1秒と言えば「おじぃーちゃん」なのだ

富士フイルム・X-T1+XF18~135mmF3.5~5.6 R LM OIS WR

 自慢するわけじゃぁないが、ぼくは、カメラやレンズに手ぶれ補正の機構が内蔵されはじめた初期からずっーと使い続けてきている。カメラはニコンのVRコンパクトカメラ、レンズはキヤノンのIS望遠ズームから(いまでも事務所のどこかに転がってるはず)、あれやこれや、ほんとたくさん使ってきているからして手ぶれ補正については一家言ある(自慢してるけど)。
 手ぶれ補正一家言のぼくが、強く感動したのがフジのXF18~135mmズームだった。使って、いや驚きましたね、その手ぶれ補正の効きの凄さに。

 手ぶれ補正の効き具合を表す数値については、数年前までは各社バラバラだった。共通基準がなかった。各メーカーが独自の手ぶれ補正テストをおこなって、それをもとにして「シャッタースピード相当で何段」とか言っていたわけだが、1年ほど前だったかCIPAがテスト基準を作って、指定された機器を使って定まった検証方法をすることで「CIPA準拠で何段ぶん」のぶれ補正効果があるとカタログなどに記載できるようになった。これで一応、横並びの(互いに比較できる)数値が示されるようになった。

 ただし、CIPAのテスト方法で、望んだようなかんばしい結果が得られなかった機種については、黙って知らんぷりをしていてもいい。その替わり、カタログや使用説明書などメーカーの公式な文書類には「手ぶれ補正何段ぶんの効果あり」という記載がができない。ま、そういう取り決めが1~2年ほど前からされるようになった。




 横道にそれたので話をもとに戻すが、そのフジの18~135mmは「CIPA準拠で5段ぶんの手ぶれ補正効果がある」と公式に発表している。「CIPA5段」と聞いたときに、まずびっくりだった。そんなカメラもレンズもいままでになかった。手ぶれ補正の「4段」と「5段」ってのは、達成数値としてはタイヘンな違いで、まずそこんとことをよく知っておいてほしい。
 18~135mmを使う前にフジのある技術者から、「タナカさん、ぜひ1秒手持ちで試してください」と言われた。へっ、1秒? 、ナニ考えてるのだろうかこの人は…と、失礼ながらそう思った。よくカンチガイする人がいるのだが、たとえば1/30秒でぶらさずに撮れるとしよう。そこから5段ぶんだと1秒になる。だから、5段ぶん手ぶれ補正ならば1秒でもぶらさずに撮れるだろう、と、そんなふうに短絡的に考える人がいるんですよ、世の中には。

 いくらナンでもそんなワケないじゃないか、とぼくは思ったわけだ。だって1秒や1/2秒ってのは別世界ですよ。

 シャッタースピードは低速になればなるほど個人差の影響も受けやすく、さらに独特の低周波ぶれもある。理論的には高周波ぶれから低周波ぶれまで、まんべんなく手ぶれ補正の効果を発揮させることは非常に困難だといわれている。
 だから、ある有名メーカーの手ぶれ補正などは、中速シャッタースピードから準低速シャッタースピードまではよく効くのだけど、あるシャッタースピードを境にしてそれより低速になるとトタンにそっぽを向くようにぶれ補正の効果がなくなっていた。

 その別世界の「1秒」でもぶれないで写せますよと胸を張ったけど、ぼくはハナから信じてなかった。
 1秒って「おじぃーちゃん」ですよ。いや、おばぁーちゃん、でもいいんだけど、声を出して「おじぃーちゃん」とフツーに言ってみると、それが約1秒。昔のカメラで、低速シャッターのガバナーが調子悪くなったときなどにチェックする方法で、シャッターボタンを押し込むと同時に「おじぃーちゃん」と声を出していた。ちなみに、1/2秒は「じーちゃん」、1/4秒は「じちゃん」だ。
 「おじぃーちゃん」の1秒間は、とうぜんながらファインダー(液晶画面)はブラックアウトしている。実際に試してみたらいいと思うが、カメラを構えてファインダーを覗きながら1秒間、真っ暗なファインダーを覗いて神経を集中していると、自分が微妙に揺れているのがよくわかる。
 そのゆったりとした揺れを18~135mmズーム内蔵の手ぶれ補正が相殺してぶれを補正するというのだ。ホントか?

 話がどんどんくどくなるので、結果を先に言うと ―― お盆休みだから急がなくても、ま、いいか ―― 1秒で手持ち撮影をしてぶれ補正されたのだ。くだんのフジの技術者の言う通りだったのだ。
 というと、そこで訳知りの人は言うだろう、ほんとに完全にぶれ補正されていたのか、とか、何度やっても1秒でぶらさずに撮れたのか、とか、なにかに寄りかかって撮ったんではないか、とかなんとか。

 ぶれているかどうかについては、厳密に言えば高速シャッタースピードでもぶれているわけで、絶対的にぶれをなくして撮ることは不可能に近い。写真を鑑賞する拡大倍率によってぶれ量が違ってくるからだ。ぼくがここで言っているのは等倍表示(ピクセル等倍)で画像を見た時で、という話だ。
 どれだけ優れた手ぶれ補正のカメラやレンズを使っても、1秒で撮影して100%ぶらさずに撮れるなんて人はスーパーマンだ(将来はわからない、皆んながスーパーマンになれる時代がくるかもしれないが…)。この18~135mmにかんして言えば、ぼくの「確率は40~50%」だった。これ凄いことだ。ぼくなどは、3回シャッターを切って、そのうちワンカットぶれてなければ万々歳だと思っていて、確率20%でも素晴らしいと思っているほどだ。

 この手持ち撮影のテストでは「素立ち」でやった。素立ちとは(ぼくの造語だけど)、なんにも寄りかからず、自分の2本の足で立ってカメラを構えて写すというスタイルのこと。
 そういうわけで、1秒で撮ってですよ、4~5カット撮ったうち数カットぶれてない写真を見た時は、「うわ-っ」でしたね。試しに1/2秒も撮ってみたけど、こちらは鼻歌で写してみたけどぶれない確率はもっとアップする。