ニコンの必読「テクニカルガイド」

ニコン・D800E+タムロン・SP24ー70mmF2.8 VC

 D800もD800Eも、カメラの持つ実力を発揮させるように使いこなすには、それなりの撮影テクニックが必要。安易な気持ちで撮影していると、思わぬしっぺ返しを喰らうだろう。その撮影テクニックは簡単なようで、じつはとても難しいこと。いや、たぶん多くの人はその「テクニック」の内容を聞くと、なーんだバカにするなよ、と一笑に付すに違いない。
 そのテクニックとは、「正確にピントをあわせること」、そして「ブラさないで撮影すること」のたったふたつ。このことは撮影の基本の基本のことだけど、とくにD800/D800Eのように高画素のカメラになればなるほど、これが「確実に」できるかどうかで仕上がりの写真は決定的に違ってくる。性能の良いレンズを使う必要があるとかないとかは二の次。

 このようなことはぼくがくどくどと述べるまでもなく、ニコンが、ユーザーに充分に覚悟を持って使いこなすようにと「テクニカルガイド」を出している。17ページほどの“デジタル版小冊子”がニコンのホームページに“こっそり”とPDFファイルで置いてある。ここのページの右下あたりにあるPDFファイルがそれ。
 もし、D800/D800Eを使って高画質の写真を撮りたいのであればこのテクニカルガイドは必読だ。いや、D800/D800Eユーザーでなくても、ニコンユーザーでなくても、少しでも高画質の写真が得たいのであればゼッタイに読んでおいたほうがイイと思う。大変に重要なことが(基本の基本のことばかりだが)懇切丁寧に書いてある。


 初心の気持ちで読んでみることが大切だけど ―― たとえば 、しっかりとした三脚を使ってブラさないで撮ること、に始まって、位相差AFに頼るのではなくライブビューでコントラストAFまたはMFでピントを合わせて撮ること。回折現象を避けるために絞りすぎないこと。手ブレ補正レンズを活用すること。もし位相差AFで撮影するならシングルポイントAFを選ぶこと。
 ソンなことオレわかってるよッ、誰にモノ言ってるんだよ、と、ふんぞり返った声が聞こえてきそうだけど、さらに、狙ったところに正確にピントを合わせること。被写体ブレを少なくするために高速シャッタースピードを選ぶこと。高速シャッタースピードが得られにくい状況なら高ISO感度を利用すること、などなどだ(多少、脚色してるけど… ま、内容はこんなところ)。

 おすすめのニッコールレンズも書いてある。しかし、それを読んで「そのレンズを使わないとD800/D800Eでは高画質が得られない」と誤解する人も少なからずいるに違いない。そう考えるのは、大きな間違い、はなはだしい思い過ごし、過度な思い込み。
 むろん高性能なレンズであれば良いにこしたことはないが、もしそこそこの性能しかないレンズであっても、そのレンズの性能のほぼ100%がD800/D800Eで引き出せるようになった、と考えることもできる。いままでのカメラだったら、そこそこのレンズの、その性能さえもフルに発揮するこもできなかったけれど、新しいカメラと組み合わせることでそれができるようになったとすれば、それはそれで「とても良いこと」ではないのか。

躊躇なくD800Eがおすすめ

ニコン・D800E+AF-S NIKKOR14-24mmF2.8G

 D800もD800Eも約3630万画素という高画素とローパスフィルターの仕掛け“だけ”が注目されすぎている気がしないでもない。その2つのこと以外の、カメラとしての基本性能や機能(良くできている)については、ほとんど話題にもあがらないのはいささか奇妙な感じもする。
 それにしても、センサーの画素数が多いことがこんなにもインパクトがあるのかと(わかっているつもりではあったけど)あらためて感じ入ったしだい。高画素カメラなんてイラない、と、いままで張り切っていた人たちも、手のひらを返したように高画素のD800/D800Eを“絶賛”しはじめていて、じゃあその人たちが高画素やローパスフィルター以外のカメラ性能についてD800/D800Eを評価しているかと言えば、どうもそうでもなさそうだ。

