自重落下しなくなったぞ

キヤノン・EOS 60D+タムロン・16~300mmF3.5~6.3

 @niftyのメールマガジン明日からの写真術のVol.13を配信。今回はキヤノンの3台の新型コンパクトカメラを取り上げてあれこれ考えてみた。その他、三脚の正しい使い方、新しいシリーズ「写真の小ネタ」も。




 16~300mmに比べると、前モデルの18~270mmのズームリングの回転のほうが、だいぶ軽くて滑らかな感じがする。2本のレンズを同時に使い比べてみると、16~300mmはだいぶ重く(固く)感じる。
 ところが、レンズをカメラにセットして肩から下げて数分歩いてみると、すぐにその違いがわかる。新16~300mmはビクとも動かないのだ。レンズをもっとも短くしたとき(縮長時)、16mm広角側になるのだが、そこから望遠側に動かない。走ってみたりジャンプしてみたりしたけど新16~300mmズームは16mm側にセットしておけばそこからビクとも動かなかった。これには感心感心。

 対して前18~270mmはといえば、ズーミングしたときの操作感は軽くて滑らかでじつに軽快な好印象なのだが、レンズを下に向けると"ずるずる"とゴムの緩んだパンツのように落ちてきて、ふと気づくと270mm望遠端にまで伸びきっていることがある。自重落下だ。
 ここでタムロンの名誉のために言い添えておくけど、前18~270mmも新16~300mmも、ズーム広角端(縮長時)から自重落下してレンズが伸びないようにロック装置が設けられている。ただし、この装置は広角端でロックするだけ。ズームの途中の焦点域でロックしておくことができない。

 たとえば、カメラを三脚にセットして星空を撮ろうと上に向けたり、地面に咲く花を撮ろうと下に向けたままにすると、ズームレンズが勝手に、まるで壊れたモーターを内蔵しているかのようにずるずると伸びたり縮んだりすることがある。前18~270mmはそうした傾向が顕著だったのだが、これまた、新16~300mmではズーム中間域でも(よほど負荷を与えない限り)自動ズーミングすることもない。

約24~450mm相当の高倍率ズームレンズ

キヤノン・EOS 60D+タムロン・16~300mmF3.5~6.3

 レンズの"正式名称"は「16~300mmF3.5~6.3 Di II VC PZD MACRO(Model B016 )」である。「Di II」はAPS-Cサイズ用レンズであること、「VC」は手ぶれ補正機構を内蔵していること、PZDは超音波モーターを使っていることをあらわしている。「MACRO」は別に深い意味があるわけではなく(たぶんに営業的用語)、最短撮影距離も短く(ズーム全域で39センチ)クローズアップ撮影ができるぞ、というぐらいの意味。




 「Model B016」はタムロン独自のコードネームで、ちなみに「B」はAPS-Cサイズ用ズームレンズ、「A」はフルサイズ判用ズームレンズ、「F」はフルサイズ判用単焦点レンズ、「G」はAPS-Cサイズ判用単焦点レンズ、「C」がマイクロフォーサーズ用ズームレンズ、「H」はマイクロフォーサーズ用単焦点レンズのこと。

 この16~300mmは、描写性能の良さとコンパクトさで大人気だった18~270mmF3.5~6.3(Model B008)の後継モデル。前モデルよりも広角側と望遠側に画角を広げてズーム倍率を18.8倍ながら大変に小型なレンズに仕上げている。35mm判換算でニコンでは約24~450mm相当に、キヤノンでは約25.6~480mm相当となる。
 このズームレンズの大きな特徴は高いズーム倍率だけでなく、タムロン交換レンズでは始めてのフルタイムマニュアルフォーカス機構を搭載したことだろう。AFでピントを合わせてそのままピントリングを操作してピントの補正ができるようになった。

 このほか、ぼくが注目したのは、描写性能は前モデル18~270mmと同等またはそれ以上に良く写るレンズであること、最短撮影距離が短くて撮影していてストレスをほとんど感じなかったこと、レンズ外観デザインが一新されてとても"シック"な印象のレンズになったこと、ピントリングが手前側に配置されたこと(たぶんタムロンレンズでは初めてではないか)。

