ヴァーチャルリアリティ(VR)に対応した機能もあるぞ

リコーイメージング・THETA S

 THETA Sには液晶モニターがない。前回のブログでもそれは述べた。だからカメラ単体で撮影するときは「どの範囲までが、どんなふうに」写るのか事前に確認することができない。しかし心配は無用。360度全天球型カメラなのでカメラの周囲「すべて」が写る。写る範囲を考える必要はまったくない。

 さらに、THETA Sを横向き、下向き、斜め向き、どこにどのように向けてシャッターを切っても撮影画像は水平の整った画像に"修正"される。内蔵されたジャイロセンサーによって傾きが補正されて自然な横位置の全天球画像として記録されるわけだ。静止画はもちろん、動画の場合もそうだ(たとえばTHETA S本体を強引にぐるぐる回転させながら動画撮影しても、できあがった動画は左右に少しぐらぐらはするが水平はほぼ保たれている、これには大いに感心した)。


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 THETA Sの販売はリコーイメージング株式会社だが、企画、開発、製造は株式会社リコー(本体)がやっている。リコーはもっぱらB2Bの事業展開をしていて、一般消費者向けの販売ルートを持っていない。そこでコンシューマー向け販売ルートを持つリコーイメージングにまかせているというわけだ。

 リコーのTHETAシリーズ開発メンバーは、いま、カメラのファームウエアや専用アプリなどのアップデートを矢継ぎ早におこなっている。リコーには、GRシリーズもそうだったが、カメラのファームウエアを頻繁に更新することで撮影機能を充実させていくという「伝統」があった。その気質、というか、こだわりがリコーにはいまも受け継がれていて、とくに最新型のTHETA Sにその傾向が強くあらわれている。
 今後、ファームウエアなどのアップデートでTHETA Sやアプリソフトがどのように進化していくのか、ユーザーとしては(ぼくがそうだ)わくわくと愉しみいっぱいだ。

 ところで、THETA Sには近い将来きっと注目され利用されるに違いない新しい映像表現技術の活用機能が備わっている。VR(ヴァーチャル・リアリティ)映像の機能である。
 THETA Sで撮影した360度画像を専用のゴーグル(ステレオ眼がねのようなもの)を使って眺めると、まるでその場にいて、ぐるり周囲を見廻しているような視覚的疑似体験ができる。THETA Sにはそれに対応した表示機能が搭載されている(ファームアップによる)。

 たとえば、撮影した360度画像をスマートフォン画面に表示させて、それを簡易型ゴーグル(段ボール製の低価格なものが市販されている)にセットして鑑賞するだけでVR体験ができる。
 ゴーグルをセットしたまま左右、上下に顔を動かすと、スマホに内蔵されたジャイロセンサーと画像がリンクして、顔を向けた方向の様子が見える。上を向けば空、下を見れば地面、後を振り向けば・・・といった具合。

 いまのTHETA Sは静止画のみの対応だが、将来は動画にも対応できることは間違いないだろうし、加えて、今よりももっと臨場感溢れる視覚体験ができる低価格で軽量小型のヘッドマウントディスプレイも出現するに違いない。もしそうなればVRはいっきにブレイクするに違いない。
 あるいは、THETAシリーズに「3D(立体)の静止画/動画」が撮影できるようなカメラが開発されて製品化すれば(難易度は高いが可能性はなくもない)、世の中、めちゃくちゃおもしろくなるだろうなあ、と思う。

THETA Sで撮影する動画はおもしろいぞ

リコーイメージング・THETA S

 下の画像(動画)は、自撮り棒を使ってTHETA Sをぼくの頭上高く掲げて撮影したものだ。もし、画像が出てこなければ▲印の動画スタートボタンを押すといいかも。画像が出てくれば+/-ボタンで動画を拡大縮小できるはず。画面上をマウスでぐりぐりすれば自在に回転させることもできる(このページを見る環境によっては不可能かもしれないが)。

 数ヶ月前のことになるが、ほら、ハロウイーンのときに渋谷交差点に大勢が集まって大騒ぎしていたでしょう、そのときの様子を写した動画。ぼくは、なんとかして交差点を渡ろうとしたけどハチ公前から前に進めず。結局、たくさんの人たちにもみくちゃにされながら、そのあたりをうろうろしていただけ。夜景動画だけど、ここまで「良く」写せるようになった。


