小姑が居るメーカーと、小姑の居ないメーカー

ソニー・α7R II + Distagon T* FE35mmF1.4




 α7R IIはα7 IIと同じセンサーシフト方式の手ぶれ補正機構を採用している。センサーを宙に浮かせたフローティング方式なので5軸方向の手ぶれに対応できる。上下左右の角度ぶれが2軸、上下左右の平行ぶれが2軸、そして回転ぶれが1軸で、計5軸方向の手ぶれを補正することができるというもの。
 CIPA準拠で「4.5段」ぶんの補正効果があるという。α7 IIも同じ数値。しかし、これホントかな? というのが実写してみたぼくの印象だった。
 「4.5段」はちょっと言いすぎじゃないかなあ。α7 IIのときもそうだったが、今回もα7R IIでさんざんテストしてみたが、どうひいき目にみても「約3.5段」がせいぜい。CIPA準拠と但し書きがあるということは、サバ読んで数値を"水増し"することはできないはず。うーむ、ソニーの不思議。

 使用したDistagon FE35mmF1.4レンズとα7R IIの組み合わせでも、さっぱり不可解なことがあった。
 Distagon FE35mmF1.4には絞りリングが設けられていて、1/3EVステップで絞り値を設定することができる。ところが、α7R IIボディに表示される絞り数値が1/3EVステップ刻みではない。「F1.4」 → 「F1.6」 → 『F1.7』 → 「F2.0」…と表示されるのだ。
 これはおかしい。ほんらいならば「F1.7」ではなくて「F1.8」でないといけない。「F1.7」はF1.4から1/2EV絞り込んだときの絞り数値で、「F1.4」 → 「F1.7」 → 「F2.0」となるからだ。昔からそうしたキマリになっている。
 では、FE55mmF1.8をセットして開放F1.8にしたときどうなるかというと、なんと、α7R IIはなにごともなかったように「F1.8」と表示する。しかしながら、FE35mmF1.4レンズを2/3EV絞り込んだときは、なぜか「F1.7」と表示される。じつに気味悪い。

 そこでソニーに聞いてみた。これ、どういう意味なんでしょうか?、と。

 ソニーの回答は、「表示システム上の都合でF1.7を使用している」と。これだけ。
 ではFE35mmF1.4レンズを使ってα7R IIに表示される「F1.7」は(レンズの絞りリングはF1.4開放から2ステップの位置にある)、このときの実質的な絞り値は? と再質問したら、いともあっさり「F1.8です」と回答した。
 表示は「F1.7」だけど、実際の絞り値は「F1.8」らしいのだ。いや、それオキテ破りだよ。

 ほら、レンズの絞りをここにセットすると「F1.8」ではなく「F1.7」と表示される。いやあ、こりゃあないよなあ。そんな大胆な、アバウトなカメラは他社では見かけないぞ。「システム上の都合で」なんてアッサリとかたづけられちゃ困るよなあ。ぶつぶつ…。

 しかしいっぽうで、手ぶれ補正の補正段数も、このF値表示も、「コマかいこと気にしないのッ」と、お大尽ふうで、若々しくのびのびした、いかにもソニーらしい社風がα7R IIを使っていて感じられたのも事実。
 ニコンやキヤノンといった古くからのカメラメーカーには、お目付役のような古手の"小姑"がたくさん居る。「手ぶれ補正の効果段数が1段ぐらい違ったっていいじゃないの」とか、「F値の実際と表示が1/4EVぐらい違っても撮った写真にそれほどの違いが出てくるわけではないよ」、なんてことは小姑たちが許してくれそうにもない。
 でも逆に、古いしきたりを大事にする口うるさい小姑が居なければ、新しい技術にもなんの気兼ねもなくチャレンジできるという"良い面"もなくもない、かな。

 さて皆さん、どちらのほうがいいですか?

高感度の画質はなかなかのモンですぞ

ソニー・α7R II + Distagon T* FE35mmF1.4




 α7R IIは4240万画素の高画素フルサイズ判センサーを内蔵し、センサーシフト方式の手ぶれ補正で、 コントラストと位相差によるハイブリッドAFにして、AF/AE追従で最高5コマ/秒の高速連写が可能、さらに4K動画やスローモーション動画撮影もできるという、約40万円のレンズ交換式ミラーレスカメラである。
 ミラーレスカメラとしては、現在のところ「いよっ、大統領っ」と言える堂々たるスペックを備えている。
 でもしかし、使ってみたら期待したほど「おもしろい」カメラでもなかった。使っていても、今までのソニーのカメラのようなわくわく感が感じられない。いや、写りに不満があるということでは決してない。良く写るカメラで、操作性にもナンの不満もない。けど、イマイチ愉しくないカメラ。うわぁー、こんな写真が撮れたよ、ということが結局、一度もなかった。

