最短撮影距離1.4メートル

オリンパス・OM-D E-M1+M.ZUIKO DIGITAL ED 300mmF4 IS PRO

 一般的にだがレンズ設計をするときは無限遠での描写性能を優先する。だから近距離での描写は遠距離よりもどうしても劣ってしまう(正確に言えばソレだけではないのだが)。それを防ぐために考え出されたのが近距離補正のためのフローティングシステム。

 ピント合わせを1枚または1群だけを前後させておこなうのではなく、2枚以上または2群以上のレンズ群を撮影距離に応じて、間隔を変化させながら近距離時に目立ってくる収差を補正する、と、まあ、そんな方式。フローティング方式を取り入れることで近距離時の描写性能を低下させない。
 最近のオリンパスのレンズでいえば、最短70センチのM.ZUIKO DIGITAL ED 40~150mmF2.8 PROがフローシングシステムを採用している。




 ところが300mmF4 ISレンズはそうしたフローティング方式を採用していないのに近距離撮影時の描写性能がめちゃくちゃ良い。

 なぜ600mm相当もの超望遠レンズで最短が1.4メートルなんて超至近でも描写が悪くならないのか、とそのへんのことを設計者に聞いてみたのだけど、うんちゃらかんちゃら説明してもらったのだがぼくにはよく理解できない。
 それはともかく、実際に撮影してみればわかるが至近に近い距離で撮影しても画質がすこぶるいい。600mm相当で1.4メートルだから ━━ 300mmF4 ISはインナーフォーカスなので実質的には焦点距離は約230mm=460mm相当ぐらいになる ━━ マクロレンズなみのクローズアップ撮影が一定距離間隔を保ちながらできる。

 そのような至近距離で手持ち撮影をしようとすると、手ぶれについては優秀だから心配はないがピント合わせが、これが非常に難しい。フレーミングはシャッターボタン半押しをしていれば手ぶれ補正システムが駆動しているから安定しているが、ピントを合わせた後にごくわずか(本人がまったく気づかないほどでも)前後しただけで大きくピンぼけになってしまう。
 このへんがちょっと悩みどころだが、苦労して撮影し、バシーッとピント合った写真をモノにしたときは、ちょっと嬉しくなる。

 ところでピントの話のついでに思い出したことだが、オリンパスのカメラには「持病」があるんだ、とぼくは以前から言っていた。2つあって、1つはシャッター機構によるショックが手ぶれ補正に悪影響を及ぼして"微ぶれ"してしまうこと。これについては、シャッター機構をあれこれ改善することで今ではほぼ"完治"した。
 もう1つの持病はAFだ。通常一般の撮影ではほとんど気にはならないレベルなのだが、特定の撮影シーンや、ちょっとタイトな条件になると、とたんにイクジがなくなる。治療はしているようだが、いまだ治らず。他社の同等のカメラに比べて周回遅れという感じがしないでもない。

 レンズはどしどし素晴らしいものを生み出しているし、魅力的な性能やスタイルのカメラを作り出しているのに、AFに持病を抱えたままってのは残念ですね。近い将来、大幅改善されて懸案の持病は完治するだろうと思うが、いっときも早く元気な姿を見たいです。

 というわけで300mmF4 ISの話の続きは26日、27日、28日のCP+オリンパスのブースで。
 そこでは、オリンパスからレンズ設計担当の加藤さん、手ぶれ補正担当の竹内さんにおいでいただきあれこれお話しを聞いてみる予定です。あ、AFの話はしません……。


5軸シンクロ補正の追加説明

オリンパス・OM-D E-M5 Mk2+M.ZUIKO DIGITAL ED 300mmF4 IS PRO

 レンズ内の手ぶれ補正と、カメラボディ内の手ぶれ補正を完全シンクロ動作させてぶれ補正効果を高めたのがMZ ED 300mmF4 IS PROの5軸シンクロ手ぶれ補正である。この5軸シンクロ手ぶれ補正はカメラボディもそれに対応している必要がある。現在のところ対応ボディはE-M1、E-M5 Mk2、PEN-Fの3機種だけだが今後もっと増えてくるだろう。

