X-T10を使ってみて、X-T1の良さを再認識

富士フイルム・X-T10+XF55~200mmF3.5~4.8 R LM OIS

 X-T10の、X-T1と比べての特長は、(1) X-T1と同じ画質クオリティ、(2) 小型軽量、(3) ストロボ内蔵、(4) 最新型のAFシステム搭載、(5) 完全AUTO撮影モードの搭載、(6) X-T1よりも約5万円ほど低価格、といったところだろうか。
 (4)の新AFシステムについては、数日後に無料配布されるX-T1用の新しいファームウエア(Ver4.0)をインストールしてバージョンアップすれば、X-T1はそっくり「最新型カメラ」に生まれ変わる。

 つまりX-T10は、画質、AF性能についてはX-T1と同等の優れた実力を備えた小型軽量の低価格な ━━ といっても約10万円ほどするのだけど ━━ カメラということになる。




 ボディ上下はマグネシウム合金。ボディの前後カバーはプラスチックだが、そのほとんどがラバーや液晶モニターで"隠されて"いるので「オール金属カバーのカメラだ」と言われても納得してしまうほど上手に仕上げている。
 プラスチック素材を採用しているため防塵防滴仕様にはなっていない。金属と違ってプラスチック素材は強い力を加えられたときなどにたわんで、わずかだが隙間が出てしまうことがある。その対策をほどこして防塵防滴仕様にするのにはコストもかかるしボディサイズも大きくなってしまうからだ。

 ファインダーの視認性はX-T1に比べると、残念ながら"だいぶ"見劣りがする。X-T10とX-T1の両機種を交互に覗き比べると違いがはっきりとわかるほどだ。X-T10からX-T1に持ち替えてファインダーを覗いたとたん、「おおっ」と声が出るほど違う。T1のそれは画面は大きいしクリアーだし、レスポンスもだいぶ高速な感じがする。
 ただし、X-T10だけを使って撮影しているぶんにはファインダーの視認性などにほとんど不満を感じない。しかしサブカメラとしてX-T1と一緒に使っていると相当の違和感があるのは事実だ。
 
 連写スピードはT10もT1も最高約8コマ/秒で同じだが、連写記録コマ数がだいぶ違う。JPEGの場合だがT1は約47コマ、対してT10は約8コマ。これはバッファメモリの量が異なるからだ。
 この記録コマ速度は最高8コマ/秒の高速シャッタースピードでの連写モードの時で、たとえば1/60秒や1/30秒のやや遅めのシャッタースピードで高速連写モード撮影をすると、T10だと20数コマ以上撮影することもできる。
 内蔵ストロボは、デザインも性能も素晴らしい。富士フイルムはコンパクトカメラもそうだが、ストロボの調光がじつにうまい。一般的に至近距離でストロボ撮影するとオーバー傾向になりがちなのだが、富士フイルムのストロボ調光はそうした失敗が大変に少なく安心して至近でのストロボ撮影ができる。

 もし、いまT1を使っていて、「サブカメラ」にもう一台ほしいなあ、と思っておられるならば、T10よりも多少ムリをしてでもT1のほうを選んだほうが、のちのち後悔しないと思いますね、老婆心ながら。

X-T1の「サブカメラ」にいいかも

富士フイルム・X-T10+XF18~135mmF3.5~5.6 R LM OIS WR

 先週末、六本木ヒルズで京都・祇園祭の山鉾の「出張展示」があった。山鉾を組み立てて、お囃子もやるというので祇園祭の中で育ったぼくとしては見に行ったわけです。
 とうぜんガッカリだったのだけど(見なければよかった…)、とくに山鉾の上でやるお囃子がいけなかった。あの、退屈な「上り囃子(各鉾町から八坂神社に向かうときのお囃子)」ばかりで、聞いていて元気がでる「戻り囃子」をやる気配がいっこうにない。あんな陰気くさいお囃子ばかりを延々とやらず、山鉾は舞台の上に固定されたままなんだから軽快な戻り囃子だけやってくれればよかったのに…。

