モノクロ写真がいいね

シグマ・DP2 Merrill

 Foveon X3センサーを使ったDP/SDシリーズのカメラは、もともとモノクローム(白黒)写真に相性がいいのだが、DP2 Merrillになってさらに相性が良くなったようだ。30mmF2.8レンズの描写性能と新型Foveon X3センサーの組み合わせが功を奏しているのかもしれない。他社のデジタルカメラのモノクローム写真とは“ひと味”違う、と言ってもいいだろう。

 低感度では、まるでプラスXフィルムを使ってフェニドン単液系の現像液で丁寧に現像したように仕上がる。諧調描写がすばらしい。また、ISO800~1600の高感度でモノクロ撮影すると、トライXフィルムをD-72希釈現像液で現像したように、ぞくっとした質感が出てくる。とにかくモノクロフィルムの良さとらしさが出せて、誰が撮っても“渋い”写真になる(ただし間違ってもISO6400は選ばないように)。

 なお、モノクロ写真はフィルムと同じように撮影するときからモノクロのモードで撮るのがベストなのだが(白黒の諧調でモノを見てフレーミングすることが大事なのだ)、DP2 MerrillはRAWで撮っておいてモノクロに変換処理するほうが結果はいいだろう(PHOTO ProのモノクロモードはWBモードの中にあるので注意)。


 ISO3200やISO6400の高ISO感度はほとんど使いものにはならないと言ったけれど、そんな感度は使わなければいいだけの話。高ISO感度で撮影したければほかのカメラを使えばいい。このカメラにはこのカメラの、他のカメラでは代え難い魅力があるのだからそれを使って愉しめばよいのだ。
 バッテリーのモチが悪いと言う人もいるけれど、もう1つ予備バッテリーを用意すればいいことだ。AFの測距スピードが遅いと文句を言う人は(このぼくもだ)、MFに切り替えて使えばいいこと。そういうカメラもあっていいじゃないか。なんでもかんでも乳母日傘(おんばひがさ)で撮影したっておもしろくもおかしくもない。

 DP2 Merrillに内蔵されている30mmF2.8レンズの描写は、まるで“まぐれ”でできたレンズなのかと思わせるほど優れている。そのことを言い忘れていた。すばらしいレンズだ。45mm相当の画角も、あらためて自分の写真的視角を再認識させてくれて、ぼくはそこにも感心した。もうすぐ発売されるDP1 Merrillの19mmレンズ(28mm相当)よりも、きっとこの30mmレンズのほうがイイのではないかとぼくは予想している。

 誰にでもおすすめできるカメラではないが、画質だけには強烈なこだわりを持っているベテランの人や、フィルムカメラからいま一歩前に出てデジタルカメラに踏み切れない人や、あるとき写真に目覚めて作品を作ってみたい、写真で自分を表現したいと思い立った超初心の人や、あるいは、大衆迎合したような軟弱軟体な傾向がなきにしもあらずの最近のデジタルカメラに飽き飽きしている人にはベストワンのカメラだろうね、このDP2 Merrillは。きっと、いままでとは違ったいい写真が撮れると思う。そして、自分の隠れた写真的センスに感心するかもしれない。