トキナーの力作ズーム

ニコン・D700+トキナー・AT-X 16~28mmF2.8 Pro FX
 トキナーの力作レンズである。フルサイズ判一眼用の大口径広角ズームレンズ。16mmからの広角ズームにしては望遠側が28mmまでで、ここがいささか“ひっかかる”ところ。F2.8のコンスタントF値であるとはいえ、16mmから28mmにもかかわらず、前玉は大きく飛び出している。さらに、このテのレンズにしては大きくて重い。
 フルサイズ判レンズで、16~35mmF2.8クラスの、もっと(このレンズよりも)小型軽量のものはたくさんある。なぜ、トキナーは敢えて、この大きさ重さで「16~28mm」の仕様を決めたのだろか。

 答えは簡単。描写性能を最優先したからだ。事実、良く写る。素晴らしいレンズだ。
 そもそもレンズというものはですぞ、「大きい、重い、高いレンズ」に悪いレンズはない、と言い切ってももよいだろう。これは揺るぎない事実。ところが逆に、じゃあ「小さい、軽い、安いレンズ」には良いレンズがないのか、というと、これが困ったことに、そうとは言えないのでありますよ。小さい、軽い、低価格のレンズの中にも(ときどき)素晴らしく良いレンズもある。これこそがレンズ選びのいちばんの難しいところだ。

 それはそれとして ―― このへんのハナシはまた、いずれ ―― つまりね、16~28mmのようにズーム倍率を抑えつつ、大きくて、重くて、やや高いレンズは、使ってみて撮ってみなくても良いレンズであることは、はっきりとわかっている(ぼくの長い経験から)。


 トキナーは、この16~28mmズームを開発するにあたって「ターゲット」としたのは、ニコンの、あの、14~24mmF2.8ズームレンズなのである。
 なにをいっておるのか、16~28mmと14~24mmとは焦点距離がぜんぜん違うではないか、というご意見もありましょうが(ぼくも、もっともなことだと思うけど)、とにかくトキナーは14~24mmF2.8を「目標」に設計を始めたというのだ。だから「既存の16~35mmF2.8ズームとは、はっきりとコンセプトが違います」とのこと。

 話は少し横道にそれるけど、そのニコンの14~24mmF2.8ズームレンズは、これは素晴らしい広角ズームレンズなのだ。はっきり言ってダントツの描写性能。あまたある広角ズームの中の「ベストワン」と言ってもいいだろう。
 ところでこのズームレンズは、なんと、ニコンの若い美人のレンズ設計者が手がけたもの(名前は敢えて秘す)。ニコンでは初めてといえる大型で曲率の高い非球面レンズを採用した大胆なレンズ設計をしている。当初、栃木にあるレンズの制作部門(栃木ニコン)が、「そんなレンズ作れるわけないじゃないか」と、若い美人設計者の要求をけんもほろろに断った。しかし、その美人設計者はガンとしてあきらめず、何度も何度も栃木ニコンに「お願い」に行き、とうとうその情熱に折れて製造側が試作を重ね、その結果、完成したのが14~24mmF2.8レンズなのであります。
 あ、トキナーの16~28mmレンズの話をするつもりが、また脱線してしまいましたね。