CIPA準拠の手ぶれ補正について荒っぽく解説

タムロン・SP 90mmF2.8 Di MACRO 1:1 VC USD+ニコン・D750

 このSP90mmマクロはレンズ内に手ぶれ補正の機構を内蔵し、角度ぶれ補正とシフト(平行、並進)ぶれ補正に対応している。CIPA規格に準拠した測定方法で「3.5段」の補正効果がある。ただし、その補正段数は角度ぶれについてだけの効果で、シフトぶれの補正段数についてはタムロンはいっさい公表していない。……と、いうことは先日ここで述べた。

 CIPA準拠によるぶれ補正効果とは、CIPA(写真機工業会)が定めた測定方法と判定方法に基づいて算出した値を基準にしている。CIPAに参加しているカメラメーカーやレンズメーカーは、この測定方法にのっとって補正段数を公表している。補正段数はの1段ふんはシャッタースピード1段ぶんに相当する。

 補正段数の公表は強制ではない。測定結果が思わしくなければ公表しなくてもよい。しかし、もしCIPA準拠として公表するときには、定められた測定と判定をおこなったうえで、測定条件(測定に使用したカメラ、ズームの場合は測定した焦点距離)もあわせて公表することになっている。




 測定方法は ━━ 内容は大変に複雑で専門的 ━━ CIPAが決めた加振台(一定のパターンで上下左右に自動的にぶれる装置、数社の製品がある)にカメラとレンズをセットして、定められた被写体(平面のチャート図など)を撮影する。ぶれ補正をON/OFFにしたり、シャッタースピードを変えて撮影する。
 ぶれ補正ON/OFFで撮影した画像のぶれ量(ボケ量)をチェックして、ぶれ補正OFFのときとONのときの「差」を判定し補正段数を算出する。
 人間が実際にテスト撮影をすると、個人差などによりいつも安定した結果が得られにくい。「機械」が同じパターンで測定をおこなったほうが、なにかと都合が良いというわけだ。


 補正段数は「0.5段」刻みで切り捨て方式。つまり実際に撮影して測定した結果、たとえば補正効果が「3.9段」だったとしても「3.6段」だったとしても、「3.5段」として公表することになっている。また"約"3.5段などと曖昧な表記はしてはいけないことになっている。
 このCIPA準拠の補正段数は、角度ぶれ補正だけについての補正効果である。かりにシフトぶれ補正や回転ぶれ補正の機能を備えていたとしても、CIPA準拠としての補正効果は角度ぶれ補正だけに限定されている(電子式手ぶれ補正も補正段数は測定しないし公表もしない)。

 なぜ、シフトぶれ補正や回転ぶれ補正も、同じようにCIPA準拠として測定して補正効果を公表しないのか。これについては、ほら、いろいろと「大人の事情」があるわけですよ。どことは言わないが、影響力のある大きなメーカーが採用しているレンズ内手ぶれ補正では、回転ぶれ補正は逆立ちしてもできない。
 せいぜい、できるのはシフトぶれ補正だが、それもまだ採用していない(できない)メーカーもある。そんなメーカーを置いてきぼりにするわけにもいかないし…。皆んなで仲良くやっていくというのがCIPAの望むところなので、不要な波風は立てないほうがいいというわけだ。

 ところで ━━ 話を戻す ━━ 公表しているその補正段数だが、ぼくがいままでたくさんの手ぶれ補正機能を(レンズもボディも)試してみた結果、ほとんどのレンズやカメラで、公表している数値よりも補正効果は良かった。たとえば、ぼくの場合だけど「CIPA準拠で3.5段」と公表している製品では、「4段」またはそれ以上の補正効果があることがほとんどだった。
 タムロンのSP90mmについても、ぼくがテストしてみたところ確実に4段ぶんの補正効果があった(約3600万画素のカメラを使って撮影した画像をピクセル等倍で目視チェック)。
 もし、公表しているCIPA準拠数値よりも低い補正段数しかない、といった場合には、カメラの構え方やシャッターを押すときのタイミングなどを、いま一度、確かめるなり反省してみるべきですね。