 沖縄北部の古宇利島大橋を600mm相当の超望遠で。冬の沖縄では珍しい強風吹きすさぶ中で、ふらふらしながらの手持ち撮影である。




 ところで、ソニーやパナソニックでは、すでにレンズ内のISとボディ内のISを"同時に"動かしながらぶれ補正をおこなっているカメラとレンズはある。しかしオリンパスのそれと決定的に違うのは、ソニーもパナソニックも厳密に言えば「完全同時シンクロ」ではない。ぶれの動きやぶれ補正の機能によって、レンズ内ISとボディ内ISをそれぞれ役割分担しているだけなのだ。

 手ぶれ補正はレンズ内ISやボディ内ISの違いにかかわらず、画素ピクセルの数分の一以下というきめ細かなピッチを、超高速に移動させてぶれ補正をおこなっている。非常に精密な動作だ。その精密緻密な動き完全に同調させコントロールしているのが5軸シンクロ補正である。
 シンクロ動作が少しでもズレると、ぶれ補正どころか逆にぶれが強調(過補正)されてしまうことになる。寸分の狂いもなくミクロン単位の動きを完全に制御しなければならない。

 手ぶれを検出するには、角度ぶれ、平行ぶれ、回転ぶれを検知するためのそれぞれ専用のセンサーが必要。たとえば角度ぶれ検出のためにはジャイロ(角速度)センサーを使用する。X軸Y軸方向の2軸を検知するためにワンセット2個が必要となる。
 オリンパス5軸シンクロ補正をおこなうには、その2個ワンセットのセンサーがレンズ内とボディ内にそれぞれ組み込まれ、センサーは完全に同じ検知能力を備えてなくてはならない。レンズ内ISの検知情報とボディ内ISが検知した情報にズレがあったのでは同時シンクロ補正はできない。

 工業製品はすべてそうだが、どれだけ丁寧に作ってもわずかだがバラツキが生じる。大量生産するすべての製品がまったく同じ性能、公差がゼロなんてあり得ない。どれほど精密に製造されたジャイロセンサーにしても、ごくわずかの性能バラツキはあるはずだ。
 しかし、バラツキをゼロにしないことにはシンクロ補正は不可能なはず。それをオリンパスはどのようにして可能にしたのか、とぼくは担当者に聞いたのだが、それについては「あははは、ここからは企業秘密ですから…」と、いっさい教えてくれない。

 そのようにして(ナニをどうしたかさっぱりわからないが)レンズ内センサーとボディ内センサーの性能を誤差ゼロにしたうえで、完全シンクロさせ、独自の制御アルゴリズム(これがまた秘密のカタマリ)によって補正段数をアップさせている。これが世界初の5軸シンクロ手ぶれ補正なのである。

 300mmF4 ISレンズは4段の補正効果、E-M5 Mk2やPEN-Fなら5段の補正効果がある。だったら、2つあわせて同時シンクロさせるのだから8段や9段ぶんのぶれ補正効果にはならんのか、とそう考える人がいるだろうけど、そりゃあムチャな要求というもの。
 将来的にはもう少し補正段数はアップするかもしれないが、でも、せいぜい6.5段ぐらいだろう。補正効果7段なんてちょっと不可能かもしれない、いや、できるかも…。

5軸シンクロ手ぶれ補正

オリンパス・OM-D E-M1+M.ZUIKO DIGITAL ED 300mmF4 IS PRO

 下の写真は、人が歩くとゆらゆら揺れる陸橋の上から、300mmF4 IS(600mm相当)の超望遠レンズを使って、なににも寄りかからずに手持ち撮影したもの。シャッタースピードは「1/15秒」だった。
 これくらいのシャッタースピードなら、たぶん初心の人でも気軽に手持ち撮影できるだろう。オリンパスの300mmF4 ISとはそんなレンズなのだ。




 オリンパスの300mmF4 ISレンズ(実質600mm相当のレンズ)はレンズ内のIS(手ぶれ補正のシステム)と、カメラボディ内のISとを完全同調させ動作することで6段ぶんの手ぶれ補正効果が得られる。
 ここでいう6段ぶんは、いわゆる角度ぶれ補正の効果だけ。オリンパスの多くの現行機種は平行ぶれや回転ぶれに対しても補正できる機能を備えているので、総合的にぶれ補正効果を考えるなら「6段以上」といえるかもしれない。
 これがオリンパスがいうところの「5軸シンクロ手ぶれ補正」である。

