「自拍神器」と「自拍魔鏡」

カシオ・EX-MR1

 MR1は「自分撮り」をいちばんのテーマにして開発されたカメラだけど、自分ではなく写そうとする人にカメラを向ければ、その前面には大きな鏡があるから写される本人の顔が自分でもよく見える。そこを見つめればどんなふうに写るのか予測がつく。安心して、いい表情、お気に入りのポーズも自然にできる。子どもにカメラを向ければ、きっと、いままでにないいい表情の写真が撮れるかもしれない。
 というわけで、この写真は二人にMR1の鏡を見てもらいながら撮影させてもらったもの。アートエフェクト機能を使ってチョイと画像処理。




 自分撮りのブームを作ったのは、もとはといえば2011年7月発売のTR-100から。レンズ部と液晶モニター部と、それを囲むようなフレーム部が一体になっているが、それぞれが自由自在に角度が変えられる。内蔵レンズは単焦点で広角21mmの画角。レンズと液晶モニターを自分に向ければ"自分を見ながら自分が写せる"こともできる。

 国内ではあまり人気も出ず評価もされなかったけど、香港や中国、とくに北京や上海などの大都市の若い女性たちに大うけした。TRシリーズのカメラを使って自分を写す。それをSNSなどにアップして皆んなに見てもらうという「自分撮り」が文化にまでなった。
 当初、TRシリーズにはWi-Fi機能が備わってなかった。
 では、彼女たちはどのようにしてSNSにアップロードしたか。聞いて驚いたのだけど、カシオTRで写した自分を、液晶モニターに表示して、それを携帯カメラで撮影複写してからそれをアップロードしていたそうだ。そのうち、カシオも事態のただならぬ様子に気づいて大急ぎでWi-Fi内蔵の機種も開発して中国市場に投入、売れて品薄が続く、プレミヤ価格がつく…やれやれ…。

 なぜそこまでして中国の女性たちがカシオTRにこだわったのか。
 理由のひとつは21mmワイド画角。カメラを斜め上に持ち上げて、やや俯瞰ぎみに自分を写すと、眼がぱっちり、そして細顔に写る。TRシリーズのもうひとつの魅力は「美白モード(メイクアップモード)」だった。肌を美しく画像処理する機能で、いまじゃ珍しくもないけどコレをカメラに初搭載したのはなにを隠そうカシオなのだ。
 街を歩いていて信号待ちの数分間に自分の可愛いと思う表情を写してすぐに皆んなに見てもらう。「可愛いね」と言ってもらえるのが最高の喜び、というわけだ。

 中国などではTRシリーズ自分撮りカメラのことを「自拍神器」と呼んでいる。「自拍」とは自分撮りのこと、「神器」とは超優れものグッズとでも言えばいいか。
 で、TRシリーズが自拍神器とネーミングされているのにならって、MR1のほうは鏡に自分を写して撮るカメラということで「自拍魔鏡」という新しい名前がつけられているそうです、いま中国では。
 自拍神器も自拍魔鏡もカシオがしかけてネーミングさせたものではなく、なんとなくそう呼ばれるようになったらしい。最新型「自拍神器」のEX-TR500(国内未発売)についてはメールマガジン「明日からの写真術」で詳しく(おもしろく)紹介した。

国内未発売の自分撮りカメラ

カシオ・EX-MR1




 自分撮りに"特化"したカシオのコンパクトデジタルカメラだ。EX-MR1。
 上の写真は、そのカメラを正面から写したもので、そう、カメラ前面のほとんどが鏡(ガラス製ではなくアクリル製)になっている。そこに自分の姿や顔を写して、その様子を見ながら撮影するという使い方ができるカメラ。

 じゃあ、かんじんのレンズは一体どこにあるのだ、といえば ━━ あわてるな、上部の小さな穴ではないぞ ━━ 鏡の中心あたりをよーく見ると、ぼんやりと小さく丸い円がある。そこがレンズ部。つまり、薄く半透明になったアクリル鏡の後ろ側にレンズがある。カメラ上部にあるレンズじゃないかと疑った小さな穴は、照明用のLEDライト。
 半透明のアクリル板だとはいえ、レンズ前面にそんなもんがあるから写りはフレアーっぽくて解像感もイマイチ。ま、しょうがないか…。

 カメラの正面は"前面鏡張り"であるが、ボディ背面はごくフツーのコンパクトデジタルカメラと同じように液晶モニターがあって操作ボタンがあるだけ。
 内蔵されているレンズの画角は21mm相当の単焦点で、イメージセンサーは約1400万画素の1/2.3型CMOS。最短10cmまでのAFに対応し、プログラムオートのみだけど、動画も撮れる。さらにWi-Fiにも対応している。メモリーカードはマイクロSD。