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 上に"貼り付けた動画"は、前回と同じくTHETA専用アプリ経由で表示している。そのソフトの制限のために10秒そこそこしか鑑賞できないが、実際にはもっと長い時間、もみくちゃにされながら撮影をしていた。

 YouTubeに動画をアップすることもできるが(こちらは時間制限なし)、しかし画質がかなり悪くなったり、YouTube画面を見るブラウザーによっては回転や拡大縮小ができないこともある(YouTube側のせいかな?)。THETAの動画鑑賞についてはインフラがまだ充分の整っていないようだ。不明な点も多い。なお、ぼくは試したことはないがFacebookやtwitterにも動画をアップすることができるらしい。
 言うまでもないが、撮影した動画はスマホ画面でなら、なんの制限もなく回転拡大縮小は自由自在にできる。

 THETA Sで撮影する方法は2通りある。1つは、カメラ本体にあるシャッターボタンを指先で押して撮影する方法。一般的で、もっとも容易な撮影方法だ。
 ところがこの方法だと、超々広角だから遠近感も誇張されシャッターを押す手(指先)とTHETA Sを持っている自分自身が大きくクッキリと写ってしまう。これがデメリット。メリットはTHETA S単体で手軽にほいほいと撮影ができること。

 もう1つは、スマートフォンを使って専用のアプリ画面の疑似シャッターボタンを押して遠隔撮影する方法だ。Wi-Fi機能を利用する。THETA Sを手に持たず、離れた場所からシャッターを切って撮影ができる。指先が大きく写らないというメリットはあるが、当たり前だが必ずスマホが必要になる。残念ながらセルフタイマーの撮影機能はない(インターバル撮影の機能はあるのに・・・)。

 THETA Sにはモニター画面が備わっていない。オリンパスのAIR A01やソニーのQXシリーズと同じスタイルである。カメラ本体はシャッターを押すだけの機能しかない。だからTHETA Sが持っている機能をフルに発揮して撮影したり、構図(という概念は当てはまらないが)を確認しながら撮影するには、やはりスマホを利用したほうがいい。

小型軽量操作簡単の全天球型カメラ

リコーイメージング・THETA S

 THETA S(シータ エス)は、カメラ眼前の前後、左右、上下も360度の静止画または動画が撮影ができる超小型デジタルカメラである。全天球型カメラ。かなり特殊なカメラだがめちゃくちゃ愉しい。使いやすいので「特殊」じゃなくなっているというのが大きな特徴。
 全天球型カメラは世の中にたくさんある。しかし、大型で高価で、操作も撮影も複雑であるため一般のユーザーが気軽に使えるというものではない。ところが、THETA Sは大変に小型で軽量、カメラ操作もいたって簡単。シャツの胸ポケットに入るほどのサイズ。取り出してシャッターボタンを押すだけでカメラの周囲360度の静止画でも動画で も容易に撮れる。

 撮影した静止画や動画は、スマートフォンやPCの画面上を、指先やマウスでスクロールすることで自由自在に角度を変えたり拡大縮小することができる。


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 上の写真はTHETA Sで撮影した360度の静止画写真。
 THETAの画像を専用ソフト(ブラウザー画面とリンク)を使って表示している。画面下のアイコンをクリックしたり、マウスで画面をぐりぐりスクロールすると画面を自由に動かせる。
 写っているのはフェラーリのディーノ246GTの車内。自撮り棒の先に取り付けたTHETA Sをディーノ246GTの小さな窓から差し込んで、iPhoneのアプリ画面でシャッターを押してリモコン撮影したもの。黒い自撮り棒がまったく写り込んでいないことに注目してほしい。THETA Sをまるで宙に浮かせて写したようではないか。ただし後方(Cピラー)にウマく隠れたつもりのぼくの姿がちょっぴり写っているのはご愛嬌。

