いままで撮れなかったものが撮れるカメラ

キヤノン・PowerShot SX50 HS

 前回のここのブログで「最高連写速度は約10コマ/秒」と書いたけど、それはキヤノンのホームページのSX50 HSの公式のスペック表を見てのこと。「ハイスピード連写HQ(連続撮影):約10枚/秒」とある。ところが同じSX50の解説ページを見ると「12.1メガのフル画素で最大約13枚/秒の連写を実現」とある。いったいどちらなのか。いま、だいぶ前に書いたぼくのメモ帳を取り出して見たら「約13コマ/秒 ―― 10カット」とあるなあ…。

 ま、そんなことはどーでもいいんだけど、このSX50は高倍率超望遠ズームレンズにもかかわらず、AFが速く確実であること、手ブレ補正が良く効くことがなんとといってもこのカメラの魅力だろう。
 手ブレ補正(IS)の機能がじつに多彩。(1)静止画IS ―― ごく普通の手ブレ補正。(2)流し撮りIS ―― ヨコ流し撮りしたときタテ方向のブレを抑える。(3)ハイブリッドIS ―― 角度ブレ補正と平行ブレ補正が同時に働く。(4)三脚IS ―― 自動的にISを停止する。(5)パワードIS ―― 動画中や超望遠での大きくゆっくりとしたブレを補正する。(6)ダイナミックIS ―― 角度ブレ補正と回転ブレ補正、動画の歩き撮りに向く。

 といった具合で、これらを撮影シーン(58シーン205パターンを認識)に応じて自在に自動で切り替わるという(自動切り替えってのが、これがイイ)。とにかくSX50 HSを使っていて強く感じたことは、撮れなかったもの写すことが難しかったものが、いともカンタンに撮れる写せるってことだった。新しい写真表現のためには、こうしたカメラがなによりも嬉しい。


 一眼レフカメラのような姿のレンズ一体型カメラで、こうしたスタイルのカメラはフィルムカメラ時代から続くもので ―― ムカシのカメラはどうだったこうだった、だからいまのカメラは、なんてジジクサイことは言いたくないけど ―― ブリッジカメラとかニューコンセプトカメラなんてよばれていた。一時的にだけど流行った。
 時を経てデジタルカメラ時代になって、いつのまにかこうしたスタイルのカメラがどこのメーカーからも"安定継続"して発売されるようになった。古くからのスタイルを維持しつつ、長年かかって、少しずつ確実に機能や性能を向上させているから良くなるのは当然のことかもしれない。
 こうした一体型スタイルのカメラは国内ではそれほど話題にならないけど、海外市場、とくに米国市場では相当に人気があるそうで、だから続いているのだろう。

 ところで、カメラは日本国内の「人気」だけを見ていては、そのカメラのホントウの魅力はわかりにくい。多くのカメラメーカーは国内市場よりも文句なしに海外市場にウエイトをおいて ―― 国内市場を軽んじているというわけではないけど ―― 企画し開発している。クルマだって同じだ。ニコンにしてもキヤノンにしても他のメーカーもそうだけど、国内と海外の販売比率が「天と地」ほど違うってカメラはザラにある。先日もカメラメーカーのある人にインタビューしていたときも、「そうですねえ、このクラスのカメラでしたらだいたい国内が1~2割、海外が8~9割といったところでしょうか」と話していた。

 だからどーしたっ、と突っ込まれてもぼくは困るんだけど、いや、ですからカメラはね、とくにデジタルカメラは(レンズもそうだけど)、どうしても世界中の、カメラやレンズを買ってくれるユーザーのことを「第一」に考えて企画され開発されているということと、今後はその傾向がもっと強くなっていくんではないか、と、そんなことをぼんやりと考えているわけですよ。

今年の注目カメラ

キヤノン・PowerShot SX50 HS

 高倍率ズームを搭載したSX50は今年の秋9月中旬に発売されているから、"いまごろどーした"という感じもしないでもないが、このカメラはずっと気になっていたカメラのひとつだった。なんと光学50倍の世界最高ズーム倍率レンズを内蔵している一体型デジタルカメラである。
 というわけで、使ってみたのはもうだいぶ前になるのだけど、いやぁすごいカメラだった。すごい、と感じたのは光学50倍ズームレンズだけでなく、カメラとしての完成度の高さもだった。これは予想外。すごいカメラ、というよりも、すばらしいカメラ、使って愉しいカメラ、と言うほうがふさわしいほどのデキのよいカメラだった。とにかくバランスの良いカメラ ―― 備わっている機構と機能と操作のバランスがいい……


