある。高級感もある。


 コンパクトカメラはいま、種類も多くなり多様化し、さらに飽和状態となっている。どんどんと低価格化している。作っても売っても(ほとんど)もうからない。そんな状況の中で、他のカメラとの差異感を出して注目してもらい買ってもらうには、機能や機構を特化させるという方法もあるが(じつはこれがムツかしい)、もうひとつが「持ちモノ」としての美しさや高級さのあるカメラに仕上げるという方法である。つまり、外観デザインの良さだ。ダサいデザインのカメラはどんなに機能が優れていても、そのた大勢、に紛れ込んでしまう。いまのコンパクトカメラはそういうもの。

 見栄えよく美しく仕上げるには、高い製造技術も必要なのはいうまでもないが、なによりもコストも手間もかかる。そこを敢えて思い切り、果敢にチャレンジと工夫をしていかないと、これからのコンパクトデジタルカメラが生き残っていくには難しい。スマートフォンという「大敵」もあり、人件費の安い海外のメーカーが超低価格のカメラを大量に出てきて、大きく前に立ちはだかってくるからだ。

 デザインが良いだけでもだめで、写真を撮る道具(カメラ)としての機能や機構も充実していなければならない。そこに手抜きがあってはならない。小型軽量、高倍率ズームで、そこそこの高画素も狙っていかなければならない。
 このIXY 3は、大変に小型軽量にもかかわらず内蔵ズームレンズは28~336mm相当の光学12倍ズームレンズを内蔵させている。12倍ですぞ。採用している撮像センサーは1/2.3型の、総画素数約1680万画素(有効画素数約1010万画素)の裏面照射型CMOSである。

 あれっ、と、お気づきになったでしょう。そうです、総画素数と有効画素数の「差」がありすぎますね。差し引き約670万画素は、いったいどこに行ってしまったのか。さあ、その理由を考えてみましょう…。

キヤノン伝統の「奇妙な仕様」

キヤノン・PowerShot G1 X

 前回のブログで、G1 Xは近距離での撮影が苦手だぞ、と書いた。それについて、とくにG1 Xの最短撮影距離の数値で ―― たぶんキヤノンのホームページを見てのことだろうけど、ぼくの twitter に質問や疑問がいくつ投げかけられた。
 「公式には、通常・マクロモードともに最短はワイドで20cm、テレで85cmとなっているぞ」と、いうもの。このG1 Xのスペック表ですね。

 じつは、ここに記載されている「撮影距離」は、通常撮影モード(P/A/S/Mなどの撮影モード)と、AUTO撮影モード(完全カメラ任せの撮影モード)のデーターが混在して記載されているのです。
 話がややこしくなるうえに、揚げ足を取るようでイヤなんだけど、そこに書いてある「通常」というのはAUTO撮影モードを選択したときのもの。「マクロ」のところは通常撮影モードでのものなのだ。本来ならば、「通常」のところには「40cmー∞(W)/1.3mー∞(T)」と明記しなければならないのに、そうなってなかったもんで、皆さん“混乱”したのだと思う(ぼくも始めは混乱したんだけど)。

 ちなみに、こちらはG12のスペック表だけど、ここの「撮影距離」のデータは通常撮影モードでのことで、まったくモンダイもない。なぜ、G1 Xのスペック表記をキヤノンがアンなふうに書いたのか、ぼくにはわからない(ただ単純な誤記とも思えない)。


 G1 Xは、フォーサーズのセンサーよりも“ひと回り”も大きな1.5型CMOSセンサーを採用した。そのセンサーのサイズをカバーする4倍ズームレンズで、なおかつ高い描写性能を保ちつつここまでコンパクトに仕上げたのには感心するが、それが足枷になったのだろうか、近接撮影の機能が犠牲になったとすればじつに残念なことだ。

 G1 Xの近接撮影の話ばかりが続いてしまったけれど ―― 注目すべき新しい撮像センサーのことや、G1 Xの高感度画質の素晴らしさなどについて話をしたかったのだ ―― でも、ついでだから、もう1つだけ、キヤノン・コンパクトカメラの気になるマクロ撮影モードについて。

 G1 XもG12もそうだけどキヤノンのコンパクトカメラの多くは、いったんマクロモードに切り替えてしてしまうと、無限遠はおろか、ちょっとソコにもピントが合わなくなる。これはムカシから現在に至るまでの、キヤノンのカメラに見られる「奇妙な仕様」のひとつだ。新型G1 Xもそうだ(AUTO撮影モードではマクロ域から無限にまでピントが合わせられるけど)。もういい加減に考えをあらためて、こんな仕様はやめてほしい。
 他のメーカーで、このキヤノンのようにマクロモードにセットしたら金輪際、遠くの風景にピントが合わせられなくなるコンパクトカメラなんて、ほとんどない。

 画質はいい。高ISO感度の画質も、とても良くて ―― APS-Cサイズ判のEOS 60Dとトントンかそれ以上、ただし絵づくりの考え方がだいぶ違うようだけど ―― 魅力いっぱいのカメラなんだけど……スムーズに近くのものをクローズアップして写したり遠くのものを素早く写したりできないのが惜しい。

クローズアップ撮影できないカメラ

キヤノン・PowerShot G1 X

 G1 Xの使用感は、うーむ残念…というのが正直なところであります。画質は文句なしに素晴らしいのだけど、操作性が、とくにAFがいけませんね。AFの測距スピードも、最新型のセンサーを使用していることを考えると、ぼくは不満が残る。
 いや、AFスピードうんぬんよりも、近距離でピントが合わないのが困りました。
 この近距離ピント合わせ苦手は、AFの測距性能の問題ではなく(それも、まったくないとは言えないけど)、仕様として近距離にピントが合わせられないレンズなのだ。いや、それにしても、もうちょっとナンとかならなかったのかと、使っていてストレスがいっぱい溜まった。

