ユニット交換式カメラを製品化したことの勇気

リコー・GXR+P10 28?300mmF3.5?5.6 VC
 GXRは、レンズと撮像センサーなどが一体化された「ユニット」と、液晶モニターや操作部などを備えた「ボディ」を組み合わせて使用する“システムカメラ”である。いまのところボディは1つ。ユニットは ―― これをリコーは「カメラユニット」と言っているのだけど ―― 3つある。システムカメラだ。デジタルカメラでは世界初、そして世界唯一のカメラシステムである。こうした形式のカメラを「ユニット交換式カメラ」とよんでいる。いや正確にいうならば、GXRが出てくるまではこうした形式のカメラは世の中になかったのだから、GXRが出てきて急遽、ユニット交換式カメラとなづけるようになったと言ってもよい。

 ユニット交換式カメラはデジタルカメラであるからこそ可能なわけで、だから、リコー以外のカメラメーカーは多かれ少なかれこうした形式のカメラの研究や試作はやっていたはずだ。事実、ぼくはだいぶ前からぼつりぽつりとそうしたうわさ話は聞いていた。でも、リコーのおもしろいところは、あれこれの試作だけにとどまらずに、とうとう製品化して売り始めたというところにある。そこがスゴイと思う。

 なにせ“初めて”のことだから参考やお手本にするようなカメラがない。すべてが手探り状態でことをすすめなければならない。ハイリスキー。たぶんリコーは、リスクに躊躇し引き返すよりも「カメラの夢」を選択し前に突き進んだのではないかとぼくには思える。サントリー創業者の「やってみなはれ」の精神に近いものがあるようにも感じる。だからこそ、チカラを込めて応援したくもなるというものだ。


 リコー以外のカメラメーカーもこうしたユニット交換式カメラを“やっていた”と言ったけれど、じつは、あるメーカーが製品化の直前まで進んでいたことがあったのだ。
 GXRと大変に似た仕様で、ボディのほかにユニット部は3つ用意されていたという。試作機まではほぼ完成。そこで役員を集めて製品化するかどうかの会議がおこなわれた。ゴーの決定が出れば、あとは金型をおこしたり部品を発注したりしてイッキに製品化に突き進む。
 ところが、「いったい何台売れるんだ?」とか「そんな価格で売れると思ってるのか?」といった否定的、悲観的、夢のない意見が大勢を占めて ―― 企業だからしょうがないけど ―― 結局、製品化が見送られてしまった。つまり、ボツだ。それが、GXR発表のン年前のこと。ゆえあって、メーカー名も、ン年のことも言えない。

 「リコーのGXRが発表になった日には、当時の関係者のあいだでメールが飛び交いましたよ…」と、あるメーカーの、ある人が悔しそうに言っていた。似たような話は、きっと、そのメーカーに限らずあちこちのカメラメーカーでも起こっていたに違いない。でもリコーは製品化した。ウチはもっといいものを企画してたんだぞ、なんて言ったって繰り言にしか聞こえない。

 ところで、以下はぼくのあてにならない予想だが、ユニット交換式カメラを製品化直前まで完成させたそのメーカーが、パナソニック、オリンパス、サムスン、ソニーに次いで、そうとうに魅力的なレンズ交換式ミラーレス一眼カメラを出してくるような、そんな気もする。その、あるメーカーにとっては、ユニット交換式カメラの技術的困難さ、営業的販売的不透明さに比べれば、ミラーレス一眼カメラを作って売ることなんぞお茶の子さいさいじゃないか、と考えるのだけど、さてどうでしょうねえ。