 THETA Sは、約2年前に初代のTHETAが発売された(静止画撮影のみで動画撮影は不可)。続いて、昨年には動画撮影もできるようになった二代目のTHETA m15(動画ライブビューは不可)、そしてく三代目となるのがこのTHETA Sである。静止画撮影中のライブビューが可能になった。
 初代THETAも二代目THETA m15も、画質や操作性の点で多少の不満があったのだが、三代目THETA Sでは大幅に改良し、進化させた。イメージセンサーもレンズも一新して、とくに高ISO感度での画質向上、撮影機能アップが注目点である。

 初代と二代目THETAと、三代目THETA Sが大きく異なる点はファームウエアのアップデートやアプリやソフトのバージョンアップが「怒濤の勢い」のごとくおこなわれていることだ。言うまでもなくファームウエアなどの更新はバグ修正のためではなく機能アップ、機能追加のためのもの。昨日までできなかったことが翌日にはできるようになっている、なんてことがたびたび起こる。
 ヘンな、といっちゃナンだけど、わくわくさせられるデジタルカメラだ。

「逆光番長レンズ」と言ってもいいかも

ニコン・D750+タムロン・SP35mmF1.8 Di VC USD

 タムロンの2本の新SPレンズについて、もう少しだけ。

 SP35mmもSP45mmも、使ってみて感心したことは逆光に大変に強いレンズであること。最近の高級レンズはどのメーカーのものも逆光に強くなっているが、その中でも、この2本は目立って良かったという印象。
 むろん撮影条件によっては、ゴーストが多少目立つことはあるがこればかりは仕方がない。でもよく抑えている。いっぽう、フレアはとても少なく、逆光悪条件でもすばらしい描写をする。フレアが少ないということは、ヌケがよい、充分なコントラスト、描写はクリアーでシャープ、シャドー部が腰砕けにならない。




 ゴーストやフレアを目立たせないレンズを作るには2つの方策が考えられる。1つは光学や鏡筒でにゴースト/フレアをできるだけ出さないようなレンズ設計する方法。
 実際にレンズを試作しなくても、レンズ設計と並行して光線追跡のシミュレーションを繰り返していけば、どこにどんなゴーストやフレアが出てくるか、あらかじめわかる。そのシミュレーションの結果を見ながら修正したり改善してレンズや鏡筒を設計していけばよい。
 それじゃあ、その方法でがんばってレンズ設計すればイイじゃないか、と考えるだろうが実はそこが難しい。ゴーストやフレアを目立たないように光学設計をやろうとすると、たとえば解像描写性能が犠牲になってしまうということもある。コストもアップする、レンズは大きく重くなる…などなど。

 ゴースト/フレアを出さないもう1つの方策は、有効なレンズコーティングを施す方法。
 最近、レンズコーティングの技術は飛躍的に進歩してきている。とくに、いわゆるナノ構造の特殊コーティングが開発され、それが採用されるようになってゴースト/フレアは大幅に低減した。ただし欠点は高価であることと、使用できるレンズ面に制限があること。
 タムロンでは従来のBBARコーティングをベースにしながら、ナノ構造のeBANDコーティングを効果的に使用し、さらに光学や鏡筒の設計を工夫することでゴースト/フレアの発生を抑え込んでいるという。2本のSPレンズを逆光で撮ってみると、うんなるほど、タムロンが自慢するだけのことはある、と思わせられる。

 ところで前回のブログで、SP35mmとSP45mmfの2本とも最短撮影距離がとても短いのが特長だ。一般的に、至近撮影になればなるほど収差変動などのために描写性能が低下するが、しかしタムロンはそれを防ぐためにフローティング機構を取り入れたレンズ設計をしている、そんなことを述べた。

 以下のレンズ断面イラストはSP35mmF1.8のもの。9群10枚構成のレンズだが、AFでのピント合わせでは前レンズ群と後レンズ群の「2群」がフローティングする。前群はレンズ5枚に加えてVC(手ぶれ補正)機構と絞り機構がセットになっている。後群もレンズ5枚。
 この大きく重い前群と後群が撮影距離に応じて、群の間隔を微妙に調節しながら高速に正確に動かせている。実際にAFしてみればわかると思うが、とてもそんな「チカラわざ」をやっているとは感じないほど滑らかで高速なのだ。あれこれ苦労しただろうと思う。