マクロレンズは万能レンズ

タムロン・SP 90mmF2.8 Di MACRO 1:1 VC USD+ニコン・D750

 マクロレンズはクローズアップ撮影専門の「特殊レンズである」と思い込んでいる人がいるようだが、そうではなく、マクロレンズは無限遠からレンズ前面数センチのものまで自在にピントを合わせて撮影ができる「万能レンズ」と言ったほうがぴったりする。
 また、マクロレンズは至近距離の描写を優先させているため中距離、遠距離の描写はイマイチではないかと考えるのも大きな間違いだ。最近のマクロレンズはどれも、近接撮影時だけでなく遠距離も中距離も近距離も優れた描写性能を発揮している。




 このSP90mmマクロレンズは、「マクロ撮影もできるオールマイティ中望遠レンズ」と思えばいいだろう。描写はタムロンのレンズらしく、カリカリぱりぱりではなく、少し柔らかめ。しかし解像描写力はじゅうぶんにある。
 風景でもポートレートでも、スナップでも料理でも、花でも虫でもナンでもストレスなく撮れる。大変に便利で使っていて精神衛生上にも良いレンズだ。

 50mmクラスのマクロレンズよりも、90から100mmクラスのマクロレンズのほうがワーキングディスタンスにも余裕があるし、それほど近づきすぎなくてもそこそこクローズアップもできるし、背景を大きくぼかして写すこともできるし、なにかと使いやすい。こういっちゃナンだけど、50mmクラスのマクロは初心の人、撮影入門者に適したレンズだ。少し撮影に凝り始めた人が選ぶといい。
 180から200mmクラスの望遠マクロレンズもあるがこちらは使いこなしが難しいし被写体も撮影シーンも限定されてしまう。専門家向け。

 というわけで次の単焦点レンズはなにを選ぼうか……と迷ったら90~100mmクラスの"万能マクロレンズ"を第一候補にすることをおすすめしたい。
 そのとき、キヤノンやニコンのようにボディ内に手ぶれ補正機能を備えていないカメラと組み合わせるときは、できるだけ手ぶれ補正を内蔵したマクロレンズを選んでおくのがいいだろう。

 マクロ撮影では三脚必須だから手ぶれ補正なんて必要ない、と考える人もいるかもしれないが、しかしいつもいつも三脚を使ってマクロ撮影するとは限らない。三脚が使えなくて、仕方なく手持ち撮影しなければならないことだってある。そんなときに手ぶれ補正のある、なしのレンズで大きな差がでてくる。
 とくに90mmクラスの中望遠マクロレンズは、至近距離だけでなく遠距離、中距離の被写体を気軽に撮影することも多いだろうから手ぶれ補正の機能があったほうがいいに決まってる。

平行ぶれ補正の効果を"実感"する難しさ

タムロン・SP 90mmF2.8 Di MACRO 1:1 VC USD+ニコン・D750

 少し間があいたが、前回のタムロンSP90mmマクロレンズの続き。
 前回の繰り返しになるが、タムロンは現在3本のSP90mmマクロレンズを"同時並行販売"している。同じ焦点距離で、同じF値で、同じくAF対応のマクロレンズを3本、同時発売してるメーカーなんて(たぶん)タムロン以外にはないはず。マクロレンズのタムロンの、その面目躍如。
 これが現行販売中の3本のSP90mmF2.8マクロレンズだ。左端が角度ぶれと平行ぶれ対応の新型90mm、真ん中が新型とまったく同じ光学系で角度ぶれ対応の旧型90mm、右端が手ぶれ補正なしの旧旧型90mm。




 新型SP90mmのレンズ構成は11群14枚で、旧型SP90mmも同じ。ただし全長と重量がほんのわずか異なる(全長で0.1mm重さで50g新型が大きい)。この重さの違いは、新型に搭載された平行ぶれ補正の機構のためだろう。

 旧型SP90mm(F004)は角度ぶれ補正だけに対応したVC機構が内蔵されていたが、新型SP90mm(F017)では角度ぶれ補正に加えて平行ぶれ補正にも対応する新VC機構を採用している。手ぶれ補正の補正段数も旧型が3段ぶん相当だったのが、新型では3.5段ぶん相当と性能向上している。いずれもCIPA準拠。

