プロジェクト活動の成果

キヤノン・EOS-1D Mark 4 + EF 70?200mmF4 L IS
 1D Mark 4 開発にあたって新しくプロジェクト活動をしたという話をした。その詳細なテーマについては不明だが、具体的な活動の1つとしては「開発者自身がユーザーの声をダイレクトに聞く」ということだったそうだ。この話をキヤノンの人から聞いたときには、「えっ、いまさら、そんなことを…」と思わずぼくは言ってしまったほどだった。

 むろん、ユーザー調査、というか聞き取り調査はキヤノンとしては以前からやっていたのだが、それは日本を含めて各国の現地販売会社が中心になっておこなっていた。そこで集計し、まとめた意見が下丸子にあるキヤノンのカメラ開発のメンバーに伝えられていた、というのだ。「それだと、どうしてもフィルターがかかってしまったりして、ナマの声が聞けませんし…」とキヤノン。当たり前じゃないですか、あははは、とぼく。

 ここで誤解されると困るのだが、キヤノン(のカメラ開発担当者)がいままでユーザー調査をしっかりとやってこなかったというのではない ―― あれだけの大きな会社で、かつ長いあいだ素晴らしいカメラを作り続けてきたメーカーが、ユーザーの声をきちんと聞かなかったなんてあり得ないことで、つまり「手法」を変えたということだ。ややもすると「独善的」と受け取られやすいキヤノンだが、けっしてそうではない、ということも併せて弁護しておきたい。


 1D Mark 4 の開発メンバーが入れ替わり立ち替わり各地に出かけていって ―― 海外出張が制限される中でいろいろ苦労もあったようだが ―― 世界のプロカメラマンや新聞や雑誌のスタッフカメラマンにダイレクトに会って、詳細な聞き取り調査をしたという。「実際にユーザの不満点や要望を聞くことで開発には大変に役立ちました」という。

 そうして生まれた第一弾が1D Mark 4 であったわけだが、そのプロジェクトの成果が100%反映されたかといえば、そんなわけない。カメラ作りというのはそう簡単なことではない。でも、この「第一歩」が大切なのではなかろうか。
 1D Mark 4 は1D Mark 3 から改良された点はいくつもあるのだが、なによりも「ユーザビリティーの向上」という点についてぼくはもっとも感心させられた。1D Mark 3 は、当時としてはとても素晴らしいデキのカメラであったものの、いまから考えると少し“トンがった”ところがなくもなかった。使いこなしに、それなりの技量が要求されるようなカメラだったようにも思う。

 1D Mark 4 はとっても扱いやすいカメラになっている。最高10コマ/秒の高速連写できて、いかにもプロスポーツカメラマン御用達、報道カメラマン専用といったハードな印象はあるが、しかし、もっともっと一般のユーザーが使いこなしてもいいぐらいに「柔らかくおだやか」なカメラに仕上がっているようにも思う。