 ……と、ここまで書いていたところで、急な仕事が飛び込んできて一時中断。数週間も前のこと。そのままずるずると、結局、今日までほったらかしにしてしまった。
 なんだか、冷えきったビザを食べるみたいだけど、SX50の話を少し続けますね。



 内蔵のズームレンズは24~1200mm相当の50倍ズームレンズ。開放F値はF3.4ー6.5。と、思えぬほど小型なズームである。デジタルズームを利用すれば約2400mm相当の超望遠撮影もできる。
 「ふんっ、そんなもん使いものになるものか」と思っていたけどそれが予想以上の写りで、あははは、ぼくの勝手な思い込みだった。…やっぱりナンでも"体験"してみないことにはねえ、アタマで考えてるだけの観念論的評論家にだけはなっちゃいかん(体験するだけでイイんだとはいわんけれど)。

 センサーは1/2.3型の約1210万画素。ISO感度設定範囲はISO80ー6400。最高連写速度はピント固定だけど約10コマ/秒で最大10コマまで、AF連動だと最高約4.1コマ/秒となる。最短撮影距離はマクロモードにすると0cmー50cmの範囲に限定されるが、オートモードでは(AFスピードは少し遅くなるが)広角側で0cmー∞、望遠側で1.3mー∞になり実質的な撮影自由度は広がる。この最短撮影の機能に感心した。とにかく、近いところでも遠いところでも広角でも望遠でも超望遠でも自由自在に写せる、そんなカメラはそうそうあるもんじゃあない。
 
 ただ、ひとつ。強いて「欠点」らしきものを言うとすれば、太陽を画面内に写し込んだりすると"見本のような"ゴースト/フレアーが目立つこと。でもですぞ、他の優れた撮影機能と天秤にかければ、ま、いいか、と思ってしまうほどの魅力的なカメラだ。今年2012年の、レンズ固定式カメラの中では文句なしに「トップ3」に入る。
 

ファインディテール処理

オリンパス・E-PL5 + M.ZUIKO DIGITAL ED60mmF2.8 Macro

 ローパスフィルターはベイヤー方式の撮像センサーで発生してしまうモアレ/偽色を抑制し目立たなくする働きがある。しかし、逆に解像感を低下させてしまうデメリットもある。そのローパスフィルターには薄い水晶やニオブ酸リチュウムなどを使った光学式ローパスフィルター(OLPF)と、画像処理でモアレ/偽色が目立たないように処理するデジタルローパスフィルター(ぼくの造語)の2種類がある。このことは前回のブログでも説明をした。
 で、オリンパスのE-5以降のカメラは、光学ローパスフィルターを取り去り、そのかわりにデジタルローパスフィルターの処理 ―― これがファインディテール処理 ―― をおこなって解像感を高めモアレ/偽色を目立ちにくくしている、というのがぼくの推測(いや、断定してもいいけど)。

 「光学ローパスフィルターを外したのなら解像感がアップする、いい話じゃないか、なぜオリンパスはそれを宣伝しなかったのか」と、疑問に思う人もいるだろう。
 でも考えてもみてほしい。E-5が発売されたのはざっと2年以上前のことだ。その頃というのは ―― たった2年ほど前のことだけど ―― ローパスフィルターのメリットとデメリットについての認知度が今とは比べものにならないほど低かった。ローパスフィルターを取り外すことで解像感が向上するといったメリットが一般的に知られるようになったのはごく最近のことだ。それまでは、一部の人たちが、「ローパスを外してしまうとモアレ/偽色が出まくるぞ」とデメリットを喧伝していただけだった。

 そんな状況のときにですぞ、他のカメラメーカーに先駆けて「光学ローパスフィルターを取り去った」と言おうもんなら、重箱の隅をつつくようにしてモアレ/偽色を探し出し、鉦や太鼓で大騒ぎするのが目に見えている(いまでもその傾向なきにしもあらずだけど)。


 特別な撮影シーンでほんのわずかモアレ/偽色がでることがあるといった程度なのに、まるで鬼の首を取ったかのように嬉々としてモアレだ偽色だと騒ぎたて、だからこのカメラはだめなんだと一直線短絡判断されかねない。
 それよりも、「ローパスフィルターの効果を弱めた」とか「薄いローパスフィルターを採用」することで解像感を向上させた、と言うほうが、メーカーにとってはリスクは少ない。"難しい説明"をしなくても済む ―― D800/D800Eでニコンがどれだけ丁寧にローパスレスのメリットとデメリットをアナウンスしているかご存じのことだろう ―― 。