 約2年ほど前に発売されたα7R(3640万画素、ローパスフィルターレス)のほうが撮影していて愉しかったし、昨年末に発売されたα7 II(2430万画素、ボディ内5軸手ぶれ補正)のほうがいい写真が撮れそうな"夢"もあった。
 つまりα7R IIは、α7Rとα7 IIを足して2で割って、画素数と動画機能を少しオマケして膨らませ、じょうずにくるくるっと丸めて仕上げたようなカメラ、という気もしないでもない。カメラとして大切な「あんこ」が入っていない感じ。

 とはいうものの、α7R IIを使ってみていちばん感心したことがあって、それは高ISO感度の画質が「予想以上」に良かったことだった。裏面照射型CMOSセンサーのおかげか。
 α7R IIのSO感度は通常がISO25600で、拡張モードをONにするとISO102400まで設定ができる。ちなみに同じフルサイズ判のニコン・D810は画素数は3635万画素で、通常感度がISO12800、拡張感度のHi1だとISO25600相当となる。ちょうど手元にD810があったのでα7R IIと比べてみた。まず、どちらもISO25600にして撮り比べてみたら、結果はα7R IIの大勝。確実に1EV以上の差があった。α7R IIのISO25600はD810だと、ISO12800と同等の画質に匹敵する。
 α7R IIのほうが高画素にもかかわらず高感度性能はいい。こうした現象は、今後もっともっと多くなってくるだろう。

 「高画素化すれば高感度の画質は悪くなるんだ」なんぞと大声で喚いて高画素化に文句ばかりの人、ほら、いまここで謝んなさい。

台湾メーカーのODM製品とOEM製品

ケンコー/トキナー・DSC 880DW

 うじゃうじゃと魚が泳いでいる大きな水槽の中に880DWを突っ込んで"ノーファインダー撮影"したのがこの写真。




 さて、この880DWの発売元はケンコー・トキナーだが ━━ すでに発売をやめているから「だった」というほうが正しいか ━━ 設計と生産は台湾メーカーである(製造は中国)。メーカー名は不明。その台湾のメーカーのODM製品である。カメラの企画から設計、生産をすべて製造メーカーがおこなって、それを発売元(ケンコー・トキナー)のブランド名で納品するというものがODM。
 国内の大手カメラメーカーのブランド製品にも、こうしたODM生産のものがあるし、かっては多くあった。あるいはカメラメーカーが企画と設計をしたうえで、生産を委託するOEM生産をして、それをメーカーのブランドで売っているものもある。ODMもOEMも、台湾のメーカーが請け負っているケースが大変に多い。もちろん、国内のどのカメラメーカーも、ODM製品、OEM製品であるなんてことは一切公表はしていない。

 ただのODM製品である880DWで、とても感心したことがあった。それは同梱されている使用説明書。70ページほどの冊子になっている。もちろん日本語で、その内容は大変に丁寧親切。手間もコストもかかっているだろう。ケンコー・トキナーの保証書もある。お客さま相談室の連絡先もある。このへんの手際の良さ、気配りはケンコー・トキナーという会社の「得意」とするところだ。そもそもケンコーの製品には昔からそうした行き届いた気遣いがある。

 ところで、「ケンコー・トキナー・サービスショップ」 ━━ ショールームをかねている ━━ が、JR中野駅から北側に約10分ほど歩いたところにある。ご存じだろうか。そこにはケンコー・トキナーから発売されているありとあらゆる製品が広いフロアーに、まるで大型カメラ量販店の用品売り場のように一堂にぎっしりと展示されている。交換レンズあり、天体望遠鏡あり、無数のフィルターあり、ワケのわからん小物ありで、ひとつひとつを見たり、触れたり、試したりしていけば一日じゃあともて足りないほどで、暇つぶしには(すまん)こんな愉しい場所はないと思う。

 話を880DWに戻す。
 880DWが生産を中止したのは14mm相当のレンズが手に入らなくなったから、とケンコー・トキナーから聞いた。製造元の台湾メーカーが、どこかから購入していたらしいのだが入手ができなくなったという。1/3.2型センサー用の1.8mmF2.8レンズというから、ほんらいはカメラ用レンズとして開発されたものではなく、おそらく監視カメラ用だったのではないか。
 880DWの生産中止を受けて、「後継機種」としてDSC 1480DWという、同じく防水機能を備え、センサーサイズを1/2.3型の1400万画素に"パワーアップ"したカメラが、つい先日から発売されている。センサーとレンズ以外の基本機能は880DWと同じ。価格は約1万円。しかし残念なことは、1480DWは42mm相当の平凡な画角になってしまった……。うーむ、それにしても超広角14mmの水中コンパクトカメラは魅力的だったなあ。

