結像性能と感応性能

ニコン・AF-S NIKKOR 105mmF1.4E ED + D810

 ここ数年、ふたたび写真レンズの性能が、描写、機能ともに著しく良くなってきているように思われる。
 レンズが良くなってきたなあと感じた「節目」が2つほどある。
 ひとつの「節目」はフィルムカメラからデジタルカメラに切り替わってしばらくした頃だろうか。フィルムカメラではほとんど問題にならなかったあれこれが、デジタルカメラになって次々と顕在化してきた。イメージセンサーに光が反射してゴーストを発生させたことなどが一例だ。それらに対応すべく対策を施したり修正を加えたりしたレンズが出てきて(出さざるを得なくなって)結果的に性能も向上してきた。

 もうひとつの「節目」はイメージセンサーの高画素化と画像処理技術の向上によるデジタルカメラ高画質の時代に入った頃だ。冒頭に言った「ここ数年」のことである。
 レンズの描写性能のレベルを大幅に向上していかないと、カメラの実力を充分に発揮できないばかりか、逆にレンズのプアーな性能が目立ってくるばかりになる。レンズにとっては、カメラ側の性能向上に適応させるべく"否応なく"性能を向上しなくてはならない状況に追い込まれていったわけだ。
 ちょうどその頃、レンズ全般にわたる技術革新がいっきに進んだこともレンズの高性能化に大きく寄与している。




 とにかく性能の良いレンズを作らなくてはならない。
 しかし、性能の良い、写りの良いレンズを作ろうとすればするほどコストアップにつながる。レンズ設計でシミュレーションを繰り返し充分な時間をかける。高価な特殊レンズを使う。光学レンズを多く組み合わせて収差を補正する。時間と手間をかけて調整を繰り返しながら組み立てる。レンズが高価になるのはとうぜんである。

 ところで、先程からレンズの描写性能とひと言でいっているが、じつはそこには二つの重要な性能がある。レンズの描写性能を見極めるときの判断基準と言ってもいいだろう。
 「結像性能」と「感応性能」である。
 結像性能とは、MTF特性、解像力、コントラスト、残存収差などである。そのいずれもは数値化して客観的、理論的に評価ができる。それに対して感応性能は、ぼけ味、諧調描写力、透明感、立体感などだ。個人的な趣味趣向や好みにやや左右されやすい。感覚的で主観的な評価軸といえなくもない。

 デジタルカメラ時代になって、というよりも最近のレンズ描写の傾向として、結像性能のほうに重点を置きすぎて感応性能のほうは、やや軽く扱われている傾向があったようにも感じられる。
 誰が見ても「描写性能の良いレンズだ」と評価してもらえるレンズを作ることが最優先されたとき、感覚的で曖昧で個人的趣味に左右されるような感応性能になんぞかかわってられない。とにかく、数値ではっきりとわかる解像力やMTF特性の向上をめざさなくてはならない。ハイコントラストでばりばり描写で解像力の凄さがわかるようなレンズ、そんなレンズがあちことから出ているのはそうした理由による。

 しかし、ぼけ味や諧調描写性といった感応性能を置き去りにしたようなレンズが、はたして「描写性能の良いレンズ」と言えるのかどうか。結像性能と感応性能がバランス良く備わったレンズこそ写真レンズとして「良いレンズ」と言えるのではないだろうか。感応性能こそ、レンズの味、レンズのアイデンティティの決め手となるのではないか。

 ニコンの105mmF1.4レンズが、以上のような意味で、結像性能と感応性能に充分に配慮して設計、製造されたレンズだと言ってもいいだろう。

 ニコンはしばらくの間、レンズ描写性能のそのへんのことをあれこれ考えながら試行錯誤をしているようなところもあった。世の中が、ばりばり解像感重視型レンズを大歓迎する風潮の中にあっても、ニコンは「がんこ」に感応性能にも重点をおいてレンズを作り続けようとしてきたのではないだろうか。
 58mmF1.4レンズのように感応性能まっしぐらの設計をして失敗した例もあるが、しかし今回、105mmF1.4レンズでうまくバランスのとれたレンズが作れたのだから、苦労した甲斐もあったのではないか。