不思議いっぱい詰まったG1X Mk2

キヤノン・PowerShot G1X Mark II

 G1X Mk2は、2年前に発売されたG1Xのモデルチェンジ。イメージセンサーは多少のマイナーチェンジはあったものの基本的はそのままを流用。1.5型の総画素数が約1500万画素のCMOSである。




 G1XからG1X Mk2になって、いくつかのタイヘンに興味深い変更点がある。
 内蔵レンズがG1Xの28~112mm相当F2.8~5.8の4倍ズームから、G1X Mk2では24~120mm相当F2~3.9の5倍ズームになったことに、まず注目したい。相当に「がんばった」レンズで開発に苦労も多かったことだろう。
 で、このレンズを新しく開発し、G1Xと同じ1.5型イメージセンサーで使用するために、とてもトリッキーなことをキヤノンはやっている。

 G1Xでは撮影アスペクト比が標準で4:3だったのが、G1X Mk2では一転、3:2を標準アスペクト比に変更している(マルチアスペクトカメラなのでどちらでも自由に選べる)。G1X Mk2ではこの3:2アスペクトを「優先」させることを前提にして、新しいレンズの設計をおこないイメージサークルを小さくしている。
 そのため、4:3アスペクト比の画像がG1X Mk2では「犠牲」になってG1Xに比べて少し小さくなってしまった。このへんの"内緒の"仕掛けは、キヤノンのホームページをじっくりと見ると理解できるだろう(とてもわかりづらいイラストがあるけど)。

 レンズは、ほんの少しでも小さなイメージサークルで許されるなら小型化と大口径化は相当にやりやすくなる。

 キヤノンはG1Xクラスのハイエンドコンパクトカメラにはずっと首尾一貫、光学ファインダー(デキはともかく)搭載をしてきたが、G1X Mk2では(いったいどうした理由か)あっさりとやめてしまった。また、可変式の液晶モニターがキヤノンでは始めて上下シフト式を採用した。キヤノンはこれまた一貫して「横開き式」にこだわってきたのだった。

 ところが、そのキヤノンみずから、横開き方式はいくつか問題点があるといったことをホームページで"堂々と"書いている。いわく「…横位置撮影時、光軸に対して常に液晶がずれないため、違和感なく構図が決められます。…」と。じゃあ、いまキヤノンが採用している横開きのカメラは、構図を決めるのに「違和感」があるのか、なんて言うとイチャモンつけてるみたい、かな。

 G1X Mk2には、ほかにも興味津々な"隠し事"がたくさんあって、キヤノンの「迷走ぶり」が見え隠れしている。あ、でも、とっても良く写るカメラですよ。

25mm超広角から3000mm超望遠まで

キヤノン・PowerShot SX700 HS

 @niftyメールマガジン「明日からの写真術」の第13回を配信。今回はカシオのEX-100の裏話をこってりと書いた。雑誌やブログではとても書けないキワドイ内容になってしまった。そのほか、ぶらさないで撮るカメラの構え方のほか、カメラやレンズ、写真全般のちょっとしたハナシを集めた「写真の小ネタ」も新しく開始した。




 コンパクトデジタルカメラの販売は、いま、とても苦しい状況にある。メーカーの期待通りに売れない。その「原因」はいうまでもなく携帯やスマートフォンに内蔵されたカメラの影響だ。先日、なにかの記事で読んだのだけ、世界中で携帯/スマホの販売が10億台を越えたと。
 ということは、それらのほとんどに「カメラ」機能が搭載されていると考えてよく、おおざっぱに見て10億人以上の人たちが「毎日、カメラを持って歩いている」と考えられなくもない。そうした状況の中で中途半端なツクリや機能のコンパクトカメラを作ったって売れるわけないじゃないか、と考えるんだが、さてどうでしょうか。

 こんな状況になることは「カメラ」内蔵の携帯やスマホが出始めたときに(よほどニブい人でない限り)わかるはずだったのに楽観的に考えていたのか、どうもその対応が遅すぎたようだ。
 ようやく、ここ1~2年ぐらい前から、これから(というより当面)コンパクトデジタルカメラの売れ筋は、結局、(1)高倍率ズームレンズ内蔵コンパクト、(2)大口径レンズ内蔵の高級コンパクト、そして(3)優れた防塵防滴(防水)耐ショック性能のコンパクト、この3種類に絞り込まれると、各メーカーとも読み始めていて、実際、多くのコンパクトカメラメーカーがそうした機種にシフトしてきている。3種類の機種とも携帯やスマホ内蔵のカメラにはない機能や性能だ。