動画撮影中に一旦停止できる機能

ケンコー/トキナー・DSC 880DW




 前回のこのブログで、DSC 880DWの特徴として5つを箇条書きにした。その中で

(4) 動画撮影中の「一旦停止」機能

 と書いたが ?なんのこと? と思われた人もいるに違いない。
 動画を再生している途中で一時的にストップし、再び再生を続けるることはできる。ところが撮影中となると、多くのデジタルカメラでは一時停止することができないが、880DWではそれができる。動画撮影中に一時停止、撮影開始を繰り返しができる。停止ボタンを押してようやく動画撮影が終了し、そこで1つの動画ファイルとして保存される。なんてことのない機能だが、大変に便利だ。
 上にあるダットサン・フェアレディーの動画は ━━ 少し前に撮影したいささか季節外れの動画だけど ━━ 一旦停止機能を使って撮影したもの。撮影後の動画編集はいっさいやっていない。素のままの動画。

 動画撮影中に一旦停止(ポーズ)の機能を活用すれば「カット割り撮影」が簡単にできる。アップにしたり、遠くから撮ったり、パーンしたりと、撮り分けていくだけで1つの動画ファイルとして保存される。撮影後にPCなどを使って、つなぎ合わせる動画編集の作業の必要がない。
 あらかじめ、アタマの中で大雑把なコンテやストーリーを組み立てておいて、それに沿って撮影していけば手軽にストーリー性のある動画がいとも簡単に作れる。

 ズームしたりパーンしたりだけののんべんだらりとした動画ではなく、次々に画面が切り替わる動画のほうが見ていてずっと愉しいし飽きない。こうした「カット撮り」こそが動画撮影のコツのひとつなのだが、一旦停止機能のないカメラだと、撮影後に"切ったり貼ったり"のめんどうな編集作業が必要だ。ところが880DWのように動画ポーズ機能があればカット撮りがごくごく簡単にできるというわけだ。たかだか、7~8千円のコンパクトカメラでそれができる。
 なぜ、多くのデジタルカメラの動画撮影に、この便利なポーズ機能が備わっていないのか不思議でならない。いや、私たちが使っているデジタルカメラの動画撮影機能の中に、880DWのような一旦停止撮影の機能を持つカメラがあるかもしれないが、すまん、ぼくの不勉強ですべての機種をチェックしていない。

 14mm超広角の動画撮影では、強いディフォルメーションが出てても静止画ほど気にならない。これは新しい発見だった。
 動画の記録サイズはVGA(640×480Pixel)と、QVGA(320×240Pixel)のモーションJPEG(AVI)である。フレームレートは30fps。性能はプアーだし画質はショボイけど、ま、いいじゃないか。どこにマイクが隠されているのか音声もとれる。


画角14mm相当レンズ内蔵の防水コンパクトカメラ

ケンコー/トキナー・DSC 880DW




 ここに紹介するデジタルカメラは、あらかじめ2つのことを承知した上で読んでもらいたい。エクスキューズありのカメラ。
 1つは、すでに生産終了してしまって、現在ではケンコー・トキナーでは扱ってない。ただし市場在庫がまだあるようで、インターネットなどで調べてみれば入手可能だと思われる。
 もう1つは、やや上等なおもちゃカメラ程度の性能であること。描写性能がどうとか操作性がなんだとかコムツカシイことは言わない。その写りは、2~3年前の携帯電話だとかスマートフォンに内蔵のカメラとほぼ同等と考えればいい。そこんところを承知すれば、こんなに愉しいカメラは他にはない、と思う。知る人ぞ知る、2013年夏に発売されたレンズ固定式のコンパクトデジタルカメラである。

(1) 14mm相当の超広角レンズ内蔵
(2) 水深3メートルまでの防水機能
(3) 液晶モニターを前面と背面に2つ搭載
(4) 動画撮影中の「一旦停止」機能
(5) 実販価格は7~8千円以下

 この5つこそが880DWの大きな特長であり魅力である。
  イメージセンサーは約800万画素の1/3.2型CMOS。多くのコンパクトカメラに使用されている「1/2.3型」ではない。携帯やスマホ並みのセンサーである。
 内蔵レンズは1.8mmF2.8の単焦点である。しかしF2.8と明るい。そしてここがイチバンのポイントなのだが、14mm相当という超広角をカバーするレンズなのである。14mm相当もの超広角画角が写せるコンパクトデジタルカメラなんて、この880DW以外にはない(たぶん)。