 やっぱりなあ、ナンだカンだといったところで高画素イコール高評価に結びつくようだ、いまのデジタルカメラは。

 繰り返すようだけど、D800/D800Eには高画素とローパスフィルターの仕掛け以外にも、もっと注目し評価すべきところがあるカメラだと思う。デジタル一眼レフカメラとして完成度はとても高い。視野率が約100%であることや、91000ピクセル画素のRGBセンサーのことや、高画素センサーにもかかわらず高ISO感度での優れた画質のこと、そして内蔵ストロボを備えていること、などなど。
 このほかにも、目立たないけれど「大向こうを唸らせるような機能」や「地道な改良」もたくさんある。しかしいまここで、それ解説するとなると相当にディープな話になってしまうので遠慮しておく。


 ところで、D800とD800Eの違い、はただひとつ、ローパスフィルターの仕掛けが異なること。その仕掛け(コロンブスの卵みたいだ)のおかげでD800EのほうがD800より高解像力高画質であるということだけ。そのほかのカメラ性能や機能すべてについてはまったく同じだ。
 ぼくは当初、使って撮ってみる前まではD800よりもD800Eのほうが解像描写力は“断然”すぐれていると思っていた。差は大きいと考えていた。しかし、両機種を使って撮り比べてみたら、予想していたほどの「差」がない。確かに、よく見ればD800Eのほうが解像描写力は高かった。「この程度の差か…」というのが素直なファーストインプレッションだった。

 しかし「この程度の、わずかな差」とは言ったけれど、じっくりと撮った画像を見比べてみると、やはりぜんぜん描写力、解像力が違うことに気づく。近景を写した被写体ではそれほど違いは明瞭ではない。ところが、とくに遠景の微細な被写体を撮影した画像を見ると、D800Eのほうが明らかに解像描写力が高い。わずかな差ではあるが、やっぱりそうだよなあ、こうなると躊躇することなくD800Eのほうだよなあ、とつくづくそう思った。

 D800Eにはモアレや偽色の心配があるじゃないか、とおっしゃる向きもあろうが、しかし、そうそう頻繁に出て目立つものではない。そんなもんD800だって出るときは出る、写るときは写るもんだ。実際ぼくは、いままでにローパスフィルターなしのカメラ(D800Eとは違い、ほんとうにフィルターなしのカメラ)をたくさん使ってきたが、モアレや偽色が出て「あちゃー」なんてことは一度もなかったぞ ―― 上の写真、一部にモアレ、偽色のように見えるかもしれないが、元画像にはまったく出てませんからね ―― ということを言っておきますね。

顕微鏡モードの撮影は愉しいぞ

ペンタックス・Optio WG-2 GPS

 耐防水、耐防塵、耐衝撃の機能を備えたOptio Wシリーズの最新型。WG-2はWG-1のモデルチェンジ機種で、WG-1の奇抜なカメラの外観デザインをしっかりと受け継いでいる。液晶モニターが、WG-1の2.7型ワイドからWG-2では3.0型ワイドに大きくなったためにボディサイズもふたまわりほど大きくなった。耐防水は12メートル、耐衝撃は1.5メートルとWG-1よりも性能向上。
 外観デザインは、なんというか、まるで「機動戦士ガンダム」みたい(ぼくは、そのへんのこと不案内なのでとんちんかんな例えかもしらんが)。ま、いずれにしても、カメラとしてはぎょっとするような“大胆不敵なデザイン”ですね。

 内蔵ズームレンズはWG-1もWG-2も同じ28~140mm相当の5倍ズームだが、画素数がWG-1の約1400万画素からWG-2では約1600万画素になった。いや、それよりももっと大きな違い、というか注目点はWG-1が1/2.3型CCDセンサーだったのがWG-2では裏面照射型のCMOSセンサーになったことである。
 すなわち、ペンタックスのコンパクトデジタルカメラでは、なんと初めてのCMOSセンサー搭載機種がこのWG-2というわけだ。だからプレスレリーズには堂々と「新採用の裏面照射型CMOSイメージセンサー」と高らかに謳っている(なんだか涙ぐましい…)。


 だから、フルHD動画が撮れるんだぞ、120fpsで動画撮影をしてスローモーション再生することもできるんだぞ、とペンタックスは威張る。
 ただし ―― ここがペンタックスのペンタックスらしさなんだけど ―― WG-1/WG-2の大きな魅力機能のひとつである「顕微鏡モード」で、相変わらず動画撮影ができない。WG-1の時にはそれが大きな不満だったのだが、WG-2になって動画機能で威張っているくせに、今回もまた顕微鏡モードで動画が撮れない。システム上の制約ではなく、どうも社内の誰か、とんちんかんな人がストップをかけているようですなあ…。

