カシオのZR3000とZR1600

カシオ・EXILIM EX-ZR3000




 カシオのコンパクトデジタルカメラには……と、いまそこまで書いてハタと気づいたが、カシオにはレンズ固定式のコンパクトカメラしかないのである。あってもよさそうなメーカーなのに、ない。カシオは「レンズ交換式カメラは作らない主義」なんだぞうだが、ぼくとしては、ぜひ、カシオにこそ、いまこそ、レンズ交換式のデジタルカメラを作ってみてほしいと熱望しているのだけど、無理だろうなあ、中山さんというカメラ事業のトップがいるんだけど、とってもセンスのいい人だけどガンコだからなあ。

 いや、それは、いまどうでもいいとして、カシオのカメラは「プレミアムハイスピード」や「ハイスピード」、「スタンダード」、「ライフスタイル」という4つのグループにカテゴライズされている。それぞれのグループにはたくさんの機種がラインナップされている(ライフスタイル・グループだけがいまのところEX-FR10のみ1機種だけど)。

 さて、ここで紹介するEX-ZR3000は、カシオのコンパクトカメラの中核であるハイスピードグループのトップモデルになる。かつ最新モデルで発売は今年の7月。
 カシオが積極的にアピールしているZR3000の特徴は、BluetoothスマートとWi-Fiを使って撮影した画像をスマートフォンなどに自動転送できること。ところが、それは今年の春に発売されたEX-ZR1600でも同じだ。ZR3000もZR1600も、いっけんするとほとんど同じに見える。この写真の上がZR3000、下がZR1600。サイズは同じ、重さも同じ(1、2mm、1、2gの違いはあるだろうけど)。なぜ、カシオはそんなに見た目が同じようなカメラをラインナップさせているのだろうか。

 ZR1600は1610万画素の裏面照射型CMOS搭載で、内蔵レンズは25~450mm相当の18倍ズーム。いっぽうのZR3000は1210万画素で同じく裏面照射型CMOSで、レンズは25~300mmの12倍ズームである。繰り返すがボディサイズも重さも、カメラのデザインもスタイリングも同じ。
 このように、一部だけどスペック比較をしてみるとZR1600のほうがイイように思える。ところがどっこい、こと描写性能について言えば文句なしにZR3000のほうがイイ。クラスも価格もZR3000のほうが上。
 では、いったいナニが違うのか。
 使用しているイメージセンサーの「サイズ」が違うのである。ZR1600は1/2.3型だが、ZR3000は1/1.7型なのである。レンズも違うし、写りもぜんぜん違う。ZR3000の描写は、その上のクラスのEX-100やEX-10に匹敵、あるいはそれ以上の素晴らしい写りをする。

 いまのコンパクトカメラのセンサーの主流は1/2.3型で、1/1.7型センサー使用のカメラは珍しく、2/3型となるともっと数は少なくなる。そもそもカシオのコンパクトは1/2.3型が圧倒的に多く、1/1.7型は高級タイプの「プレミアムハイスピード」のグループに使用されているに過ぎない(ほんの一部、隠れ機種に1/1.7型が使われているが、そのハナシはまたの機会に)。
 ZR3000の「ハイスピード」のグループでは(なんと15種類もあるが)、唯一、ZR3000だけが1/1.7型センサーなのだ。

 ところが、カシオはそのこと ━━ ZR3000のセンサーに贅沢な大型を使っていること、とっても良く写ること、高感度の描写がいいこと ━━ について、まったく、いっさい、宣伝もアピールも、セールストークもなにもしない。ホームページの商品紹介でも、そのことにはまったく触れていない。いったい、どうしてなんだろうか…なにか、隠し事でも、大人の事情でもあるのだろうか。


クアッド・リニアモーター方式

富士フイルム・X-T1+XF90mmF2 R LM WR




 当初、XFレンズはピント合わせの方式に、全体(全群)繰り出しや前群繰り出しというAF対応レンズでは珍しくなった方式を「愚直に」採用していた。何度も繰り返して言っているが、優れたレンズ性能を得るためだ。
 全体繰り出しや全群繰り出し方式のピント合わせは光学性能には大きなメリットがあるのだが、いっぽうでAFスピードが遅くなるというデメリットもある。富士フイルムとしては、AFが少しぐらい遅くても光学性能が良ければユーザーは納得してくれるだろう、とのヨミがあったのだろう。ところが、そのフジの予想に反して「AFが遅いぞ、素早くピントが合わないぞ」とAFスピードの文句ばかりを言われ続けた。レンズの描写性能を褒めてくれるユーザーはごくごく限られた少数の「ホンモノがわかっている」人たちだった。