 AFではない。MFもできない。ピント合わせは固定式である。広いパーンフォーカスを利用して、最短撮影距離の約15センチから無限遠まで、ピントのことを考えずに撮影を愉しむカメラである。
 描写性能は、はっきり言って良くない。良くはないが、ぼろかすに言うほど悪くもない。ピント固定式にしては画像全体はよく解像しているが、フレアっぽくてヌケの悪い印象。歪曲についても色調についても、笑ってすませること。ISO感度はオートのほか、ISO100、200、400、800が選べるし、WBもいっちょ前にあれこれ設定が可能。それだけでも、たいしたもんだ。バッテリーは単4型乾電池が2本、メモリーカードはmicroSD。

 液晶モニターは背面と前面に2つのデュアルモニター。背面には2.7型、前面には1.8型で前面モニターを利用すれば、超広角だから容易に数人と一緒に「自分撮り」することもできる。ただし、この液晶モニターの見え具合も、ま、ナンである。とくに前面モニターのほうは「なんとか見える」という程度である。
 ストロボも内蔵している。はたして14mm超広角をカバーするのだろうか、と疑って撮ってみたが、意外や画面周辺部までよくカバーしていた(これには感心、ただし2メートルより近づいて撮るとだめ)。1/3EVステップでプラスマイナス2EVまで露出補正も可能である。
 これらに加え、水中3メートルまでの防水機能(言っておくが「防滴」ではないぞ)を備えている。くどいが水中撮影もできるんだぞ、このカメラ。さあ、どうだ。
 ほら、こんなカメラだ


「ディテール重視」モードは素晴らしい

キヤノン・EOS 5DsR+シグマ・24mmF1.4 DG HSM Art




 画素数が多くなると画質が良くなる。だから画素数の多いカメラを「高画素カメラ」という。それを多画素カメラなんてキタナイ言葉は使ってはいけない。冗談ダヨ。
 イメージセンサーの高画素化にはメリットとデメリットがある(いちおう)。メリットは解像力と諧調描写力が向上すること。微細な部分まで確実に写せれば豊かなディテール描写が可能になり、結果的に諧調描写力がアップする。
 いっぽうデメリットは ━━ 技術が進化すれば多くは改善されるものばかりだが ━━ 限られたセンサーサイズで受光素子を細分化すれば、素子が受ける絶対光量が少なくなる。高感度化のためには電気的増幅をせねばならず、そこでノイズが目立って画質が悪くなる。もうひとつのデメリットは、現在のカメラの機構上の問題なのだが、ミラーやシャッターの微妙な震動が原因となって"カメラぶれ"が目立つようになること。画素数の多い少ないにかかわらず同じ「量」ぶれたとしても、高画素にして解像力が高まるほどほんのわずかなぶれでも、画質に影響を与えてせっかくの高解像力の画像を低下させてしまう。

 キヤノンはこうした2つのデメリットが「解決」できない限り、高画素化になかなか踏み出せなかったという一面もあったのかもしれない。
 高感度での画質について5Ds/5DsRがおこなった対策のひとつは画像処理の高速化だった。高感度ノイズを低減するには膨大で複雑な処理が必要とされる。最適な処理を時間をかけて丁寧にするほどノイズは低減できるともいわれている。しかし処理に時間をかければレスポンスが悪くなる。それでなくてもワンカットの画像が約5000万画素もあって画像処理に時間がかかる。ではどうすればいいか。
 その解決策として5Ds/5DsRでは、より高速に処理できる高性能な画像処理エンジンを採用した。最新の画像処理エンジン「DIGIC 6」を2つデュアルにして並列処理、ハイスピードで大量の画像データの処理(ノイズ低減処理)をおこなっている。その結果、約5000万画素ものビッグデーターを、ISO6400やISO12800の高感度でも最高5コマ/秒の高速で連続撮影を可能にした。

 もう1つのデメリットであるカメラぶれ低減のために、5Ds/5DsRでは新しいミラー駆動制御方式を採用している。ミラー作動時にいくつかのモーターを使って最適にコントロールすることでミラーのアップやダウン時のショックを低減させる。従来機ではミラーのアップダウンは、おもにバネを使っていたのだがそれをモーター制御することで、ミラーが跳ね上がったり下に収まったりする直前にブレーキをかけてスピード調整し、ミラー衝撃をやわらげるシステムを組み込んだ。
 これはシャッターを切ってみればすぐ実感できる。従来の一眼レフカメラとは、手に伝わってくるショックがぜんぜん違うのだ。じつに軽ろやかで上品でよろしい。キヤノンの一眼レフカメラとは思えないほどいい ━━ キヤノンの一眼レフは音とショックについてじつにアバウトなところがあった、ニコンやペンタックスとは大違い ━━ 。それはともかく、5DsRを初めて手にしてシャッター切ったとき、「うっ」と声が出たほど感動したことだった。

