ダンパー装置付きシャッターユニット

オリンパス・OM-D E-M5 MarkII+M.ZUIKO DIGITAL40~150mmF2.8 Pro

 前回ブログに続いて、E-M5 MarkIIのシャッターの話。

 E-M5 MarkIIのフォーカルプレーンシャッターには、先幕と後幕を走行させるメカシャッターと、先幕だけを電子シャッターにした先幕電子シャッター(低振動モード)、前幕も後幕も電子シャッターにした完全電子シャッター(静音モード)の3つのシャッターモードを備える。それについては前回のブログで説明した。先幕電子シャッターも完全電子シャッターも、シャッター作動時に起こる衝撃を限りなく最小限にとどめるためである。
 こうした電子シャッターを使って衝撃を減少させる以外に、E-M5 MarkIIのシャッターには驚くような機構が採用されている。




 フォーカルプレーンシャッターのユニット ━━ 先幕や後幕を動作、制御するためのメカニズムや電子部品が一体 ━━ をばねを使ったダンパー方式で「浮遊」させている。
 オリンパスは公式にこの装置のことを発表していないので名称はない。先日のCP+で、オリンパスブースの片隅にこっそり展示してあったがどれだけの人が気づいただろうか…。ここでは仮に「フローティングシャッター機構」と名付けておく。

 フォーカルプレーンシャッターは先幕と後幕が高速で時間差走行する。その「隙間」の幅で露出量を調整する。また、先幕と後幕をより高速に走行させるほど高速シャッタースピードが得られる。しかし高速走行させるほどシャッターの衝撃が大きくなり、それが原因でぶれてしまう。
 シャッター幕の衝撃は走行終了時だけでなく、シャッターチャージのために元の位置に戻すときにも衝撃が発生する。
 デジタルカメラが高画素化、高解像力になればなるほどわずかなぶれ(微ぶれ)でも画質に大きな影響をおよぼす。カメラが小型化して高速シャッタースピードになればなるほどシャッター衝撃が大きくなる。オリンパスは長年、このシャッター衝撃に悩み続けてきた。

 E-M5 MarkIIではシャッターユニットの上下左右の四隅に小さなばねを配置してダンパー構造にしてシャッター衝撃を吸収、減少させている。ちょっと見にくいがこの写真の矢印部分にばねがある。そのユニットはCP+でこっそり展示されていたのを写したものである。
 フローティングそのものはじつにシンプルな構造の装置ではある。しかしメカニズムはシンプル、簡単であればあるほど安定性と確実性を確保するのが難しいものだ。おそらくオリンパスはこのフローティングシャッターの開発には大変に苦労したに違いない。

 ところが、せっかく苦労して開発したフローティングシャッター機構だが、先幕電子シャッターや完全電子シャッターが同時に搭載されたために、すっかり存在価値が薄くなってしまった。耐衝撃という点でみれば先幕電子や完全電子シャッターのほうがずっと効果があるからだ。
 とはいえ、フローティングシャッター機構は、先幕と後幕を"正々堂々"と走行させるメカシャッターのときには従来機種に比べて衝撃はだいぶ少なくなる。そのことはE-M5 MarkIIのシャッターを切ったときの音とショックが、従来のオリンパスのカメラとかなり違うことに気づくはずだ。

 さらにもう1つ、E-M5 MarkIIには、先幕を事前に所定の位置に待たせておく「レリーズタイムラグ・ショート」というシャッター衝撃回避のモードがあるのだが、これについての解説を始めると泥沼にはまり込んでしまうので省略する。それでなくても、E-M5 MarkIIのシャッター機構や機能などには「話題満載」で、それを説明をしていけばキリがない。

 フローティングシャッター機構といい、5軸手ぶれ補正といい、40~150mmProレンズのデュアルVCM機構といい、オリンパスはカメラのメカニズムの制御 ━━ 「メカ力(メカぢから)」こそ精密カメラの基本 ━━ にこだわり続けているのには感心させられる。

E-M5 MarkIIのシャッターについて

オリンパス・OM-D E-M5 MarkII+M.ZUIKO DIGITAL12~40mmF2.8 Pro

 コアなオリンパスユーザーでも、たぶん知らない人も多いだろうが、じつはE-M5 MarkIIのシャッターは大変に凝った機能と機構を備えている。
 そのシャッターのことについては、オリンパスはなぜか詳しく触れたがらない(理由は不明)。広報部から発表されたプレスリリースにも、E-M5 MarkIIのカタログでも、シャッターの一部の機能についてだけごくごくあっさりと触れているに過ぎない。