 ぼくの持論だけど、AFはスピードじゃない、正しく確実にピントが合うことのほうが大事なのだ、と。しかし、そう考えていない人が(意外と)多い。
 そんな人たちから、頭ごなしにAFが遅いっ、と言われ続けて富士フイルムのレンズ設計陣はすっかりトラウマになってしまったようだ。でも、そうは言われても、描写性能に満足できないようなレンズを設計することはできるだけ避けたい。そこでフジが採用した方法が、強力なモーター(AF駆動用のアクチュエータ)を使ってぐいぐいと力まかせにレンズを前後させた。
 とにかくフジがやりたくなかったのは(ぼくの想像だけど)、高速AFのためだけにAF光学系を小さくしただけの"安易でありふれた"インナーフォーカス方式の採用だったのではないか。

 AFスピードを少しでも速くするために、インナーフォーカス式の光学設計を取り入れたXFレンズも最近ではいくつか出てきているが、しかし駆動するAF光学系は大きくて重いレンズ構成にこだわっている。軽く小さいレンズ群にしてしまうと、納得のできる光学性能が得られないと考えているからだ。
 重くて大きなレンズ群を高速で動かそうとすればパワーのあるモーターが必要となる。強力なモーターは大きくて嵩張る。でも、AFスピードアップのためには仕方ない…。

 とかなんとかの、そんな事情があってのXF90mmF2レンズなのである。
 この90mmF2レンズはインナーフォーカス式だが、AF光学系は2枚貼り合わせだが大型のレンズを使っている。だから重い。それをスピーディーに動かすためにモーターを4個も使っている。4個のモーターはリニアモーターの一種であるボイスコイルモーター。これが富士フイルムが言うところの「クアッド・リニアモーター」方式である。
 この写真を見てみるといいだろう。左から、モーター2個の「ツイン(デュアル)・リニアモーター」、真ん中がモーター3個の「トリプル・リニアモーター」、そしてXF90mmF2レンズに採用されている4個モーターの「クワッド・リニアモーター」の方式である。

 よく見比べるとわかると思うが、リニアモーターのサイズがツインやトリプルに使われているものと比べて90mmのそれがだいぶ小さい。ボイスコイルモーターのコイルの巻き方を工夫してコンパクトにしたそうだ。だからそれほどレンズ鏡筒が太くせずにすんだわけだ。
 XF90mmを使って至近距離の60センチから無限遠までピント合わせしてみると、「XFレンズじゃないみたい」と思うほどにAFが高速になっている。これでXFレンズはAFが遅いなんて、言わせないぞ、という富士フイルムのレンズ開発者たちの声が聞こえてくるようだった。

 これでXF90mmF2 R LM WRレンズの話はおしまい。


敢えて手ぶれ補正を入れなかったレンズ

富士フイルム・X-T1+XF90mmF2 R LM WR




 90mmF2レンズには手ぶれ補正の機構は備わっていない。手ぶれ補正なしのレンズ。富士フイルムのXシリーズの手ぶれ補正はレンズ内方式。レンズ群の中の一部群を動かしてぶれを補正する方式である。OIS。
 ところがXFレンズの中で単焦点レンズに、そのOISが内蔵されているものは1本もない。すべてOISなし、手ぶれ補正なしである。いっぽうXFズームレンズのほうは、ほぼすべてのズームにOISを内蔵してる(ただ1本、XF16~55mmF2.8のみが非OIS)。

 XF単焦点レンズはすべてがF2.8よりも明るい開放F値である。一般的に言って大口径レンズほど手ぶれ補正の機構を組み込むことが難しくなるといわれている。理由はいくつかあるのだが、ひとつは補正光学系が大きく重くなるので効果的に動かすことが難しいこと。もうひとつは光学性能に影響するところが大きいこと。
 現在の多くの交換レンズはAF対応が必須条件になっている。高速にAFができるように光学設計しなければならない。なおかつ、最近の高画素カメラに対応するために高い描写性能が要求される。こうした難問をクリアしていくために光学設計者は大変な苦労をしている。さらに、それに追加してぶれ補正光学系を組み込んで、描写性能を落とすな、AEスピードをもっと速くしろ、と無理難題を背負いながらレンズの設計がおこなわれている。