 デジタルローパスフィルター(オリンパスでいうところのファインディテール処理)の処理技術は、まさに各カメラメーカーが取り組んでいる重要な画像処理技術のひとつ。光学ローパスフィルターの必要のない画像処理をめざそうとしているわけで、実際に、効果の少ない光学ローパスフィルターとデジタルローパスフィルターを組み合わせているメーカーもあるし、ペンタックスのK-5IIsのように光学ローパスフィルターを取り去ったうえで少しだけデジタルローパスフィルターの処理を加えているメーカーもある。ニコンD800Eだってそうだ。
 ただし、デジタルローパスフィルターの処理を強くしすぎると光学式と同じように解像感を失ってしまう。さじ加減がまだまだ難しい処理でもある。

 しかし、デジタルローパスフィルターの処理技術そのものは、ゆっくりだけど着実に進化してきている。オリンパスのファインディテール処理だって、この約2年の間にだいぶ進化しているものと思われる。たとえば、OM-D E-M5とE-PL5/E-PM2の画像をよく見比べてみると、同じセンサーなのにわずかだけどE-PL5/E-PM2のほうが解像感が高い(シャープ感がある)。これは、おそらくファインディテール処理の進化のせいではないか、とぼくは考えている。だから、E-PL5とE-PM2の画質は、ちょっと注目しておいてもいいですぞ、というわけ。

デジタルローパスフィルター

オリンパス・E-PM2 + ボディキャップレンズ15mmF8

 以下の話は、ぼくの想像の域内のハナシだ。見当違いかもしれない。オリンパスに聞いて確かめたわけではない(聞いたってほんとのことを教えてくれるわけないだろうし)。

 オリンパスのカメラは、ある時期から光学式ローパスフィルターを"取り外していた"ようだ。ある時期というのが「いつ頃」だったのか「どの機種」からだったのわからないけど、「ファインディテール処理」をしていると謳っているカメラは ―― E-5からだったと思う ―― おそらく、すべて光学式ローパスフィルターは使っていないのではないか。だから、このE-PM2もそうだしE-PL5も、OM-D E-M5も光学ローパスフィルターなし、だと思う(カメラを分解して確かめたわけじゃないし、そんなばかなことする気は毛頭ない)。

 E-5を使ったときに、「いきなりこんなに解像感が良くなるなんて…」と、どうも不可解な印象があった。OM-D E-M5を使ったときに薄々ローパスレスではないかと感じ、そしてニコンのD800/D800EやペンタックスのK-5 II/IIsを使っているうちに、だんだん「やっぱりなあ」と思うようになってきた。撮像センサーが約1230万画素のパナソニック製から約1605万画素のソニー製にかわったけれど、それだけではないようなナニかがあるような。


 いま、E-5のカタログを見ているのだけど、中に「新開発・ファインディテール処理」の説明がある。その処理とは、モアレ/偽色の発生を抑制して解像感を高める、というような意味のことが書いてある。説明と図版があるが、そのどこを見ても「ローパスフィルター」とのコトバはない。図版には、従来機種が「光学フィルター」で、E-5では「新光学フィルター」を使っているとの説明があるだけ。

 この「(新)光学フィルター」がクセモノで、一般的には撮像センサーの前面には光学ローパスフィルターのほかに赤外カットフィルターなどなどいくつかの「光学フィルター」が使われている。オリンパスのいう「光学フィルター」が、からなずしも光学ローパスフィルターだけを指しているとは限らないってことだ。
 オリンパスはいままでに、ファインディテール処理により「ローパスの効果を弱めた」とか「薄いローパスフィルターを使っている」などと言ってきたが、たぶん、"光学"ローパスフィルターうんぬんについては、ひと言もないはずだ。

 なんだかツマらん話を延々としているけど(自分でもそう思う)、要するに、ローパスフィルターには「2つの種類」があるということ。1つは、皆さんご存じの光学ローパスフィルター。もう1つは、画像処理でモアレ/偽色を目立たなくするフィルター処理のことで、かりにデジタルローパスフィルターと言うならば、オリンパスはそちらのほうを使っているだろうということだ。(つづく)