 E-M5 MarkIIのシャッターには注目すべき特長が2つある。まず、1つめ。

 スペック表にはシャッターについてはごく簡単に次のような記載があるだけ。「電子制御フォーカルプレーン式/1/8000~60秒(1/3、1/2、または1EVステップで選択可能)バルブ/タイム撮影:最大30分…」といったもの。
 これだけ読むと「なーんだ普通のフォーカルプレーンシャッターではないか」と、きっとそう思うだろう。でもね、それがちょいと違うんだよね。

 確かに先幕と後幕の縦走り機構を備えたフォーカルプレーンシャッターなのだけど、先幕と後幕が走行する一般的な「メカ駆動式」と、先幕はイメージセンサーによる電子シャッターにして後幕はメカ駆動式の「先幕電子シャッター式」、そして先幕も後幕もいっさい動かさずに電子シャッターだけで露光制御する「完全電子シャッター式」の3つの方式を備えている。
 先幕電子シャッター方式も完全電子シャッター方式も、幕の走行によるシャッター震動を防ぐためのものだ。とくに、ハイレゾショットモードのように、まったくぶらさずに8コマ連続撮影しなければならないときには「無震動」の完全電子シャッターは必須の機能となる。

 「メカ駆動式」、「先幕電子シャッター」、「完全電子シャッター」については、じつはスペック表にはこっそりと書いてあるのでよーく読めばわかる。そしてさらに目を皿のようにして読むと、完全電子シャッターのときは「1/16000秒」まで設定可能なこともわかる(だから、正しく言えばE-M5 MarkIIの「最高シャッタースピード」は1/8000秒ではなく1/16000秒と明記すべきはずだ)。

 さて、E-M5 MarkIIのシャッターにはこれ以外に、そう、もう1つ注目すべき"大胆な"機構が組み込まれている。
 
 ところがそれについては広報資料でもカタログでも、完全無視している。ひと言も説明がない。
 フォーカルプレーン式のシャッターユニットが、ばねを使ったダンパー式衝撃吸収構造になっていることである。カメラではおそらく世界初、世界唯一の方式だろう。詳しい話は次回に。

ハイレゾショットモード

オリンパス・OM-D E-M5 MarkII+M.ZUIKO DIGITAL12~40mmF2.8 Pro

 E-M5 MarkIIに搭載されているハイレゾショットモードは、1600万画素イメージセンサーから約4000万画素または約6400万画素相当の高解像力の画像を生み出すというまるで"錬金術"のような撮影機能だ。
 現在のところE-M5 MarkIIを使ってハイレゾショット撮影をするにはさまざまな「制約」があるが、将来の技術的な進化と改良が大いに期待できる。
 
 ほぼ同時期に、リコーイメージングからも似たような手法と処理で高解像の画像を生成する技術発表がされた。それについては、いずれここで紹介したい。本日の話はオリンパスのハイレゾショット。




 ハイレゾショットモードは、いわゆる画素ずらし方式により複数枚の撮影をおこない、そこで得られた画像を合成処理(コンポジット)して高解像度の画像を生成するものである。ボディ内手ぶれ補正機構のメカニズムを活用して、センサーを高速微細にコントロールし1画素~0,5画素づつ正確に移動させながら8カット撮影する。
 この画像処理を担当したオリンパスの豊田さんの話によると、「マイクロフォーサーズの約1600万画素イメージセンサーを仮に東京ドームの大きさにたとえると、1画素は野球のボール1個分のサイズに相当」するという。0.5画素というと、その半分づつズラして露光するわけで、いかに精密にコントロールしているかわかる。

 8コマのハイレゾショット撮影してカメラ内で処理完了までの時間は、シャッタースピードによって異なるが、たとえば1/125秒ぐらいで撮影したとすれば「約3.5秒」ぐらいになる。
 つまりハイレゾショット撮影をして約3~4秒ほど待てば、自動処理されて4000万画素相当のビッグサイズ(7296×5472pixel)のJPEG画像ファイルが記録される。
 ハイレゾショットモードでは専用ハイレゾRAWファイルの記録もできる。そのハイレゾRAWファイルは、フォトショップで専用プラグインソフト(オリンパス提供)を使って処理すれば約6400万画素相当の、さらにビッグサイズ(9216×6912pixel)の画像を作り出すことができる。

