内蔵24倍ズームで言い忘れていたこと

オリンパス・SZ-30MR
 これがSZ-30MRで、上の写真がスイッチOFFの収納時、下の写真はズームONで600mm相当の姿。
 “ミニ・モンスター”ともいえるSZ-30MRは、内蔵のズームレンズがびっくり仰天であるだけでなく、備わっている撮影機能にも大注目したいのだけど、もう一度、内蔵ズームレンズについて少し解説を加えておきたい。

 この25~600mm相当の画角をカバーする超小型ズームレンズは、最短撮影距離がマクロモードに切り替えることなく無限遠からシームレスに40センチの至近まで自由自在にAFでピントが合わせられる。このことはすでに話をした。
 最近の一眼用の交換レンズでも、一般的にこうした高倍率ズームレンズの場合、ピントを合わせるために前後移動させるレンズ(レンズ群)は、レンズの後ろまたは中間部分の軽くて小さなレンズ(群)であることが多い(ムカシのレンズはレンズ前のほうを動かす前群繰り出し方式)。この方式を内焦方式とかインナーフォーカス(リアフォーカス)などともよばれている。

 内焦式のメリットは、ピントを近距離、遠距離に合わせてもレンズ全長が変化しないこと。さらに前後させるレンズが小さいのでAF駆動に便利、などの利点がある。しかし逆に欠点もある。近距離にピントを合わせると像面湾曲の収差が目立ちやすくなる。もう1つの欠点は近距離になるほど「実質的」な焦点距離が短くなる。無限遠では200mmの焦点距離(画角)であっても、至近撮影距離になると150mm以下の画角になるレンズも少なくない(このことについては黙って知らんぷりしているメーカーも多い)。


 さて、30MRの高倍率ズームもインナーフォーカス方式。だから、600mm相当の望遠側で40センチの至近撮影では実質的な焦点距離は“相当に短く”なるのではないか、と思っていたのだが、しかし実際に撮影してみたら、意外や意外、ほどんど焦点距離は短くなっていない。つまり、内焦式ピント合わせにもかかわらず40センチの至近でも、無限遠と同じく600mm相当(それ以上?)の焦点距離を保っている。実質的焦点距離が短くならない“珍しい”内焦式高倍率ズームレンズなのだ。
 このへんのレンズ設計のテクニックについては、おたくっぽい話になりすぎるので省略するけれど、専門家ならそのレンズ構成図面を見ただけで一目瞭然だと思う(たぶん)。

 「このレンズ設計なら、収差を目立たせずにもっと至近距離を短くすることも可能なのですが、レンズが少し大きくなってしまうので今回は40センチにとどめました」と、オリンパスの設計の関係者は豪語しておりました。
 また、描写性能が良いことについては、通常ならプラスチックレンズを使ってコストダウンをするところを、「色収差を徹底的に排除するために高価なカラスレンズを使いました」とのこと。いまや、コンパクトカメラは低コストに仕上げることが至上命令。そこを敢えて性能重視で、「思い切って贅沢な設計」をしたも言っておりました。すごいじゃないですか、オリンパス。

 ところでオリンパスのカメラの手ブレ補正は一眼もコンパクトも、撮像センサーをシフトさせる方式。だからレンズ内に手ブレ補正機構を組み込む必要がない。レンズを小型に、そして比較的自由に設計できたのは、そうした理由もあったのかもしれない。