 さて、XF16mmF1.4レンズについては、まだ話をしたいことがあるけど、それはまたということで新型X-T10について。




 X-T10は、X-T1の弟分のようなカメラ。その外観も、デジタルカメラとしての中身の基本性能も操作系などのデザインもほとんど同じ。
 そのX-T1の基本性能や操作スタイルをそっくり受け継ぎながら、ボディサイズをスリムにして操作性を少し簡便にしたのがX-T10だ。ファインダーはちょっとプアーだけど、こと描写についてはX-T1とまったく同じと考えていいだろう。X-T1にはないストロボが内蔵されたことで、X-T1ユーザーにとって最良の「サブカメラ」となるかもしれない。
 しかし、X-T10を使ってみて、今さらながらだが、やはりX-T1は"名機"だよなあ、とあらためて感心させられた。

 X-T10の操作ダイヤルやボタン、レバーなどのレイアウトなどもX-T1とほぼ同じだが「操作感」がやや異なるところもある。前後コマンドダイヤルの回転が、X-T1に比べてだいぶ軽くなっている。操作感は、このX-T10のほうがいい。
 もうひとつ、X-T10ではコマンドダイヤルにプッシュ機能が備わっている。前後ともダイヤルをプッシュすると、あらかじめ設定しおいたモードがダイレクトに呼び出せる。他のXシリーズの機種にはすでにその機能はあったのだがX-T1にはなかったのだ。たぶん、X-T1は防塵防滴仕様にしたため、機構上プッシュ機能を盛り込むことができなかったのだろう。X-T10はX-T1のような防塵防滴のカメラではないので、回転操作が軽快になったこと、プッシュ機能も盛り込むことができたのだろう。

 X-T10はまだ発売前の新型。X-T1は発売から1年以上たつ現行機種。しかし、新型X-T10を使ってみても、発売から1年以上も過ぎたX-T1がまったく色褪せた感じがしないのは、それはそれですごいことだ。
 さらに、X-T10が発売されるころにX-T1用の新しいファームウエアVer.4.0が公開されるはずで、そのバージョンアップをおこなえばX-T10に搭載された"目玉"の新しいAF機能がそっくりX-T1にも移植される。X-T1が最新型のカメラにモデルチェンジされたほどの大きなファームウエア・バージョンアップだ。他社なら「次機種」まで出し惜しみしておくような内容だと思う。こうしたことがX-T1がいつまでたっても色褪せない原因なのかもしれない。

光学性能最優先主義のレンズ

富士フイルム・X-T10+XF16mmF1.4 R WR

 XF16mmF1.4レンズは、いま新型のX-T10で撮影をしてるのだが、そのX-T10の話はまた今度ということで、とりあえずXF16mmについて。

 XFシリーズの中では高価格なレンズだが、それだけはあって、ほんと良く写るレンズだ。フレアも少なく、だからヌケがいい。ぼけ味も柔らかく自然で図々しさがない。
 11群13枚のレンズ構成で、特殊レンズとして非球面レンズが2枚、おもに倍率色収差を補正するためにEDレンズを2枚使っている。その13枚のレンズの中で、6枚固定ユニットと1枚の2つの"フォーカス群"を動かしてピント合わせをしている。近距離時に発生する収差補正のためのフローティングフォーカス方式である。
 これがレンズ構成の断面イラストで、「フォーカス群1」と「フォーカス群2」がそれにあたる。ここで注目したいのは6枚のレンズを一体固定にして動かす「フォーカス群1」のほうだ ━━ ナンだかだんだんとオタクっぽい話になってしまうけど ━━ 。




 AF測距で動かすレンズ群は小さくて軽いレンズに設計するのが一般的。軽いほどAFスピードを高速にできる。動く、止めるが軽快にスムーズに確実にできる。レンズの光学設計者はそのへんのことはよくわかっているから、多少のムリをしてでもピント合わせのためのレンズ群は軽く小さくしてAFスピードを優先させる。
 しかしそうすると、理想とする光学性能を発揮させることが大変に難しくなってくる。描写性能が、少なからず犠牲になることもある。

 富士フイルムの光学設計者は、XシリーズのカメラとXFレンズがスタートしたときから、AFスピードは"二の次"にして光学性能最優先主義を貫き通した。
 初期のXFレンズ、たとえばXF35mmF1.4などはAFレンズとしては「オキテ破り」とも言える全群繰り出し(AF測距のためにレンズ群のすべて、全群を動かす)の方式を採用している。他のXFレンズも、似たような方式(たとえば前群繰り出しなど)を採用して光学性能重視の設計にしている。
 ご存じのようにレンズ全体や多くのレンズ群をイッキに前後させてピント合わせをすれば撮影距離による収差変動がきわめて少なくなる。光学性能的には理想的なピント合わせ方式なのだが、反面、高速AFとは相容れない。富士フイルムはずっとそうしたやり方をしてきた。