 このほかにも、より高解像力の画像を得るための「工夫」がいっぱいされているのだが、説明していればきりがない。以下、省略。
 ただし1つ、それららの中で、5Ds/EOS 5DsRを使って撮影してみて、ぼくがもっとも感心したのがピクチャースタイルに新しく加えられた「ディテール重視」のモードである。このディテール重視モードは、5Ds/5DsRのためにあると言い切ってもいい素晴らしい撮影モードである。微細な部分(高周波成分)に最適なシャープネスをかけることで(ここがミソである)、見かけ上の解像感をアップさせるというもの。ただし小さな欠点があって、高ISO感度で細かなノイズそのものにもシャープネスがかかってしまいノイズが強調されてしまうことだ。しかしノイズの目立たちにくい低感度であればまったく気にならない。5Ds/5DsRユーザーのいちばんのおすすめの設定モードだと思う。

高画素化したカメラで「次」にやるべきこと

キヤノン・EOS 5DsR+シグマ・50mmF1.4 DG HSM Art




 5Dsも5DsRも画素数は5060万画素。キヤノンのフルサイズ判カメラの中で、いや他社も含めてフルサイズ判センサーを使ったデジタルカメラの中ではもっとも高画素である。それまでの最高画素数のキヤノンのカメラといえば、EOS 5D Mark IIIの2230万画素しかなかった。それがいっきに2倍以上の高画素カメラを出してきたというわけだ。
 ところで、ニコンは2012年2月にD800/D800Eで3630万画素のフルサイズ判を発売している。その2年後の2014年には後継機種としてD810を発表したがそれにも3630万画素センサーを搭載している。ソニーもまた、2013年3月にフルサイズ判ミラーレスのα7Rに3640万画素センサーを搭載し、今年発売のα7R IIでは4240万画素である。ニコンに遅れること3年、ソニーからも3年遅れ……であるが、ようやくのキヤノンの面目躍如。

 ここで少し横道に。いまさら言うまでもない当たり前の事実だが、高画素カメライコール高画質カメラである。断言できる。20年前のQV-10が出てから、いやそれ以前から高画素のカメラはすなわち高画質のカメラだった。センサーそのものの性能が良くなり、画像処理技術も進化を続け、と同時にカメラそのものの性能もアップしていった。そのうえ、高画素/高画質に適応させるためにレンズの性能も飛躍的に向上してきている。だから結果的に画質はどんどん良くなっている。高画素イコール高画質なのだ。
 それを、どこでなにをとち狂ったか、デジタルカメラが高画素化していくことにムキになって反対し阻止しようと、まるで風車に挑んだドン・キホーテみたいな人たちがいた(いまでもその残党がちらほらいるようだけど)。

 今後、カメラはまだまだ高画素化していくだろうし、それに伴ってデジタルカメラは「次のステップ」に進むはずだ。
 ぼくがずっと古くからカメラの高画素化を歓迎していたのは、次のステップに期待して「やってみなはれ」の気持ちからだった。まだ見たことも経験したこともないカメラの高画素化で、いったいどんな写真が撮れるのか、どんなカメラができあがるのか、その強い気持ちを込めて「やってみなはれ」と言い続けてきた。

 この先どうなるかわからないが、高画素化が解像力アップや階調描写力向上に寄与するだけでなく ━━ そんな当たり前のことだけが目的で高画素化して終わってしまってもらっては大いに困るのだが ━━ 今後は、高画素カメラだからできる「なにか」をやるべき時代に向かっていくのは、きっと確実だろう。
 だから、と、キヤノンにだけ責任を負わせるつもりはないが、5DsやEOS 5DsRの"次"の高画素カメラでは、高解像力や優れた諧調描写力だけでなく、高画素カメラでしかできないような新しい「なにか」を備えたカメラを作っていってもらわなくちゃ。