 上の写真は、フォトショップ上で専用プラグインソフトを起動させてハイレゾRAWファイルの現像処理中のキャプチャ画面(ベータ版のプラグインソフトを使用)。

 E-M5 MarkIIのボディ内処理して得られる約4000万画素の画像と、フォトショップ+専用プラグインソフトで処理した約6400万画素の画像をじっくり見比べてみたのだけど、ほとんど「差」はない、という印象だった。
 だからぼくとしては、わざわざフォトショップを使って手間かけて6400万画素相当のファイルを作る必要もないか、4000万画素相当のJPEGファイルで充分に満足できる超高解像力の画像が得られるというのが結論でありました。

 なお、このへんの話は、明日2月15日(日)のCP+オリンパスブースで、12時半頃から豊田さんたちをまじえて話をする予定。

Xマウントレンズの「持病」

富士フイルム・X-T1+XF16~55mmF2.8 R LM WR

 以下の話は、富士フイルム・Xシリーズのカメラとレンズに馴染みのない人や、Xシリーズユーザーでも小さなことにこだわらない人にはわかりにくいかもしれない。
 Xマウントレンズの最短撮影距離のことだ。治せるはずの「フジの持病」の1つだと思う。

 まずこちらを見てほしい。16~55mmF2.8のスペック表の「撮影距離範囲」のところを切り出したものだ ━━ 「標準」と「マクロ」で最短撮影距離が違っている。
 この「標準」「マクロ」ってなんだ? というのが今日の話。




 ひとこと言い添えておくけれどXマウントの交換レンズ本体側には標準/マクロ切り替えのスイッチなどはない。じゃあこれは一体どういう意味かというと、カメラボディ側から標準/マクロの切り替えをおこなうのである。
 レンズ一体型のコンパクトカメラならいざ知らず、堂々たる交換レンズなのにボディ側からの信号で標準/マクロを切り替えて最短撮影距離を制御する。そんな交換レンズは他にはない。Xマウントレンズの独特の仕様だ。

 標準/マクロの切り替えをやっている理由はAFスピードの高速化のためだ。AFスピードを少しでも速くしようとして(XマウントレンズはAFが遅い遅いと文句言われてるからね)こうした切り替えをやっている。
 百歩譲ってこうした切り替え操作にガマンするとして(本心はガマンなんてしたくないが)、マクロモードでの撮影可能距離範囲の制限だけは許せない。ほんの一部のレンズでは切り替え操作なしで最短距離までピント合わせできるものもあるが撮影可能範囲の制限はつきまとう。

 16~55mmF2.8の撮影距離範囲の「マクロ」モードでは、「標準」モードの最短距離よりも短くなっている。それはイイとして、モンダイなのは「~10m」のほうである。つまりマクロモードに切り替えると10メートルの距離までしかピントが合わせられない。カメラボディ側からストップをかけているのだ(余計なコトするなっ!)。

 こんなばかなことはやめて欲しい、と富士フイルムには言い続けてきたのだが、ようやく、先日発表になった「X-A2」ボディから標準/マクロの切り替え機能がなくなった。よかった…。
 これで、すべてのXマントレンズが他のメーカーの交換レンズと同じように最短撮影距離から無限遠まで自由自在にピントが合わせられるようになったのだ。

 ただし現在のところ「X-A2」のみで可能な機能。ぜひ、ファームウエアのアップデートなどで他のXシリーズのボディでも制限解除するようにしてほしいですね。
 もしこれに興味のある人はCP+に行ったときに試してみるといいでしょう。

描写性能は一級品

富士フイルム・X-T1+XF16~55mmF2.8 R LM WR

 富士フイルムの「渾身の1本」である。
 描写性能のためには、一切の妥協は許すまじ、との決意と意気込み、意地が詰まっている感じ。Xマウントレンズの設計者たちの気持ちがひしひしと伝わってくるようなレンズだ。"もう少し肩の力を抜いて作ればいいのに…"なんて余計なことを考えてしまうほど。
 だからこそだ、大変に素晴らしい描写力をもったズームレンズに仕上がっている。




 大きい、重い、高い、という「いいレンズのための3条件」を充分に満たしているズームレンズである。このXF16~55mmは12群17枚、フィルター径77mm、最大径83.3mm×長さ106mm(広角時)、655g、市場価格は約14万円。
 ちなみに、F値も焦点距離も少し異なるが同じXマウントレンズに「XF18~55mmF2.8~4.0 R LM OIS」がある。こちらのほうは、10群14枚、フィルター径58mm、最大径65mm×長さ70.4mm(広角時)、310g、価格は約5万2千円。重さは約半分、価格にいたっては約1/3だ。
 大きさは数字で比べるよりも実際に2本を並べて見比べたほうがわかりやすいだろう。ほらこんな具合だ