 そのため、XFレンズは当初から「AFが遅い、動画撮影に使えない」とたくさんのクレームがきた。それでも、頑固な富士フイルムの光学設計者は多くのレンズ群をまとめて前後させる方式にこだわり続けた。そのほうが光学性能に優れたレンズができるからだ。しかし、いっぽうではAFスピードの不満はつのるばかり。
 そこで苦労をさせられたのが鏡枠(鏡筒)設計者だ。重いレンズ群を高速で前後させるために、さまざまな工夫をした。そのひとつが、強力なAF駆動のためのモーター(アクチュエーター)を使うことだった。パワーのあるアクチュエーターを(ときには複数個)使って重いレンズ群をぐいぐいと動かす。XFレンズの多くはそうした「チカラわざ」で光学性能最優先主義が支えられた来たわけだ。

 その「やり方」がXF16mmにも受け継がれていて、その証拠がレンズ6枚セットのフォーカシングレンズ群なのである。レンズ6枚を固定したままの重いレンズ群をパワーのあるDCモーターで動かす。さらにフローティングフォーカス方式を採用することで撮影距離が変わっても高い描写性能を保持できるようにしている。

 つまりXF16mmF1.4はそのような"こだわりレンズ"なんだということを言いたかったわけだ。

注目すべき良質なレンズだ

富士フイルム・X-T10+XF16mmF1.4 R WR

 このXF16mmF1.4は35mm判換算で24mm画角に相当する。F1.4大口径のレンズ。手ぶれ補正の機構は備わっていないので描写性能最優先型レンズとでもいえるだろうか。

 富士フイルムのXシリーズ用交換レンズには、高級タイプの「XFシリーズ」と、レンズ本数は少ないが普及タイプの「XCシリーズ」がある。XFシリーズは金属鏡筒、XCシリーズの鏡筒はプラスチック。
 XCシリーズのレンズは普及版だから、写りはそこそこか、と言えば、いやいや決してそうではない。"そこそこ以上に"よく写る。高級タイプの ━━ という言い方がいいのかどうかは別にして ━━ XFシリーズレンズのほうは、とうぜんXCレンズよりもさらに良く写る。XFレンズの性能は安定していて、こと描写性能についてはどのレンズもハズレがない。




 ぼくは長い年月、いろんな種類のレンズをたくさん使ってきたが、ここ数年、出てくるレンズの描写性能が大変に良くなってきていることに、いま感心し続けている。一部の、やや低価格のズームレンズの中には、うーむこれは…と少し残念なものもなくもないが、でも、それでも数年前の同クラスのズームレンズに比べれば格段に良くなっている。
 なかでも、最近の単焦点レンズは、どれも描写性能がほんと良くなってきている。
 というわけで、こちらのXF16mmF1.4も、じつに素晴らしい描写のレンズなのだ。

 とにかく写りがシャープ。どちらかというと線の細い描写で、コントラストもほどほどにある。だから見た目の解像感がとっても高い。「ちょっとシャープすぎるかな…」と贅沢な文句も出てきそうなぐらい解像感ばりばりの描写だ。さらに画面中心部から周辺部まで描写が均一で破綻がない。いま、もっともっと注目してもいいレンズだ。

 最短撮影距離は15センチ。実際の最短は約14センチあたりまで近づけるのだが、その時のレンズ前面から被写体までは約5センチぐらいになる。
 通常の撮影レンズは近距離になるほど収差が目立ってきて描写性能が低下する。その近距離収差を目立たなくするのは厄介でコストもかかる。そのため、至近距離をできるだけ遠くにしてラクをしようとする傾向もなくもない。

 収差を目立たなくして至近距離をより短くするにはフローティングフォーカス方式を採用することがもっとも効果的。ピント合わせのとき移動レンズ群をふたつに分けて、それぞれ最適に前後させてフォーカスする。これを近距離収差補正機構ともいう。
 このXF16mmもフローティング方式を採用することで、14~5センチの至近距離でも優れた描写性能を確保している。近距離でのぼけ味も大変にナチュラルだ。