 なお、誤解があるといけないので注釈をすると、このCIPA準拠の手ぶれの補正段数は角度ぶれに対してだけである。CIPAの約束事としてそうなっている。
 平行ぶれ補正や回転ぶれ補正の機能を備えた手ぶれ補正システムでも、だから、角度ぶれだけに限定して補正効果を公表している。このタムロンの新SP90mmも、平行ぶれ補正は無視して角度ぶれだけが3.5段ぶんの補正効果があるということだ。

 平行ぶれは(並進ぶれ、シフトぶれ、などとも言うが)、通常の撮影距離ではほとんど影響を受けることはないのだが、至近距離の撮影になるほどわずかな上下左右方向のぶれが画質に影響してくる。それを防ぐ(補正する)というのが平行ぶれ補正の機構である。とくにクローズアップ撮影することの多いマクロレンズにはとても効果がある。

 角度ぶれ補正のためには、ぶれ検知のためにX軸Y軸2個の角速度センサーを使用する。平行ぶれ補正のためには加速度センサーを3個使用しなくてはならない。X軸Y軸、そして重力を検知するための合計3個だ。
 平行ぶれ補正は角度ぶれ補正に比べて難易度はかなり高いと言われている。理由はいくつかあるが、まず角速度センサーに比べて加速度センサーは反応が鈍い(といわれている)。X軸Y軸重力の3つの方向を検知して複雑な計算を瞬時におこなわなくてはならないからだ。

 そんな苦労をして平行ぶれ補正の機能を加えたとしても、角度ぶれ補正に比べてユーザーが平行ぶれ補正の効果をなかなか「実感」できない ━━ マクロ撮影時にはっきりと効果はあるのだが効果が薄くわかりにくい ━━ といういささか厄介なモンダイもある。

タムロンといえば90mmマクロ、90mmマクロといえばタムロン

タムロン・SP 90mmF2.8 Di MACRO 1:1 VC USD+キヤノン・EOS 5D Mark III

 タムロンの交換レンズといえば、マクロレンズと高倍率ズームレンズ。そのふたつはタムロン交換レンズの「顔」とも言えるレンズである。
 マクロレンズは30年以上も前に発売されたMFでマウント交換式の90mmF2.5が大変に評判が良く、それ以降モデルチェンジを繰り返し、F2.5からF2.8に、マウント交換式からマウント固定式に、MFからAFに、手ぶれ補正を内蔵、などなど機能や性能を向上させ、そして最新型マクロレンズとして発売されたのがこのSP90mmなのだ。




 最新型SP90mmマクロは4年ほど前に発売されたSP90mmマクロの機能アップ版レンズである。どんな機能がアップしたかといえば、手ぶれ補正が従来の角度ぶれに加えて平行(シフト)ぶれの補正機構を内蔵したことだ。あわせて、新しいSPシリーズのレンズデザインに変えられた。前モデルから現モデルになっての"変更点"はこのふたつのみで、レンズ構成などおもなスペックはまったく同じ。
 レンズ名称も、旧SP90mmが「SP90mmF2.8 Di MACRO 1:1 VC USD」で、新SP90mmは「SP90mmF2.8 Di MACRO 1:1 VC USD」と、まったく同じだ。じゃあ新旧のSP90mmをどのように分ければいいかと言えば、そう、あのタムロン独自のModel名で呼び分けるしかない。すなわち、新90mmが「Model F017」、旧90mmが「Model F004」ということになる。

 タムロンが現在販売するフルサイズ判対応の「SP90mmマクロレンズ」は3本ある。手ぶれ補正内蔵の新SP90mmと旧SP90mmに加えて、手ぶれ補正なしの旧旧型「SP 90mmF2.8 Di MACRO 1:1(Model 272E)」も並行販売されている。
 「どれでもアンタの好きな90mmマクロを選んで買って」というわけか。
 ちなみに、大型カメラ量販店でのいまの販売価格を見てみると、新型(F017)が約79000円、旧型(F004)が約61000円、旧旧型(272E)が約31000円だった。

