画界とは、最近接撮影範囲とは

タムロン・SP 70~200mmF2.8 Di VC USD G2+ニコン・D810

 タムロンの新型70~200mmF2.8の最短撮影距離は0.95メートル。その時の焦点距離200mmでの最大撮影倍率は「1:6.1=0.16倍」である。これについては前回のブログで述べた。
 本日のテーマは、その「撮影倍率」についてです。一般的な話でタムロンの新型ズームレンズとは直接、関係ありません。




 撮影倍率とは、フィルムまたは撮像センサーに写った像の大きさと、それを写した被写体の実物サイズとの比率をいう。5センチのものがフィルムまたは撮像センサー面に5センチそのままのサイズに写れば「等倍=1:1」とあらわし、もし、1センチの像として写れば「0.2倍=1:5」と表記する習わしになっている。
 もともとはフィルムカメラで言ってきたものだが、デジタルカメラにもそれをそのまま「強引」に使っている。そこに、大きなモンダイがある。なぜか。

 フィルムカメラならばフィルム上に写った像がそのまま"カタチ"として存在する。被写体の実物と大きさを見比べて「倍率」がどれくらいかは"一目瞭然"だ。
 ところがデジタルカメラでは、撮影した"像"は撮像センサー上にデジタル信号として一時的に記録されるだけ。撮像センサー上の像を「実体」として見ることも確認することもできない。観念として像を想像するだけだ。観念的画像。

 仮に、撮像センサー面に写った像を推測することができたとしても、それをフィルム上に記録された像のように被写体と実際に比べて見ることはできない。通常、私たちが見ているデジタル画像は、"作られた画像"をピクセル等倍で見たり、縮小したり拡大したりして鑑賞しているにすぎない。

 撮像センサーの大きさが同じで、同じサイズで像が写ったとしても、画素数が異なれば表示される画像のサイズが違ってくる。撮影倍率の概念はますます曖昧になってくる。

 交換レンズはデジタルカメラだけでなく、フィルムカメラにも使えるから「(最大)撮影倍率」の表記は有効だ、と言う人もいるかもしれない。でも、それはちょっとムリがあるように思う。APS-C判やマイクロフォーサーズ用の交換レンズはどうなのだ。そんなフィルムカメラは存在しない。
 もし、デジタルカメラの液晶モニターのサイズが、撮像センサーのサイズと「まったく同じサイズ」だとすれば撮影倍率の意味も少しは出てくるだろうが、しかしそんなデジタルカメラも世の中にない。

 つまりですね、デジタルカメラで撮影倍率が「1:8」だとか「0.125倍」だと言ったところで、ぜんぜん意味なさないじゃないか、というのがぼくの意見なのです。
 いま、このデジタルカメラ時代にあって、曖昧な「最大撮影倍率」の数値をレンズスペック表(仕様表)に記載するのでなく、最大撮影倍率のときにどれくらいの範囲が写るか、その撮影範囲(被写体範囲)を明らかにするほうがずっと"理にかなっている"ように思う。

 その最至近時の撮影範囲を仕様表に記載しているのがキヤノンとオリンパスだ。

 キヤノンの交換レンズの製品パッケージに同梱されている使用説明書に仕様表のページがある。そこに「画界」という項目があって最短撮影時(最大撮影倍率時)の撮影範囲が書いてある。ずっと古く、フィルム時代からだ。ちなみに「画界」は特殊用語で(キヤノン専門用語かも)、一般的な辞書では見あたらない。
 オリンパスは「最近接撮影範囲」として仕様表に記載している。

 こうした数値を見れば、最短撮影時にどれくらいの大きさ(範囲)まで写すことができるかがすぐにわかる ━━ ただ、キヤノンではこの表記は製品同梱の使用説明書のみでカタログやホームページの仕様表にはいっさい記載がない。同じくオリンパスはホームページの製品紹介の仕様表のみの記載だ ━━ 。
 ともかく、最近接時の撮影範囲の数値は大変に便利で役立つのだ。曖昧で観念的な最大撮影倍率を言われるよりも、こちらのほうがずっと実用的で現実的ではないか。

 と、そういうわけで、できるだけ多くのメーカーは、キヤノンやオリンパスのように最短撮影時の撮影可能範囲をぜひスペック表に加えてほしいと、まあ、そんなふうに考えてるわけです。