 国内での発売予定はとうぶんはないらしい(ずっとナイかもしれない)。でも、すでに中国を中心に一部のアジア地域で販売されていて、そこそこの人気なんだそうだ。カシオに頼んで借りて使ってみたので、その使い勝手のことや、カシオの自分撮りカメラにかける意気込みなどについては明日にでも。

もう一度、dp Quattro用LCDビューファインダー

シグマ・dp2 Quattro

 前回(昨日だ)に続き、もう一度dp Quattro用のLCDビューファインダーの話だ。
 このビューファインダー、Dp Quattroのカメラを持ってなければまったく興味のない話題であることは百も承知。でもイイじゃなかい、ぼくはとっても興味を持ったのだから。

 というのも、ぼくのまわりの写真家の中にも、そうしたルーペを利用して撮影をしている人を何人も知っている。彼らは撮影時にルーペを利用するのではなく、撮影後に液晶モニターをルーペで見て「ピントチェック」をしているのだ。それを見て、よくやるよなあそんなめんどうなこと…と感じることもなくもない。
 言うまでもないが、一眼レフでもミラーレスでも、いまのカメラのAFが"たよりにならん"ということはわかっている。どうして平気で「誤測距」したり、何度も「AF迷い」したうえにギブアップばかりするんだろうかと不満がつのる…各社のAF担当開発者はもっと真剣に改良に取り組んで欲しいぞ。AFは速いばかりが最善ではない、正確なピントこそいちばん大切なんだ。




 それはともかくとして、dp Quattro用のLCDビューファインダーについては、こんなふうにデタッチャブル式になっているんだぞということを、昨日のブログで言うつもりだったのを忘れてしまった。枠は金属で、細い紐につながったのがファインダーキャップで、それも金属だ(アルミの削り出し!)。ま、ご参考までに。

 ところで、先日、雑誌(デジタルカメラマガジン)のインタビューでシグマ山木社長と久しぶりにあれこれ話をした。
 dp Quattroの派生版というか、APS-Cサイズ判Foveonセンサーを使ったレンズ交換式のdpシリーズみたいなものをやならないの、と聞いたのだけど、「レンズ交換式のミラーレスをやる予定はありません」とはっきりと言っていた。「これ以上にマウントを増やすのは、うちでは厳しい」とも。dp Quattroシリーズにズームレンズを加えることについても、「予定はありません」とキッパリとしたもんだった。それよりも単焦点の、超広角とかマクロとか35mm相当とかを内蔵したdp Quattroシリーズなどの「尖った要望」のほうが強いと。

 Foveonセンサーの大型化、つまりフルサイズ判については、要望はあることは承知しているが、それをやってシグマの事業として成功するかどうか、と。「もしフルサイズ判をやるとするならセンサーの開発をいちから始めなくてはならない」。いまあるAPS-C判をぐいっと広げればいいってもんじゃない、らしい。「センサーの開発には猛烈な費用がかかるんですよ、そんなに簡単な問題じゃないです」と、ぼくは強く諫められました…すまんでした。

 でも、そんなことを山木さんは言ったけど、しかしシグマって会社は今日言っていたことが明日になるところっと変わるってことがよくあるから、明後日になるとどんな製品が出てくるかわからんぞ。

dp Quattro用のLCDビューファインダー

シグマ・dp1 Quattro

 シグマの新dpシリーズ用のLCDビューファインダー(LVF-01)をdp1 Quattroにセットして使ってみた。これがセットした状態だ。大迫力である。ディオプター(視度補正)つきの大型ルーペ、と思えばいい。カメラ底部の三脚ねじ穴を利用して、しっかりとした金属フレームを取り付ける。dpシリーズならすべての機種に ━━ といっても現在はdp1とdp2 Quattroの2機種のみ ━━ 使える。




 大型ルーペと金属フレームとはデタッチャブル式になっている。ほらこんなふうにスライドすると、カメラに取り付けた金属フレームから大型ルーペ部分だけをすばやく外せる。
 大型ルーペを取り外してしまえば(金属フレームはちょっとじゃまだけど)いつも通りに背面液晶モニターを眺めながら撮影することもできる。

 もしdp Quattroシリーズを複数台あるなら、それぞれのカメラに金属フレームだけを取り付けておけば(将来、フレームだけの販売も予定されている)、必要に応じてルーペ部だけをセットして使うこともできる。
 ルーペの倍率は2.5倍。アイピースレンズの径が大きいので大変に見やすい。視野率も充分にあって、ぼくのように眼鏡をかけたまま覗いても、眼をずらすことなくモニター画面の周囲までよく見渡せる。