 というわけで、SX700 HSは25mmから750mm相当の光学30倍ズームレンズを内蔵したコンパクトデジタルカメラである。
 光学30倍ズーム比であるが、通常のデジタルズーム機能を使えばズーム比60倍、小さなサイズで記録すれば最大で120倍までズーム比をアップして撮ることもできる。120倍といえば、なんと3000mm相当になる。25mm超広角から3000mm超望遠までを小さなコンパクトカメラで撮れる。どうだ、携帯、スマホ、まいったかっ、マネできるかっ(なんだか白々しいかけ声だけど…)。

 なお、上の写真のふにゃふにゃ描写はデジタルズームのせいも少しはあるけど、ふにゃふにゃ現象のほとんどは空気のゆらぎ、かげろうのせい。雨が降った翌日の春の日の快晴だったからだ。条件さえよければ、いまのコンパクトカメラのデジタルズームは意外とよく写るのだぞ。

徹底したコストダウン

キヤノン・IXY 140

 キヤノンのコンパクトデジタルカメラは昨年、2013年ごろから同梱品(付属品)を大幅に少なくし省略してきている。徹底したコストダウン。
 カメラの化粧箱に同梱されているのは、バッテリー、充電器のほかは、保証書、ペラ紙印刷の超簡易取り扱い説明書(IXY140と120の共用)、サポートガイド案内、使用説明書のダウンロード案内、アンケート用紙(回答者の中から毎月5名に10万円相当の商品券もらえるんだと)、あとはCANON iMAGE GATEWAYの入会案内。ほら、これだけだ




 IXY140 には、CD-ROM(DVD-R)なし、本のカタチになった取り扱い使用説明書なし、USBインターフェースケーブルなし、AVケーブルなし。箱を開けると、おいおい、入れ忘れたんじゃないか、と思うほどがらーんとしている。
 インターフェースケーブルもAVケーブルも別売でそれぞれ2000円。製本された使用説明書が必要なら別売しているから購入可能だそうだ(なんだ、作ってるんじゃないか)。
 ちなみに、2011年発売のIXY410には、バッテリーと充電器、本になった使用説明書はもちろん、ソフトもろもろが入ったディスク、USBケーブルもAVケーブルも同梱されている。

 IXY140に同梱の簡易使用説明書には、まず、マニュアル(電子使用説明書)とソフトは所定のところからダウンロードしなさい、にはじまって、付属品の確認、バッテリーの充電の方法と、バッテリーとメモリーカードの入れ方、日付の設定方法、言語の選び方。
 次に、電源を入れてシャッターの押して撮る方法、写した画像を再生する方法。これでおしまい。PCと接続する方法やテレビ画面などで見る方法についてはいっさいの解説はない。対応するケーブルが同梱されてないのだから、当然といえば当然ですけど。

 でも、ここまで徹底してコストダウンしなければ、キヤノンと言えどもコンパクトカメラは大変に苦しい状況にあるということだ。IXY140のカメラとしての「ツクリ」が安っぽくなったことも含めて、わたしたちが「もっと安く安くっ、高いぞ高いぞっ」と言い続けたことのシワヨセのひとつがこんなところにあらわれてきたのだろう。自戒を込めつつ、なんだかさみしいなあ。

あのIXYはどこに行ってしまったのか

キヤノン・IXY 140

 キヤノンのコンパクトデジタルカメラには2つのブランドシリーズがある。1つが「IXY」、もう1つが「PowerShot」。IXYシリーズのカメラは、小型軽量で金属ボディで高い品質がウリである。スタイリッシュでしゃれたデザインのカメラという印象が強い。どちらかと言えばキヤノンの考え方としては、PowerShotシリーズが「海外向け」なのに対して、IXYシリーズは「国内向け」というスタンスだ。