 小型XF18~55mmのほうは、手ぶれ補正(OIS)を内蔵している。小型、軽量、低価格のズームレンズにしてはめちゃくちゃ良いレンズ。舞の海のようなこの小型ズームに対抗すべく ━━ つまりそれよりも明確に優れた描写性能を達成するために ━━ 大型XF16~55mmは、わずかでも描写性能をスポイルする可能性のある手ぶれ補正もあっさりと排除している。光学性能最優先のためだ。
 大きい、重い、高い、レンズ内手ぶれ補正なし。いま、これだけの"好条件"が揃っていれば「いいレンズ」ができないわけはない。

 撮影してみて、いちばん驚いたのは倍率色収差の少なさ。画面周辺部でこんなにも色収差の目立たない標準系ズームレンズは珍しい。逆光でのフレアーの少なさ、ヌケの良さも特筆すべき点だ。もちろん他の描写性能 ━━ たとえば解像力、諧調描写力など ━━ も一級で、開放F値からがしがしと、心おきなく使っていける。
 

フルサイズ判対応+開放F値F2.8+手ぶれ補正内蔵

キヤノン・EOS 5D Mk II+タムロン・SP15~30mmF2.8 Di VC USD

 各社マウント対応の交換レンズを設計し製造するとき、たとえばニコンFマウントとキヤノンEFマウントと比べたとき「どちらのマウントのレンズが難しくてやっかいか」と言えば、「ニコンだ」と、タムロンの設計者もシグマも設計者もそう答える。

 最近のニコンマウントの絞りはキヤノンマウントと同じよう電気制御方式になってきたが(厳密に言えば相当違うけれど)以前は完全メカ制御だった。絞りリングもあった。そのため、絞りを連動駆動させるためのメカニズムの設計が悩みの種だった。ニコンマウントだけ、の設計ならまだしも、キヤノンやそれ以外の機種にも同じレンズで対応しなければなない。そうそう簡単なことではないらしい。

 マウント径もキヤノンEFマウントに比べるとニコンマウントはだいぶ小さい。「キヤノンマウントだけならF1.2以上のF値のレンズを作ることはそう難しくはないが、ニコンマウントでもそれをやるにはかなり難しい…」と聞いたこともある。




 ところで、ぼくがこのタムロンの超広角ズーム15~30mmで評価している点は3つある。(1) 開放F値が大口径F2.8で、なおかつコンスタントF値(ズーミングで開放F値が変化しない)、(2) 超広角ズームで手ぶれ補正機構を内蔵(補正効果は期待以上ある)、(3) 逆光や半逆光でフレアー/ゴーストが大変に少ない(ヌケがよくクリアーな画像が得られる)。

 15~30mmに近い画角をカバーする超広角ズームレンズは他にも何本もある。しかし「フルサイズ判対応+開放F値F2.8+手ぶれ補正内蔵」という3つの条件を同時に満たしたズームレンズはどこにもないはず。おそらくこのズームレンズが世界初、唯一ではないか。
 その3つを同時に満たすことを目標にしたため、大きくて重いレンズになってしまったようだ。15~30mmの、しいて欠点を言えばこのことだろうか。初めてこのレンズを手にしたときは「うっ!」と黙ってしまったほどの圧倒的存在感だった。

 タムロンのズームレンズの多くは、レンズ外装部にプラスチックを多用しているが、中身、つまりガラスレンズなどを固定する枠(鏡枠、ズーミングするとそこのカム溝に沿ってレンズ群が前後移動する)にはアルミ金属を使っている。こちらのタムロン「16~300mmF3.5~6.3 Di II VC PZD」ズームレンズのカットモデルを見るとわかるだろうけど、白く見えている枠がアルミ金属、黒いのがプラスチック材である。

 最近の他社の傾向としては、望遠系の大型レンズを除いてプラスチック成形された枠を使うメーカーも多いが、タムロンはレンズの大きさや価格にかかわらず耐久性などを優先させて金属鏡枠にこだわっている。そのせいでレンズ本体はどうしても重くなってしまうのだろう。
 なお、言うまでもないことだが、交換レンズにとって金属枠とプラスチック枠、どちらが良いか、については一概には言い切れない。