新SPレンズの注目すべきレンズ技術

ニコン・D750+タムロン・SP45mmF1.8 Di VC USD

 SP35mmもSP45mmも、レンズ内に手ぶれ補正・VC(Vibration Compensation) の機構を内蔵している。レンズ(光学)シフト方式の手ぶれ補正。2本の新SPレンズの、これが大きな特長である。レンズシフト式の手ぶれ補正機構を採用し、かつ優れた光学性能を確保するというのはレンズ設計者にとっては難易度は高い。
 タムロンは、この2本の単焦点レンズだけでなく大口径ズームレンズにも積極果敢にレンズ内に手ぶれ補正機構を内蔵してきている。SP24~70mmF2.8やSP15~30mmF2.8ズームなどがそうだ。タムロンは手ぶれ補正の機能をレンズに内蔵させることに大変なこだわりがあるようだ。




 開放F値の明るい大口径レンズは構成する光学レンズ群の多くが大きいのが一般的。光学レンズは大きくなれば重くなる。手ぶれ補正をおこなうための補正光学系も、どうしても大きく重くなる。大きく重い補正光学レンズを高速精密正確にシフト作動させないと望んだようなぶれ補正効果は得られない。最適に駆動させるためには、アクチュエーターユニットもまた、大きく重くなってしまう。
 大口径レンズ(2本の新SPレンズともに開放F値はF1.8)は、構成するレンズ群が大きい、ぶれ補正光学系レンズも大きい、それを駆動するためのモーターユニットも大きい……といった要因のために、SP35mmもSP45mmも、仕方なくやや大きく重いレンズになってしまった。
 タムロンは手ぶれ補正の機能をなくしてまでして小型軽量なレンズを選ぶことをしなかったというわけだ(ぼくはそれが正しい選択だったと思う)。

 さらに2本の新SPレンズは最短撮影距離を短くすることにもこだわった。SP35mmは20センチ、SP45mmは29センチである。
 最短を近くすればするほど、さまざまな収差が目立ってきて描写性能が低下してしまう。収差変動が顕著になる。そうした近距離時の描写性能の低下を防ぐには、おもに2つの方法がある。
 1つは、最短撮影距離を短くしないこと(近いところにピントを合わせられないように制限する消極的方法、こうしたレンズは結構、多い)。もう1つは、フローティング(近距離収差補正)機構を採用したレンズ設計をする積極的方法である。2本の新SPレンズは、この後者の方法を取り入れている。

 フローティング機構とは複数のレンズ群を、それぞれ異なった移動量で繰り出し(前後させ)てピント合わせをする方式である。ただし、ピント位置ごとに、レンズ群を精密正確に最適な間隔を保つように動かさなくてはならない。MFでのピント合わせならまだしも、AFで高速に2つのレンズ群を移動させてピント合わせするとなると難易度はぐんと高くなる。
 そのうえ、新SPレンズの2本とも、大胆というか無謀というか、たくさんのレンズ枚数をセットにしたまま(群にして)動かしている。枚数が多く大きくて重いレンズ群を(さらには、VCのアクチュエーターも含めたユニット込みで)前後させているにもかかわらず、AFスピードはそうしたことをまったく感じさせない。じつに高速でスムーズなAF作動なのだ。

 けっしてタムロンのレンズを「ヨイショ」しているわけでもなく、これにはほんとに感心していんですよ。

「おとな」の味がする実力派レンズ

ニコン・D750+タムロン・SP35mmF1.8 Di VC USD

 35mmと45mmという「似たような画角」のレンズのせいか、新SPレンズ2本を初めて手にしたときは、正直に言えば、どこかココロに"トン"と響くところが少なかった。
 しかし、そうした第一印象とは違って、2本のレンズとも、使い込んでいくうちにゆっくりとだけど「良さ」がこちらに伝わってきた。落ち着いて寡黙な、おとなの雰囲気のするレンズ。ちゃらちゃらして媚びるところがない。そんなレンズのようだった。




 とくに描写が、「おとな」の感じだった。カリカリで見るからに解像感パリパリの、若いお兄ちゃんぽい描写のレンズではなく、ほどよく抑えの効いた(自制心のある)レンズだ。
 そうした描写特性は、開放絞り値のときでもF5.6からF8ぐらいに絞り込んだときでも、大きな変化はなく、均一でじつに安定している。開放絞りのときは、まあそこそこだけど2~3段絞り込むとぐんっと描写性能が向上するぞ、といったような"わがまま"なレンズではない。