 ところで、手ぶれ補正内蔵の新型も旧型も対応マウントはキヤノン、ニコン、ソニー用のみだが、手ぶれ補正なしの旧旧型はそれらに加えてペンタックスKマウント用もある(珍しい!)。
 本日のテーマ(新型SP90mmマクロの話)から大きくズレてしまうけれど、フルサイズ判のPENTAX K-1はボディ内手ぶれ補正(シフトぶれ補正もある5軸補正、5段効果)だから、K-1ユーザーには旧旧型SP90mmマクロは"狙い目レンズ"かもしれない。
 新型SP90mmの手ぶれ補正の話をしようと思っていたのだけど……それは次だな。

静止画カメラというより動画カメラ

リコー・RICOH WG-M2

 以下の動画は約20秒ほど。ラジコンカーの上にWG-M2をセット固定して撮影したもの。モーター音がちょっとウルさいのでご注意を。
 フルHDモードの動画で、ワイド(画角204度)、手ぶれ補正なし、AWB、ISOオート、ピントは固定パーンフォーカス。撮影場所がかなりのデコボコだったのと、ぼくがラジコンカーの操縦に不慣れなため、やや見苦しい動画になってしまった。「運転ミス」により、とうとう仰向けにひっくり返ってしまった。





 もうひとつ、こちらの動画は手に持って撮影。ゆりかもめの先頭車両から撮影。興味のあるかたはどうぞ(いずれもYouTube)。ラジコンカーの動画に比べて、だいぶキレイ。


 RICOH WG-M2に内蔵のレンズは1.6mmF2で、35mm判換算だと14mm相当になる。魚眼レンズで、画角はワイドとナローの切り替えができる。動画時はワイドが画角204度、ナローは151度、静止画時はワイドのみで202度。なお、動画のアスペクト比は16:9だが静止画は4:3である。

 以下は、WG-M2を少しでも使ってみないとなかなかわかりづらいかもしれないけど。

 手ぶれ補正は電子式(画像処理方式)だが、動画撮影時のナローモードでのみON/OFFが可能という変則的仕様になっている。
 電子式手ぶれ補正をONにすると画像処理のため画角が狭くなってしまう。そのため、リコーはそれを嫌って限定的に「動画/ナローモード」でのみ、手ぶれ補正を効かせるようにしたという。でもしかし、画角が狭くなるのは我慢するとして静止画撮影時にも手ぶれ補正ON/OFFの機能はほしかった。

 画角が180度を超えるような超ワイド画角で写真(静止画)や動画を撮った経験がほとんどないものだから、WG-M2を使い始めたときはその超ワイド画面にかなり戸惑った。
 自分の手やカラダが写らないように、カメラをカラダの前に少し突き出すようにして撮影をしたのに、指先やら自分のカラダの一部やらがすぐに写り込んでしまう。撮っているときはほとんど気づかないのだが画像を見たとたん、ナンじゃこれ、ということがたびたびあった。
  これもまた、カメラを横位置に構えたときによくやる失敗。動画撮影のときはカメラを縦位置に構えて撮影するようにすればだいぶこうした失敗は防げるし撮影も楽になる(静止画撮影では縦位置に構えて横位置構図にはできない、当たり前といえば当たり前)。

 メニューの文字が小さいことと(1.5型の小モニター画面なので仕方ないが)、操作が複雑煩雑(ボディの左右に振り分けられたボタンを押すのだがこれが難しい)、露出がややオーバー傾向があること(マイナス0.5EVの露出補正がおすすめ)などの不満点もあったけれど、画角200度を越える超ワイド画面をちっちゃなカメラで、動画でも静止画でも水中でも砂まみれになっても写せるし、動画撮影中にスマートフォン画面でライブビューできるし、タイムラプス動画、ハイスピード動画、高速連写(最高10コマ秒)も可能だったり、と、これはなかなかの愉しい愉しい「静止画も撮れるアクション動画カメラ」ですね。

総画素数2114万だが有効画素数は約800万

リコー・RICOH WG-M2

 WG-M2はいわゆるアクションカメラである。防水防塵仕様で、水中20メートル、耐寒マイナス10度C、耐衝撃2メートル。204度画角の静止画も4K動画も撮影できる。
 こうしたアクションカメラはスマートフォンや携帯電話機に内蔵された"カメラ"では撮影ができないことができる。やや特殊カメラと言えなくもないが、1台持っているだけで映像表現の世界が大きく広がることは間違いない。「2台目のカメラ」あるいは「サブカメラ」として第一候補と言っていいだろう。