誰もが気軽に超々望遠撮影が愉しめる

ニコン・COOLPIX P900

 P900のレンズシフト式の手ぶれ補正はとても良く効く。換算数千mm相当の超望遠画角でも気軽に手持ち撮影してもほとんどぶれない。1/100秒ぐらいのシャッタースピードでも、たぶん初心者でもだいじょうぶだと思う。とても安定したぶれ補正だ。優れもの。
 以前にここのブログで紹介した同じニコンの300mmF4 PFレンズの不安定なぶれ補正とは大違いだ。
 COOLPIX P610もそうだがこのP900も、新しい手ぶれ補正の方式を採用していることに注目したい。「DDOVR=デュアル・ディフェクト・オプティカル・VR」がそれ。ニコンは「デュアル検知光学VR」とも言っている。VRとはニコンの手ぶれ補正機構のこと。




 一般的なレンズ内手ぶれ補正の方式は、ジャイロ(角速度)センサーを利用してぶれ情報を検知して演算し、補正レンズを最適に動かしてぶれを目立たなくする。ところがP900/P610の「DDOVR」はジャイロセンサーから得た情報に加え、イメージセンサー面からダイレクトにぶれ情報(ぶれ量のベクトル)も検出する。2種類のぶれ情報を合わせて総合的に演算し、より効果的なぶれ補正をおこなうというもの。

 このデュアル検知によりP900/P610ではCIPA準拠で補正効果5段(350mm相当の画角の場合)が得られるという。
 DDOVRは将来、レンズ交換式カメラにも応用ができるかもしれず、 そうなれば、レンズ内ぶれ補正方式のまま平行ぶれ補正や(画像処理の助けをかりれば)回転ぶれの補正もできるかもしれない ━━ ぼくの楽観的な推測だけど。
 ファインダーを覗いている時(ライブビュー時)にも手ぶれ補正がリアルタイムに働いていて、そのおかげで画面がぴたっと止まったように見え、フレーミングもしやすい。このライブビュー時の手ぶれ補正と、実際にシャッターボタンを押し込んだ時の手ぶれ補正とはアルゴリズムが異なることは知っていると思うが、P900はそのライブビュー時の補正アルゴリズムもとても良くてきている。

 だから両手の腕を伸ばしてカメラを構え、バリアングル式の背面液晶モニターを見ながらの撮影はできなくもないが、フレーミングを保持し続けることが難しくあまりおすすめはしない。手持ちで超望遠撮影をするときは、カメラをしっかりと額にくっつけてEVFを覗くようにカメラを構えたほうがいい。
 ただし最高で約7コマ/秒の高速連写は可能だが超望遠にズームしての手持ち+高速連写は不可能とあきらめたほうがいい。連写中に画面があちこちに跳ね飛んで一定のフレーミングを保つことができないからだ(ま、一度試してみればすぐにわかることだけど)。連写するなら三脚にカメラを固定して撮影するしかない。
 なお、P610もP900も、露出オーバー傾向が強い。とくに、やや逆光ぎみのシーンで望遠にズームすると甚だしくオーバー露出になることがある。マイナス露出補正をして撮影したほうがいい。

 P900を使えば、わたしたちがいままで到底、写すこともできなかったシーンや被写体をじつに手軽に写せる、かも。写真の新しい表現領域を切り拓いてくれたという意味で素晴らしいカメラだ。

8000mm相当の超々望遠撮影ができるコンパクトカメラ

ニコン・COOLPIX P900

 超々広角の魚眼レンズの話を続けたあとの今回は、一転、最大8000mm相当の超々望遠画角が手持ち撮影できるカメラの話。ニコンのP900である。

 それを使って撮ったのが下の写真だが、約3000mm相当にズーミングして手持ちで撮影。東横線の都立大学駅のホームから自由が丘方面に向かって走る電車を写したのだが、3000mmもの超望遠になると動くものを狙い通りのフレーミングで撮ることは難しい。三脚を使うなどすればもう少し簡単だったろうと思う。
 写真がなんだかモヤモヤして見えるのは、デジタルズームにしたせいもあるが空気中の水蒸気の"ゆらぎ"の影響が大きい。