 顕微鏡モードでは“超々”クローズアップができる。被写体に“超々”近づいて撮影するからカメラ本体で影になって照明がウマくいかない。そこでレンズ周囲にLEDライトを配置して(6個)それでライティングする。どれくらいクローズアップできるかはコレをごらんよ。上は顕微鏡モードそのまま標準撮影。下のアップはデジタルズームして撮影したもの。千円札の野口英世。こんなに拡大撮影できるんだから ―― もちろんAF撮影可能 ―― たとえば、ちっぽけな虫が動く様子を動画撮影できればおもしろいではないか。

 動画はあきらめるとして、顕微鏡モードで静止画撮影すると画像サイズは1920×1080ピクセルの、アスペクト比16:9の、約200万画素になってしまう。200万画素はまあイイとしても、4:3や3:2のアスペクト比も選べるようにしておいてくれよ、とぼくは思う。16:9の静止画というのが、どうもなじめないのですよ。上の写真は顕微鏡モードで撮影したケシの花の花心。

手のひらに隠れる600mmレンズ・その2

オリンパス・OM-D E-M5+トキナー・Reflex 300mmF6.3 Macro

 ほら、こんなにちっぽけなレンズなのだ。

 だけどその描写は、厳しく見れば ―― やはり反射望遠式のレンズだから仕方がないのだけど ―― いまいちシャープさに欠ける。ややフレアーが目立つ傾向もある。解像力は、屈折型レンズに比べるとだけど、どうしても見劣りがしてしまう。
 とはいえ、いっぽうでは超小型軽量でコンパクト(ポケットにも入る)、最短が80センチ(超望遠マクロレンズにもなる)、低価格(実販で約3万5千円以下だ)という“長所”もある。こうした“長所”と“短所”をよく理解した上で使いこなすレンズである。

 超小型軽量を生かし、手持ち撮影でこのレフ300mmを気軽に使いこなすには、手ブレ補正の機能は必須だ(もちろんレンズ内には手ブレ補正の機能はない)。つまりオリンパスのような(とくにOM-D E-M5のように優秀な)ボディ内手ブレ補正のカメラとの相性がすこぶるよいということ。
 絞り値が固定式だから、撮影シーンによっては露出オーバーになる。だからNDフィルターが必要なときもある。既存の反射望遠レンズでは差し込み式のフィルターソケットを備えていたものも多かったが、このトキナーレンズにはそれがない。NDフィルターは通常のフィルターセットと同じようにレンズ前面に取り付ける(フィルター径は55mmなので入手しやすいだろう)。


 ピント合わせは、コツを掴むまでチョッと苦労するかもしれない。ピントリングの操作感はとても滑らかで好感触なのだが、非常に「デリケート」である。とくに10~20メートルを越える遠距離撮影では、ピントリングをほんのわずか動かすだけで大きくピントがズレる。
 ピントを合わせたらピントリングからそーっと指を離すことだ。不注意に指がちょっとでも触れたりすると、それだけでピントがズレてしまう。ピントリングを握ったまま撮影することは避けたほうがいい。

 OM-D E-M5には優れた手ブレ補正の機能を備えているので、このレフ300mmはもっぱらそのカメラを使って撮影をした。もし、皆さんの中でぼくと同じようにOM-D E-M5を使って撮影をするのであれば、以下のカスタマイズをしておくと、よりいっそうラクチンにピント合わせして撮影できるかもしれない。
 まず、画面拡大モードをファンクションボタン(Fn1またはFn2)に登録しておく。つぎに、シャッターボタンを半押しすると手ブレ補正をONにできるようにカスタマイズする(残念ながらPENシリーズではこれができない)。

 こうすれば、カメラをホールドしたままファンクションボタンを押すだけで画面拡大モードに切り替わり正確にピント合わせができるようになる。さらに、シャッターボタンを半押しすれば手ブレ補正が働き、画面が大きく小刻みに揺れることがなくなりピタリと落ち着く。ピントが大変に合わせやすくなりますぞ。

