約70万円のカメラ

シグマ・SD1+150mmF2.8 APO MACRO EX DG OS

 SD1が正式発表になったとき、実販価格が「約70万円」と聞いてぼくは大変に驚いた。シグマにいったいなにが起こったんだろうか、予想より「高く」なったのはどうしてだろうか、と。
 発表前は、20万円から30万円ぐらいではないかと予想されていたし、ぼくはといえば、そうだったらいいのになあと期待も込めて「20万円以下」と大胆なことを言っていた。こうしたぼくたちの“予想価格”はぴたりと当たるとは限らないが、しかしそれほど大きく外れることもない。
 ところがこのSD1はそうではなかった。結果的に大はずれ。

 多くの商品は企画されるときに、まず、だいたいの販売価格が想定される。それに沿って細かな仕様が決まり、そこから部品や製造のコストが計算される。ユーザーターゲットにあわせて仕様を先に決め、それから販売想定価格を決める場合もある。かんじんの撮像センサーの部品価格などまっさきに調べる。
 いずれにしても製造にとりかかる前には価格はある程度決まっているのが普通だ。カメラもレンズも同じ。製品ができあがってからコスト計算して価格が決められるなんてことは、通常、まずあり得ない。


 以下の話はまったくぼくの想像である。なんの確証もない話。だから、戯言だ、と笑ってすませてもらえばいい。

 「約70万円」という価格になった理由は、SD1の正式発表が近くなったころに「予想外の大災害」が起こったことによるのではないか。その影響を大きく受け、当初の想定価格が大幅に変更されてしまったのではないか、という想像だ。むろん、これについてはシグマは黙して一切を語らない。災害の影響にしてしまうというのは被災者の人たちに対して失礼ではないか、という頑なな気持ちがシグマ(とくに山木会長)にあったのではないか、とぼくは思う。

 シグマのマザー工場は福島県会津にある。シグマのカメラもレンズも「国内生産」に徹していて、その協力工場は福島県に広く点在している。そうした協力工場のいくつかはあの災害で甚大な被害を受けた。福島原発の避難地域にあった会社もあったようだ。「もうこれ以上、会社を続けられないので」と、部品の金型などをシグマに引き取ってくれるように頼んできたメーカーもあったそうだ。時期的に見て、SD1の生産計画も大きなダメージを受けたのではないだろうか。

 今年、シグマは創立50周年の記念の年にあたる(今日、9月9日が創立記念日)。さらには Foveon も10周年の年でもある。SD1は、たぶん、シグマ創立50周年の記念モデルとして華々しくデビューさせる予定だったのではないだろうか ―― シグマの山木会長はこれについて否定をしているけれど。
 シグマの気持ちは、ほんらいの予定通りのもう少し“買いやすい価格”で記念のSD1として販売を始めたかったのかもしれない。そうできなかったのは、やむにやまれぬ事情があったからだろう。無闇矢鱈に「高い、高い」と文句を言うだけではなく ―― かりに災害の影響はなかったとしても ―― そのへんは忖度してやるべきだ。