ポルシェ356…

ニコン・D810+シグマ・20mmF1.4 DG HSM




 フルサイズ判一眼レフカメラ用の大口径の20mmレンズとしては、ニコンの「AI-S NIKKOR 20mmF1.8G ED」があるくらいで、現在、「20mmF1.4」という明るいレンズはない(たぶん…)。
 「F1.8」と「F1.4」とは約2/3EVほどの違いしかない。明るさは一絞りぶんもない。しかし、20mm超広角ともなれば2/3絞り明るくするだけでも、レンズ設計上の難易度は桁違いにアップする(F1.8でも相当に難しいだろうけど)。
 さらにF1.4の開放絞り値でも、"そこそこ"の描写性能を確保しつつ、レンズのサイズや重さ、価格にも配慮するレンズを作りたいと勇気のある人が企画しても、おそらく多くのメーカーでは企画書さえ読んでももらえないだろう。

 苦労して設計し製造して発売したところで、はたして期待するほどの本数が売れるかと言えば、いやいや、期待できるような数は売れないだろう。儲けにもならない。
 そんなことは百も承知千も合点のうえで、シグマの責任者が ━━ 社長の山木さん、だろう ━━ GOサインをしたことの、その「意味」を考えてしまう。
 20mmF1.4レンズを販売して得られる利益よりも、シグマのブランドイメージをアップさせることや、開発者や製造技術者たちシグマ社員のモチベーション(やる気)を奮い立たせることのほうに山木さんは価値を見いだしたのではないだろうか。

 いっぽう、ぼくたちユーザーにしてみれば、カメラもレンズも、いままでになかったような新しいスペックや優れた性能を備えた新製品が発表されれば、(いますぐ購入できなくても)なにかしら「心うきうき」するものだ。

 カメラもレンズも写真を撮るためのただの道具じゃないか、性能が良くて安くて壊れなければいいのだ、といわれればそれはそうなんだけど、しかしだからといってカメラやレンズに性能以外の夢や希望やわくわく感がまったくないというのは困る。

 あのレンズを使えば、いままでとは違った「いい写真」が撮れそうだ、と思わせるような(錯覚させるような)雰囲気を持った製品を、最近のシグマは、ぽつりぽつりと作って発表していて、そこがなんとも魅力的だ。
 クルマだってそうじゃないですか。たとえばマツダのロードスターやポルシェの356に乗って出かけたりすると素晴らしい景色に出会ったりするかもしれない、そんな気分かも。