なんちゃってレンズ、ふたたび

ペンタックスリコー・PENTAX Q7+07 MOUNT SHIELD LENS

 Q7の話題から横道にそれる。
 前回のこのブログでコダックのポケットベス単(正しくはベスト・ポケット・コダック=VPK)の話をしたが、そのあと、そうだそうだ、とぼくの「おもちゃ箱」の中を探してみたら、そのベス単レンズが出てきた。この写真がそうでシャッターや絞りの機構と一体になったものだ。
 むかし「ベス単はずし」というのが流行ったことがあった。
 古くて壊れてしまったようなVPKからレンズだけを取り外して撮影用レンズに改造。それを35mm判やブローニー判のカメラに使って愉しんでいた。フレアーいっぱいのふんわりとして、ハイライト部がきれいに広がる独特の描写で、ぼくもそれを使って人物や風景の撮影を喜んでいたことがあった。その、むかしの名残りのレンズが箱から出てきたというわけ。

 このレンズが付いていたカメラがどんなVPKカメラだったのかよく憶えていない。レンズだけしか残っていないのだけど、おそらく1930年ごろのカメラだったと思う。レンズはラピッド・レクチリニア(ダルメイヤー製?)で焦点距離は70mmぐらいだろうか。2群4枚(たぶん)構成だから、もちろん単玉レンズではないがそこそこ雰囲気のある写真が撮れたもんだ。

 使いかたは、まずボディキャップに工作して組み込む。それだけではピント合わせができないのでベローズアタッチメントを利用する。そうすれば、ま、なんとかピント合わせができる。開放絞りで、絞り優先AEモードを利用すればカンタンに撮影ができる。ずっと前のフィルム時代のことだけど、そんなこともやってました。


 で、07 MOUNT SHIELD LENSは、こちらは正真正銘の1枚単玉レンズなので、ひょっとしてVPKカメラのレンズよりももっと雰囲気のある写真が撮れるかな、と期待したのだがちょっとガッカリだったよ、と、そんな話を前回にした。

 とは言っても、その07レンズは使いかたを限定すれば、そこそこ愉しい撮影もできなくもない。ポートレートや花の撮影などに使うと、ソフトフォーカスレンズとは"ひと味"違った写真になるかも。ちなみに、上の写真はカスタムイメージの「ほのか」を選んで少しプラス補正して写したものだ。こーゆー写真、いま、ハヤリじゃないですか。
 実販価格で4千円ちょっとのレンズなので、Qシリーズのユーザーは遊び気分でひとつ持っていてもいいかも。こんなふうに、ちっちゃくて薄くて、でもレンズ裏側はいっちょまえの構造になっている。

 ところで、これはすでに twitter でツブやいたことだが、Q7の追加機能のひとつにシャッター音が選べるようになったという話。
 Q7ではあらかじめ用意されている3種類のシャッター音(擬音)を選択できるようになった。シャッター音は、645D、K-5、*ist Dのカメラだ。これ、とっても愉しい。ぼくは645Dのシャッター音を選んでセットしている。ただし、これはメニューで選択し設定するのだが、設定画面には1、2、3の数字しか記されておらず、どの番号がどのカメラのシャッター音かもわからない。使用説明書にも説明がない。不親切だぞペンタックス。
 そこで、ここにメモしておきます。 「1=K-5」、「2=645D」、「3=*ist D」 です。

なんちゃってレンズ

ペンタックスリコー・PENTAX Q7+07 MOUNT SHIELD LENS

 PENTAX Qシリーズ用の7本めの交換レンズとして発売されるのが「07 MOUNT SHIELD LENS」である。はっきり言えば、なんちゃってレンズ。過度の期待は禁物の、それなりの写りのレンズである。
 ぼくは、使う前に少なからずの「期待」を持って胸膨らませてたけど、ぼくの期待していたところ(のちほど説明)からややハズれていてがっかりだった。言うまでもないけど、ぼくの期待とあなたの期待が異なればこのレンズの評価もまた違ってくる。「これはいいレンズだ」ということも、じゅうぶんにありうる。ぼくのこの感想はある"一面"に過ぎない。