 新M2は同じアクションカメラのWG-M1の後継機種となるモデルで、外観も操作スタイルも大変に似てはいる。しかし「中身」はまったく違う。
 センサー画素数も違うし、内蔵レンズの画角もだいぶ違う。新M2の画角は最大で204度もある。旧M1とはぜんぜん別もののカメラだが、なぜか、外観デザインも大きさも操作スタイルも、カメラのカラーリング(メインカラーはオレンジ)も、旧型M1とそっくりにしている。だから、せっかくの新型なのに新鮮味を感じにくい。

 話はちょっと横道に。
 こうしたアクションカメラは、一般的にカメラ店や量販店ではあのGoProなどもそうだがコンパクトデジタルカメラのコーナーには置いてなくて、ビデオカメラコーナーに展示しているところが多い(ヨドバシカメラなどアクションカメラ専用コーナーを儲けているところもあるが)。

 売ったときに得られるお店のマージンがビデオカメラとスチルカメラとでは違うという話を聞いたこともある(ビデオカメラのほうがスチルカメラよりもマージンは多め、だそうだから、お店の都合もあってビデオコーナーに置いているのかもしれない)。あの「価格COM」を見たら、同じようにコンパクトデジタルカメラではなく「アクションカメラ」として分類していた。
 …どうでもイイような横道の話でした。

 WG-M2のイメージセンサーは1/2.3型CMOSで、総画素数は2114万画素。有効画素数は約800万画素である。静止画の画像サイズは3264×2448pixel。
 えっ、ナニそれ? とすぐに疑問を感じたヒトはえらい。

 つまり、こういうことなのだ ━━ ウマく説明するのが難しいが。
 イメージセンサーはカメラに横位置に固定されているから、カメラを横に構えて撮影すると横位置構図になる。カメラを縦位置に構えて撮ると縦位置構図になる。これが一般的なカメラ。
 それはイメージセンサー画面をフルに使って撮影した場合だ。しかし実画像のサイズをイメージセンサー画面内の小さな範囲に限定すれば、カメラを横位置から縦位置に構えたとき実画像を90度回転するだけでカメラを縦位置に構えても横位置構図の画像が得られるというわけだ。
 ただしこうすると「2100万-800万=1300万画素」ということになり、結果的にだけど相当ムダにしてることになるけれど。

X70とGR II、似たもの同士

富士フイルム・FUJIFILM X70

 X70のライバルはGR/GR IIだ、と前回のブログで"断定"してしまったが、それはぼくの勝手な思い込みだ。
 X70の企画はもっと別なところ(マーケット、ユーザーターゲット)を狙っていたのかもしれない。その可能性はじゅうぶんありそう。両機種とも、価格、スペックがとても似かよってはいるが ━━ 単焦点28mm相当のレンズ内蔵、というのが他社の高級コンパクトにはない強い共通点なのだが ━━ それは"たまたま"だったのかもしれぬ。そのへんがよくわからない(こんど企画担当のOさんに会ったら聞いてみよう)。

 というのも、GR/GR IIのユーザーやそれに魅力を感じている人は、たぶん、このX70には興味を示さないに違いないと思われるからだ。ユーザーターゲットがだいぶ違うような感じがする。




 カメラそのものの性能としては、スペックを比較しただけで「優劣」がわかるが、実際に撮り比べてみてもX70のほうが優れた点がいくつかあった。にもかかわらずGR/GR IIのユーザーはきっとX70には振り向かないだろう…というのが使ってみてのぼくの印象。
 GR/GR IIは強烈な個性、クセや臭いがあるのに対してX70はニュートラルでおだやか、自己主張も感じにくい(もう少し個性的であったほうが良かったかも)。このへんがもっとも似て非なるところだ。

 X70とGR IIを実際に撮り比べてみると、レンズ描写性能にかんしてはGR IIのほうが優れていた。解像力描写はGR IIのほうが良かった。
 GR IIのレンズは沈胴式なので電源ONから撮影スタンバイまで少し時間がかかる。X70は沈胴せず薄型のまま即撮影。GR IIレンズにはレンズバリアが内蔵されていて便利だがX70は被せ式のレンズキャップの脱着がややめんどう。

