「背景ぼかし」と「手持ち夜景」

ソニー・Cyber-Shot HX7V
 自動的に複数枚(6カット)を高速連写して、その画像を重ね合わせて ―― そう、すなわち多重露出撮影をして ―― 1枚の画像に仕上げるのが「手持ち夜景」機能である。通常の撮影なら、たとえば1/2秒の露光時間がかかるようなシーンを6回「0.5秒/6=0.08秒」の“高速”シャッタースピードで多重露出すれば(計算上では)同じ明るさの写真に仕上がる。実際にやっていることは、こんな単純なことではないだろうけど、基本的な原理はそういうこと。

 少しでも高速のシャッタースピードで撮れる(ブレが少ない)、それほど高ISO感度にしなくてもよい(ノイズが少ない)などの利点がある。欠点としては、瞬間とはいえ多重露光するのに一定時間が必要となるから動体は被写体ブレをしてしまうため不向きであることだ。
 このような多重露出をして暗いシーンを撮影する機能は、もちろんソニー以外のメーカーでも採用している機種も多い。しかし、これまたソニーの処理がうまい。裏面照射型のCMOSだから高感度の画質がいいとは思わないけど、ソニーの「手持ち夜景」の画質には感心。


 「背景ぼかし」撮影機能は、これまたオリンパスやフジのカメラにも同じようなものがあったけど、撮影結果はだんぜんソニーのものが優れている。もう少しがんばれば(技術的な改良がすすめば)、この撮影機能は充分に使いものになる。
 この撮影機能の技術は単レンズで3D画像を作ってしまう技術と(たぶん)同じものなのだろう。背景ぼかし撮影は、簡単に言ってしまえばピントが合った部分を自動的に範囲指定して、それ以外の部分を画像処理でボケたように加工してしまうものだ。現段階での問題点は範囲指定した境界部分の処理だけではないかと思う。

 3D撮影もそうだけど、必ずしも2つのレンズユニットを必要としないで単レンズで撮影、あとは画像処理で3D画像に仕上げてしまう技術が(いまでもあるけど)、将来、もっと発展していくかもしれない。
 ぼくは、昔ながらの単純な静止画像(写真)を撮るための道具(カメラ)がなくなってしまうのはイヤだけど、しかし、写真も3D画像も動画含めた「映像」がどんどんと変化して膨らんでいくのは大歓迎だ。そこから、いままでになかった新しい表現力と想像力が生まれてくればおもしろいではないか。

 とはいえ、ソニーやパナソニックといった“新規参入”のカメラメーカーの、最近のカメラを見ていると、長い年月を経て作り上げられてきた「写真的画像の良さ」の機微を理解しようとしない。ブルドーザーが突き進むように「写ればいいじゃないか」という価値観だけでカメラが作られているようで残念で無念だ。それが知らず知らずのうちに「写真文化」を台なしにしなければいいけどなあ、と思うわけですよ。