 それにしても、なぜ35mmと45mmという「近い」焦点距離で「外観」もそっくり、同じ開放F値のレンズをタムロンは同時に発表し発売したのだろうか。レンズの機構や機能も、よく似ている。35mm画角と45mm画角って、ひと昔の頃と違って、いまはそれほど「ときめく」レンズ画角でもない。オーソドックスで地味。
 2本同時発売するというのなら、たとえば、35mmと100mmとか、45mmと24mmだとか、だったらわからないでもないが。タムロンの謎だな。

 以下はぼくの想像だが、タムロンとしては久々の、チカラの入った単焦点レンズだ。新SPシリーズの始まりだ。そこで、まずは「単焦点大三元レンズ=80mm、50mm、35mm」を揃えてから(基礎固めをしてから)バリエーションを広げていこう、モノには順序ってモノがある、と、そんなふうに考えてるのかもしれぬ。

 せっかくの新型の実力派レンズ、その良さを積極的に伝えなきゃいけないタムロンのプロモーションがどうももの足りない感じ。なんといいますか、「ここが新SPレンズのイイところですよ」という大切なメッセージが希薄で、レンズの魅力がいまひとつ伝わってないようで、ハタから見てるともどかしい感じですね。…余計なひと言でした。


タムロン2本の新型単焦点レンズ

キヤノン・EOS 5D Mark2+タムロン・SP45mmF1.8 Di VC USD

 タムロンから単焦点レンズの発売なんて、何年ぶりだろうか。それも、いきなり35mmF1.8と45mmF1.8の2本同時発売した。さらに、レンズの外観デザインも一新して「新しいSPシリーズ」をスタートさせた。
 タムロンにとっては久しぶりの単焦点レンズ開発だったからだろうか、2本のレンズとも少し肩にチカラが入りすぎている気もしないでもない。やや自信満々のところも見え隠れして、「さあどうだ、いいレンズだろう」と言われているようなそんな感じも少しした。
 いや、それはソレとして、しばらく使い続けているうちに、じわじわっと「こりゃあ、味わい深いレンズだぞ」と感じるようになった。
 尖ったところやハデさはないが、うん、なかなかいいレンズ、2本とも。




 タムロンのAF対応の単焦点レンズといえば、フルサイズ判(Di)ではマクロレンズのSP90mmとSP180mm、APS-Cサイズ判(Di II)はSP60mmマクロレンズの、たった3本ぐらいしかなかった。
 タムロンのレンズラインナップの主流は圧倒的にズームレンズである。ズームレンズについては歴史も技術もある。とくに高倍率ズームでは常に先頭を突き進んできた。しかし単焦点レンズは数も種類も大変に少ない。シグマのほうは次々と魅力的な単焦点レンズを発表してきている。はたから見ていると、タムロンはまるで意地になっているかのように単焦点レンズを避けているかのようだった。
 長年「タムロン単焦点レンズ」に期待を寄せてきたぼくとしては、残念至極を通り越して数年前あたりからすっかり諦めていたほどだった。だから発表には少し驚いた。

 発表されたSP35mmとSP45mmの2本のレンズの特徴のおもなところは、(1) F1.8の大口径高性能レンズ、(2) F1.8の35mm/45mmのわりには少し大きめ重め、価格ちょっぴり高め、(3) 大口径レンズなのに手ぶれ補正(VC)機構を内蔵、(4) かなりのクローズアップ撮影が可能、(5) いままでのSPを一新させた「新SP=Super Perfomance」シリーズ、(6) 外観デザインとブランドロゴを刷新、変更、などなど。

 タムロンの英文字ブランドロゴは、大文字小文字アルファベットの入り混じったもの(「M」と「N」が小文字)だったのが、新SPレンズではすべて大文字アルファベットのロゴになった。
 ほらこんな具合だ