 ただし、5軸手ぶれ補正に完全同調するカメラボディは、現在のところE-M1、E-M5 Mk2、PEN-Fの3機種に限定されている。この3機種についてはユーザーが「自分はレンズISだけを使いたい」とか「ボディISだけを使って撮影したい」と要求してもそれはできない。
 300mmF4 ISレンズをその3機種にセットして手ぶれ補正撮影をしようとすれば"強制的"にレンズ/ボディのISが完全同調する5軸シンクロ方式になる。あるいは、どちらのISも同時にOFFできるだけ。
 理由はカンタンだ。ぶれ補正効果は、レンズISだけ使ったところで4段ぶん、ボディISだけなら600mm相当だからとても4段ぶんもない。オリンパスがあれこれ検証を重ねたところ、5軸シンクロ手ぶれ補正の「デメリット」はまったくない、との結果だそうだ。

 この5軸手ぶれ補正の効果は、ほんとすごい。
 ぼくが実際に何度も何度もたくさん撮影してみた結果では、なにも寄りかからずに"素立ち撮影"のとき確率50%で「1/2秒」までぶれない。カメラを構えたカラダを壁や電柱などに寄りかかって撮影すれば「1/2秒」でも確率70%ぐらいで手持ち撮影ができた。

 ウソじゃないの…、そんな大袈裟な…、と思われても仕方ないが ━━ もしそう疑うなら、実際にやってみろっ、と言いたいね ━━ 600mm相当の超望遠レンズを使って三脚もなしで「1/2秒」でも手持ち撮影ができるということは、そうした超望遠レンズを少し使ったことのある人にとってはにわかには信じられないほどのことだろう(じつは確率は30%以下になるが、しっかりと寄りかかりながら慎重にシャッターを切れば「1秒」でもぶらさずに撮影ができた)。

 「1/8秒」ぐらいならぼくは鼻歌レベルで手持ち撮影ができる。だからそれがどーしたっ、と突っ込まれると困るけど……。

片手で持てる600mm超望遠レンズ

オリンパス・OM-D E-M1+M.ZUIKO DIGITAL ED 300mmF4 IS PRO

 来週、2月25日から28日まで横浜でCP+が開催される。ぼくは、オリンパスブースで26日から最終日28日まで3日間、この300mmレンズについてオリンパスの開発者と対談する予定。しかし、時間的な制約もあるしオリンパスに気を使わなくてはならないし同席の開発者の話をしっかりと聞き出すようにしなければいけないし……だからその場でぼくの"身勝手な感想"をべらべらと述べてられない。他社製品と比べての相違点や優位点などデリケートな話も(紳士協定もあるので)述べることはできない。
 というわけで、CP+の前に300mmレンズについて「事前の超個人的解説」をしておきましょう。




 この300mmF4 ISは実焦点距離は300mmだが、マイクロフォーサーズのカメラで使用することで600mm相当画角のレンズとなる。素直に「600mmF4 IS」レンズであると受け取っておけばいい(焦点距離は300mmじゃないか、などと屁理屈はいらない)。

 「600mmF4」レンズとしては画期的な小ささと軽さである。描写性能は飛びっきり良い。おべんちゃらでもヨイショでもなく、ほんとうに良く写る。
 レンズは大きくて重いほど描写は良い。重くて大きいレンズで、写りはそこそこなんてレンズはいまはない。これは一般常識。でもだからといって、軽くて小さなレンズは良くない、とは決して言い切れないのだ。しょっちゅうぼくはそう言っている。

 数はめっぽう少ないが、中には軽くて小さなレンズでも素晴らしい描写性能を備えたレンズもある。それが、このオリンパスのレンズだといっていい。片手でほいっと持って気楽に構えて撮影できる「600mmF4」レンズだ。

 というのも、その「600mmF4」レンズはレンズ内に手ぶれ補正(IS)の機構を内蔵しているからでもある。いわゆる光学シフト方式のISである。オリンパスの交換レンズとしては(たぶん)初めてのレンズ内IS方式である(コンパクトカメラ用の固定式レンズにはレンズ内ISを採用したものはあるが)。

 手ぶれ補正の補正段数はCIPA基準で約4段ぶん。600mm相当のレンズだから、かりに1/500秒~1/250秒が手持ち撮影限界シャッタースピードとすると、単純計算で「1/30秒~1/15秒」のスローシャッタースピードでぶらさずに撮影ができるということになる。
 さらに、OM-D E-M1やPEN-Fなど一部の対応カメラと組み合わせると、「世界初」の5軸同時シンクロ手ぶれ補正により「約6段ぶん」のぶれ補正効果が期待できるという。こりゃあ、すごいこと。