 事前にシグマのホームページなどでdp Quattroにセットした姿を見ていたけど(その写真を見た時は衝撃的だった)、いざ実物が手元にきてそれをカメラに取り付けてみたら、あらためて衝撃を受け、しばし絶句してしまった。……でも気を取り直して、そのビューファインダーを覗いてみると、うん、こりゃあなかなかいい感じだ。快晴の戸外の撮影にはとっても良さそうだ(実際に良かったんだけど)。
 でも、これを取り付けたまま、わが六本木の街を歩くには相当の覚悟と勇気がいる。そこで、ルーペ部だけを上着のポケットに入れておき、いざ撮影、のときにセットして(周囲を見渡してから)…使っていた。

FナンバーとTナンバー

富士フイルム・X-T1グラファイトシルバーエディション + XF56mmF1.2 R APD

 APDフィルターは円形の中心あたりから周辺部に向かってなだらかに光量が減じる特殊フィルターである。この写真をよく見比べればわかる。左がAPDありの56mm、右がAPDなしの56mmで、左のAPD56mmの周辺が少しグラデーションがあってぼけて見える。

 だから、APD「あり」と「なし」では「あり」のほうが、まったく同じ光学系であっても透過率はやや落ちるってわけだ。レンズの周辺部までの光をフル活用する開放絞りのときや、開放絞りに近い絞り値の時ほど透過率は低くなる。ある程度、絞り込むとレンズ周辺部の光は絞り羽根でカットされ中央部の光しか使わないからAPDフィルター「あり」「なし」でも透過率はほとんど同じになる。




 透過率が低くなる、つまり光量が低下するわけだから、たとえばF1.2という同じ絞り値であっても、APDあり56mmのF1.2のほうがAPDなし56mmのF1.2よりも実質的には「暗い」ことになる。……なんだか説明が簡潔にできずにすまん。
 そのAPDフィルターの影響で「暗く」なったF値を表したのが「Tナンバー」なのだ。こちらの写真は「XF56mmF1.2 R APD」レンズの絞りリングを写したもの。白色の数値が「Fナンバー」で、オレンジ色が「Tナンバー」。F1.2がF1.7に、F1.4がF1.8に、F2がF2.3……相当の明るさになることを示している。

 Tナンバーは ━━ 話が長くなるので適当にしておくけど ━━ レンズの実質的な透過光量を表している(Fナンバーは計算値である)。
 じゃあ、適正露出値を決めるときにFナンバーとTナンバーの「差分」を考慮して補正しなければならないじゃないか、とそう考えるのは当然。でも、いまぼくたちが使っているカメラのほとんどはカメラに内蔵された露出計を使って「TTL」で測光しているので差分を気にすることはない。ただし外部露出計を使って完全マニュアル露出で厳密に露出を決めて撮影する場合はTナンバーを基準にしたほうがいい。だからレンズ構成枚数が多く透過率の影響を受ける映画撮影用のレンズなどにはいまでもTナンバーを使っている。

 富士フイルムは、なぜ56mmF1.2にAPDフィルターを入れてレンズを暗くまでして「XF56mmF1.2 R APD」を作ったのか、その理由はただひとつ、柔らかくて美しいぼけ味を求めたからだ。ぼくとしてはその"こだわり"を高く評価したい。富士フイルムの交換レンズに対する真面目な姿勢にも感じるところ大だ。

 ところで、ひとつ言い忘れていたことがあった。「XF56mmF1.2 R APD」はAPDフィルターを使っているために、像面位相差AFの機能を持ったXシリーズのカメラでは像面位相差AFが使えずすべてコントラストAFになってしまうこと。そのため、撮影シーンによってはAF測距スピードがAPDなし56mmレンズに比べて少し遅くなる(といっても体感的にはほとんど同じ)。

アポダイゼーションフィルター

富士フイルム・X-T1グラファイトシルバーエディション + XF56mmF1.2 R APD

 「XF56mmF1.2 R APD」は、すでに発売されている「XF56mmF1.2 R」の光学系の中に特殊フィルターを組み込ませてぼけ味を柔らかくしたレンズである。中心部は透過率100%のままだが周辺部にいくに従ってだんだんと暗くなるアポダイゼーション(APD=apodization)フィルターを使っている。富士フイルムのフィルム技術を応用したものだそうだ。
 発表会の時にそれを見せてもらったが、薄っぺらいぺらぺら状の小さな円形のフィルム。「なーんだ、こんなもんですか…」と言ったら、「ナニを言いますか、ほら微妙にグラデーションになっている、そこが難しいんですよ、高度なフィルム製造技術が必要です」とたしなめられました。失礼なことを言いました…。