 ニコン以外にも、まじめに結像性能と感応性能のバランスを考えながらレンズを作っているメーカーはいくつかある(多くはないけれど)。
 そうしたメーカーのレンズは、ばりばり解像感重視型レンズに比べると目立ちにくく、わかりにくい描写特性のため苦戦しているようだが、ぼくとしては、ぜひがんばって「ほんとうの描写性能の良いレンズ」を作り続けて欲しいなあと思うわけですよ。

ぼけ味もいい解像力もいい

ニコン・AF-S NIKKOR 105mmF1.4 E ED + D810

 ニコンの新型105mmF1.4レンズは、最近いささか迷走ぎみだった(ような気もしないでもない)ニコンレンズの中で、ようやく本来のNIKKORレンズの「本道」に戻ったかな、と感じさせるレンズである。ニコンらしい真面目なレンズ。

 重くて大きくて堂々としたスタイルのレンズで、これといったスキも欠点もない。描写性能は文句ない ━━ ある逆光状況で盛大なフレアが出るが、ま、それはしょうがない。
 レンズの「ツクリ」もいい。MADE IN CHAINAだが、まるでMADE IN JAPANのような丁寧さと高品質を感じる。こんな立派な高級レンズが作れるニコンの中国工場ってあったのかな……。
 9群14枚構成、最大径は約10cm、重さは約1キログラム。8月下旬から発売が始まっていて、税込み約23万円(ニコンダイレクトショップ価格)。なかなかのサイズ、ウエイト、イイ価格である。
 「高い、重い、大きい」というのが良いレンズのための三条件だから悪かろうはずはない。




 前回のブログでオリンパスの25mmF1.2レンズを紹介したときに、美しく自然なぼけ味と際だった解像描写力とは相反するものだというような話をした。球面収差とぼけ味が密接に関係しているからだ。
 しかし、この105mmF1.4はそうした定石を覆して、開放F1.4絞りからシャープで切れ味良く(むろん解像力も充分にある)、その上、ぼけ味がじつに自然で柔らかくてきれい。
 開放絞りのとき画面周辺部で口径食のため、ぼけのカタチがまん丸にならず"レモン"のように歪むが、それほど気にするほどのことでもない。科学写真を撮るのではないのだから、ぼくはべつにイイじゃないかと思う。

 105mmという焦点距離が「いまの時代」どんなふうに評価されるのか興味がある。もし、ポートレート用途にウエイトを置いたレンズなら85mmのほうが一般向けにわかりやすかったのにとも思う。でも85mmだと、あまりにもポートレート用、人物撮影向きのレンズといった強いメッセージ性がありすぎる。ニコンとしては、もう少し広いユーザーや、多様な使い方をしてもらうことを望んで105mmの焦点距離を決めたのかもしれない。

 この105mmレンズと似たコンセプトのレンズに58mmF1.4レンズがある。58mmと85mmでは「近すぎ」ると思ったのかもしれないし、いやそれよりも、58mmF1.4レンズの大いなる反省があって105mmF1.4が出てきたのかもしれない。リベンジのレンズ。

 その58mmF1.4レンズは、105mmF1.4レンズと同じようにぼけ味にこだわったチャレンジャブルなレンズである。ところが、58mmと105mmを実際に同時に使ってみると(ぼけ味はともかくとして)、まったく別もので105mmは「おとなのレンズ」という感じ。
 58mmF1.4レンズは、トビすぎヤリすぎの暴れん坊レンズ。確かに狙い通りにぼけ味はいいのだが、ではかんじんの解像描写性能はどうかといえば、はっきり言えばヒドい。球面収差出まくり。よくもまあ、こんな強いクセのあるレンズを商品化したなあと不思議に思うのだが、しかし、そこがニコンのおもしろさであり、なにごとも果敢に大胆に突き進むニコンの良いところでもある。

