キヤノンらしいけど、キヤノンらしくないレンズ

キヤノン・EOS M10+EF-M 28mmF3.5 マクロ IS STM

 超広角や超望遠だとか、大口径だとか、高倍率だとか、近頃の交換レンズは飛び抜けた数値ばかり追いかけているか、ばりばりカリカリ解像感の描写ばかり狙っているか、そのどちらかのような気もしないでもない。
 それほど数値的に注目されないけど、しっかりと「地に足を付けた」まじめなレンズ、目立たないけどひっそりとチャレンジャブルなレンズがあまり見あたらない。いや、なくもないのだが、たまに、そうしたレンズ(地味だからなあ)が出てきても、多くの人たちは気にも留めず無視してしまう。

 そんな最近の交換レンズ世界の中で、ひょっこりと出てきたのがこのEF-M28mmマクロレンズのような気がする。
 確かに「等倍」を越えるAFマクロレンズとしては世界初だし、レンズ内にLED照明の機構を内蔵しているなど、ひっそり、控えめというレンズでもなさそうだが、28mmマクロを少し使ってみればわかることだが、とてもまじめに、良く考えて作られている「地に足の付いた」レンズなのだ。
 いっけん、遊び心があって愉しいレンズ、というふうに受け取られがちだが(それはそれでイイのだけど)、ぼくはそうは感じなかった。これでもか、というぐらいマジメに真正面から、コストと性能のことを考えながら設計に取り組んだレンズという感じがした。




 キヤノン、というと合理的、打算的、慎重安全と受け取られがちだが(たしかに、そうした面もなくもないが)、カメラ開発部門と違ってキヤノンのレンズ開発部門にはそんな印象はほとんどなく、いちばん「キヤノンらしくない」部門のひとつだと思う。28mmマクロレンズを見て、使って、撮ってみて、つくづくそう思った。

 こんな低価格なマクロレンズでも(レンズマウントはプラだ)、角度ぶれ補正+シフトぶれ補正のハイブリットISを組み込んでいる。これ、大いに感心したことの1つ。レンズの中にLED照明機構、なんて誰でも考えつくことだろうけど、やる/やらない、では大違い。やったもんの勝ち。
 無限遠から最大撮影倍率の1.2倍までステップレスでフォーカスできれば良かったのに、とか、無限遠の描写がもう少し良ければ、とか、そもそも売れる本数が決して多くなく使う人の絶対数の少ない(キヤノンの製品にしては、ですぞ)EOS M用にしないで、せめてAPS-C判用の交換レンズとして企画開発すればもっと注目され、喜ぶ人も多かったのにと、ぼくなどはそう考えるが、そこを敢えてEOS M用交換レンズとして発売してきたことにも興味がつきない。それにしても、なぜなんだろう ━━ 理由はおおよそ推測できるけど。

 その28mmマクロレンズを見て、「いいなあ、このレンズ。うーん、しょうがないからEOS Mでも買ってみるかなあ」なんて言っていた人がいた(とある有名カメラメーカーの人だ)。その気持ち、すごくよくわかる。