 ……ひと言、のつもりが、だいぶ長くなってしまった。5Dsと5DsRについて、あの話、この話があったのだけど、それは次回に、ということで。

石橋を叩いただけでは渡らないキヤノン

キヤノン・EOS 5DsR+EF24~70mmF2.8L II USM




 キヤノンはなかなか「冒険」や「チャレンジ」をしないカメラメーカーである。臆病だという意味ではなく堅実、着実なのだ。石橋を叩いて渡るというよりも、繰り返し石橋を叩いてから鉄板を敷いて渡る、というイメージか。いっぽうで ━━ 意外だと思う人もいるだろうが、ニコンはじつにチャレンジングで、新しい技術をカメラに積極果敢に採用するところがある。カメラだけについて言えば、ソニーはもっとそうしたチャレンジ傾向があり、傍目に見ていても愉しい。パナソニックはキヤノンと少し似たところがあってツマらないのだが、しかしキヤノンのほうにはパナソニックにない「夢」がある。
 キヤノンは新技術をカメラに搭載するときには、90%以上の確率で失敗も不具合もないことを確認してから、そろりと動き出す。そんな慎重さがキヤノンにはある。他の多くのカメラメーカーがすでに採用していて安心できるような技術や機能、機構であっても、キヤノンだけは独自の道をゆっくりと着実に歩むようなところがある(安心だけど、じれったい)。

 そうしたキヤノンの保守的傾向は、とくにカメラ開発の部門に根強くある。重い腰を上げない、走らない、飛ばない。それに対して、レンズの開発部門のほうは、進取の気分がとても強くて革新的。世界初、世界唯一に向かって邁進しようとする精神が旺盛で、こりゃあいったい同じキヤノンか、と思うほどに新製品に取り組む姿勢が違う。
 キヤノンではカメラやレンズの開発、設計や製造は、イメージコミニケーション事業本部(ICP)で取り仕切っている。そのICPの中で、レンズなど光学系の開発部門が「第一開発センター」、カメラの開発部門は「第二開発センター」としている。ぼくたちのイメージだと、カメラが「第一」、レンズは「第二」と思ってしまうが、実際はそうではなく逆なのだ。

 レンズ部門を「第一開発」としたことついて、あるキヤノンの役員は、「キヤノンは光学機器のメーカーとしてスタートした。カメラもレンズも作っているが、やはり優れた光学技術があってこそのカメラ。レンズが大切という気持ちを込めて第一開発に決めた」と、そんな話をしていたことがあった。
 さらに、あるキヤノンの親しい人がぼくに、「ウチの会社は、"レンズ交換式カメラ"を作ってるんではなく、"ボディ交換式レンズカメラ"を作ってるんですよ」、なんて冗談交じりに言っていたことがあったが、じつに言い得て妙な、ずばり言い当てているではないか。

 その保守的気分をたっぷりと持ったキヤノンのカメラ開発の「第二開発センター」が、とくに中級機種、高級機種で、なかなか前に一歩踏み出そうとしなかったことが2つあった。
 1つが、イメージセンサーの高画素化。もう1つが、ローパスフィルターをなくしたモデルを出すことだった。他のライバルメーカーが次々と高画素化したり、ローパスフィルターを取り去った機種を出しているのに、「第二開発センター」のほうはまったくそれに対抗する気配も見せない(じつは密かに石橋を叩いていたのだろうけど)。キヤノンのユーザーたちはそんな他社製品が出るたびに、「キヤノン、どうしたんだ?」といらいらする。しかし、キヤノンは黙して語らず、独自の道を歩む、といった姿勢を長く続けてきた。

 ところが、ついにやってきた。あの、山のように構えていた「第二開発センター」がのっそりと動いて、2015年今年の春に発表したのが、5060万画素フルサイズ判センサーを搭載したり、ローパスフィルター効果なしにしたり、のカメラがEOS 5DsとEOS 5DsRだったというわけなのだ。


ローパスフィルターの小さな利点と大きな欠点

キヤノン・EOS 5DsR+EF24~70mmF2.8L II USM




 なんだか、数年前のニコンのD800/D800Eの"再来"のような気もしないでもないキヤノンの高画素一眼レフカメラである。EOS 5DsRとEOS 5Dsの2機種が同時発売。
 もう、いまさら説明をするまでもないとは思うが、5DsRと5Dsの違いはただ1つ、ローパスフィルターの効果があるかないかだけ。どちらの機種もローパスフィルターは内蔵しているのだが、5DsRのほうはその効果をなくす処理がなされている。そうです、D800(効果あり)/D800E(効果なし)とまったく同じ手法で(詳しい説明は省略)ローパスフィルターの効果をON/OFFしている。
 ローパスフィルターはフルサイズ判センサーに見合ったサイズともなると、カメラ部品としてはとても高価なものになる。そんな高価な部品を使って、まったくの役立たずにしている。5DsRのローパスフィルターは、いっちゃあナンだけど「どぶに捨ててる」のと同じだ。