 同様のスタイルのレンズには、オリンパスが昨年の秋に発売した「ボディキャップレンズ(BCL-1580)」というのがある。しかしこの07レンズはオリンパスのそれとはだいぶ違う。オリンパスのレンズのほうは3群3枚構成でMFだけどピント合わせができる。それなりにレンズの体をなしている。画角は30mm相当でF8固定。やや広角。

 いっぽう07レンズはといえば、1群1枚のレンズ構成(って、いうかどうか)で、ピントは固定式。レンズ焦点距離は11.5mmだからQ7での画角はだいたい53mm相当の標準画角になる。文字通りの「単玉(たんぎょく)レンズ」だが、いままでのレンズで単玉といっても2枚の貼り合わせが一般的だったが、こちらは正真正銘の単玉レンズだ。
 カタログスペックを見ると、撮影距離の目安として「約30cmから約2m」とあった。かなりの近距離優先的ピントのレンズなので、ちょっと遠くの景色を撮ると悲しくなるほどボケる。


 07レンズを使い始める前に、撮影距離目安の「約30cmから約2m」をしっかり読んでおかず、そう、ムカシのコダック・ポケットベス単カメラ程度の写りを予想していた。1枚レンズだから球面収差が出まくり、フレアーいっぱいの画像をQ7のモノクロモードやセピア調モードと組み合わせて撮って仕上げれば、独特の雰囲気写真ができあがるんではないか、と考えていたが、うーん、あまりのピンボケ画像に夢はもろくも潰えた。
 上の写真の遠景の描写を見れば、遠くを写したときどれだけボケるか想像できると思う。なお、このレンズはピント固定式だから遠景のピントはこれ以上、どうしようもない。

 ただし、撮影距離に注意をして、遠くてもせいぜい3メートルぐらいの範囲に限って撮れば、なんとかトイカメラ風の写真には仕上がる(デジタルフィルターの"トイモード"や、カスタムイメージの"ほのか"と組み合わせると、これが意外といい雰囲気が出て印象はだいぶ良くなる)。

 画面の周辺部では大胆に像が流れる。使い捨てカメラで写したって、ここまでの"思い切った描写"はできないだろう。そういう意味では、いまどき「珍しく」「貴重」な描写のレンズだ ―― 少しヨイショしているけど。くどいようだけど、30センチぐらいから1メートルまでの被写体を狙い、写したいメインの部分を画面の中心に置くようにフレーミングして(つまり日の丸構図で)写せば、それはそれは個性的な描写に仕上がるから、それはそれで充分に写真を愉しめる。

ストロボがフラッシュになったこと

ペンタックスリコー・PENTAX Q7+02 STANDARD ZOOM

 Qシリーズ共通の「撮って楽しい」機能として各種の画像調整仕上げモードがある。撮影前に選択し設定するものとして、スマートエフェクト(9種類)、デジタルフィルター(11種類)があり、撮影後の画像(JPEG)に調整して仕上げるものとして、デジタルフィルター(19種類)がある。撮影前設定/撮影後設定のデジタルフィルターの中には一部、共通のものもある。

 こんどQ7では、カメラ内RAW現像処理をするときに撮影前設定のデジタルフィルターもチョイスできるようになった。K-5 II/K-5 IIsにも備わっていない新しい機能。つまり、RAWで撮っておけば「雅・MIYABI」とか「鮮やか」などのカスタムイメージで画像調整したのちにデジタルフィルター処理を「重ねがけ」することもできるのだ。

 ついでに、ぼくのわがままな望みを言えば、撮影後設定の19種類のデジタルフィルターすべてや、9種類のスマートエフェクトなど、なんでもかんでもカメラ内RAW現像で処理可能になればいいのだけど、そりゃあ高望みすぎるか。


 Q/Q10からQ7になって60項目以上の進化点、改良点があったわけだが、それらの中で「おっ」と興味をひいたことが1つあった。

 ペンタックスはずーっと「ストロボ」と言ってきたのだけど、このQ7から「フラッシュ」と言い換えるようになった。メニューやカタログなどすべて「フラッシュ」になっている。理由はリコーが「フラッシュ」と言ってきたため、ペンタックスリコーイメージングとなってリコーの呼び方にならうようにしたというわけだ。