 左が、従来の大文字小文字混合型ロゴのレンズキャップと新2本レンズのプレスリリースのロゴ。右が、大文字統一型ロゴの新SPレンズキャップと新レンズカタログのロゴ。
 つまり、タムロンの公式書類などのロゴは従来型ロゴを、新SPレンズ関連だけは新型ロゴを、というふうに入り乱れている。ちょっと珍しい現象ですね。で、その新ロゴをよく見ると、カタログの新ロゴにはレジスト(R)マークが付いていない。まだ商標登録していないのだろうか……ぼくが心配することじゃないけど。

これから単体デジタルカメラはどうすればいいのか

アップル・iPhone 6S Plus

 最近のスマートフォン内蔵カメラの性能や画質が、一般的な単体コンパクトデジタルカメラよりも優れているようだ。さらに、スマホ内蔵カメラには、撮った写真の世界を広げてくれるアプリケーションソフトもたくさんある。スマホ内で手軽に処理できる。グラフィック・ユーザー・インターフェースもとてもいい。そうして仕上げた写真を、Wi-Fiや電話回線を使って素早く転送して友人や家族と共有することもできる。
 似たようなことは、いまのコンパクトデジタルカメラでもできないことはない。しかし操作性やスピード、わかりやすさという点では格段にスマホのほうが勝っている。




 いまのスマホ内蔵のカメラに足りないところといえば、望遠や広角といった撮影画角の多様さ、そして防滴防塵などのオールウエザー機能ではないか。
 しかしながら、そんな機能なんて数年後のスマホには当たり前のように取り入れられるだろう。ズーム倍率3倍や5倍のレンズがスマホに組み込まれるのは2~3年も待たなくてもいいかも。レンズ交換式スマホカメラなんて夢でもなんでもない。防滴仕様のスマホなんてすでに製品化されている。
 ライトフィールドカメラのように、撮影後に自在にピント位置を選んだり、ぼけの大きさを可変できたりするスマホなんて夢でもなんでもない。スマホのカメラの自動化はどんどん進化して、誰でもが容易に失敗なく写せるようになるに違いない。

 「カメラ」を使って写真を撮る、写す、その目的は大別して2つあると思う。1つは「記録」するため、もう1つは「表現」するため。
 記録のための写真は失敗なく確実に、正しく写ることが最重要だ。ぼけたり、ぶれたり、明るさが不安定に写るようなカメラは不適格である。失敗なく操作容易な全自動式カメラが記録写真を写すにはベストだ。進化したスマホ内蔵のカメラがその役目を果たすだろう。
 となると、中途半端な(といっちゃナンだけど)コンパクトデジタルカメラはスマホ内蔵カメラに到底太刀打ちできなくなる。レンズ交換式のカメラだって、うかうかしてられない。

 では、これからの単体カメラはどうすれば生き残っていけるだろうか。
 安全確実に「記録」するためのカメラ要素を排除していくことだろう。ユーザに媚びを売らないことも。「表現」するためのカメラに徹することではないか。
 表現のための写真は創造性、偶然性、芸術性が大切となる。カメラ操作に未熟であれば失敗することもあるだろうが、決められた所作を守って撮影すれば自分の意図した写真が撮れる、あるいは期待した以上の出来上がりの写真も得られる。写して「表現」するためカメラは、撮影する人の夢や思いを実現してくれるような、そんな可能性を秘めたものであるように思う。

 フールプルーフの仕掛けや、誰でもが容易に撮影できる全自動モードを組み込み、スマホ機能の3割程度のものをカメラに付け加えて、ユーザに媚びるような単体カメラは将来は存在意義がなくなるかもしれない。
 さらに進化発展していくだろうスマホ内蔵カメラに対して、単体カメラがこれから向かうべきところはフィルム時代のカメラのように、カメラそのものを指先で操作して人々に写真で表現することの愉しさを再認識してもらう、そんなカメラをめざすべきではないだろうか。

スマホ内蔵カメラの画質について

アップル・iPhone 6S Plus

 iPhone 6S Plusに使用しているイメージセンサーのサイズは、多くのコンパクトデジタルカメラに使われている1/2.3型よりもさらに小さな約1/3型ぐらいの裏面照射型といわれている(正確なスペックは不明)。画素数は約1200万画素(こちらはアップルが公表)。
 そこで同じ1200万画素クラスのデジタルカメラ(センサーサイズは1/1.7型、4倍ズームレンズ内蔵、機種名は敢えて秘す)と撮り比べてみたのだが、見かけ上の解像感はiPhoneのほうがだいぶ優れている。諧調描写力はほぼ互角か。

 iPhoneは単焦点レンズだから写りがいいのだろう、といったって、たぶんオールプラスチックでレンズ構成は不明だが豆粒のようなレンズだ。いっぽうの単体カメラのレンズはといえば、4倍ズームではあるが10枚以上のガラスレンズを使っている。F値も明るい、堂々たるレンズだ。




