FoveonとKodachromeのあれこれの話

シグマ・SD15+30mmF1.4 EX DC
 Kodachromeフィルムは ―― そのコントラストやシャープネス、発色特性などもFoveonセンサーの画像と似てはいるのだけど、いや、それよりもむしろ ―― その独特のフィルムの構造と現像処理の方法が特徴でもあり、そのことがFoveonセンサーを使ったシグマのSDシリーズやDPシリーズのカメラにタイヘンによく似ている。

 多くのカラーリバーサルフィルムが発色カプラーをフィルム自体に内蔵させているのに対して、Kodachromeフィルムはフィルムそのものに発色カプラーを持たず現像処理液内にある。そのため、エクタクロームやフジクロームといった一般的なカラーリバーサルフィルムのことを現像処理方法の違いから「内式(うちしき、ないしき)」、Kodachromeフィルムを「外式(そとしき、がいしき)」ということもあった。

 現像処理の難易度から言えば文句なしに「外式」のほうが難しく、じつに厄介。現像設備も「内式」に比べればタイヘンに大がかりになる。Kodachromeが処理できる現像所も限定されていたし、時間もかかった ―― Kodachrome“終末期”には国内で1?2箇所だけになってしまったこともあった。また、「内式」では増・減感処理は当たり前にできたけれど、「外式」のKodachromeでは基本的にはそれは不可能だった(後年、一部の現像所では特別にそれをやっていたこともあったけど)。


 しながら、その厄介なKodachromeフィルムには、厚みのある色調とシャープネスの良さ、素晴らしい粒状性(画像の独自性、と言えばよいか)と、極めて高い耐久性があった。かれこれ40年ぐらい前にKodachromeで撮って仕上げたカラーポジフィルムはいまでもぼくの手元にあるがほとんど褪色もしていない。それに対して、たかが10数年前のエクタクロームのそれは茶色っぽく変色して惨憺たる状態。

 いやこんな話は過ぎ去った遠い昔話でどうでもいいんだけど(それに今となってはKodachromeを入手することも現像することもあたわなくなったし、そもそもKodachrome話をすればキリがなくなる…)、つまり、Foveonセンサーを使ったカメラも「撮影」と「現像」が同じように厄介で、多くのデジタルカメラのようにJPEGで撮ってほいっ、というわけにはゆかないということなのだ。
 低ISO感度を選び、必ずRAWで撮って専用の現像ソフトを使ってコツコツと仕上げてやる必要がある。

 Kodachromeフィルムの感度はISO25とかISO64といった低感度のうえ現像時に増感処理もできない。不安定で気まぐれなフィルム特性。同じようにFoveonセンサーを使ったカメラもまた高感度にめっぽう弱くて、感度特性が相当に良くなったと言われているこのSD15でさえISO200までが限界。ISO800になると、ノイズに寛容度のあるぼくでも少し遠慮したくなる。それにシグマのカメラも、いま時のデジタルカメラとしては珍しい“わがままさ”を備えている。

 いやしかし、それにもかかわらずFoveonセンサーのカメラには(シグマのデジタルカメラであるが)使いたくなる不思議な“魔力”と“吸引力”があって、じつは、ぼくはいつも困っておるんですよ。