コンテンポラリーラインの30mmF1.4レンズ 《 その5 》

シグマ・30mmF1.4 DC DN+オリンパス・PEN-F

 5~6年ぐらい前からシグマは、良い方向に大きく変化してきているように感じる。シグマの創業者でもあり優れた技術者でもあった先代の故山木会長から、現社長の山木さんにバトンタッチされたころからだろうか。

 先代山木会長はシグマを「レンズメーカー」としてではなく「カメラメーカー」として育てていくことに熱い情熱を持っておられたようだ。フィルムカメラの時代からこつこつと一眼レフやコンパクトカメラを作り続けてきた。その流れがフォビオンを子会社化したことにつながっているのだろう。
 シグマにとってカメラ作りはなかなか儲けにはならない事業だ。交換レンズで得た利益をカメラづくりに投資しているかのようだ。でも、苦労しながらも山木社長が先代の意思を受け継いでカメラを作り続けていくことは、ブランドイメージを高めるなどシグマにとっては「良い効果」をもたらしているように思う。




 山木会長は亡くなられる直前まで、本社(神奈川県黒川)のレンズやカメラの設計部門はもちろん、福島県の会津工場の製造現場の隅々まで目を光らせておられた。毎週、二日から三日は会津工場に出かけて現場で指示を出していたほどだった。新製品の企画や計画も会長自身が決めていた。
 どんな製品をどの順番で作って売っていくかの詳細なリストを自分で作って管理もしておられたという。だからシグマには長い間、「製品(商品)企画部」という部門そのものがなかった(数年前にようやく企画部ができた)。

 製品作りの基礎技術を長期間かけて地道に育てていったのが故山木会長で、それを上手に受け継いで花開かせたのが現社長の山木さんだとも言える。
 山木社長が中心になってシグマを引っ張っていくようになったころからだろうか、シグマは積極的に「外」に向かって発信するようになった。シグマの「顔」が見えるようになり、認知度は広がっていった。
 それに伴って社員のモチベーションがだんだんと向上し(とくに若い社員が元気になってきた)、製品の性能と安定性が大幅に良くなり(ベテラン技術者の存在が大きい)、さらには他社では到底考えつかないような(企画しても無視されるような)思い切った商品展開をするようにもなった。シグマのブランドが注目され光り輝くようになってきた。

 今年2月下旬にCP+が開催されたときのこと。
 シグマの会津工場で働く人たち約120名が、バスをチャーターして日帰りでCP+の見学にやってきた。早朝に会津を出発して、その日の夜遅くに会津に戻るスケジュール。工場でもの作りをしている人たちにCP+の会場の雰囲気を体験してもらおうと、シグマが企画した(発案はどうも山木社長らしい)初めてのツアーだという。交通費などは無料。ツアー参加を募ったところ予想以上の希望者になったという。

 CP+の会場を見て回れば、他社のこともシグマのことも実感としてわかる。レンズやカメラを作る人たちの「励み」にもなるだろう。生産現場の人たちが、自分たちが大切に作った製品を使ってくれているユーザーの様子をじかに見て、感じることの意味は大きかったと思う。山木さん、なかなかやるじゃないか、と感心した。