 ニコンというと堅物、保守的、権威主義といった印象を持つ人も多いようだが、いやいや、他社に先駆けて新しいコトに率先して挑む先進的なところがある。「やってみなはれ、やってみなわかりまへん」の精神がいっぱいあるように、ぼくは感じるなあ。そこがキヤノンと違うニコンのおもしろさ、かも。

ぼけは、ただ大きくぼければイイってもんじゃない

オリンパス・M.ZUIKO DIGITAL ED 25mmF1.2 PRO + OM-D E-M1

 最近の傾向として、大きくぼける写真がとても好まれているようだ。ピントを合わせたところ以外がぼけて写ればそれで満足する人も多いみたい。大きくぼけてれば、ただそれだけで「ぼけて写るからいいレンズだ」と言い切る人も出てくる始末で、そりゃあ違うぞ、と老婆心ながらひと言いいたい。
 ややオタクっぽい話になるが、写真にとってのぼけは、そのカタチやぼけ具合が大切にされ、レンズ設計者もそこにこだわって設計をしている。しかし、その写真のぼけについての「良し悪し」を語るのは非常に難しい。

 たとえば、一般的に二線ぼけとよばれている、ぼけの周辺部がくっきりしたリング状に見えるようなぼけは「良くない」とされている。しかしそれは、良い悪いではなく好き嫌いの話と言えなくもない。「悪いぼけ」とされている二線ぼけが「好きだ」という人もいないでもない(まあ、珍しいけど)。

 つまり写真のぼけの「良い、悪い」なんて結局は個人的な趣味趣向によるもんではないかと思うわけですよ。
 と、そんなふうに切って捨てるような言い方をしてしまうと、ぼけの描写にこだわっている人たちや、そう、苦心苦労しながらレンズ設計をしている人たちにに申し訳ない。




 私たちの肉眼では、リアルタイムにぼけを「見る」ことはできない(眼に障害のある人以外は)。写真に写っているぼけと、見比べることもできない。写真(映像)の世界だけの現象だが、しかし写真にとっては、ぼけは大変に重要な要素なのだ。。

 写真(静止画像)の大きな特徴は、ピントの合った部分とぼけた部分で構成されていて、その関係が定着固定されて永遠に持続していることだ。シャープにピントの合ったところと、大きく小さくぼけたところが渾然一体となって画像が形成され、その状態が変化しないのが写真だ。
 だから、そのぼけている様子が、美しく自然にぼけて写っているかどうかも大切になってくる。写真を鑑賞するときに意識して見つめてみることだ。

 ではいったい、どんなぼけが良いぼけとされているのか。
 シャープにピントが合ったところから、なだらかに自然にぼけて、ぼけた部分が円く柔らかなぼけが良いぼけとされている。良いぼけの写真は奥行き感や立体感が素直に感じられる。「空気が写るレンズ」なんて言われることもある。それが透明感であり立体感のある描写のことを言っているのだろう。舞台の書き割りのように見えてしまう、写ってしまうレンズはよろしくはない。

 さらに言うと、がくんっと急激に大きくぼけてしまうようなぼけ、輪郭がくっきりした堅いぼけ、不自然なほどぼやぼやにぼけているようなぼけ、色が混じって濁ったような透明感のないぼけ、などなどはあまり良いぼけであるとは認められていない。

 いけないいけない、こんな曖昧で観念的な話をするつもりではなく、オリンパスの25mmF1.2レンズのぼけ味について話をするつもりだったのだが、申し訳なかったです、ハナから横道に逸れてしまった。

 こちらのイラスト図は25mmF1.2のレンズ構成を示した断面イラスト。19枚の光学レンズがキレイに並んだ様子はなかなかなモンだ。
 ズームレンズならいざ知らず、単焦点レンズでこんなにたくさんの枚数の光学レンズを使ってるものは、写真レンズとしては珍しい。