 P900は一眼レフカメラふうのスタイリングをした高倍率ズーム内蔵一体型デジタルカメラである。内蔵ズームレンズは24~2000mm相当の光学83倍。デジタルズームを最大限にすれば約8000mm相当の超望遠となる。そこそこの常識的なサイズで写真を見る限り画質にそれほどの不満はないと思う。ただし過度な期待をしてはいけない。とにもかくにも「写る、写せる」ことを評価したい。

 カメラボディはめちゃくちゃデカい。便宜上の分類とはいえ"コンパクトカメラ"とはとても言い難い。
 並みの「レンズ交換式一眼レフカメラ」よりもずっと大きい。内蔵ズームを2000mm相当までズーミングするとレンズがぐーんと伸びて迫力は満点。ほら、こんな具合だ

 イメージセンサーは1605万画素の1/2.3型CMOS。レンズのF値はF2.8~6.5と意外と明るい。最短撮影距離は通常撮影モードのとき、24mm相当の広角端で約50センチ、2000mm相当の望遠端で約5メートル(実際はもう少し短い)。マクロモードを選ぶと広角端で約1センチまでAFで撮影可能となる。
 ISO感度はISO100~6400まで。Hi1としてISO12800も選べるがモノクロ(白黒)画像専用になる。Wi-Fi機能あり、NFC対応、GPSによる位置情報記録可能、などなどてんこ盛り。
 フラッシュも内蔵している(当たり前か)。しかしクリップオンの外部ストロボはホットシュー(アクセサリーシュー)がないので使用不可。ケチらずに、ホットシューぐらい付けといてくれよ。

 ほぼ同時に発売された24~1440mm相当ズーム内蔵のCOOLPIX P610も試したみた。気軽に超望遠撮影を愉しみたいなら、より小さくて軽くて、そしてP900の約半額のP610のほうがおすすめだが、でもしかし、どうせ買うなら少しぐらいデカくても超々望遠撮影ができるカメラのほうがいいじゃないかというご意見もわからぬではない。描写は、こころなしかデカいP600のほうが良かったかな、という感じでありました。
 P600の使い勝手の印象については次回に。

よくやったぞ、オリンパスの手ぶれ補正担当者

オリンパス・OM-D E-M5 MarkII+M.ZUIKO DIGITAL ED 8mmF1.8 Fisheye

 くどいようだけど、もう一度、オリンパスの魚眼8mmProレンズについて。

 この魚眼8mmはM.ZUIKO DIGITALの高級Proシリーズのレンズ。そのProシリーズにラインナップされているレンズは現在、7~14mmF2.8、12~40mmF2.8、40~150mmF2.8の3本のズームと、そしてこの8mmF1.8単焦点レンズの計4本である。

 3本のズームレンズは、ピントリングを前後にスライドすることでAF/MFの切り替えがワンタッチでおこなえる。ところが、魚眼8mmだけにワンタッチ切り替えの機構がない。AF/MFの切り替えはメニュー画面で設定しなければならない。ワンタッチ切り替えの機構を採用することはそれほど難しいことではないと思われるのに、そして、Proシリーズのレンズなのに、そこがちょっと残念。




 魚眼レンズは約180度近い超広角画角をワンショットで写せる良さはあるが、反面、直線が強く樽型に大きく歪んで写ってしまう。「その歪みこそが魚眼レンズのイイところなんだ」という人もいるだろうが、いっぽうで「ソコが嫌い」という人もいる。
 歪みを画像処理で補正して直線に近づければ、通常の超広角レンズで撮影したような"自然な描写"の写真に仕上げることもできるはず。

 いまオリンパスのOM-D E-M1やE-M5 MarkIIには、建物などの台形歪みを画像処理でリアルタイムに修正しながら撮影できる機能が備わっている。「デジタルシフト撮影」モードがそれだ。
 その画像処理モードの"原理"を応用して魚眼8mmの樽型歪みをリアルタイムで補正できればオモシロイぞ、と思う。オリンパスはぜひ検討してほしい(ニコンにはCaptureNXを使ってそうした画像補正がイッパツでできる機能がすでにある)。

