ぼけ味もいい解像力もいい

ニコン・AF-S NIKKOR 105mmF1.4 E ED + D810

 ニコンの新型105mmF1.4レンズは、最近いささか迷走ぎみだった(ような気もしないでもない)ニコンレンズの中で、ようやく本来のNIKKORレンズの「本道」に戻ったかな、と感じさせるレンズである。ニコンらしい真面目なレンズ。

 重くて大きくて堂々としたスタイルのレンズで、これといったスキも欠点もない。描写性能は文句ない ━━ ある逆光状況で盛大なフレアが出るが、ま、それはしょうがない。
 レンズの「ツクリ」もいい。MADE IN CHAINAだが、まるでMADE IN JAPANのような丁寧さと高品質を感じる。こんな立派な高級レンズが作れるニコンの中国工場ってあったのかな……。
 9群14枚構成、最大径は約10cm、重さは約1キログラム。8月下旬から発売が始まっていて、税込み約23万円(ニコンダイレクトショップ価格)。なかなかのサイズ、ウエイト、イイ価格である。
 「高い、重い、大きい」というのが良いレンズのための三条件だから悪かろうはずはない。




 前回のブログでオリンパスの25mmF1.2レンズを紹介したときに、美しく自然なぼけ味と際だった解像描写力とは相反するものだというような話をした。球面収差とぼけ味が密接に関係しているからだ。
 しかし、この105mmF1.4はそうした定石を覆して、開放F1.4絞りからシャープで切れ味良く(むろん解像力も充分にある)、その上、ぼけ味がじつに自然で柔らかくてきれい。
 開放絞りのとき画面周辺部で口径食のため、ぼけのカタチがまん丸にならず"レモン"のように歪むが、それほど気にするほどのことでもない。科学写真を撮るのではないのだから、ぼくはべつにイイじゃないかと思う。

 105mmという焦点距離が「いまの時代」どんなふうに評価されるのか興味がある。もし、ポートレート用途にウエイトを置いたレンズなら85mmのほうが一般向けにわかりやすかったのにとも思う。でも85mmだと、あまりにもポートレート用、人物撮影向きのレンズといった強いメッセージ性がありすぎる。ニコンとしては、もう少し広いユーザーや、多様な使い方をしてもらうことを望んで105mmの焦点距離を決めたのかもしれない。

 この105mmレンズと似たコンセプトのレンズに58mmF1.4レンズがある。58mmと85mmでは「近すぎ」ると思ったのかもしれないし、いやそれよりも、58mmF1.4レンズの大いなる反省があって105mmF1.4が出てきたのかもしれない。リベンジのレンズ。

 その58mmF1.4レンズは、105mmF1.4レンズと同じようにぼけ味にこだわったチャレンジャブルなレンズである。ところが、58mmと105mmを実際に同時に使ってみると(ぼけ味はともかくとして)、まったく別もので105mmは「おとなのレンズ」という感じ。
 58mmF1.4レンズは、トビすぎヤリすぎの暴れん坊レンズ。確かに狙い通りにぼけ味はいいのだが、ではかんじんの解像描写性能はどうかといえば、はっきり言えばヒドい。球面収差出まくり。よくもまあ、こんな強いクセのあるレンズを商品化したなあと不思議に思うのだが、しかし、そこがニコンのおもしろさであり、なにごとも果敢に大胆に突き進むニコンの良いところでもある。

 ニコンというと堅物、保守的、権威主義といった印象を持つ人も多いようだが、いやいや、他社に先駆けて新しいコトに率先して挑む先進的なところがある。「やってみなはれ、やってみなわかりまへん」の精神がいっぱいあるように、ぼくは感じるなあ。そこがキヤノンと違うニコンのおもしろさ、かも。