 しかし、その他の性能や機能についてはX70のほうが優れた点が多かった。
 高ISO感度の画質については、ことノイズという点だけについて比べるとX70のほうが優れていた。X70はややノイズをツブしすぎて解像感が犠牲になっているという気もするが、でも低ノイズである。X70の超高感度域(ISO12800~51200)ではRAWで撮影できないなど変則的なところもあるがGR IIは最高ISO感度ISO25600までRAW記録は可能。

 AFの測距スピードは文句なしにX70が良かった。対してGR IIはAFに少しもたつき感があるしウォブリングも目立つ。GR IIは近接撮影をしようとするとマクロモードに切り替えなければならないというのも欠点だ。X70はGR IIと同じ最短なのだが切り替え操作をしなくてもいい。
 連写スピードはX70が8コマ秒、GR IIは4コマ秒、こりゃだいぶ違う。動画はどちらもフルHD可能だがX70は60p、GR IIは30p。液晶モニターはX70がチルト式でタッチパネル機能あり、GR IIは固定式でタッチ操作不可…と、まあ、こんなところかな。

 で、X70かGR IIか、さあどっちを選ぶか、と言われれば、偏屈なぼくとしてはGR IIのほうを選んでしまう。

内蔵ファインダーは、ぜひ、ほしかったなあ

富士フイルム・FUJIFILM X70

 いま、このブログを書こうとして富士フイルムのカタログをぼんやりと見ていたら、X70の正式名称は「FUJIFILM X70」だったということを、いま知った。
 カタログの最終ページ、仕様表のトップには「型番」として「FUJIFILM X70」と記載されている ━━ これは富士フイルム独自の表記スタイルかもしれない、というのも他社の仕様表は「型式」として「レンズ交換式デジタルカメラ」とかの表記で、それがなくいきなり機種名を仕様表のトップに記載しているのは珍しい。

 それはともかく、X-T1もX-Pro2もX-T100Tも富士フイルム・Xシリーズのカメラには必ず「FUJIFILM」のシリーズ名称が付く。へーっ、そうだったのか…という感じ。FUJIFILMは、EOSとかPENTAX、PEN、OM-Dなどと同じなのか。
 ところで、言うまでもないが「富士フイルム」は社名。富士フイルムの「イ」は公式には大文字表記になり、キヤノンの「ヤ」と同じだ。ちなみに、富士フイルムの「フィルム」、というときはフィルムの「ィ」は小文字で書く。




 X70のイメージセンサーは1620万画素のAPS-CサイズX-Trans CMOS IIで、レンズは固定式で28mm画角相当の18.5mmF2.8(5群7枚)である。重さは約370グラム。
 むろん、ライバルというかターゲットにしたのはRICOH GR/GR IIだろう。GRは1620万画素CMOSセンサーで、レンズも同じ28mm相当の18.3mmF2.8(5群7枚)。重さは約251グラム。X70のほうがだいぶ重いことと、ボディの厚みも相当あることを除けば、とってもよく似たスタイルのカメラだ。価格もほぼ同じ8万円ちょっと。高級コンパクトカメラである。

 X70とGR IIとの大きな相違点はといえば、X70はチルト式液晶モニター(GR IIは固定式)を採用していること。もうひとつは、Xシリーズの"共通点"であるシャッタースピードダイヤル、露出補正ダイヤル、そして絞りリングを備えていること(GR IIはモードダイヤルだけ)。
 チルト式モニターはいい。そのぶん、ボディがぶ厚くなったり重くなったりはしているが、X70を使っていても頻繁に利用する。やはり便利だ。ダイヤル類のアナログ操作については、Xシリーズのカメラをさんざん使ってきたので、ぼくはそれほど感動はしないが、しかしX70の大きな大きな特長だし、魅力のひとつだと思う。

 Xシリーズの"こだわりの1つ"であった「内蔵ファインダー」が、このX70にないことがぼくとしては大変に残念。FUJIFILM Xシリーズの高級コンパクトカメラなんだから、これだけは、なんとしても搭載してほしかった。
 別売の外付けファインダー(VF-X21)が用意されているが、なんですか、あのブサイクで安っぽいファインダーは(リコーのGV-1と同じ)。せっかくのキュートなスタイルのX70を台無しにしてしまう。