 超広角レンズになるほど手ぶれ補正を最適におこなうのは大変に難しくなる。とくに1~2メートルあたりからの近距離になると、ぶれ補正はさらに厄介になる。角度ぶれだけでなく、回転ぶれやシフトぶれなどが複雑に絡み合って、それぞれを最適に補正しないといけないからだ。
 現在、回転ぶれの補正はレンズ内ぶれ補正方式では対応できない。センサーシフト方式の独壇場だ。その補正効果がてきめんにあらわれたのが、E-M5 MarkIIと魚眼8mmProの組み合わせだった。角度ぶれ、回転ぶれ、シフトぶれなどの補正をじつにバランスよく制御して補正している。

 なんと、2秒!という超スローシャッターで手持ち撮影で、ぶれのほとんど目立たない写真が得られたのにはびっくりだった。確率は30%ほどだったが、でも2秒手持ち撮影、なんて夢のようだ。1秒なら確率は70%、1/2秒だったら鼻歌ものでほぼ100%の確率でぶれ補正できる。
 このぶれ補正の制御アルゴリズムを設計したオリンパスの開発担当者に、大きな拍手と賞を送りたいと思うぞ。

魚眼レンズ、使いこなしの3つのヒント

オリンパス・OM-D E-M5 MarkII+M.ZUIKO DIGITAL ED 8mmF1.8 Fisheye

 魚眼レンズは直線歪み(樽型歪み)とパースペクティブ歪み(ディフォルメ)が大きく出てくる。非常に広い範囲が写せるのが長所なのだが、像が強烈に歪むのが欠点。このことを充分に理解した上で写真表現にどのように生かすかが使いこなしの最大のポイントだろう。

 魚眼レンズを使いこなすヒントのひとつは撮影距離。撮影シーンによってはほんの半歩1歩、近づくか離れるかするだけで像の歪みがだいぶ違ってくることがある。
 もうひとつはカメラの傾き。魚眼レンズは画面の縦と横の中心線はまったく歪みがなく直線になる。狙った直線部分を歪ませずに写したい時は ━━ たとえば水平線など ━━ そこが画面中心になるようにフレーミングすれば真っ直ぐに写すことができる。




 ぼけの具合を作画にどのようにに生かすかも使いこなしのヒントのひとつ。超々広角画角の魚眼レンズはぼけの少ないパーンフォーカス描写が大きな特徴でもある。しかし、ぼけの大きさは撮影距離によって大きく変化する。離れれば容易にパーンフォーカスになるが、撮影距離を短くすればするほどぼけが目立ってくる。魚眼レンズは通常レンズよりも、ずっと至近まで近づけるものが多い。この魚眼8mmProもそうだ。
 そこに「F1.8」というF値を加えてやれば、とても超広角画角のレンズだとは思えないほどのぼけのある写真に仕上げることができるし、そのとき魚眼レンズ特有の周辺部の歪みもぼけて目立たなくできる。

 オリンパスはこの魚眼8mmProを、星空撮影と水中撮影に最適なレンズであるとさかんにアピールしている。
 その理由は、点像が流れずに画面周辺部まで「点が点に」写る優れた特性を持っていることが星座などの撮影に適しているからというわけ。さらにF1.8の大口径F値を活用すれば、それほどISO感度を上げなくても比較的速いシャッタースピードで写せる利点もある。
 明るいF値は同じ理由で暗い水中での撮影にも大きなメリットになる。水中では地上に比べて画角が狭く写ってしまうので超広角画角のレンズが好まれるからだ。さらに水中シーンでは直線の被写体がほとんどなく歪みを気にせずに撮れるメリットもある。

 魚眼レンズの使いこなしは難しい。とくに通常レンズで撮影するような被写体やシーン相手ではベテランでも難儀する。強い歪みが目立ちすぎて、それに違和感を感じる人も多い。特殊なレンズだとココロして使うのがいい。

 というわけで、星空撮影や水中撮影をする人たちからオリンパスに"強い、強い、強い要望"があってProシリーズとして「初」の単焦点レンズが、この魚眼8mmProになったというのが、どうもほんとうの理由のようだ。星空や水中の撮影を積極的にする人は、OM-DやPENユーザー全体の中ではきわめて少数派だろうけど、しかし、そうした少数派にもしっかりと気を配るというのもオリンパスらしいところじゃないか(やや気を配り過ぎるきらいはあるけど)。