 なぜ、そんな無駄なことをしているのか、についての話をすれば、めちゃくちゃ長くなるので、またこれも省略をするが、無駄を承知の上で万やむを得ず苦渋の手法、なのだととりあえず考えておいてほしい。とはいえ、実にもったいない話だよなあ…ぶつぶつ…。

 ローパスフィルターの役目はただ、ひとつだけ。モアレ/偽色の発生を目立たなくすことだ(しかし完全になくせるわけではない)。ローパスフィルターを利用して、ほんのわずか解像力を落とす。そうすることでモアレ/偽色の発生を低減させている。これが利点。つまり、その目的のためだけに、せっかくの得られるべき高い解像力を捨ててしまっている。これがローパスフィルターの大きな欠点である(高価な部材であることも)。でも、ローパスフィルターを使わないことには、効果的にモアレ/偽色を目立たなくすることができない。強い副作用があることはわかっていても治療のために使用する「麻薬」のようなものだ(とぼくは考えている)。

 ユーザーの中にはモアレや偽色が出てはゼッタイに困る、という人もいる。逆に、モアレ/偽色は気にしない、なにがなんでも高い解像力の画像が得たい、という人もいる(ぼくはその後者のほうだ)。
 そこでキヤノンは、ローパスフィルター効果ありでモアレ/偽色を抑え込んだ5Dsと、ローパスフィルター効果なしで解像力を確保した5DsRの2モデルを同時に発売したわけだ。これなら誰からもクレームは来ない。3年以上前に発売したニコンのD800/D800Eとまったく同じことを5Ds/5DsRでやっている。でも、D800/D800Eの後継機種として発売されたD810では、ニコンはあっさりとローパスフィルターを取り外した1機種だけにしてしまった。たぶん、ローパスフィルター効果をなくしたD800Eを使ったユーザーから、モアレ/偽色が目立って困るといったような強い反応がなかったのだろう。

 そうした「前例」があったにもかかわらず、キヤノンが敢えて同じ轍を踏んだのには、うーむ、なんというか、いかにもキヤノンらしいことですね。

 ところで、EOS 5DsRかEOS 5Dsかどちらがおすすめかと言えば、ぼくとしてはまったく躊躇することなくEOS 5DsRのほうをとる。カメラ価格も5Dsに比べて少し高くて、役立たずのローパスフィルターを内蔵していることに腹立たしいけれど。
 5060万画素もの高画素センサーを使ってですよ、せっかくの高解像力の写真が得られるというのに、なんで解像力を落としたEOS 5Dsを選ぶのか。ごくごく特殊な被写体を限定的に撮影するのでなければ、たとえモアレ/偽色が出たとしてもそれほど気にすることもないと思う。


『カシオが考える、あるべきデジタルカメラ像』

カシオ・EXILIM EX-ZR3000




 カシオ初の、というよりも一般向けの初のデジタルカメラである「QV-10」が発売されて今年でちょうど20年の節目となる。1995年3月に約6万5千円で発売され、爆発的に売れ続けた。このQV-10の発売をもってデジタルカメラがスタートしたと見る人も多い。
 そのころもいまも、カシオはすなわちカシオ計算機株式会社で、キヤノンやニコのようにカメラについての歴史も伝統ないメーカーだったわけで、だから当初カシオは「カメラ」を作ってやるぞという意図はあまりなかったようだ。レンズと液晶モニターを内蔵し、写真画像が撮れて、その場で写した写真を見て愉しめる新しい道具を作っただけで、それが「たまたまカメラのようなもの」だったというだけみたい。これが当時、QV-10のコンセプトを説明するために作った資料の1ページ。7~8ページの簡単な資料だが、いま読むとめちゃくちゃおもしろい。

 カシオはデジタルカメラに対する「スタンス」が他の既存のカメラメーカーとはだいぶ違っていて、そこがカシオのおもしろいところだったのだが、QV-10の爆発的売れ行き以降、少しづつ既存カメラメーカーとの違いが薄まっていって「カメラ欲」が出てきたようで ━━ カシオの人たちは、いやそんなことはない、と言い張るだろうけど ━━ 溌剌としていたカシオらしさが、いま、あまり感じられなくなっている。だから、いまこそ、初心にかえってみてはどうかと思うわけですよ、とエラそうな物言いになってしまいましたけど。

 とは言うけれど、やはりカシオはカシオ。根っこの部分で既存カメラメーカーや既存の大手家電メーカーとは「デジタルカメラ」に対する考え方が違うように感じる。たとえば、中国などアジア圏で大人気の自分撮りに特化したカメラ(国内では販売していないTRシリーズ)などは、いかにもカシオらしいカメラで、ぼくは少し違った意味でQV-10の再来かとも思う。そのへんをもっと生かせばいいのに、そうすればカシオは再び、あっと驚くような「カメラ」が作れるのではないかと思うよなあ。