 上の写真がiPhone 6S Plusのものだが、画面の中に太陽を写し込んでいる。撮影場所は代官山の西郷山公園。フレア/ゴーストはほとんど目立たずなかなか優秀。少しゴーストが出ていて、わずかにフレアっぽいぐらいで画面全体のコントラストはほぼ不満ない。木々の小さな葉っぱも見分けがつき、解像力は立派。

 こちらがオリジナル画像。露出補正もピント指定もしていない"ス"のままで撮影。4032×3024Pixelの大きな画像だ。

 この同じシーンを同じフレーミングで、1.0型センサーのコンパクトカメラ(約2000万画素)で撮って見比べてみたが、iPhone はかなり善戦している。フレア/ゴーストについては、単体カメラのほうがiPhoneよりも目立つ(ズームだから不利だとしても…)。画像を大きく拡大して見比べない限り、差はまったくない。
 暗い夜景でも撮り比べてみたが、iPhoneのほうはぎりぎりまで低ISO感度でがんばるようにプログラミングされていて(手ぶれ補正があるからだろう)、ノイズはそれほど目立たない。

 ただ、裏で画像処理をかなりあれこれやっているようで、とくにシャープネスは強めだし、彩度も高い。そのせいで見かけ上の解像感が高いのかもしれない。
 内蔵の光学式手ぶれ補正は驚くほどよく効く。1/4秒ぐらいのシャッタースピードでもほとんどぶれが目立たない。これにはびっくり。なにか特殊な画像処理を加えて、ぶれを目立たなくしているのではないだろうか。

 いずれにしろ、たくさんの画像処理を施して強引に見栄え良く仕上げているので、画質はぎりぎりの限界状況。言い換えれば、iPhoneの画質は「薄い=弱い」感じ。対して、単体デジタルカメラのほうは画質には「厚み=強い」感じがする。
 そのiPhoneの画像に後処理で、たとえば少しシャープネスやコントラストを加えると、とたんに画質は破綻する。iPhoneで写した画像はできるだけそのままで使用する、後処理をしない、というのがポイントかも。

 …でも、しかし良く写るよなあ、ほんとに。「カメラもどき」なんて悪口を言って、すまなかった。

スマートフォン内蔵の「カメラもどき」のくせに…

アップル・iPhone 6S Plus

 アップルの新型 iPhone 6S Plus を、発売とほぼ同時に手に入れたものの、せっかくのカメラ機能がウリのiPhoneなのにそれを使って撮影することはほとんどなかった。ぼくにとって、iPhoneの使用目的は電話、メールのチェック、地図や検索などで写真を撮る道具ではない。
 ちょいとそのへんに出かけるときでも、スマートフォンは持たないことはあっても(よく忘れる)、しかし単体カメラだけは必ず持っていくぐらいだから、写したいと思ったときは迷わず単体カメラのほうを使う。扱い慣れたよく写るカメラがあるのに、スマートフォン内蔵の「カメラもどき」で写そうなんて気持ちにはならない。




 けれど、せっかく手に入れた新型iPhone、そうだ、いまどきのスマホ内蔵カメラの写りって、いったいどんなもんだい、ちょっと試してみようか、と単体カメラと撮り比べたりしてみたら、いやいや、ほんと驚きましたよ、ぼくの予想を遙かに越えるその写りの良さに。
 知人に聞くと、iPhone以外の新型スマホ内蔵のカメラでもそれくらいの、いやそれ以上の性能があるという。こんなに良く写る「カメラ」が、その存在をまったく感じさせないで薄くて軽いスマートフォンに内蔵されているのだから、そりゃあコンパクトカメラが売れなくなるはずだ、とあらためて感じ入った次第。