Proシリーズの初の単焦点レンズ

オリンパス・OM-D E-M5 MarkII+M.ZUIKO DIGITAL ED 8mmF1.8 Fisheye

 M.ZUIKO DIGITALレンズの最高級ブランドである「Proシリーズ」としては、初めての、そして現在のところ唯一の単焦点レンズである。魚眼レンズとしては秀逸である。あまたある魚眼レンズの中で、描写性能は文句なしのトップクラスのレンズだ。
 しかし、初の単焦点Proレンズがこうした特殊な魚眼レンズだったというのが奇妙だ。もっと一般的な画角のレンズを期待していた人も多かっただろう。たぶんオリンパスも、多くのユーザーのそうした気持ちは承知の上だろうが、でも、なぜ、あえて魚眼レンズだったのだろうか。そのへんがぼくにも、イマイチよくわからない。




 魚眼レンズ(フィッシュアイレンズ)には2つのタイプがある。ひとつは、四角い撮影画面にほぼ内接するように180度またはそれ以上の超々広角範囲が円形に写るタイプ。円形の画像の周囲は露光されないから真っ黒になる。これを全周(円周)魚眼レンズとか、丸く宙に浮いたように写ることからシャボン玉魚眼レンズともいう人もいる(…ぼくのことだ)。
 もうひとつは画面の四隅まで隙間なくいっぱいに写るタイプ。同じく超々広角画角の強い直線歪みのある画像になる。これを対角線魚眼レンズという。オリンパスの魚眼8mmProは、その対角線魚眼レンズである。

 このオリンパスの魚眼8mmProレンズには特徴が3つある。
 1つめ。開放F値がF1.8という大口径レンズであること。従来の魚眼レンズではF2.8がもっとも明るいF値だったがそれよりも1段ぶん以上明るいレンズということになる。
 2つめ。画面中心部から周辺部まで描写が均一で優れていること。7~14mmF2.8Proレンズと同じく、画面周辺部でも点像が流れずに点が点に写るという実力を備えている。F1.8の開放絞り値での描写性も大変に高い。

 3つめは、最短撮影距離が極めて短く、レンズ前面から数センチまで近づいて撮影が可能であること。カタログのスペック表を見ると最短撮影距離は撮像面から12センチとある。そのときレンズ前面からは約2.5センチの近接となる。ところが実際にはレンズ前面から約1.5センチほど近づいてもAFでピントが合わせられる。実質的には最短撮影距離は11センチぐらいと考えておいてもよいだろう。
 こうした至近撮影でF1.8絞り値で撮影すれば、魚眼レンズとはとてもとても思えないようなぼけを生かした画像になる。

オリンパスのオンラインショップは受注販売を拒否

オリンパス・OM-D E-M1+M.ZUIKO DIGITAL ED 7~14mmF2.8 Pro

 さきの日曜日(5月31日)、軽井沢で毎年恒例の「ロードスター軽井沢ミーティング」がおこなわれた。ロードスターはマツダのライトウエイト・スポーツカー。そのミーティングはかれこれ20年ほど前から毎年、マツダとは関係のないロードスター好きメンバーが中心になって開催している。ぼくはロードスター乗りではないが、そのクルマが好きなだけでずっと参加を続けている。今年は過去最高の1300台以上のロードスター(NA、NB、NC、そして新型ND)が集まった。1車種だけがこんなにもたくさん集まるイベントは世界中どこにもない。
 その参加者たちの"一部"が集まって記念撮影。
 とても愉しいイベントだったよ、と、ただそれだけの話でした。




 さて、この7~14mmF2.8ズームは最高級「Pro」シリーズのレンズ。12~40mmF2.8、40~150mmF2.8に続く3本目のProズームレンズでもある。
 今回、あたらめて3本のProズームを使ってみて ━━ ロードスター軽井沢ミーティングに持っていった ━━ ちょっと気になったのはレンズの解像感というかコントラストの様子が、3本のレンズそれぞれで少し印象が違うことだった。
 40~150mmF2.8 Proレンズはややハイコントラストぎみで、鋭利な刃物でスパッと切るような、誰が見てもうわっ凄くシャープだっと感じるような「わかりやすいシャープさ」がある。そういう意味で言えば、12~40mmF2.8Proレンズは解像力は充分にあるのだが、それほどコントラストは高くなく控え目な線の細いシャープネス。「わかりにくいシャープさ」だ。