 カメラのツクリの良さという点でみれば、文句なしにIXYのほうが優れていた(一部のPowerShotを除くけど)。材質、仕上げ、スタイルがとにかく良かった。おおげさだが、工芸品のような優れた仕上げのカメラもあった。でも、最近のIXYは以前のIXYとはだいぶ違ってきている。ごくごくフツーのコンパクトデジタルカメラになってきた。
 IXYといえばキヤノンのカメラの「自慢の1つ」でMADE IN JAPANにこだわって、大切なマザー工場でもある大分にある工場で高級一眼レフカメラと同じ場所で作り続けてきた。

 カメラ本来の目的とは違うが、IXYのカメラは写す以前に「見て愉しい、持って愉しい」ところがあった。両手でカメラを操作し眺めているだけで、いいカメラだなあ、と嬉しくなるような機種もあった。ぼくはずーっと長い間、IXYのファンで、新型のIXYを見るたびに使うたびに感心することがいっぱいあった。
 ところが最近のIXYは、以前の機種に比べるとナンだか「安っぽい」気がするのだ。IXYというブランドのわりにはツクリがザツになっているような印象も受ける。ふと、どこで作ってるんだろうかとカメラを見てみるとMADE IN CHINA。カメラを中国で作っているからどうのこうのを言うつもりはまったくない(そんな時代錯誤的な価値判断はいくらなんでもしない)。

 大分の品質基準が中国にきちんと伝わっていないのか(それは考えにくい)、それとも、IXYブランドのカメラの品質基準にキヤノンの中で大きな転換があったのだろうか。
 とにかく、最近のIXYは「名ばかり」ですっかり形骸化してしまったことは事実で、IXYファンのぼくとしてはひじょうに悲しい。

カシオ独特の「カメラ論理」が難解

カシオ・EX-100

 カシオのカメラは、ずーっと以前からそうなんだけど、「カメラ操作の方法」が独特なのだ。ニコンやキヤノン、オリンパスやペンタックスなどフィルムカメラから続く「老舗カメラメーカー」とはだいぶカメラの雰囲気も違う。同じようにフィルムカメラづくりの経験のないソニーやパナソニックのデジタルカメラは、どちらかといえば老舗カメラメーカーのそれに近い。
 ところがカシオのカメラは、意図的に既存のカメラとは別路線を歩んでいこうという考えはないと思うが、「論理」が根本的に違うような気がする。




 最近のカシオのカメラは、以前から比べればそれでもだいぶ柔軟になってきたけど、ある時期までは、「かたくなな」と言っていいほどに我が道を突き進んでいた。個性的、というのとは少し違う。だから、ぼくはよくカシオは「デジタルカメラ世界の異端児だ」と評していた。

 むろん、良い面もあったし悪い面もあった。悪い面は(しいて言えば、の話だけど)、とにかく「初心者ユーザーに文句を言われないように」とか「初心者ユーザーが間違いを起こさないように」といった配慮が強すぎて、そうしたカメラを作り続けたため、ぼくたちのように少しカメラ操作を知っているものにとっては、大変に使いづらいカメラになってしまっていたことだ。
 露出補正ひとつ操作するのに、他のメーカーとはまったく異なった操作をしなければならなかったり、いまでもそうだけど、露出補正といった用語を使わず「EVシフト」としていたりする。

 そうしたカシオ独特の「カメラ論理」に慣れている人にはわかりやすいカメラなのかもしれないが、しかしそのカシオカメラの「論理」を理解するまでには時間も忍耐も必要。

 けど、良い面もたくさんある。デジタルカメラに初めて搭載した撮影機能など、挙げればキリがないほどたくさんある。コンパクトデジタルカメラでいったいナニができるか、どこまでできるか、を徹底的に試し、それを実践してきていることがそうだ。「これはおもしろそうだ」と感じれば、どしどしカメラに新機能として搭載してくる。デジタルカメラで、コンポジット技術を使って超解像をやったのはカシオが初めてだし、いまでもそれを続けている。自動ステッチング処理を取り入れて超ワイド撮影ができるようにしたり、そうそう、スローモーション撮影を初めてやったのもカシオだ。

 いつも思うのだけど、もし、かりにカシオがレンズ交換式のカメラを作ったら、どんなに愉しくて、魅力的なカメラに仕上げるだろうかと。
 でも、「レンズ交換式カメラはまったく考えていません」といつも明言しているけど、いや、そう言わざるを得ないカシオの事情もあるんだろうけど、残念だなあ、もったいないなあ、と思う。