 そもそも、レンズ内手ぶれ補正の方式は大きなリスクがある。構成レンズ群の中の一部のレンズ群とはいえ、レンズを構成する光学系を「動かす」わけだ。それもAFレンズ群のように光軸に沿って前後させるのではなく、光軸と垂直方向にずらす。
 わずかでも光軸がずれれば、とうぜん偏心が起こる。むろん、偏心しても影響が少なくなるようにレンズ設計をするのだろうけれど(そこが設計者のウデの見せ所であり苦労の種)、しかし偏心することに違いはなく、ほんのわずかだと言っても、偏心すればレンズ性能を低下させることにもなりかねない。

 「レンズの光学性能を最優先させるために、もし、AFか手ぶれか、どちらかやめていいよ、と言われたらどっちを捨てますか?」と、以前、いくつかのメーカーのレンズ設計者に同じ質問をしたことがある。
 驚いたことに、設計者のほとんどが間髪をいれず即答した。「もちろん、手ぶれ補正をやめたい」、と。うーん、どっちかなあ、なんて考える人は誰一人いなかった。
 「じゃあ、AFも手ぶれもいらない、と言われたら、どう?」とぼくは重ねてある設計者に聞いたら、その答えが実におもしろかった。「AFも手ぶれもいらない、で、いまのレンズ設計技術を持ってして完全MFレンズを作らしてくれれば、そりゃあ、凄いレンズを作ってみせますよ」と。「そのうえ、コストアップはそこそこ許す、少しぐらい重くて大きくてもよいぞ、なんて言われれば、夢のようなレンズができますよ」とも言っていた。

 えーっと、つまり、ぼくがナニを言いたかったかというと、XF90mmに手ぶれ補正(OIS)を組み込まなかったのは、光学性能を最優先にしたからだということなのだ。
 こうしたことは、別段、XF90mmレンズやXF単焦点レンズに限ったことではない。他のメーカーでも、なによりも画質を優先させるレンズには手ぶれ補正を組み込まない、そんなレンズが多くなってきている。カメラが高画素化してきて桁違いの解像描写力が求められるようになってきたからだ。
 ここで誤解されると困るのだが、手ぶれ補正を組み込んでも高い光学性能を充分に保つように、猛烈にがんばって、めちゃくちゃ苦労をしてレンズ設計しているところもあるのだ。手ぶれ補正を組み込んでも、光学性能をそれほど低下させずに設計する方策はなくもない。だから一概に、手ぶれ補正内蔵レンズは性能に期待できない、とは言い切れない。

 なんだか脈絡のない、ばらばらの話になってしまった。すまん。次はもう少し「読みやすい」ブログにしますからね。

至近距離での優れた描写性能

富士フイルム・X-T1+XF90mmF2 R LM WR



 前回ブログの続きになるが、この90mmF2の最短は60センチ。135mm相当画角のレンズの至近としてはトップクラスではないか。感心したのはその至近距離の短さだけでなく、近距離での描写の良さであった。遠景から中距離、そして至近までピントを合わせる距離で描写性能が変化しない。ぼけ味もそうだが、一定で安定していて、とてもナチュラル。
 そもそも、一般的にいってレンズは無限遠を基準にして、そこでベストの描写をするように設計している。MTF曲線図だって無限遠での(計算上の)データーだ。撮影距離が変われば描写性能も変化する。これまた一般的にだけど、近距離になるほど描写性能は落ちてくる。

 その近距離での描写性能を低下させずに安定した写りにするための方法のひとつが「全体繰り出し」や「前群繰り出し」のピント合わせの方式。
 ただし、この方法はピント合わせの時に重くて大きなレンズ群をカタマリでぐいぐいと前後させなければならず、AF時代になってめっきり少なくなった。小さくて軽いレンズ群をすいすい動かしてピント合わせをするインナーフォーカス(またはリアフォーカス)の方式が採用されるようになって、レンズ性能は、一時、がっくりと低下してしまった。AF対応のために描写性能が犠牲になったわけだ。
 しかし、近年、レンズの光線追跡のシミュレーションソフトなどが飛躍的に良くなったり、優れた光学レンズが開発されるなどして、インナーフォーカス方式でも撮影距離にかかわらず高い描写性能を持つレンズもたくさんでてきている。