 ところで以下はQ7と関係ない話だけど、ニコンではカメラ内蔵のものは「内蔵フラッシュ」、外部取り付け型のものを「スピードライト(Speedlight)」とよんでいる。キヤノンでは「内蔵ストロボ」、外付けを「スピードライト(Speedlite)」 ―― スペルが異なることに注目 ―― とよぶ。オリンパスは「内蔵フラッシュ」、外付けを「エレクトロニックフラッシュ」とよんでいる。
 「ストロボ」はストロボリサーチ社の登録商標だったけど、だいぶ前にその権利は切れているからストロボと言っても差し支えない。なお、その登録したときは「Strob」、しかし英語で正しいスペルは「Strobe」となる。ということを、ナニかで読んだことがあるのだけど、ぼくの記憶違いかもしれない。

Q/Q10からの改良点のあれこれ

ペンタックスリコー・PENTAX Q7+02 STANDARD ZOOM

 このQ7が、Q10からどんな点が改良されたり新しくなったのか、そのリストを見せてもらったのだけど軽く60項目を越えていた。ファームウエアというかカメラを制御しているソフトウエアを根本から見直し訂正を加えて再構築したらしい。ひじょうに手間のかかることで、担当者は「いやぁー大変でした…」と言っていた。だから、外観はQ10そのままだけど中身は大ヘンシンンしていると考えていい。とても使いやすいカメラになった。

 Q/Q10で不満に感じていたことだが、AFも含めてカメラのレスポンスが遅いという点については、画像処理エンジンのクロックスピードがアップしたことでかなりの点で改良されていた。これにより起動時間がQ10の約2倍、AFスピードは最大で約1.5倍スピードアップした。それだけでなくメニューなどの各操作をおこなったときのレスポンスがだいぶ改善されている。

 低輝度シーンでのAF測距はEV1からEV0にまで広がった。手ブレ補正(SR)はQ10がシャッタースピード約2段だったのが約3段に向上し、ISO感度の最高感度がISO6400からISO12800になった。このため、暗いシーンでの撮影可能範囲がだいぶ広がったことになる。


 Q/Q10では、数コマ連続撮影をしたあと、それらの撮影画像のすべてがカードに書き込み終わるまでカメラはいっさいの動作を受け付けなかった。新型Q7ではそれが改善されて、ようやく「フツーのカメラ」になった。カード書き込み中でも電源スイッチを押すと、書き込み終了後に自動的に電源OFFしてくれるようになったのだ。Q7を使ってイチバンうれしかったこと。

 ぼくは撮影を終えるとすぐに電源OFFにするのだが、カード書き込み中にメインスイッチをいくら押しても無反応。だから、完全に書き込みが終わるまでじーっと待って、それを確認したのちに電源OFF操作をしなければならなかった。RAW+JPEGで数コマ連続で撮ったりすれば書き込み時間が相当にかかるので困っていたのでこれはヨカッタ。

 液晶モニターのライブビュー画面で、不必要な数字やらアイコンやらがたくさん出て正確なフレーミングを邪魔をする情報表示がQ/Q10では消すことができなかったのだが、Q7では(ようやく)表示なしモードが追加されて、これもぼくはうれしかった。
 そして ―― ぼくはほとんど使わないけれど ―― Q7で(ようやく)加速度センサーが内蔵されて電子水準器とカメラ縦横検知の機能が入った。カメラが小さく軽いから水平だしが難しいようで、水準器の機能追加を喜ぶ人も多いのではないだろうか。

Qの「フルサイズ判」

ペンタックスリコー・PENTAX Q7+02 STANDARD ZOOM

 初代のQが発売されたときに、1/2.3型のイメージセンサーとは異なるサイズのセンサーも使用できるとペンタックスは"予告"していたが、それがQ7でようやく実現した。それを聞いて2/3型センサーまで対応するのではないかと予想する人もいたが、それはいくらナンでも無理で、実際は1/1.7型センサーが「限界」だ。限界なのはボディサイズではなくレンズのイメージサークル。これ以上大きなセンサーは使えないようだ。
 ということは、このQ7はPENTAX Qシリーズの「フルサイズ判」と言えなくもない…。

