キヤノンのカメラの静止画と動画に対するスタンス

キヤノン・PowerShot SX280HS

 このSX280HSは、キヤノンの一眼レフ、ミラーレス、コンパクトカメラを含めた中でいち早く最新型のDIGIC6を採用している。つい最近発表されたEOS 70DでさえDIGIC5である。
 各社ともこうした画像処理エンジンを次々と新しくしているが、エンジンを新しくすることでナニが変わるかといえばイチバンは処理スピードの向上である。
 画像処理では膨大な量のパラメーターを高速で処理しなければならい。とくに高感度でのノイズ処理はいくらやってもやりきることはできないとも言われている。画像エンジンが高速化すれば「制限時間内」にやれることも多くなり結果的に画質が向上する。さらに、いままでできなかった新しい機能を追加することもできる。

 ただし「新型」を使うことによるリスクもある。初めて使い始めるわけだから小さな問題点が発生する可能性だってあるわけだし、使いこなしのノウハウも蓄積されていない。EOS 70DでDIGIC6を採用せず"旧型"のDIGIC5を使ったのは、そういう意味もあったのかもしれない(キヤノンは、このあたりは極めて慎重だ)。
 コンパクトカメラなら一眼レフに比べて処理の負荷も小さいだろうし、もし万が一、不具合が発生しても影響(キヤノンのカメラ事業に対する)も小さくてすむ。まずはSX280HSでDIGIC6を使い込んでバグをつぶし、より安定したDIGIC6に仕上げてからメインの一眼レフに搭載する。つまりは ―― こう言っちゃナンだけど ―― エスケープゴート、身代わりの役目をしたのがSX280HSと考えられなくもない(…考えすぎかな)。


 SX280HSはキヤノンのカメラにしては"出し惜しみ"がなく"全力投球"している印象がして好感が持てる。新画像処理エンジンのDIGIC6採用に始まり、Wi-Fi(無線ブロードバンド)対応、GPS機能も搭載するなどひと通りの「最新」の機能や機構は備えている。さらに動画は60pのフルHDが可能だし、動画での高感度時のノイズが旧型に比べて約2EVほど画質向上させた。
 このカメラのスペックを見ていて1つオモシロイことに注目した。動画のファイル形式が従来のMOVからMP4になったことだ。キヤノンはコンパクトも一眼レフもずっとMOVファイル形式だったのだが、このSX280HSで大きな「方向転換」をした。

 動画の圧縮コーデックはMPEG-4 AVC/H.264で、音声圧縮のコーデックは従来の無圧縮PCMからMPEG2/ACC-LCとなった。音声が無圧縮から圧縮形式を採用するようになったり、動画のほうもDIGIC6を活用して圧縮率をより大きくすることで ―― 動画の圧縮率が画像処理エンジンで変わるとはぼくは知らなかった ―― 結果的に従来比で約60%ほど動画のファイルサイズを小さくすることができたということだ。MP4を採用することでスマホやテレビとの互換性が向上するらしい。

 しかしキヤノンのデジタルカメラでは現状はこのSX280HS以外はすべてMOV形式のままで、とくに一眼レフの"EOSムービー"についてはすぐにMP4に"切り替える"とは考えにくい。いずれにしても(EOS 70Dを見てもそうなのだが)最近のキヤノンのデジタルカメラは、静止画よりも動画のほうに相当にウエイトを置いてきているように感じる。もう少し静止画のほうにもチカラを注いでほしいと思う。