 なぜ、こんなにも多くの光学レンズを使っているのか。その第一の目的は美しい自然なぼけ味のレンズを作りたかったからだ。事実、ボケ味はなかなか優秀。
 ほかにも、色収差を目立たなくしたり(大口径レンズなのにほとんど目立たない、F1.2で少し、F1.4でほとんど消える)、さらに他の収差を「適切に抑え込む」ためには ━━ 良いレンズ描写のためには収差をなんでもかんでも徹底的に抑え込めばイイというものでもない ━━ たくさんの光学レンズは必要不可欠だった、とレンズ設計者は考えたのだろう。

 それにしても、どこのメーカーにも言えることだけど、最近は、カメラよりレンズのほうがススんでいるようにも思え、進歩の具合も顕著ですね。

使いこなしの難しいレンズ

オリンパス・M.ZUIKO DIGITAL ED 25mmF1.2 PRO + OM-D E-M1

 この25mmF1.2は使いこなしも難しいが、誤解されないようにコメントするのもなかなか難しいレンズだ。

 同時発表された12~100mmF4 ISズームの描写のように、誰が見ても「うわっ、凄い写りだ」と感心するレンズではない。
 F1.2の大口径絞り値とぼけ具合に幻想を持っている人や、かりかりのシャープな解像力描写を期待している人や、コントラスト高めのパンチのある写真が好みの人には、はっきり言って不向きなレンズだ。手を出さないほうが得策だろう(余計なお世話だよね、自分でもそう思う)。

 同じオリンパスのM.ZUIKO DIGITALのPROレンズの中で、12~100mmF4や40~150mmF2.8とはやや(いや、かなり、かな)テイストの異なる描写性能を持ったレンズである。クセのある描写、とでも言えばいいか。決して悪いレンズではないが、ちょっと素直じゃないレンズ。
 しかし、その「クセ玉」を納得して使うなら、こんなに愉しいレンズはないだろう。
 期待する描写が得られなかったら、それは自分の「技倆」が不足してるからだ、と自己反省できるココロに余裕のある人におすすめしたいレンズだ。

 そう、いま思い浮かんだのはニコンのAF-S NIKKOR 58mmF1.4Gで、そのレンズとやや似た部分がないでもない。ただし、ニコンの58mmF1.4レンズほどのじゃじゃ馬、こてこてのクセ玉レンズではない。




 オリンパスの25mmF1.2もニコンの58mmF1.4も、ぼけ味にとことんこだわったレンズである。レンズ設計の手法は異なるが、ぼけ味を最優先する設計を選んだのはどちらも同じ。そのぼけ味優先主義が行きすぎたために「他の描写性能(たとえば解像描写力)」がちょっぴり犠牲になってしまったかな、という点でもよく似ている。

 つまり、25mmF1.2レンズは解像力をうんぬんするレンズではなく、自然なぼけ味と豊かな諧調描写のほうに価値を見いだすレンズだということ。

 この25mmF1.2レンズのことについて、「F1.2の開放絞りでも、ピントの合った部分はシャープで解像力も充分にある」、なんてアホなコメントをするテストレポーターは、まさかいないとは思うが(いるか、な?)、もしいたとすれば救いがたい節穴眼だろう。

 大口径レンズの明るい絞り値で"ある部分"にピントを合わせて撮れば、ピントの合った部分以外は大きくぼけて写る。だからピントを合わせた部分はくっきりとシャープに写ったように見える。そんなことは、当たり前のこと。最近のレンズでは、どんなヘボ玉レンズでもピントの合った部分はそこそこシャープに写るもんだ。
 初心者ならいざしらず、ピントを合わせて写した部分がホントに解像力のある描写であるかどうか、それをしっかりと見極めないといけないよね。テストレポーターともあろうものが大きなぼけ味に騙されちゃいかんということですよ(これまた余計なお世話だよね、ほんと)。

