ファインダー倍率0.75倍(後編)

ニコン・D850 +シグマ・35mmF1.4 DG HSM Art

 一眼レフカメラの光学ファインダーの「性能」を判断するスペック的な要素は3つある。D850のファインダースペックは以下の通り(前回ブログの繰り返しになるが)。

 (1) アイレリーフ(アイポイント) ━━ 17mm
 (2) ファインダー倍率 ━━ 0.75倍
 (3) ファインダー視野率 ━━ 約100%

 ではD850の前モデルのD810 ━━ D810のモデルチェンジ機種がD850であるとは思えない、そう感じるほどカメラ全体の充実度に「違い」があるのだが ━━ その旧型D810の光学ファインダーのスペックは。

 (1) アイレリーフ(アイポイント) ━━ 17mm
 (2) ファインダー倍率 ━━ 0.70倍
 (3) ファインダー視野率 ━━ 約100%




 ファインダー数値にかんしてD850とD810との違い、といえばファインダー倍率だけ。ではファインダーを覗き比べたときどんな違いがあるかといえば、こんなふうである。左がD850、右がD810。

 つぎにニコン一眼レフシリーズのフラッグシップ機種であるD5のほうはどうか。

 (1) アイレリーフ(アイポイント) ━━ 18mm
 (2) ファインダー倍率 ━━ 0.72倍
 (3) ファインダー視野率 ━━ 約100%

 これらのスペックの数値を比べるとD850の「ファインダー倍率、0.75倍」が目立つ。ここがD850のファインダー開発でもっともがんばったところではないだろうか。D5の0.72倍のファインダーよりも「大きく」見える。
 しかしここで注目したいのはアイレリーフ。
 最近のニコン一眼レフカメラでアイレリーフが20mmを越える機種がほとんど見あたらない。

 では、ニコン一眼レフカメラの"永遠ライバル"であるキヤノン一眼レフの光学ファインダーと見比べてみたい。まずはEOS-1D X Mk2。

 (1) アイレリーフ(アイポイント) ━━ 20mm
 (2) ファインダー倍率 ━━ 0.76倍
 (3) ファインダー視野率 ━━ 約100%

 つぎにEOS 5D Mk4。

 (1) アイレリーフ(アイポイント) ━━ 21mm
 (2) ファインダー倍率 ━━ 0.71倍
 (3) ファインダー視野率 ━━ 約100%

 キヤノン一眼レフは1D X Mk2も5D Mk4も、20mm以上のロングアイレリーフを確保して、さらに視野率は約100%で、ファインダー倍率も0.7倍以上を確保している。対してニコン一眼レフのアイレリーフは、それらと数値を比べると17~18mmとややプアーな感じがしないでもない。

 少しぐらいのファインダー倍率の違いよりも、(ぼくとしては)アイレリーフが長いほうがファインダーは見やすい、気持ちよく見えるのではないかと思っている。
 ニコン一眼レフがなぜ、20mm以下のアイレリーフで「満足」しているのだろうか? こうした基本的な光学技術はキヤノンもニコンもそう差はないはずだ。キヤノンにできてニコンにできない、なんてちょっと考えにくい。

 ところが、だ。
 アイレリーフ21mm、倍率0.71倍の5D Mk4と、アイレリーフ17mm、倍率0.75倍のD850とを、同じ焦点距離のレンズをセットして(メガネをかけて)覗き比べてみると、D850のほうがファインダー内画面が見やすいし、画面外の情報表示文字の視認性も良い(5D Mk4のファインダー視認性が良くないとは言っていないですよ、念のため)。
 D850と5D Mk4とでは、ファインダー倍率はともかくとしてアイレリーフ4mmの差をまったく感じない、D850のそんな見え具合なのだ。

 これはいったいどうしてだろうか。ソコの理屈がどうもよくわからない。アイレリーフの長さを測る基準はCIPAで決められているから条件は同じのはず。ニコンの光学ファインダーの仕組みになにか秘密が隠されているのだろうか。
 いままでのぼくの経験では、ニコンにはこうした「不思議」なことがよくあって、そのたびにいつも悩ましい思いをする。

(ここで追伸)

 ぼくはアイレリーフはファインダー光学系最終面からアイポイントまでの(保護ガラスは含まない)距離、とすっかりそう思い込んでいました。
 ところが読者の方から先ほど、「CIPAのガイドラインでは保護ガラスを含むファインダー光学系からの距離であって、ニコン一眼レフの丸型接眼部には保護ガラスがあり、だからアイレリーフ数値が短いのだ」、とのご指摘がありました。

 もう一度CIPAガイドラインを読み直してみると、まったくその通りでした。
 ご指摘してもらってニコン光学ファインダーの「不思議」が解決しました。

 つまり、そういうわけでニコンのアイレリーフは接眼部保護ガラスのせいで数値上、ソンをしているわけです。
 ニコンは、他のメーカーのアイレリーフの測りかたと同じように、保護ガラスなしでのアイレリーフの付記しておけばいいのに。いや、ま、そこがニコンらしいところではありますが。