 ですから、もし、このG1 Xの購入を予定しておられるなら、まず、G1 Xを手にして試してみるべきです。近いところや遠いところに、ズームしながら(望遠側で)ピントを合わせてみて、「うん、これなら我慢できる」と納得した上で購入したほうがいいでしょう(ぼくは納得しにくいけど)。

 G1 Xの最短撮影距離は、ワイド側では40センチ、ズームしてテレ側にすると1.3メートルまでしかピントが合わない。
 マクロモードに切り替えると、ワイド側は20センチ、テレ側では85センチになる。でも、テレ側の85センチってのは、実際にピントを合わせてみればわかるけど、相当に“遠い距離”だ。焦点距離100mm程度のレンズで(G1 Xは28~112mm相当のズーム内蔵)最短85センチってのは、はっきり言って「実用範囲外」の距離だと思う。


 G1 Xの前モデルの(というのもヘンだけど)G12の最短撮影距離は、ワイド側で5センチ、テレ側でも30センチである。マクロモードにすると、テレ側では30センチ最短は同じだが、ワイド側では1センチまで寄れる。こうしたG12の最短撮影可能距離のことを考えると、G1 Xがいかに近距離撮影“不能カメラ”であるかがわかる。

 さらに、G1 Xは、というよりもG12もそうなのだが、P/A/S/Mなどの通常撮影モードから完全カメラお任せのAUTOモードにすると、マクロモードに切り替える操作なしに無限遠距離からマクロモードの最短撮影距離までシームレスにピントが合わせられる。
 こんなことなら、P/A/S/M通常モードでも、マクロ切り替えなしのシームレスでピントが合わせられるようにしておいてくれればいいじゃないかと(キヤノンがそうしない理由はナンとなくわかるんだけど)。キヤノンのコンパクトカメラのマクロモードには、まだもう1つ、大きな問題点があって、そのハナシは後日にでも。

リコンフィギュラブル、ってなんじゃらほい

カシオ・EX-ZR20

 というわけで、上位機種(エクシリムシリーズのトップモデル)のEX-ZR200に比べてスペックでは劣るものの、しかし実販予定価格(3月中旬発売)では店によっては1万円近くも高い“下克上カメラ”となる新型EX-ZR20の話のつづき。

 ZR20はデュアルCPUを採用していて、1つのCPUでは撮影を、もう1つのCPUには画像処理を分担させ同時進行で処理ができる。だから「快速で快適!」というわけ。デュアルCPUを採用しているコンパクトデジタルカメラて*カシオ以外にあっただろうか。ぼくは知らないなあ*(いわゆる一眼カメラではあるけれど)。贅沢なカメラだ。
 そのうえ、このCPUにはリコンフィギュラブルの技術が採用されていて、だから効率よく臨機応変に撮影と画像処理が同時に高速におこなえるんだって。リコンフィギュラブルってなに、ってシロートのぼくに聞かれても困る。以下、聞きかじりの知識だが、再構成可能技術ということらしく、つまりCPU演算処理を使用目的に応じて自在に切り替えて使う技術らしい。…よくわからん。

 だから、たとえば最高30コマ/秒の高速連写を生かして「HDRアート」の撮影を愉しむことができたり、暗い場所でも“明るく”撮れる「HSナイトショット」を可能になったというわけだ。

(*) あった…。オリンパスのSZ-30MR。オリンパスの皆さん、ごめんね。



 ZR20の、あれこれ山盛りてんこ盛りの撮影機能の中でちょっと興味があったのは「HSナイトショット」であります。むろん、以前にもここで紹介したけれど、カメラをパーンしながら撮影し超広角画角の写真を作り出す「ワイドショット」機能も大注目で、このZR20にも搭載されていて、それも愉しい撮影機能だけどそれにも増してHSナイトショットもおもしろい。

 似たような機能はZR200にも「HS夜景」のネーミングで搭載されているが、ZR20ではそれをさらにブラッシュアップして、より暗い場所でも、より明るく撮れるようになった。暗くて暗くて、とてもこんなシーンでは写らないよなあ、という場所でもHSナイトショットで撮れば、うぉっ、昼間じゃないかこれは、と思うほど明るく写る。
 高ISO感度と10コマ以上の高速多重露出をして、それを合成し1枚の画像に仕上げるもので、その技術そのものは珍しくはないが、ZR20で撮れる暗いシーンが尋常ではない。いくつかのシーンで撮ってみたのだけど ―― 都会の中で暗い場所を見つけるのは、ほんとタイヘンだよね、そのことにあらためて感心した ―― それはともかく、いやはや明るく写る。(上の写真は、裏通りのそのまた裏通りの、ほんと暗い場所なんですよ、Exifデータによると、ISO感度は12800、1/15秒、F3.3)

 つまり、あまりにも明るく写りすぎて、暗いシーンの雰囲気なんてなーんにもなくなっちゃう、ということに不満を感じたわけですよ。暗いシーンは、やはりそれなりの「暗さ」の写真に仕上がらないとオカシイと思う。
 暗くても、ナンでもカンでも明るくくっきり写った写真に仕上げるというのも、それはそれでアリだろうけど、しかし「写真」はそういうもんでもない、とぼくは考えるんだけど、どう思いますかカシオの担当者の皆さん。