 で、かんじんのオリンパス25mmF1.2レンズはというと、自然でなだらかなぼけ味描写はいいのだけど、その良さに反して解像描写力が少し犠牲になっている印象。ボケ味優先主義レンズ。
 ただし、誤解されちゃ困るので付け加えるが、25mmF1.2レンズが解像力のないレンズだという意味ではない。かりかり解像力描写を優先したレンズではない、ということだ。うーむ、言い方が難しい。

マクロレンズ代用になるかも、の高倍率ズームレンズ

オリンパス・M.ZUIKO DIGITAL ED 12~100mmF4 IS PRO + OM-D E-M1

 オリンパスの非公式な発表では、新型のE-M1 Mark2と12~100mmF4ズームとの組み合わせハイブリッドISで撮影すれば、シャッタースピード換算で「6.5段」相当の手ぶれ補正効果が得られるとのこと。

 この「6.5段」のぶれ補正効果というのは、角度ぶれだけについて、焦点距離100mmに限定して、CIPAの規定に従って測定しチェックした平均値である。しかし実際には、E-M1 Mark2と12~100mmの5軸手ぶれ補正、撮影時の焦点距離、撮影した画像の拡大倍率、撮影シーン(高周波成分が多いか低周波成分ばかりのシーンか)などの「諸条件」が変われば、ぶれの目立ち具合はだいぶ違ってくる。そのうえ、ぶれに対する許容度も個人差でだいぶ違う。

 誰でもが(初心者でもベテランでも)、気軽にほいほいと撮影しても「6.5段」ぶんの手ぶれ補正効果があると考えてはイカンということ。




 ぶれ補正段数はあくまで「参考」程度にしておくのがいいのではないか。加えて、補正段数がどれだけアップしても、誰でもが2秒や3秒でも「ぶらさないで写せる」なんてことはちょっと考えにくい。
 手持ち撮影といっても、両肘をテーブルに付けたり、カラダ全体を壁などに寄りかかったり、カメラを構えて立ったままや、片手でカメラを持ってシャッターを切る、などなどいろんなスタイルがある。「6.5段」というのは、そんなスタイルの違いについてもまったく考慮はしていない。

 以下はオリンパスの手ぶれ補正の話ではなく、一般論。
 最近の傾向として、「ぶれ補正、何段を達成!」などと補正段数の数値競争をしているようだが、実はもっと大切なことがある。「安定性」だ。
 たとえば、1秒のシャッタースピードで5カット撮影をし、そのうち3カットがぶれていて残りの2カットだけが、なんとかぶれずに写せたというよりも、1/4秒で10カット撮影して10カットすべてがぶれずシャープに写せたというほうをぼくはずっと高く評価したいですね。
 ウデのいい人が撮影して成功確率が30%だけど1秒で撮れることもある手ぶれ補正か、1/4秒ぐらいだったら誰が撮ってもほぼ100%の確率でぶらさないで撮れる手ぶれ補正か、どちらがイイか。
 ぼくは文句なしに後者の手ぶれ補正のほうが良いと考えるのですが、さて皆さんどう考えますか?

 というわけで、手ぶれ補正の話はこのへんにして、12~100mmの最短撮影距離について少し。

 相当のクローズアップ撮影ができる。最短距離は広角12mm端で15センチ、望遠100mm端で45センチ。この数字はイメージセンサーから被写体までの距離だから、レンズ先端部から被写体までの距離(ワーキングディスタンス)となるとぐんっと近くなる。
 12~100mmレンズの全長が約12センチなので、12mm端の至近距離だとレンズ先端から被写体までざっと3センチということになる。100mm端だとだいぶ"余裕"がある(ただし望遠端にズームするとレンズ全長は約16センチぐらいに伸びる)。
 で、12mm広角端か100mm望遠端かどちらが「より大きく」写せるかといえば12mmの至近撮影。ただし、被写体との距離が近すぎたり、像が歪んで写るなどデメリットもある。