手のひらに隠れる600mmレンズ・その1

オリンパス・OM-D E-M5+トキナー・Reflex 300mmF6.3 Macro

 このレフレックス300mmは、トキナーレンズとしては初のマイクロフォーサーズカメラ用レンズである。35mm判換算で約600mm相当の反射式望遠レンズだ。反射鏡と屈折レンズを組み合わせてレンズ鏡筒内で光路を折り曲げる ―― これをカタジオプトリックタイプという ―― ことで超小型の望遠レンズに仕上げている。レフレックスタイプとかミラー式とか反射式などともいう。

 このレフレックス300mmレンズは撮像センサーの小さなマイクロフォーサーズ用だから、さらにいっそう小型軽量に仕上げることができた。レンズ全長が約66ミリ、レンズ径も約66ミリで重さは約330グラム。両手の手のひらの中にすっぽりと隠れてしまうほどの小ささだ。上着のポケットに入ってしまう。


 一般的にだけど、カタジオプトリックタイプの反射望遠レンズの特長は、小さい軽い、のほかに色収差がほとんどないことだ(他の収差も少ない)。これが長所。
 逆に短所としては、絞り機構を組み込むことが非常に難しいこと(記憶が曖昧だけどムカシ絞り可変のミラーレンズもあった)、AF化もまた非常に難しいこと(しかしミノルタが初めてAFに対応させた)、フレアーが出やすくコントラストがやや甘くなること(だからレンズフードはぜひ必要)、そしてボケがドーナツ状のリングボケになること(これは欠点とは言い切れない、長所かもね、好きな人も多いから)。

 このレフ300mmは絞りはF6.3の固定式でマニュアルフォーカス専用だが、600mm相当の超望遠レンズにもかかわらず最短撮影距離は80センチである。これがとても愉しい。ワーキングディスタンスを十二分に確保しながら、まるで超望遠マクロレンズのように使える。
 こうした撮影のときはピント合わせやブレには相当に神経質にならざるを得ないけれど、遠くからでもピンポイント的にクローズアップフレーミングして撮影ができる。
 (このレンズの描写や使いこなしのハナシは次回にでも)

デジタルレンズオプティマイザ・その2

キヤノン・EOS 5D Mark III+タムロン・SP24ー70mmF2.8 VC

 デジタルレンズオプティマイザでデジタル処理が可能な画像ファイルは、当たり前だがキヤノンのカメラ、キヤノンのレンズで撮影したRAWファイルに限定される。
 じつは、正直いうと、デジタルレンズオプティマイザ処理ができるのは、EOS-1D Xと5D Mark III 以降の“新型EOS”で撮影したものでないとダメだとぼくは思い込んでいた。つまり、その2機種以前のカメラは、面倒みません、新型カメラを買ってください、という ―― いかにもキヤノンらしいじゃないですか ―― ことなのかなと。

 しかしそれはぼくの勝手な思い込みでした(ごめん)。古いEOSで撮影したRAWファイルでも(そして対応レンズで撮影したものであれば)、デジタルレンズオプティマイザで処理ができて画質を向上させることができる。キヤノン、エラいじゃないですか。
 このデジタルレンズオプティマイザの効果はてきめん。すごい、素晴らしい、感動的。ヘボなレンズで撮影したヘボな画像が、うわぁと叫びたくなるほどの良好な高画質になる(ヘボなレンズほど感激する度合いは強い)。


 いままでハードディスクの肥やしにしかならなかった古いRAWファイルがようやく役立つ時が来たと言ってもいい。
 ただし、キヤノン製以外のレンズを使って撮った画像についてはデジタルレンズオプティマイザの対象外になることだ(当たり前といえば当たり前だよね)。つまり、タムロンやシグマ、トキナーなどのいわゆるサードパーティー製のレンズは、EOSを使って撮影したとしてもデジタルレンズオプティマイザの「恩恵に浴する」ことがいっさいできない。

 こうした“自社製品囲い込み”は ―― 交換レンズはボディと違って収益率も大きいからとくに ―― キヤノンに限らず他のカメラメーカーも近い将来、もっと厳しくやってくる。だから必然的に、タムロンもシグマもトキナーも、いま以上に機能を工夫しつつ正攻法でレンズ性能やレンズづくりの技術を向上させていかなくてはならない。ますますレンズ専門メーカーにとっては大変な時代になってくるだろう。

