新SPレンズの注目すべきレンズ技術

ニコン・D750+タムロン・SP45mmF1.8 Di VC USD

 SP35mmもSP45mmも、レンズ内に手ぶれ補正・VC(Vibration Compensation) の機構を内蔵している。レンズ(光学)シフト方式の手ぶれ補正。2本の新SPレンズの、これが大きな特長である。レンズシフト式の手ぶれ補正機構を採用し、かつ優れた光学性能を確保するというのはレンズ設計者にとっては難易度は高い。
 タムロンは、この2本の単焦点レンズだけでなく大口径ズームレンズにも積極果敢にレンズ内に手ぶれ補正機構を内蔵してきている。SP24~70mmF2.8やSP15~30mmF2.8ズームなどがそうだ。タムロンは手ぶれ補正の機能をレンズに内蔵させることに大変なこだわりがあるようだ。




 開放F値の明るい大口径レンズは構成する光学レンズ群の多くが大きいのが一般的。光学レンズは大きくなれば重くなる。手ぶれ補正をおこなうための補正光学系も、どうしても大きく重くなる。大きく重い補正光学レンズを高速精密正確にシフト作動させないと望んだようなぶれ補正効果は得られない。最適に駆動させるためには、アクチュエーターユニットもまた、大きく重くなってしまう。
 大口径レンズ(2本の新SPレンズともに開放F値はF1.8)は、構成するレンズ群が大きい、ぶれ補正光学系レンズも大きい、それを駆動するためのモーターユニットも大きい……といった要因のために、SP35mmもSP45mmも、仕方なくやや大きく重いレンズになってしまった。
 タムロンは手ぶれ補正の機能をなくしてまでして小型軽量なレンズを選ぶことをしなかったというわけだ(ぼくはそれが正しい選択だったと思う)。

 さらに2本の新SPレンズは最短撮影距離を短くすることにもこだわった。SP35mmは20センチ、SP45mmは29センチである。
 最短を近くすればするほど、さまざまな収差が目立ってきて描写性能が低下してしまう。収差変動が顕著になる。そうした近距離時の描写性能の低下を防ぐには、おもに2つの方法がある。
 1つは、最短撮影距離を短くしないこと(近いところにピントを合わせられないように制限する消極的方法、こうしたレンズは結構、多い)。もう1つは、フローティング(近距離収差補正)機構を採用したレンズ設計をする積極的方法である。2本の新SPレンズは、この後者の方法を取り入れている。

 フローティング機構とは複数のレンズ群を、それぞれ異なった移動量で繰り出し(前後させ)てピント合わせをする方式である。ただし、ピント位置ごとに、レンズ群を精密正確に最適な間隔を保つように動かさなくてはならない。MFでのピント合わせならまだしも、AFで高速に2つのレンズ群を移動させてピント合わせするとなると難易度はぐんと高くなる。
 そのうえ、新SPレンズの2本とも、大胆というか無謀というか、たくさんのレンズ枚数をセットにしたまま(群にして)動かしている。枚数が多く大きくて重いレンズ群を(さらには、VCのアクチュエーターも含めたユニット込みで)前後させているにもかかわらず、AFスピードはそうしたことをまったく感じさせない。じつに高速でスムーズなAF作動なのだ。

 けっしてタムロンのレンズを「ヨイショ」しているわけでもなく、これにはほんとに感心していんですよ。