コンテンポラリーラインの30mmF1.4レンズ 《 その4 》

シグマ・30mmF1.4 DC DN+オリンパス・OM-D E-M1

 シグマのレンズ性能が近年、にわかに良くなってきたのにはいくつかの「理由」が考えられる。

 その1つは、米国のフォビオン社をシグマの100%子会社にして、イメージセンサーを「共同開発」するようになったことだろう。
 やや荒っぽい言い方だが、それまでのシグマのレンズが「フィルム基準」だったのが、フォビオンセンサーを自社のカメラに積極的に採用するようになって、レンズ性能を「デジタル基準」に大きく舵を切ったように思う。フォビオンセンサーは高周波成分の描写再現がとくに際立っていて、そのイメージセンサーの実力を発揮させるためには「フィルム基準」のレンズ性能のままでは不十分だということをシグマ自身が実感するようになったのではないか。




 さらには、フォビオンセンサーを共同で開発していく過程で、いままでシグマが気づかなかった「イメージセンサーとレンズ光学との相性」のようなものが具体的に見えてきたのかもしれない。それが見えてくれば、高画質化しつつあるデジタルカメラに最適な光学性能、要求されるレンズ性能の目標値も明確になる。

 その頃からシグマでは、レンズ光学設計の基本原則の見直しが始まっただろうし、レンズ製造の方法や検査基準の大幅な改善もおこなわれたに違いない。
 レンズ設計側ではフォビオンセンサーを充分に生かせるだけの優れた性能を持ったレンズを設計すること、製造側では一つ一つの部品や検査の精度をあげてばらつきのない安定した製品を生み出していこうとしただろう。
 ずっと昔のシグマレンズといえば「当たり外れ」が多いことが難点のひとつだった。レンズの性能にばらつきが多かったのだが、近年のシグマレンズにはそうした傾向はほとんどなくなり、品質、性能がとても安定してきている(それも、高水準で安定)。
 近頃のシグマレンズの性能向上の大きな要因こそは、この安定性ではないかとぼくは考えている。

 とくに会津工場の製造現場が変化したと思う。
 フォビオンセンサーを利用して作り上げたといわれている新しいレンズ性能検査器を導入したことも品質や性能を向上させるきっかけになっているだろう。また、製造したレンズを最終出荷する前に、1本1本すべてを検査するようにもなったこともいい結果に結びついているのだろう。
 むろん、こうした全品検査や品質を向上させる取り組みは、シグマ以外のメーカーでもとうぜんおこなわれていることだ。ただ、他社とシグマが異なるのは、レンズ製造にたずさわる会津工場の人たちの品質に対する意識が変わったことではないかとぼくは想像する。

 会津工場でレンズを作る人たちにとっては、アート、コンテンポラリー、スポーツといったラインの区別などなく、とにかく「性能の良いレンズを安定して製造しよう」というひとりひとりの意識が違ってきたのではないか。
 製造機械や検査機器をどれだけ優秀なものを使っていても、それを使いこなす「人」の意識(モチベーション)が明確にならないと優れた製品を安定的に作り出すことは難しい。結局は人のチカラだ。
 そのへんの話を、次回でもう少しだけ……。