 APDフィルター「あり」と「なし」の56mmF1.2レンズで、さんざんぼけ味撮り比べをしてみた。ところが、恥を忍んで正直に言うけれど、ほとんど違いがわからなかった。どちらのぼけ味も(ぼくには)充分に柔らかくて美しく見える。こちらがAPDだぞと言われたうえで、よくよく見比べれば「APDあり」のほうがぼけの輪郭部がほんわりとしているかな、という程度。こりゃあ、せっかくのAPDもぼくにとっちゃあ、豚に真珠猫に小判だな、と恥じ入った次第。

 いや、かんじんのぼけ味よりも、撮影していて「おやっ」と感じたのは、とくにF1.2開放絞り値のときの写りが、「APDなし」の従来レンズよりも「APDあり」のレンズのほうがこころなしか良いのだ。逆光で撮影したとき、ゴーストの出かたはともかく ━━ もともとゴーストが出やすいレンズ ━━ 「APDあり」のほうがフレアーが少なくヌケが良い印象だった。

 なにげなしに、富士フイルムのホームページ、56mmF1.2レンズのところにあるMTF曲線図を「あり」と「なし」をよーく見比べてみたら、なんてこった、「APDあり」のほうがコントラスト特性がいいのだ(MTF図なんてどこのメーカーのもアテにならないから信用しすぎるとよくないけど)。光学系はまったく同じで、画質に影響しないと言われているがAPDフィルターを入れてるのにねえ。
 でも、考えてみればレンズを通る端っこの光はAPDフィルターで"ほど良くカット"されているから、同じ光学系のレンズでも結果的に描写性能が良くなっているということかもしれない。

X-T1グラファイトシルバーエディション

富士フイルム・X-T1グラファイトシルバーエディション + XF56mmF1.2 R APD

 約一ヶ月ぶりの再開。長い留守でした。

 ブラックモデルだけのX-T1にシルバーモデルが加わった。グラファイトシルバーエディション(Graphite Silver Edition)という長い名称が付く。略号はなし。限定販売ではないがブラックに比べて2万円強ほど高い。
 グラファイトとは黒鉛のこと。その黒い鉱物を写真で見ると光のあった部分が銀色に光っている。X-T1グラファイトシルバーエディションも、そう言われてみれば黒鉛の鉱物が鈍く銀色に光っている様子とそっくり、に見えなくもない。




 特別バージョンとして作られたこうしたシルバーモデルのカメラはたくさんあるけれど、X-T1グラファイトシルバーエディションは、いままで見たシルバーモデルとはだいぶおもむきが違う。しっとりとして落ち着いた銀色で高級感もある。その仕上げも大変に丁寧で素晴らしい。
 富士フイルムのホームページの中のこのモデルの説明文を読むととっても"凝った"仕上げをしているのがよくわかる。マグネシウム金属を磨いたりコーティングしたり特殊塗料を加えたりして銀色にしている。

 そのグラファイトシルバー処理は、ダイヤル類はもちろんボディ背面のチルト式液晶モニターの枠にも小さなダイヤルやボタン類まで、やっているように見える。言うまでもないがX-T1のダイヤルやボタンなどには金属以外のプラスチック素材が使われているところもある(モニターの枠もそうかも)。しかし、それらの銀色はボディ上下カバーの"ほんものマグネ金属+グラファイトシルバー処理"をしたかのように丁寧に1つづつ色合わせをして仕上げている。これにはいたく感心しましたよ。

 もっと感心したのはホットシューカバー。なんとアルミ金属製なのだ。ほら、これだ。ホットシューカバーはアクセサリーシューカバーともいうが、どこのメーカーのカメラでも黒いプラスチック製である。大変に安っぽいプラスチック製のものもあって、そうしたシューカバーは見ただけでムカつくのでぼくはよくゴミ箱に捨ててしまう。でも、このシューカバーはとうてい捨てる気にもならない。
 加えてもう1つ言うなら、そのホットシューの枠だ。シルバーモデルであっても、ホットシュー枠だけはブラックのままというカメラや、シルバーでもブラックでもシルバーのままというカメラもある ━━ ニコンDfのゴールドエディションはそこだけがゴールド処理されてないので、チョットかっこ悪い、その話は後日に ━━ 。X-T1グラファイトシルバーエディションでは、そこもきちんと銀色にしている(ブラックボディはもちろんブラック)。