このデキで3万5千円は安い

キヤノン・PowerShot SX720 HS

 コンパクトカメラとしての仕上げ、操作性、信頼性については、さすがにキヤノン、じつにウマい。PowerShot SX720 HSを使って撮ってみて、いちばん印象を受けたことだ。
 内蔵レンズは、40倍(24mm~960mm相当)ものズーム倍率のことを考えれば、意外なほど小型に仕上げているし、予想していた以上に描写性能はいい。とても良くできたズームレンズだと思う。
 ところが、実際に撮影していて(小さなことだが)不満点もあった。




 1つの不満点は近距離撮影でのピント制限。
 近距離撮影はズーム広角端で1センチまでだが、少し望遠側にズームすると撮影距離はとたんに遠くなる。960mm相当の望遠端にズームしたりすると2メートル以上離れないとピントが合わない。そりゃあしょうがないよ、と言われれば諦めざるをえないが、もう少し近距離にピント合わせできればよかったのに。

 もう1つの不満点はライブビューでの手ぶれ補正。
 とくにデジタルズーム域に入った超々望遠画角のとき、シャッターボタン半押しをしてピントを合わせフレーミングをしようとしても、画面がゆらゆら、ゆらゆらと動いてまったく定まらない。このへんの補正アルゴリズムは、いままでキヤノンはとってもウマかったのだが、どうしたことか、このSX720は「キヤノンらしくない」のだ。3000mm相当を越える超々望遠にもなれば、ライブビューの画面をピタリと止めることが難しいのはよく理解しているが、もう少し「努力」をしてほしかった。

 この2つの(小さな)不満点さえ我慢すれば(無視すれば) ━━ そもそも"不満"と感じない人も多いかもしれない ━━ ほぼ満点に近い上出来のコンパクトデジタルカメラだろう。いまのコンパクトカメラに必須の機能も、じゅうぶんに備わっている。
 価格が、ぼくが予想していたよりもだいぶ安いことにも感心した。キヤノンは他社と同クラスのカメラであっても高い値付けをして、がしがしと自信満々に売っていく傾向があったので、てっきり4万円半ばの価格と思っていたら、カメラ量販店で約3万6千円ほどで売っている。

 超望遠の画角を、ゆらゆら揺れるボディ背面のモニター画面を見ながら不安定なホールディングで撮影する難しさはあるが、しかし、いつもいつも超望遠で撮るわけでもないだろう。広角から望遠まで気楽に撮影ができるし、いざとなれば超々望遠で写すことも可能な、そんなスリムコンパクトカメラと割り切れば、魅力はいっぱい。