ポルシェ356…

ニコン・D810+シグマ・20mmF1.4 DG HSM




 フルサイズ判一眼レフカメラ用の大口径の20mmレンズとしては、ニコンの「AI-S NIKKOR 20mmF1.8G ED」があるくらいで、現在、「20mmF1.4」という明るいレンズはない(たぶん…)。
 「F1.8」と「F1.4」とは約2/3EVほどの違いしかない。明るさは一絞りぶんもない。しかし、20mm超広角ともなれば2/3絞り明るくするだけでも、レンズ設計上の難易度は桁違いにアップする(F1.8でも相当に難しいだろうけど)。
 さらにF1.4の開放絞り値でも、"そこそこ"の描写性能を確保しつつ、レンズのサイズや重さ、価格にも配慮するレンズを作りたいと勇気のある人が企画しても、おそらく多くのメーカーでは企画書さえ読んでももらえないだろう。

 苦労して設計し製造して発売したところで、はたして期待するほどの本数が売れるかと言えば、いやいや、期待できるような数は売れないだろう。儲けにもならない。
 そんなことは百も承知千も合点のうえで、シグマの責任者が ━━ 社長の山木さん、だろう ━━ GOサインをしたことの、その「意味」を考えてしまう。
 20mmF1.4レンズを販売して得られる利益よりも、シグマのブランドイメージをアップさせることや、開発者や製造技術者たちシグマ社員のモチベーション(やる気)を奮い立たせることのほうに山木さんは価値を見いだしたのではないだろうか。

 いっぽう、ぼくたちユーザーにしてみれば、カメラもレンズも、いままでになかったような新しいスペックや優れた性能を備えた新製品が発表されれば、(いますぐ購入できなくても)なにかしら「心うきうき」するものだ。

 カメラもレンズも写真を撮るためのただの道具じゃないか、性能が良くて安くて壊れなければいいのだ、といわれればそれはそうなんだけど、しかしだからといってカメラやレンズに性能以外の夢や希望やわくわく感がまったくないというのは困る。

 あのレンズを使えば、いままでとは違った「いい写真」が撮れそうだ、と思わせるような(錯覚させるような)雰囲気を持った製品を、最近のシグマは、ぽつりぽつりと作って発表していて、そこがなんとも魅力的だ。
 クルマだってそうじゃないですか。たとえばマツダのロードスターやポルシェの356に乗って出かけたりすると素晴らしい景色に出会ったりするかもしれない、そんな気分かも。

使いこなしには「覚悟」が必要なレンズ

ニコン・D810+シグマ・20mmF1.4 DG HSM




 大きい重い(尋常じゃないほどの)レンズだから、当然ながら良く写る。大きくて重いのに、写りはまあまあなんてレンズは最近ではめったに見かけないが、でもそれにしても思い切ってシグマはよくもまあ、こんなに堂々たるレンズを作って売っているなあと感心する。約1キログラムのレンズ。
 20mmという超広角レンズながら開放F値はF1.4と大口径。それが10万円そこそこの価格というのにも驚く。

 シグマは2年ほど前から、ナニかがふっきれたように我が道を驀進するようになった気がする。まるでターボ付きエンジンのクルマに乗り換えたみたい。発表する製品も個性的で性能もいいし注目度も高い。シグマのブランドイメージも大きく変わった。
 来週にはCP+が始まるから、数日後にはシグマからまた「おおっ」というような"常識外れ"のレンズが発表されるに違いないだろう。愉しみ…だけど、また大きくて重いレンズを出してくるんだろうなあ。

 F1.4開放絞りでも、画面中央部の解像描写性能は素晴らしい。さすが画面四隅あたりは像が流れるが少し絞れば(F2.8~F4)がぜん良くなる。じつにシャープで力強く男性的な描写だ。ディストーションも大変に少ない。なよなよとした曖昧なところがない。描写の"良さ"が初心の人にでもわかりやすい、そんなレンズ。
 ただし使いこなしは、そう簡単ではない。超広角特有のパースペクティブとディフォルメーション(ディストーションではない)、そしてF1.4の浅いピントと超広角の深いピント。それらを吟味しながら頭を使って撮影ポジションやカメラアングルを決めていかなくてはならない。