 使い勝手の良さで言えば文句なしに100mm望遠側でのクローズアップ撮影。12mm側に比べると拡大撮影はできないが、実際に使ってみれば100mm側での至近撮影のほうがずっと使いやすい。
 ちなみに、12mm端の最至近では約5.7×4.3センチの範囲まで拡大撮影できるが、100mm端では約8.2×6.2センチの範囲までになる。実用上、たいした違いではなかったということと、これなら充分にマクロレンズ代用になるかな、というのが使ってみてのぼくの印象でした。

手ぶれ補正の効き具合にも注目

オリンパス・M.ZUIKO DIGITAL ED 12~100mmF4 IS PRO + OM-D E-M1

 この12~100mmF4ズームレンズには手ぶれ補正の機構が内蔵されている。
 言うまでもなくオリンパスの手ぶれ補正は、イメージセンサーを作動させてブレを補正するボディ内手ぶれ補正方式が基本スタイル。

 しかし、ごく一部のレンズ内に手ぶれ補正の機構を内蔵した、レンズ内手ぶれ補正方式のレンズもある。M.ZUIKO DIGITAL ED 300mmF4 IS PROが、交換レンズではオリンパス初となるレンズ内手ぶれ補正方式を採用したレンズである。12~100mmは2本目となる。

 その300mmレンズが画期的だったのは、初めて、レンズ内のぶれ補正機構とボディ内のぶれ補正機構を完全同時シンクロさせてハイブリッドISとして ━━ というとカンタンなように思えるが、いやいや、とんでもないほど難しい技術 ━━ 補正効果をアップさせたことだ。似たようなことをやっているメーカーはあるが、オリンパスのように「完全同時シンクロ・ハイブリッド手ぶれ補正」をしているメーカーはない。

 うーん、こんな話は、オリンパスのユーザーから「常識だッ」、と言われそうなのでテキトーにしておくが、つまり今度の新型12~100mmズームも300mmと同じようにレンズ内とボディ内の手ぶれ補正システムを完全同時シンクロさせて補正効果(補正段数)をアップしているということ。




 上の写真をちょっと見てほしい。
 大きな木々に囲まれた神社の夜の境内で写した。ほんのりした明かりがあるくらいで、大変に暗いシーンだった。ちなみに、撮影したExifデータを読んでみると、シャッタースピードは1/5秒、絞り値はF4開放、12mm側、ISO3200、マイナス0.7EVの露出補正をしている。
 撮っているときに、こんなに暗いのにAFでよくピントが合ったよなあと感心したが、いやそれよりも、撮影後に画像チェックしてみたらほとんどぶれずに撮れていることに驚く。なお、この写真は、ナニにももたれかからずに、両手をめいっぱい高く持ち上げてチルト式のモニターを見ながら写したものだ。

 そんな不安定な状態で撮影したのに、撮った写真のほとんどが気づくほどの手ぶれが見られない(ただし被写体ぶれだけはどうしようもないが)。
 上の写真よりも、もう少し大きな画像をこちらに置いておくので興味のある方はどうぞ。ベータ版のレンズなのでオリジナル画像の掲載はNGだからね。

 「12~100mm+E-M1」のハイブリッド手ぶれ補正は、それ相当に効くだろうと予想はしていたが、不安定なホールディング状態で超低速シャッターを切ってもコレだけ写るとは驚きましたよ。
 実際にまだ試していないのだが、新型E-M1 Mark2と12~100mmを組み合わせると手ぶれの補正段数はさらに向上するという。

 というと、じゃあどれくらいのシャッタースピードまで大丈夫なんだ、という質問がよくあるのだが、こればかりは個人差や撮影距離などによって一概には言えない。たとえば、ぼくが現行E-M1と新型(ベータ版)の12~100mmを使って、焦点距離100mm(200mm相当)で、ただ立ったままの状態でシャッタースピード1秒にして5カット写したら、そのうち3カットはほとんどぶれが目立たない写真が撮れた。まあ、ご参考までに。