 Qと、二代目のQ10はともに1/2.3型の1240万画素CMOSだったが、この三代目となるQ7では、画素数は同じ1240万画素だがイメージセンサーに一回り大きな1/1.7型CMOSとなった。どちらも裏面照射型センサー。外観デザインなどはQ10と"まったく"同じであるが、その中身は(とくに操作性)は飛躍的に向上している。
 だから、スペック表で比べると、目立つ違いとしてはセンサーサイズと最高ISO感度(ISO6400がISO12800になった)ぐらいで、あとは撮影可能枚数や大きさ重さが少し違う程度である。表面的に見比べれば「新型カメラ」の印象は少ない。しかし、とくにQやQ10のユーザーが実際に手にしてチョイと使ってみただけで、「おおっこんなに良くなっているのか」と大いに感心することだろう。


 交換レンズはQ7でそのまま使用することはできる。何本かのレンズで少し制約があるが実際にはほとんど気にするほどのことではない。
 イメージセンサーのサイズが異なるため、同じ焦点距離のレンズを使ってQ/Q10とQ7で撮影すれば、とうぜんながら画角は違ってくる。Q7のほうが「より広角」に写り、Q/Q10のほうが「より望遠」に写る。

 たとえば、「02 STANDARD ZOOM」の焦点距離5~15mmのレンズは、35mm判換算の画角でいえば、Q7では「約23~69mm相当」に、Q/Q10で「約27.5~82.5mm」相当となる。レンズの実焦点距離に、Q7は「約4.6倍」、Q/Q10は「約5.5倍」すれば35mm判換算の相当画角が得られる。
 これがQ7とQ/Q10の画角を比較したもの。02ズームの広角端で撮ると、Q7のフル画像の画角(約23mm相当)に対して、赤い枠がQ/Q10の画角(約27.5mm相当)となる。こうして見ると、思った以上に画角差がある。

ニコンがNikon 1を依怙贔屓する謎

ニコン・Nikon 1 V2+1 NIKKOR10~100mmF4~5.6 VR

 ズームレンズの伸縮鏡筒に、ホワイトやベージュ(そしてシルバー)などの明るい色を塗装することにはちょっとした問題点があった。
 明度の高いホワイトやシルバーを鏡筒に塗装すると、明るい太陽光などがそこに反射して鏡筒伸縮する"つなぎ目"から光がレンズ内に漏れ込んでくる可能性だってあり得る。だから、こうした伸び縮みする鏡筒部分は黒色とムカシから決まっていた。そうした常識を覆して明るい色を塗ったことにぼくはびっくりだった。

 調べてみると、伸縮する鏡筒の"つなぎ目"のぎりぎり見えない部分までは地色の黒のままにして、光がレンズ内に漏れ込んでも影響がないようにしているらしいのだ。鏡筒をめいっぱい伸ばして見える部分だけに塗装をしている。こうするには、塗装時にテーピングなどの処理をしてから塗装を施しているに違いない。


 こんなふうに手間もかけコストもかけてるから、レンズ外観の見栄えはじつによろしい。上の写真が収納時で下の写真がズーミングして100mm望遠状態
 レンズはもちろん描写性能が第一に重要だけど、しかし、見栄えの良さ、姿カタチの良さ、使い勝手の良さ ―― これはすべてデザイナーの責任だ ―― というのもレンズにとってとても大切なことではないかと考える。写りさえ良ければデザイン(スタイリングと操作性)などどうでもいい、なんていうのは"めちゃくちゃ論"だと思う。

 それにしても、ニコンはなぜ、ここまでNikon 1に手間もコストもかけているのだろうか。この10~100mmズームに限らずだけど、交換レンズも含めNikon 1シリーズにたいするニコンの「溺愛偏愛ぶり」は並大抵のモノではない。依怙贔屓しているようにも見えなくもない。
 しかし、ニコンが懸命にNikon 1に肩入れしているのに、反応がいまいち芳しくないのがちょっと淋しい…。

手間とコストをかけたレンズ塗装

ニコン・Nikon 1 V2+1 NIKKOR10~100mmF4~5.6 VR

 1 NIKKOR 10~100mmズームレンズのカラーモデルについての前回の続き。
 10~100mmレンズにはブラック/シルバー/レッド/ホワイト/ベージュの5色があって ―― この5色(ニコンのカタログから) ―― 、そして伸縮鏡筒(ズーミングすると伸びたり縮んだりする鏡筒部分)にも丁寧に塗装されていることが特徴である。

