付属のレンズフードと三脚座

オリンパス・OM-D E-M1+M.ZUIKO DIGITAL ED40~150mmF2.8PRO

 このオリンパスの40~150mmF2.8ズームレンズの"最大のライバル"になると思われるのは、11月20日発売予定の富士フイルムXF50~140mmF2.8ではないだろうか(あまり注目されてないようだけど)。
 「ライバル」といったけど、しょせん、マウントも違うし使えるカメラもカバーするセンサーサイズも違うので真正面から比較するのは愚の骨頂みたいだけど、高性能な大口径ズームレンズとして見比べると、いろいろとおもしろいものが見えてくる。




 富士フイルムの新型ズームレンズのことはさておき、オリンパス40~150mmのほうには、伸縮自在のレンズフードと着脱可能な三脚座が標準で付属されている。細身で小さくて軽いズームレンズのワリには、その専用レンズフードは大きくて重いのがやや難ではあるが、これが良くできている。
 こんなところにオリンパスは"ヘン"に凝るんですよ、凝りすぎてポカミスも(よく)する。その例が同じProシリーズの12~40mmF2.8ズームに付属していたレンズキャップ。カッコウはいいし高級感もあるんだけどめちゃくちゃ使いづらいレンズキャップで、使いづらいことではナンバーワン、ギネスブックに登録してもいいくらいだったのだが、オリンパスもそれには反省したのか、この40~150mm付属のレンズキャップはデザインを変えた。12~40mmとカタチこそにているが使い勝手は大幅に向上している。

 いっぽう、さて40~150mmのレンズフードだけど、一般的な脱着式レンズフードは使わないときにはいったんレンズから外してそれを逆向きにしてレンズに"収納"するというタイプが多い。それに対して、40~150mmのズームはまるで内蔵型フードのように、ワンタッチ操作で伸ばしたり縮めたりすることができる。繰り返すが、このレンズフードはレンズ本体に比べるといささか大きく重い。ワンタッチ操作のための機構を組み込んでいるからしょうがないのだけど、もうちょっと軽ければなあと思う。

 三脚座もまた、レンズ本体の小ささと軽さのワリにはやや重くて大きく感じてしまう。着脱式なのだけど付けたり外したりがけっこうめんどう。ところで、三脚座で良くできたデザインのトップは、ニコン70~200mmF2.8VRに付属のものだ。一度、機会があったらよく見ておいてほしい。素晴らしいギミック。各メーカーはぜひマネしてほしいぞ。
 で、40~150mmの三脚座に話を戻すが、手持ち撮影するときやカメラバッグに収納するときにはこれが邪魔になってしょうがないのだ。
 OM-D E-M1などの機種と組み合わせて使うときはボディ内の手ブレ補正がかなり優秀なので、よほどの低速シャッタースピードでもなければ手持ち撮影でも不満もなくほいほい撮影ができる。だからぼくは、ほとんどのシーンを三脚座を取り外してつかっていた。軽快でフットワーク良く撮影ができてこれはおすすめ。

 しかし40~150mmレンズから三脚座を取り外してしまうと、とたんに姿カッコが悪くなる。パンツひとつで地下鉄の日比谷線に乗っている人のようだ(そんな人はいませんけどね)。三脚座を外してもスマートな、そんなレンズをデザインしてほしいものですねえ。

おすすめはテレコンとのセットですね

オリンパス・OM-D E-M1+M.ZUIKO DIGITAL ED40~150mmF2.8PRO+MC-14

 このズームレンズは今月末の11月29日が発売予定。同時に1.4倍の望遠レンズ専用のテレコンバーター(MC-14)も発売予定で、40~140mmとセットにしたキット販売もされる。予定価格はズーム単体だと税込みで198000円だが、税込み37800円のテレコンとのキットだと224540円になるそうで、そうするとテレコンぶんがかなりお買い得となる。ナンだかオリンパスのヨイショ宣伝してるみたいだけど。

 でも、いまから注文しても発売日に手に入れることは難しいみたいですね。「予想外の注文を頂戴いたしまして…」とオリンパスは申し訳なさそうに言っている。
 もちろん「予想外」だったのだろうけど、それよりもこのレンズは、製造するのが大変に難しくて、ほいほいとたくさんの数を注文通りに生産できないからだろう。少数でじっくりと高品質高性能を目標にして作っていく(作らざるを得ない)、そんなズームレンズなのだ。




 40~150mmのレンズ構成を見てみてもわかると思う。デュアルVCMフォーカス用の2群の調整も難しいようだが、それ以上にEDAレンズの製造に手間取っているんではないだろうか。EDA(Extra-low Dispersion Aspheric)とは特殊低分散ガラスレンズの非球面レンズのこと。赤丸で囲った部分がEDAレンズだけど、これじゃあ見てもよくわからんねえ…すまん。

 この非球面レンズはGM、つまりガラスモールド方式で非球面化している。精密金型を作って、金型と光学ガラスを高温でじっくりと圧縮プレスして非球面の「カタチ」に仕上げるわけだが、そう簡単にできれば苦労はしない。
 金型でプレスするときと、金型から取り出すときの温度管理がこれまた大変に難しく、ちょっとヘマをするととたんに割れてしまったり屈折率が狂ってしまう。どのメーカーもこのへんのワザ(ノウハウ)は「秘中の秘」になっている。