 手ぶれ補正の補正段数というのがCIPA(カメラ映像機器工業会)の取り決めで明記することになっているのだが、これ、あまりアテにならない。とくに低速シャッタースピードになると補正段数ほどの効果が得られない。
 そのことを知っておくという前提で、12~100mmは「5段」、現行E-M1は「4.5段」、新型E-M1 Mark2は「5.5段」、そして12~100mm+現行E-M1で「6段」、12~100mm+新型E-M1 Mark2では「6.5段」(いずれもシャッタースピード換算)の補正効果があるということになっている。

 最短撮影の話などもやろうとしていたが、おしゃべりが過ぎたため次回に。

悪魔のレンズ

オリンパス・M.ZUIKO DIGITAL ED 12~100mmF4 IS PRO + OM-D E-M1

 先日のフォトキナの開催にあわせて、M.ZUIKO DIGITALの新レンズが3本発表された。
 「M.ZUIKO DIGITAL ED 25mmF1.2 PRO」、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12~24mmF4 IS PRO」、そして「M.ZUIKO DIGITAL ED 30mmF3.5 Macro」の3本である。大口径単焦点が1本、高倍率ズームが1本、小型軽量低価格なマクロレンズが1本、という具合だ。発売は少し先の話になって11月下旬の予定。

 発表された3本、いずれも"なかなか"の力作レンズである。
 センサーサイズがやや小さめのマイクロフォーサーズの利点をうまく生かしたレンズで、ようやくというか、本格的にというか、オリンパスがマイクロフォーサーズのセンサーの特性をしっかりと掴んで自信を持って使いこなすようになってきた(偉そうな言い方ですまんが、そんな感じがする)。

 いままでは、ややもするとAPS-Cサイズ判やフルサイズ判の大きめのセンサーをオリンパスは意識し過ぎて、肩を怒らせ対抗心をあらわにしているようなところがなくもなかったのだが、最近そんな"怒り眼"がなくなり、ふっきれたように腰を据えてマイクロフォーサーズに真正面から取り組んでいるように見える。
 同様のことは、先日発表されたE-M1 Mark2にも言えること。いいことだと思うし、これからのオリンパスが愉しみですね。




 3本の新型レンズを使ってみて(ベータ版を2~3週間程度の短期間試用しただけど)、いちばん印象的だったのは12~100mmF4ズーム。
 オリンパス、ソレちょっとヤリすぎじゃないの、と思わないでもなかったが、正直言えばやや衝撃的なレンズでありました。24~200mm相当の高倍率ズームであるが、こんな描写のレンズなんてあまり見た経験がない。

 描写特性については、好き嫌いのレベルでの評価が ━━ 良し悪しの評価ではない ━━ だいぶ分かれるとは思うが、それはともかくとして、凄い解像感である。開放F4から、ズーム全域で、画面中心部も周辺部も、ばりばり、かりかり、つんつんの解像感である。
 同じように「線の太い」解像描写特性を持ったM.ZUIKO DIGITAL ED 40~150mmF2.8 PROのそれよりも、さらに力強い描写である。解像描写力の高さが、誰にでも、パッと見ただけですぐにわかる描写。

 その描写にすっかり虜になってしまう人も出てくるに違いない。そういう意味で「悪魔のレンズ」と言えるかも。

 コントラストもかなり高め。線の太い解像感のうえにハイコントラストだから、描写の切れ味という点ではじつに強烈。だから、微妙な諧調描写がやや犠牲になってしまうのではないかという心配はあるが(ソコが、このレンズを好きになるか嫌いになるかの分かれ目かも)、でもわかりやすい描写のレンズだ。
 12mm広角端、F4開放絞り値で撮っても、周辺部までじつにシャープに写る珍しいレンズ。周辺の描写性能を向上させるために絞り込む、なんてことが必要ない。被写界深度を深くして撮るための絞り込むということ以外、絞りを操作する必要がないんじゃないかと思うくらいだ。
 この12~100mmには特長(特徴、かな)が、もう1つ、2つあって、それについては次回にでも。