 この5色のうちブラック/シルバー/レッドの3本は、まるで金属鏡筒にアルマイト塗装したように見える。もちろん伸縮鏡筒はプラ素材。金属製でないなのでアルマイト処理による色づけはできない。とても手の込んだ塗装処理(加飾蒸着?)をしているのだ。
 では、なぜそうした塗装をしているのだろうか。理由は、ズームリングの金属リングカバーと塗装部分に違和感がないようにわざわざ特殊な塗装を施しているのだろう。


 いっぽうホワイト/ベージュのほうは通常の塗装だが、こちらも相当に手が込んでいる。レンズを手にしてじっくりと見てみればわかるが"厚塗り"である。数回、塗り重ねていることがわかる。
 重ね塗りをする理由は、プラ素材の地色(黒)が透けて見えないようにするためである。白色やベージュ色など薄い色はしっかりと重ね塗りをしないと、ほんらいのクリーンな色が出せない。とても手間のかかる塗装処理で、とうぜんながらコストもかかる。

 しかし"厚塗り"をすると塗料の厚みが増し、わずかだが鏡筒の外周径が太くなる。伸縮鏡筒はガタツキなくスムーズにズーミングするように高い精度で設計製造されている。塗装の厚みぶんで鏡筒が太くなり、伸縮するときにコスレが出てくる可能性だってある。
 ところが、ぼくが使っているホワイトについては、ひっかかるような現象はまったくなく、じつにスムーズにズーミングできる。このへんについて、デザイナーや塗装関係者の苦労はタイヘンだったろうと思う。


新しいデザインの1 NIKKORレンズ

ニコン・Nikon 1 V2+1 NIKKOR10~100mmF4~5.6 VR

 10~100mmズームの話をつづける前に、Nikon 1の不満をひとつ。
 これはNikon 1の初代から共通の不満点なのだが、暗いシーンにカメラを向けると液晶モニターやEVFのライブビュー画面が暗いままでさっぱり見えないことだ。見えないからフレーミングもできない。構図も決められない。どんなに"安もの"のコンパクトカメラでも、暗いシーンではモニター表示画面は自動的にゲインアップされて、そこそこ明るく見える(このため画像がざらついたり動きにたいして反応がにぶくなるのだけど)。

 暗いシーンでもNikon 1はそこそこピントは合わせてくれるのだが、モニター画面で被写体の様子がさっぱり見えないのでフレーミングができないのがいちばん困る。で、見えないままシャッターを押して撮ってみると、ごくごくフツーの露出の画像が撮れている。
 センサーからの読み出しフレームレートが、とか、滑らかにキレイに見せるために、とか、どうのこうのとニコンは言っていたけど、でも、最近発表された32mmF1.2レンズで暗いシーンを写そうとしても、"画面が暗くて見えないっ"というのではどうしようもない。とってもいいカメラなんだけど上手の手から水が漏れるってとこかな。


 さて、10~100mmズームには5色のカラバリが用意されていると前回に述べたけど、その「着色仕上げ」が素晴らしいのだ。
 1 NIKKORレンズはそのデザインを初期のものから大幅に変更された。たとえばズームレンズでいえば、旧デザインはズームリングがゴム巻きだったのが、新デザインでは細いローレット刻みを彫り込んだ金属加工仕上げにしたり、ズーミングして伸びたレンズ鏡筒がそれまでは黒いプラスチック素材のままだったのだが、新デザインではその鏡筒部分にレンズボディ色と同じ色に塗装されるようになった。これがカッコいい。

 このレンズの写真を見比べてほしい。左が旧デザイン(30~110mm)、右が新デザイン(10~100mm)だ。伸びたレンズ鏡筒のカタチが旧デザインのほうは相当にかっこ悪いのもあるが、せっかくホワイトのレンズなのにズーミングするととたんに黒い鏡筒がせり出してくるというのはいけない。

 ところが新デザインのほうは、その伸びた鏡筒部分にまで丁寧にレンズカラーにあわせて塗装がされている。交換レンズでここまで手の込んだ処理がなされているのは珍しい。ズームリングのアルマイト処理された金属の質感も手触りもすこぶる良い。
 とにかく、外観デザインには、手間もコストも惜しみなくつぎ込んだという印象のレンズで、そのへんの話をもう少し続けていきたい。

