手間とコストを惜しんではいいものはできない

キヤノン・IXY 30S
 なんと言ってもカメラの“仕上げ”がすばらしい。丁寧なツクリで、とても高級感がある。最近のコンパクトカメラが「安かろう、悪かろう」の悪いスパイラルに入ってきている中にあって、この30Sは「価格と性能(品質)のバランス」を維持しようとがんばって作ったカメラのように見える。手間とコストをかけて、優れた性能を持ったカメラに仕上げるには、それなりの価格がするものだということをあらためて知らしめてくれるカメラ。

 この30Sにはカラーバリエーションがシルバー、レッド、ホワイト、イエロー、ブラックと5色ラインナップされている。手間をかけている、とぼくが言ったことの一例として、電池蓋を開けてその裏面を見てみればよい。その素材(合成樹脂)がそれぞれのボディカラーととも色にしている。ほらこのようにホワイトボディではホワイトだ。同じように、赤ボディは赤色、黄色ボディは黄色なのだ。


 たかが電池蓋の裏面ですぞ。そんなものは、どれだけカラバリがあろうと、素材の地色はそのままにしてグレーなり黒なりに共通化しておくのがいままでのやり方。30Sはそうではない。カメラ購入のきっかけにはゼッタイにならないようなところにまでこだわって“作り込んで”いるというわけだ。
 そんなことどーでもええやんか、と言ってくる人もいるだろうけど、いいや、どーでもええことなんかないんですよ。これはいまの日本のカメラメーカーにとっては(ひいてはユーザーにとっても)、じつはひじょうに大切なことなのだよ。

 塗装もにも凝っている。たった1回だけの塗装ですませているのではなく3回以上塗り重ねている。でないと、高級車の塗装のように“ぼってり”とした色の厚みと光沢感はなかなかでにくい。5色のカラバリの中で、ホワイトだけは4回塗り重ねている。ホワイトボディがもっともコストがかかっているわけだ。
 30Sボディの外装素材はステンレス合金である。つまり金属ボディ。その上に、見ただけでは金属外装であることがまったくわからない ―― でも、手にしてカメラを握ったときの感触は合成樹脂製とはだいぶ違う ―― ように塗装を厚くしている。この贅沢。

【蛇足】
 ちっちゃな撮像センサーを使ってるコンパクトカメラでは、F2の明るいF値であっても絞りの効果なんてないに等しいんじゃないか、との意見がメールやらtwitterなどによせられました。そう、おっしゃる通りです。一眼カメラほどの「ボケの効果」はありません。しかし、撮影の仕方によっては、そこそこのボケ効果を出すこともできます。こちらの写真をどうぞご参考に。28mm相当の広角側でのマクロ撮影です。左がF2の開放絞り値、右がF8の最小絞り値です。