 というわけで、ぼくの iPhone 6S Plus に内蔵されている「カメラ」がどれほどの性能なのかちょっと調べてみたら、画素数は約1200万画素、イメージセンサーのサイズは(確かなことは不明だが)裏面照射の1/3型ぐらいのCMOSか。ピント合わせはもちろんAFで、なんと像面位相差AFの機能も備えているらしい。レンズはF2.2固定の単焦点で画角は約30mm相当、光学式手ぶれ補正の機構も内蔵している、と。ISO感度はISO25~2000までのオートのみ。WBもオート固定。
 静止画撮影モードでは約10コマ/秒の高速連写やパノラマ画像も撮影できる。動画撮影モードにいたっては、4K(30fps)、フルHD(30fps/60fps)、スローモーション(120fps/240fps)、タイムプラス……、「カメラもどき」のくせにすごいじゃないか。

PowerShot G5 Xを「一番」としてすすめた理由

キヤノン・PowerShot G5 X




 PowerShot Gシリーズの中でG5 Xが、ぼくが「一番」としておすすめする理由は、コンパクトデジタルカメラとして必要な機能(機構)が備わっていて、必要な条件(大きさ軽さのバランス、操作性の良さ)をほぼ満たしているから。ただし、あくまでキヤノン・PowerShot Gシリーズの中で、という限定条件付きだけど…。

 視認性の良いEVFを内蔵、バリアングル式は残念だが可動式の液晶モニター、約2000万画素の1.0型センサー、F値の明るい24~100mm相当のズームレンズ、クリップオンタイプのストロボなども使えるアクセサリーシュー。G9 XやG7 Xと比べるとボディサイズや外観のスマートさにやや欠けるけれどコマンドダイヤルや十字キーもあって操作性は良い。
 写りについては、まったく不満はない。よく写る。
 メニューのGUIもそうだが、カメラ操作方法のほとんどはレンズ交換式EOSシリーズに似せているから、同時使用してもほとんど違和感がない。
 内蔵ストロボも一眼レフの内蔵ストロボと同じくファインダー(EVF)の真上、レンズ光軸上にある。ウマくコンパクトに収納させている。

 ところで、キヤノンのコンパクトカメラはずっと古くからそうだが、内蔵ストロボ発光部の位置にはかなりこだわっている。他社の多くのコンパクトカメラが、配置スペースが確保できないなどの理由でグリップ側(カメラに向かって左側)に安易に平気で発光部を設けたりしているのに対して、キヤノンはとことんグリップ側とは反対側(カメラに向かって右側)にレイアウトしている。どんなに小さなカメラでも必ず向かってレンズの右側(またはレンズ光軸上)にある(PowerShot D30のような"特殊"カメラは別だけど)。

 グリップ側にストロボ発光部があると、小さなカメラだととくにそうだが、つい不用意にを握ったりすると指先で発光部を隠してしまう。それを避けようとすると、こんどは安定したカメラグリップがしにくくなる。そんなコンパクトカメラが多い中、キヤノンのカメラだけいは違った。
 話が横道に逸れたついでにもう1つ言えば、ストロボ発光部が右側にあるメリットは縦位置にカメラを構えたとき。一眼レフではシャッターボタンを上にして構える場合が多いが、コンパクトカメラではシャッターボタンを下にして構えることが多い(いやそうじゃないおれは逆だ、という人がいるだろうが少数派だね、たぶん)。

 発光部がグリップ側にあると、シャッターボタンを下に構えたとき、ストロボ光は下から発光して不自然なフットライティングになる。グリップ反対側に発光部だと、そうした不自然さは避けられる。
 G5 Xのストロボ発光部がレンズ光軸上にレイアウトされたのは、おそらく操作ダイヤルの配置を優先させたのも理由のひとつだろう。結果的に、とてもいい場所にレイアウトされた。

 G5 Xは実際に使っていて感心したことは、新型カメラにありがちな戸惑いがまったくなかったこと。使用説明書を読む必要もなく、いままで使い慣れてきたカメラとかわらずスムーズに使えたことがよかった。価格はやや高め、外観スタイルも無骨、とくに「コレ」といった特徴はないけれど、カメラとしてのツクリもいいし、安心して使える良いカメラだと思う。