2本目の1 NIKKOR 10~100mmレンズ

ニコン・Nikon 1 V2+1 NIKKOR10~100mmF4~5.6 VR

 Nikon 1用の交換レンズには、焦点距離10~100mmのズームレンズが2本ある。総9本"しか"ないレンズラインナップの中で、同じ焦点距離のズームが2本"も"あるという、この贅沢。
 もう1本のほうの10~100mmレンズはパワーズームで、こちらのほうはNikon 1が発売されたときにほぼ同時に出ている。1 NIKKOR VR 10~100mmF4.5~5.6 PD ZOOMがそれ。小型でスマートなNikon 1ボディとは相反して、やたらデカくて重くて無骨で扱いにくいレンズで、ボディとぜんぜん似合わない。

 たしかにズーミングは静かで滑らかで、動画撮影用には適しているだろうけど、さていっぽうで静止画を撮るときはどうかといえば、うーん、使いこなすにはよほどの覚悟が必要だ。むろん静止画撮影はできるけど、動画専用ズームといってもいいもので、いったい、ニコンはなぜこの10~100mmパワーズームレンズの企画をしたのだろうか…。

 ニコンはいままでにも、こうした「新奇な」というか「飛んだ」製品を出してきたことがたびたびあって、そこが、なんというかニコンの良いところではあるのだけど ―― 堅い、保守的、がんこ、といったニコンのイメージがあるが、あれは"勝手な思い込み"だ、みんなが感じている以上にニコンはアグレッシブで果敢なところがある(キヤノンとのいちばんの違いだ)。


 いや、ここでは、その"動画専用"のパワーズームレンズの話ではなくて、もう1本の10~100mmズームレンズのほう話だ。今年の1月ごろに少し使ったことがあって、とても好印象だったのであらためて手にしてみた。以前のカラーはシルバーで今回はホワイトモデル。

 27~270mm相当の画角をカバーし、最短撮影距離はズーム位置により異なる。望遠端100mmで65センチまで近づけるので、まあまあというところか。こちらの10~100mmレンズのズームはもちろん手動式。ズーミングの操作感はとてもいい。柔らかすぎず固すぎず、動きはじつにスムーズ。いわゆる沈胴式ズームで、レンズ鏡筒脇にあるボタンを押しながら回転すると広角10mm側にセットされ撮影スタンバイ状態になる。同時にカメラの電源も自動的にONになる。このへんの操作性は他の1 NIKKORのズームレンズと同じ。

 他の1 NIKKORズームレンズと違うのは、その外観デザインだ。のちほど詳しく説明したいが、外観のデザインとツクリがとても良いのを再確認した。あまた数ある最近のレンズの中では、外観の良さは、ぼくはトップクラスではないかと思う。もしカメラ店などで見る機会があったら、ぜひ手にとって見て欲しい、とくにホワイトモデルを(Nikon 1に興味がなくても…)。
 カラーバリエーションがブラック、ホワイト、シルバー、レッド、ベージュの5種類ある。このカタログ写真。じゃよくわからないだろうけど、じつは、その塗装や外装仕上げが美しくて素晴らしいのだ。

Carl Zeiss製でなくても、いいものはいい

富士フイルム・X-Pro1+カール・ツアイス・Touit 2.8/12

 ライカとツアイスはムカシからなにかと比較されてきた。そこでよくいわれているのが「カメラはライカ、レンズはツアイス」という話である。少し大袈裟に(ぼく流に)この意味を噛みくだいて言うと、「ライカのレンズはヘボだけどボディは精密で壊れなくて素晴らしい、ツアイスのレンズは文句なしに良いのだけどボディは故障ばかりする」と、まあこんなところか。

 ぼくは、両方のカメラやレンズを使ってきた経験上、「もっともだっ、その通りだっ」といたく納得する。こういっちゃナンだけど、いままで使ってきたライカのレンズで「いいレンズだ」と思ったものがほとんどない。それにひき替えツアイスのレンズは「アレもよかったコレもよかった」と、そんなレンズばかりだ。ところがボディはこれとは正反対。ツアイス(CONTAX)はレンジファインダーも一眼レフも、なんだかしょっちゅうどこかの調子が悪かった。