 ところで、少し前のことだけど、カシオがQV-10発売20年を記念してセミナーを開催した。そのときに、カメラ事業部(QV事業部)のトップである中山さんが、カシオはデジタルカメラについてずーっ古くから、こういうことを考えながら製品作りをしているんだという話をした。これが実におもしろかった。「カシオが考える、あるべきデジタルカメラ像」とのタイトルで以下のような内容。詳しい解説は省略するが、ま、じっくりと読んでみるといいでしょう。中にはすでに可能となっているものもある。

(1) 静止画と動画のボーダーレス化
 ・すべて動画で撮影
(2) 自動認識化
 ・シャッターレス → 最適な1枚をカメラが自動選択
(3) 完全Digital化
 ・光学ズームレンズレス → 超広角単焦点、1億画素/単焦点デジタルズーム
 ・光学手振れレス → デジタル補正
 ・ストロボレス → 高感度十NR+HDR
(4) ネットワーク化
 ・メモリーレス

 カシオはレンズもセンサーも作っていない「カメラ」メーカー。そこをよく考えながらこれから「新しいデジタルカメラ」を作っていきたい、というようなことも中山さんは言っていた。中山さん、期待していますよ。

ZR3000はおすすめのコンパクトカメラのひとつだね

カシオ・EXILIM EX-ZR3000




 EX-ZR3000は姿カタチこそEX-ZR1600とそっくりであるが、センサーサイズは違う、画素数は違う、レンズは違う、その写りもぜんぜん違う。そのへんの話は前回のブログですでに述べた。
 繰り返しになるが、ZR1600に比べるとZR3000のほうが描写性は格段に良い。とくに、夕暮れ時や暗いシーンなどでは、その差は著しく異なる。ZR3000が1/1.7型センサー、ZR1600が1/2.3型センサーの違いや、内蔵ズームレンズの性能の違いが出ているのだろう。センサーはどちらも裏面照射式で(たぶん)ソニー製だろう(いや、ZR1600は違うかもしれないが)。

 でもしかし、1/1.7型と1/2.3型のセンサーのサイズが違うだけで、こんなにも写りの差がはっきりしてるカメラも珍しいなあ。ぼくはそこに一番びっくりした。たとえば、PENTAX Qには1/1.7型と1/2.3型のセンサーを使ったカメラボディがあって、交換レンズは共通である。でも、PENTAX Qではセンサーの違いで画質が大きく異なるなんて、ぼくはそんな経験はほとんどしたことがない。
 ともかくZR3000は、一般通常の他社のコンパクトカメラと比べても"トップクラス"と言えるのではないだろうか ━━ 1インチ型など大きなサイズのセンサーを使ったカメラや、低倍率大口径ズームや単焦点レンズ付きのカメラは別として ━━ 。

 ZR3000に使っている25~300mm相当のズームレンズ、これがなかなかよろしいのだ(描写が良いのはこのせいかもしれない…)。望遠端と広角端とを比べると、25mm相当の広角端の描写のほうがいいのだけど、だからといって望遠側の描写が決して悪いということもない。アタリのレンズだと思う。
 ご存じのようにカシオは自社でレンズなど光学系を設計も製造もしていない。レンズ光学メーカーから「部品」として購入し、それをカシオ内で組み立てている。
 今回、ZR3000を使ってみて、おおっいいじゃないか、このレンズ、いったいどこのレンズだろうか…と俄然、興味が湧いたほど。一般的に、1/2.3型センサー用のズームレンズはあれこれのメーカーのものがあって選択肢は多いようだが、1/1.7型センサー用の高倍率ズームレンズとなると、そんなに数がたくさんあるわけではない。

 ちなみに、コンパクトカメラ用のズームレンズを作って販売、外販しているメーカーは台湾メーカーのほか、おもな国内メーカーとしてはオリンパス、HOYA、コニカミノルタ、京セラなどが思い浮かぶ。皆さんが馴染みのある有名メーカーの中でも、カシオと同じようにこうした専門レンズメーカーからレンズを購入して、なんとかかんとかのレンズブランド名を付けて売っているコンパクトカメラも少なくない。
 タムロンやシグマ、トキナーなども作っているのだろうか、どうなんだろうか、と想像を巡らしている人もいるかもしれないが、たぶん、それらのメーカーはコンパクト用レンズは作っていないと思う。どうでもイイような話だけど。