デジタルレンズオプティマイザ・その1

キヤノン・EOS 5D Mark III+EF24ー105mmF4L IS

 昨年秋、EOS-1D Xの発表の頃だったろうか、「今度バージョンアップされるDPP(Digital Photo Professional、キヤノン専用のRAWファイル現像ソフト)で、回折現象が補正できる機能が盛り込まれるようだ」、といったハナシを聞いた。「そんなバカなぁ、回折でフレアボケした画像が後処理で補正してシャキッとできるなんて、それナニかの間違いじゃないか」と、ぼくは、にわかには信じられなかった。

 その後、回折現象を補正する技術についていろいろと調べてみたら、なんと、既にそうした補正技術が実用化していることがわかって、少しびっくり。デジタルって凄いよねえ、フィルム時代ならあり得ない、想像もできないことだった。
 5D Mark IIIの発表のときに新DPPも発表され、その、信じられないハナシ(回折現象を補正するだけでなく、その他の諸収差もデジタル補正できること)がホントウだったことがよくわかって、大いにびっくり。


 新DPPに搭載された新しい画像処理機能を「デジタルレンズオプティマイザ(DLO)」、とキヤノンは名付けている。カンタンにいえば、レンズの光学的な収差や回折、そしてローパスフィルターの影響により劣化した画像を画像処理で補正をして画質を向上させるというもの。各レンズの絞り値や撮影距離などでの描写特性と補正方法と量を数値化して、それをもとにして最適な画像処理をする技術。

 だから各レンズの詳しい「情報」を調べて「数値化」してデーターを作っておく必要がある。レンズの「情報」については、やはり設計し製造したメーカー自身が“酸いも甘いも内緒のことも”よーく知っている。どんなデジタル的な処理をすれば最適な補正効果が得られるかもよく知っている。
 と、カンタンそうに言ったけど、たぶん大変な作業だろうと思う。現在、デジタルレンズオプティマイザの処理に対応したレンズが、約30本程度と限定されているのは、きっとそうした理由によるものだろう。
 とはいえ、現状は対応レンズの数が少ないことと、対応レンズのほとんどが高性能レンズが多いことが、とくに残念なこと(高性能レンズは補正の必要性はそれほどないはずだ、たくさんのヘボレンズにもっと対応して欲しいよね)。つづく。

5D Mark IIIに「飛び道具」はないけど

キヤノン・EOS 5D Mark III+EF24ー70mmF2.8L

 前回のこのブログで、5D Mark IIIには「飛び道具」が必要だったのでは、というようなことを書いた。「飛び道具」とは、くどくど説明しなくても誰もがすぐに“おおっ”と驚くような斬新な機能または機構、と理解してもらえばいいだろうか。
 5D Mark IIIには、高ISO感度の画質が素晴らしい、というそれに近い機能を備えてはいるのだけど、良さを理解するまでにワンテンポズレる。そうじゃなくて、ストレートに感覚的に“おおっ”と反応できるような機能がひとつぐらいは必要だったのではなかろうか、ということ。

 話が横道に逸れるが、その「飛び道具」という言葉を初めて使い始めたのは、確かニコン・フェローの後藤さんだったと思う。後藤さんはムカシからそうしたツボを突いたような名文句をいくつも“発明”した。この「飛び道具」は、後藤さんとしては当初、カメラ本来のあるべき進化をせずに“打ち上げ花火”のような機能を盛り込むことだけに汲々としているカメラ設計の方向を揶揄する意味で使っていたのだが、しかし最近はその「飛び道具」を備えていないと新型カメラが見向きもされなくなったという風潮があるのは皮肉な話だ。

 ところで、クラスが下の新型機種がスペック的には上位機種を上回ってしまう現象を「下克上」というのだが、その名文句も(たぶん)後藤さんが言い始めたこと ―― その後、とくにニコンのデジタルカメラに「下克上カメラ」が多く出現したことは、これまた皮肉なことだけど。


 5D Mark IIIを使ってぼくが感心したことは、高ISO感度の画質の良さは言うまでもないが ―― ぼくとしては、よほど神経質になってノイズを気にするのでなければISO3200でも、なにも文句はなかった、まったくの常用感度域内だ ―― 、視野率約100%のファインダーの視認性の良さ、シャッターを切ったときのキレのよい感触、じつにきめ細かな撮影機能の設定とカスタマイズ性、そしてバッテリーのモチの良さ、などなど。