 いや、だからといって"盲目的"になんでもかんでもツアイスのレンズがいい、「Touit 2.8/12」レンズがいいと言っているのではない。そう思われたとしたら心外だ。


 歴史のあるブランドには敬意を払ってはいるけど、それにすり寄ったり、なびいたりはしないようにぼくはつねに心がけている ―― だから、人から「生意気だ」とか「恐れ入るところがない」と思われてソンしてることも多いのだけど。そういうわけで、「Touit 2.8/12」を実際に使って、撮ってみてその写りにぼくは正直に、感心した。

 ところで、レンズの製造組み立てが「Made in Japan」ということで、ぼくはこれにも大変に興味を持った。というのも「Touit 2.8/12」はAF対応だし、極めて高度なレンズ製造技術を備えて仕上げられたところが各所に見られたからだ。それはともかく、いままでCarl Zeissレンズの多くを作ってきた国内レンズメーカーのコシナでもないことは確実(コシナがはっきりとそう言っている)。

 Touit 2.8/12レンズは、よくよく見れば製造組み立てをしているメーカーが、たぶんあそこじゃないかなあ、とすぐにわかる。レンズ設計も、ソコがやっているかも…。カメラやレンズについて「うるさ型」を自認している人なら、このレンズを注意深く観察すればどこで作っているかはわかると思う。 ―― こんな事例は国内メーカーのレンズでもたくさんあって不思議でもナンでもない。
 ま、それはいいとして、Carl Zeissは(いままで以上に)企画と出荷基準、つまり、入り口と出口をしっかりとコントロールしていることは確かだろう。ぼくとしては、どんな作り方をしていようが、どこで製造していてようが、Carl Zeissブランドであろうがなかろうが、「良いレンズ」だったらそれでイイんだけどね。

XF14mmF2.8と撮り比べてみた

富士フイルム・X-Pro1+カール・ツアイス・Touit 2.8/12

 「Touit 2.8/12」は「T*(ティースター)」のレンズコーティングが採用されている。Carl Zeissブランドのレンズには、これはなくてはならないものの1つ。
 このT*コーティングについては、ずっと昔、ヤシカがCONTAXブランドのカメラやツアイスレンズを「作って」いたときに、そのヤシカの人から興味のある話を聞いたことがある ―― 真意のほどはどうか、だけど。

 ツアイスはT*コーティングをひじょうに大切にしていて、それだけはレンズ組み立て側にけっして任せなかった。T*コーティングの材料は技術者と一緒にドイツ本国から「手で持って」日本にやってきて、そのツアイスの技術者の手でみずからレンズコーティングしていた、という。「謎のT*でしたよ」とヤシカのその人は笑ってこの話をしてくれた。いまは、もうそんなことはないだろうけど…。

 「Touit 2.8/12」はフジのXマウント用とソニーのEマウント用の2種類が用意されているが、今回ぼくが使ったのはXマウント用でカメラはX-Pro1だった。フジ用とソニー用の違いは、フジ用には絞りリングがあるが、ソニー用にはそれがないことだけだ。


 フジのXシリーズ用交換レンズにはXF14mmF2.8という"名レンズ"がある。ぼくはこのレンズ、素晴らしい広角レンズだと高く評価している。絞りリングが柔らかすぎてスルスルに動いて、それだけは「許せないっ」と不満なだけで、とにかく写りのいいレンズだ ―― そういえば「Touit 2.8/12」の絞りリングもまた、XF14mmとそっくりにスルスルに柔らかかった。

 そのXF14mmとTouit12mmを、可能な限り条件が同じになるようにして(画角が21mm相当と18mm相当と違うが)、できるだけ「描写の差」がわかるようなシーンを探して撮ってみた。
 その結果は、あらゆる撮影シーンでTouit12mmのほうが良かった。「ええーっ」と声が出るほどの違いが出たシーンもあった。ただしここでひと言、付け加えておくが、だからといってXF14mmがだめなレンズだというのではない。素晴らしい描写のXF14mmよりも、Touit12mmが「上」だったというだけの話なのだ。

 ただし、画角のことを考慮に入れたとしても、Touit12mmのほうが価格が高い(実販価格はXF14mmが約8万円、Touit12mmが約12万円)、レンズサイズが大きい重い、というのが少し気にはなったけど。