レンズを変えれば自分も変わる

ニコン・D300 + AF-S DX NIKKOR 35mmF1.8G
 ニコンのAPS-Cサイズ(DX)カメラ用レンズとしては、FISH-EYE 10.5mmF2.8レンズに次ぐ、2本目となる単焦点レンズである。35mm判換算で約50mm相当の画角となる。ようやく、とうとう、やっと…といった感じ。わざわざDX用レンズを出さなくてもフルサイズ(FX)用の単焦点レンズがたくさんあるんだからそれを使えばいいじゃないか、とでもニコンは考えていたんだろうか(そんなことはないだろうけど)、それにしてもちょっと遅すぎだよね。だから、待っていた人も多かったのだろう、発売以来、世界中で大変な品薄状態になっていると聞いた。

 軽くてコンパクト。ピント目盛表示も省略しているなど、ちょっと“安っぽい”ツクリという気もしないでもないが、その写りは意外としっかりしている。ややハイコントラストな描写で、たぶん一般受けするだろう。ただ、この描写については、大いに好みが分かれることだろうが、とくにデジタル用のレンズについてはコントラストが高めだったり、シャープ感の強い描写のレンズは、ぼくはあまり好きではない。
 ちなみに、35mmF2DというFX対応のレンズがあって、50mm画角のためにはこちらのレンズで「十分じゃないか」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょうけれど、この 2本のレンズのMTF曲線図 を見比べてみれば、35mmF1.8Gのほうがどれだけよろしいかわかるでしょう。ただし、MTF図はあくまで参考程度、ですよ。そして、そのMTF曲線図の“読み方”は自分で考えてくださいね。 ―― 2009年PIEのニコンブースでのぼくのセミナーから一部抜粋 ――


 最短撮影距離が30cmというのに注目したい。50mm標準レンズの最短は45?50cmが一般的。同時に発売したフルサイズ判の50mmF1.4Gだって最短は45cmだ。ところがこの35mmF1.8レンズは、焦点距離こそ35mmであるがその画角は50mm相当あるので、実際に撮影してみると「おっ、寄れるぞ」と、そのことに少し驚く。長年使い慣れてカラダに染みこんでいる50mm画角の使い勝手の常識がひっくり返って、それがおもしろかった。
 50mm画角で、最短30cmで、F1.8の開放絞りで撮影したりすると、ピントはとんでもなく浅くなり、ぼけは大きい。これもおもしろい。ただし、このレンズの唯一の気になった点があって、それはわずかだがディストーションがあること。それが至近距離になるほど増幅され、被写体によってはちょいと目立ってくること。いや、ま、それもよほど神経質に見ないとわからない程度の歪みだけどね。

 いずれにしても、ニコンDXカメラユーザーにとっては待望の大口径単焦点標準レンズであるわけで、その価格も(ニコンにしては)ほどほどだし、いまズームレンズを使っていて少し不満を感じておられるなら、この35mmF1.8Gは次期候補としてチェックしておかれるといいでしょう。きっと、撮れる写真も違ってくるでしょうし、ひょっとすると、いままでの自分と違ってものの見方も少し変わってくるかもしれませんぞ。