 AFの測距性能も確かに向上しているようなのだが、ぼくは中央一点しか使わないのでその“ありがたさ”がイマイチ良くわからなかった。
 ライブビューモードでのコントラストAFの測距スピードは相変わらずノンビリ、モッタリしていた。こういっちゃナンだけど、キヤノンEOSのコントラストAFはカメラメーカーの中で“ダントツ”に遅い(どうも原因はレンズ側にありそうだけど)。

 で、使っていて感じたちっちゃな不満と言えば、そのライブビューでの測距スピードぐらいで、他については大満足のカメラだった。
 5D Mark IIIを使い始める前は、「5D Mark IIで十分じゃないか、どうしても高感度の撮影にこだわるという人でなければMark IIIに買い換える必要なんてナニもないぞ」と思っていたけど、いやいや、実際に使いこんでみると、「Mk IIユーザーは(じつはぼくがそうなのだけど)、ちょっと考え直したほうがイイぞ」と、考えを改めるようになった。
 「飛び道具」は持ってないけど、正々堂々、真正面突破型のカメラ、ま、そんな印象かな。

使い込んでみないと良さがわかりにくいカメラ

キヤノン・EOS 5D Mark III+EF24ー105mmF4L IS

 この1~2ヶ月のあいだに、たくさんの新型カメラやレンズを使う機会があった。そうした「新型」の試し撮りの合間をぬって愛用の「旧型」のカメラやレンズで仕事や作品撮りのための撮影も続けていたから、それでなくても整理整頓のゆきとどかないぼくのアタマの中はごちゃごちゃだ。だからどうした、というわけでもないのだけど…。

 この、キヤノンの5D Mark IIIも、使い始めたのはだいぶ前のこと。
 そう言えばもう昨年の秋の話になるが、EOS-1D Xが発表になって ―― 5~6ヶ月も前に発表だけして発売日がいまだに未定というのは前代未聞の“歴史的カメラ”だけど ―― その時に試作モデルを少し使ったりした。だから5D Mark IIIを初めて手にして使い始めたときは、それほどの強い印象を受けなかった。操作方法や一部の機能などがとっても似ていたからだ。

 しかし、5D Mark IIIを使い始めてみると、日時を重ねるごとにその「良さ」がじわじわと伝わってくるのだ。これは良いカメラだなあ、と使うほどに感心した。キヤノンのデジタル一眼レフカメラは、だんだんと「良い方向に変わりつつあるなあ」と実感もした。EOS-1D Xもそうだが、いままで採用することを頑なに拒んできたような「あってしかるべき」機能がどしどし取り入れられている。
 もっと評価されてもいいカメラなのに、どうもイマイチ盛り上がりに欠けるような、そんな気もしないでもない。


 しかし実際に時間をかけて、じっくりと使い込んでみないと「良さ」がわからないようなカメラを作ってしまったというところが、5D Mark IIIについて言えばキヤノンの“痛恨のミス”ではなかっただろうか。
 今回ばかりは、キヤノンが真正直すぎたのかもしれない。じっくりと熟成させ完成度を高めたカメラを作ればユーザーは必ず評価してくれる、とまるで少年のような純な気持ち(ぜんぜんキヤノンらしくない)だったのではないか。

 「正常進化させたカメラなのだ」と、わかったようなわからないような抽象的なコトを言ったって(ぼくもときどき原稿などで書くけど、スマン)、いまの時代、新型カメラの良さはなかなか伝わりにくい。やはり、新型は“新型らしい”わかりやすい新機能や新機構 ―― 使ってみなくても見ただけでわかるような ―― は必要なのではなかったろうか。つまり5D Mark IIIには「飛び道具」がなかった。

 だから正直を言えば、当初、5D Mark IIIのスペックを見たとき、このカメラの“ウリ”はいったいナンだろうか、とかなり戸惑った。ちょうどこの5D Mark IIIの発表の前に、強烈な飛び道具 ―― 3630万画素の高画素とローパスフィルターの仕掛け ―― を備えたニコンのD800/D800Eが強烈な存在感を示していたから、どうしてもそれと比べられてしまい5D Mark IIIの魅力がよけいに薄まってしまったようだ。