最短撮影距離と最大撮影倍率

タムロン・SP 70~200mmF2.8 Di VC USD G2+ニコン・D810

 「ぼけ味にこだわったレンズ」とかメーカーは最近、よく言うようになりましたが、しかし「うわぁキレイなぼけ味だなあ」と特別、感心するようなことはほとんどない。
 輪郭のはっきりしたリングぼけは別として、そうでない「ぼけ」の「味」の優劣、良し悪しが、ぼくにはよくわからんです。そんなの別にどーでもイイや、と思わないでもないです。




 この新型70~200mmF2.8ズームの最短撮影距離はズーム全域で0.95メートル。旧型70~200mmF2.8は最短1.2メートルだから、新型では20センチ以上も近づいてピント合わせができるようになった。これにより最大撮影倍率が焦点距離200mmのとき、旧型が「1:8=0.125倍」だったのにたいして新型では「1:6.1=0.16倍」となった。

 ところで、最短撮影距離と最大撮影倍率の話をするときに ━━ 余計なお世話だが、知っておいたほうがいいことがある。
 ちょっとややこしい内容なので"わかりやすく"をこころがけて(丁寧に)述べた。以下、ややくどくなってしまったかも。

 最近の多くのレンズは、ズームレンズ、単焦点レンズを問わずAFを速くするためにAFレンズユニットを小さく軽く設計して、それを高速で動かすためにインナーフォーカス(リアフォーカス)方式を採用している。レンズ繰り出し方式でないので近距離にピント合わせをしてもレンズ全長が伸びることはなく一定不変。AFだけでなく操作面でも良い。
 しかし、インナーフォーカス方式レンズで注意しなければならないことがある。撮影距離(ピント合わせの位置)が近くなるほど、実質的な焦点距離が変化し短くなるレンズが多いことだ。

 タムロンの新型70~200mmレンズが、ズーム位置200mmで最0.95メートルのときの実質的な焦点距離がどれくらいになるのか不明だが ━━ だいぶ以前のタムロンは撮影距離に応じた実質的焦点距離を公開していたがいつのころから内緒にするようになった ━━ 少なくとも200mmの焦点距離のままではない。実質的焦点距離200mmは、無限遠にピントを合わせたときだけ。

 この近距離ピントのときの実質的な焦点距離変化の量は同じ焦点距離のレンズであっても、レンズ設計の違いなどによって異なるので一概には言えない。
 たとえばニコンに「AF-S NIKKOR 70~200mmF2.8 E FL ED VR」という最新型のズームがあるのだが、このズームの最短撮影距離は1.1メートル。200mmのときの最大撮影倍率は「0.21倍=1:4.7」である。

 そのニコンとタムロンとを同じ焦点距離200mmで比べると、ニコンレンズのほうが最短が"遠い"のに倍率は高い、大きく写せる。ニコン「0.21倍」で、タムロンは「0.16倍」である。
 つまりタムロンレンズのほうが実質的な焦点距離は、ニコンレンズよりも短くなってしまっていると考えてもいいだろう。

 ちなみに、タムロン新型ズームの200mm側で最短0.95メートルで写せる撮影範囲、それと同じ範囲になるようにニコンレンズを最短にしたまま200mmから広角側にズーミングしてみると、なんとニコンズームを「135mm」にしたときにタムロンズームの200mmと同じ撮影範囲(=撮影倍率)となった。

 ニコンのズームレンズもインナーフォーカス方式なので最短での実質的焦点距離は短くなっているはずだから、タムロンの200mm側での最短撮影時の実質的な焦点距離は「135mmよりも短い」ということは確かなようだ。無限遠と至近距離とピント位置が異なると画角も変化してしまうというのは困る。とくにムービー撮影では、そのようなレンズは「毛嫌い」される。

 で、結局ナニが言いたいかといえばですね、同じ焦点距離のレンズでも、最短撮影距離がより短い(より近いところにピント合わせができる)からといっても、必ずしも大きく写せるとは限らないということ。レンズには数値(レンズスペック)だけではわからないことが、たとえばぼけ味もそうですが、ほかにもいっぱいあるということです。

【追伸】
twitter上でタムロンとニコンの、200mm最短撮影時の比較写真を掲載しておきました。興味あるかたはどうぞ。