 ぼくはいくつかのメーカーのレンズ工場を見学したことがあるが、ほとんどのメーカーは非球面レンズの製造工程についてはいっさいオフリミット。見せてくれない。ぼくのようなシロートが見てもノウハウがわかるわけもないし、万が一、わかったところでぼくには屁の突っ張りほどの役にもたたない。
 たまに見せてくれるメーカーもあるが(恩を着せて渋々)、それでも小さな窓越しに短時間だけチラ見させてくれるだけ。聞いてもなーんにも教えてくれない。いや、非球面レンズの製法はそれほどの内緒の技術だということ。

 生産効率を優先させて光学ガラスをプレスするときに高温にしすぎたりすると、高価な金型にダメージを与え耐久性がなくなる。そのへんの兼ね合いを考えながら適温を探る。しかし、だからと言って低温するぎると今度は光学ガラスが言うことを聞いてくれないし、生産効率も悪くなる(時間がかかれば人件費も設備費もアップする)。
 さらにですぞ、40~150mmズームに使っているEDAレンズは特殊低分散ガラスで、その素材は高温にすると、これまた金型にダメージを与える「有害ガス」が発生するとも言われている。
 カメラもレンズもそうだけど作り始め、製造開始直後というものは難問が立て続けにおこってくるもの。次々に襲いかかる試練をくぐり抜け解決して(大げさな表現でごめんね)、性能を最優先して40~150mmを丁寧に作っているんだろうなあ、と、まあ、そんなふうに思うわけです。

 ああそうだ。無駄話をしすぎて言い忘れていたけど、もし40~150mmを買うんだったら、そりゃあ迷わずテレコンとのキットを選んだほうがいい。あとで、きっと後悔しないですむ(と思う)。上の写真はテレコン付き、C-AF、高速連写の中の1コマ。とてもシャープです。

単焦点レンズの描写性能を超えるズーム

オリンパス・OM-D E-M1+M.ZUIKO DIGITAL ED40~150mmF2.8PRO

 オリンパス渾身の高画質高性能ズームレンズである。

 フルサイズ判換算で80~300mm相当の画角をカバーする小型軽量の大口径ズーム。開放F値はコンスタントF2.8。インナーフォーカス、インナーズームだからズーミングしてもフォーカシングしてもレンズ全長はまったく変化しない。AFも高速だし使い勝手はすこぶる良い。いや、それよりもなによりも、描写が素晴らしい。

 もう数週間前になるが、このズームレンズを初めて手にして撮ってみたとき、そのずば抜けた解像描写力に、うっ、と唸ったまま絶句してしまった。描写性能には自信があります、と受け取るときにオリンパスの人に言われたけど、撮ってみて、なんじゃこれは、いったいどうしたんだ…というのがファーストインプレッション。
 少しエッジ処理が気になることと、やや線の太い描写が特徴だけど、いやそれにしても、めちゃくちゃ"わかりやすい"高画質描写だ。誰が見ても、うわっ凄い解像力だっ、と瞬間に感じるに違いない、そんな描写。




 とくに近距離の描写が際立っている。数あるズームレンズ中で、こんなに近距離描写に優れているものはめったにない。最短撮影距離はズーム全域で70センチ。約1.5メートルから至近距離までの写りがいい(もちろん他の撮影距離でもいいのだけど)。
 近距離での描写がいいのは、ズームレンズではおそらく初の近距離収差補正機構(フローティング機構)を採用しているからだ。ズームレンズでフローティング、それもリニアモーターの一種であるVCM(ボイスコイルモーター)を使って電気的に2群レンズを微細にかつ高速に制御するという「とんでもない離れワザ」をやっているからだ。

 カム式のフローティング機構は単焦点レンズでは古くから採用されているが、電子式制御で、なおかつズームレンズでのフローティング機構となると制御的に難易度が飛躍的にアップする。二次元的処理が三次元処理になったようなものだともいわれている。
 ズームしたときの画角とピントを合わせる距離で収差を最小限にどどめるように、設計値通りにAF用の2つのレンズ群を動かしピタリと止めなくてはならない。ぼくのようなレンズ設計やAF制御機構に不如意なものでも、凄いなあ、と感心することしきりだし、実際に撮ってみて、その効果てきめんをはっきりと実感した。

 オリンパスではこの新しい電子制御式のフローティング機構のことを「デュアルVCMフォーカスシステム」とよんでいる。

 もともと、レンズは「ある距離」にマトを絞ってそこの描写性能を高めていく設計をする(そうせざるを得ない)。まんべんなくどの撮影距離でも均一な高画質というのは(厳密に言えば)不可能。一般的にだけど、だからどうしても近距離、至近距離あたりの描写が犠牲になる。それを解決するためにこの40~150mmF2.8ズームでは、難易度の高いデュアルVCM方式を採用して、結果的に"優れた単焦点レンズなみ"の描写力を持ったズームレンズに仕上げたわけだ。
 大袈裟な言い方でなく、ごく当たり前の単焦点レンズの描写と比べれば、はるかに40~150mmズームレンズの描写のほうがいい。そんなズームレンズだ。おすすめ度100。