 では、7~14mmF2.8Proの解像感はどうかと言えば、40~150mmと12~40mmのちょうど中間のコントラストの印象。40~150mmのような「バリバリ感」はなく、12~40mmのような「なよなよ感」もなく、上品で好感の持てるコントラストで、シャープ感もいい感じ。
 と、まあ抽象的な言い方でありますが、ぼくがそんな印象を持った。3本のProレンズの中では、7~14mmがいちばん好きな描写だ。しかし、レンズ設計上、難しいことだろうけど、3本のレンズとも似たコントラストの傾向にしてくれてれば嬉しかったなあ。

 それはともかく、ほんと、優れた描写の超広角ズームレンズだと思う。逆光時に運が悪ければゴースト/フレアが目立つことが欠点といえば言えるかもしれないが、そのほかには、これといった欠点が見あたらない。おすすめ度95点のレンズ。

 ところが、この7~14mmを手に入れようとしても、受注販売なのでいま欲しいからといってすぐには買えない。いったん「予約」が必要。
 オリンパスのオンラインショップを覗いてみると、いま、このレンズは予約ができなくなっている。受注販売は小売店に行って予約する。そのお店は、いつレンズが入荷するかわからないけれど、とにかく予約は受け付けてくれる。ところが、本家本元のオリンパスのオンラインショップでは、第一歩の「予約」を拒否している(以前は受付可能だったみたい)。これじゃあ「受注販売」の意味がないじゃないか、と思う。いったいどういうことなんだろうねえ。

「受注販売」のレンズ

オリンパス・OM-D E-M1+M.ZUIKO DIGITAL ED 7~14mmF2.8 Pro

 ぼくは、まだかまだかと発売されるのを待っていた期待の超広角ズームレンズだった。ただし発売は少し先の6月下旬の予定。

 このズームレンズの実販価格はおおよそ15万円ほど。それほど高い価格のレンズでもないのに、しかし、こちらのズームレンズは「受注販売」となっている。受注生産ではなく受注販売。特殊なカメラやレンズで受注生産はなくもないが、受注販売なんてあまり聞いたことがない。受注生産は注文を受けて注文数だけ製造するスタイル。対して受注販売では、継続的に一定量の製造はおこなわれているようだ。

 お店に「これ欲しい」と注文をすると、それを受けてお店がオリンパスに伝える。オリンパスに在庫があればお店を経由して注文した人にわたる。注文してから数日かかることもあるかもしれない。もし在庫がなければ完成した製品できあがってくるまで、お店も注文した人も、しばらく待ってなくてはならない。運が悪ければ数週間待たなくてはならない。
 とにかく、お店に行って「コレ頂戴」と言ってすぐに買って持って帰ることができないレンズであるようだ。




 そんな厄介な「手続き」をしてまで買うべきレンズなのだろうか、と問われれば「うん」とぼくは自信を持って返事ができる。とにかくすごく良く写る超広角ズームレンズなのである。期待を裏切らないレンズと言っていいだろう。
 F2.8の開放絞り値で、7mmで写しても14mmで写してもほとんど不満も感じないほどの高い描写力。とくに画面周辺部の写りの良さには感心した。コマ収差や非点収差といった超広角系レンズではとくに画面端っこで目立ってくる悪玉収差が ━━ 収差に悪玉も善玉もないが ━━ ほんとに少ない。

 しいて欠点を言うとすれば、逆光シーンで、特定の条件にハマるとゴーストが目立つこと。一緒にフレアも出てくる。しかし逆光シーンで撮影しても、運がよければゴーストもフレアもほとんど目立たないこともあるし、順光ならクリアーで透明感のある写真が撮れる。逆光で撮影するときだけ、ちょっと気をつけてフレーミングすればいい。
 でもねぇ、ゴーストは、あの光が反射してできる連続した大小の"玉"こそが、光の強さが表現できて逆光らしく、そこがイイのだ好きなのだ、という人もいるから、いちがいにゴーストはイケナイものだ、欠点だ、とは言えない(困ったもんだ…)。

 画面周辺でも点が流れずに、ぼけずに点としてきちんと写る。これが7~14mmズームの最大の特長だろう。超広角ズームレンズの中で、画面端でも「点が点に写る」実力を持ったレンズはそれほど多くはない。歪曲収差は画像処理でうまく処理して補正しているからまったく気にならない。