 ところで、富士フイルムのXFレンズがスタートしたころ、AFレンズであるにもかかわらず「愚直に」全体繰り出しや前群繰り出しの方式のレンズを出してきた。描写性能を最優先したためだ。ぼくは、凄いチカラわざのレンズだなあ、と感心したおぼえがある。重いレンズ群を強力なモーターでぐいぐい動かそうとしたが、そうそうスピードが出せるわけはない。そのせいで、当初のXFレンズは「AFスピードが遅いっ」とあちこちから叩かれまくった。
 XFレンズは高速AFスピードよりも、あえて描写性能を優先させたのだ。それが富士フイルムのレンズ開発のフィロソフィー。
 ピント合わせの方式をちょっと見ればAFスピードが遅いことはたちどころにわかるはずなのに、AFが遅いっ、と文句を言う。じゃあ聞くが、AFスピードさえ速ければ写りはそこそこでもいいのか、と。

 XF90mmレンズから話がどんどん離れていくが、まあ、いいか。
 無限遠から至近まで安定して優れた描写のレンズにするにはもうひとつ方法がある。フローティング(近距離補正)機構を採用することだ。インナーフォーカスでのピント合わせは、1枚レンズまたは数枚のレンズを貼り合わせて1つの群にしてそれを前後させる。ところがフローティング方式は、2つのレンズ群を撮影距離に応じて、近づけたり離したり複雑な「間合い」を保ちながらピント合わせをする。こうすることで近距離、至近距離で目立ってくる収差の補正を適正におこなって優れた描写性能を保つというものだ。
 うーむ、フローティング方式の話をすれば、あれもこれもと止めどがなくなるので(いつものことだけど)このへんでいったんやめる。

 じつは、XF90mmを使って至近距離で撮影したとき、予想していた以上に描写が良かったため、ぼくはてっきりフローティング方式のレンズだと思い込んだ。ところが、じつはそうではなくて、ごくごく一般的なインナーフォーカス方式だった。ちょっと不思議な感じだった。
 このへんの、XF90mmレンズの「良く写る謎」については、もう少し探ってみようかと思う。

上品な描写のレンズ

富士フイルム・X-T1+XF90mmF2 R LM WR

 約1ヶ月の夏休みを終えたら東京はすっかり涼しくなりました。




 フジのXシリーズ用交換レンズは、どれもこれも素晴らしいレンズばかりでハズレがない。発表されたり発売されたXFレンズを使うたびに、いつも感心させられる。
 Xシリーズ用の交換レンズには「XF」と「XC」の2つのラインがあるがレンズ性能なら文句なしに良いのはXFレンズのほうである。いや、この言い方は誤解を招く。XCレンズの性能が悪いという意味ではない。XCレンズはプラスチックの鏡筒仕上げだったりして、より低価格を狙ったレンズなのだが、その写りは十分に合格点だと思う。いわゆるコストパフォーマンスに優れたレンズ。価格のワリにはとっても良く写る。でありますが、Xシリーズの交換レンズをせっかく買うのであればXFレンズのほうがゼッタイに良い、と、そういう意味だ。

 最近はどこのメーカーのレンズも性能が良くなってきている。魅力的なレンズも多くなっている。それは富士フイルムだけに限らないことだけど、でもそうした中で、フジのXFレンズシリーズだけが「アタマ1つか2つ」飛び抜けている感じがする。
 いまXFレンズは単焦点レンズをメインに15本ほどラインナップされているが(XCレンズはズームのみ3本)、単焦点レンズの良さは言うに及ばずズームレンズ(5本)も素晴らしい実力を持っている。とにかく、ぼくはフジのXFレンズのどれもが大好きで、だから、その15本のすべてがわがレンズ棚の上に並んでいる。
 …いやあ、イカンなあ、フジのXFレンズについてあれこれ話をし始めればきりがなくなるので(裏話やエピソードがいっぱいあるのだ)、それはやめて、XFレンズの最新型であるXF90mmF2の話に移る。

 この90mmも素晴らしいレンズだ。描写がとても上品。ピントの合ったところは切れ味鋭い感じだが、ぼけた部分はナチュラルでふんわりと柔らかく、そのコンビネーションが画像を上品に仕上げている。
 135mmに相当する画角で、オーソドックスな中望遠レンズになる。最短撮影距離が60センチと短いこともこのレンズの魅力のひとつ。レンズ全長が約10センチだから、レンズ先端から被写体まで50センチそこそこまで近づける。135mm相当の望遠画角だから(インナーフォーカスなので近接時の実焦点距離はすこし短くはなるが)はがきの半分ぐらいサイズなら画面いっぱいにクローズアップができる。撮影していてほとんどストレスを感じないレンズでもある。